作戦指令室を後にしたカイジ……一夏のいる部屋の前へとたどり着く……!
「さて、織斑のいる部屋はここか……ん?なにやら中が騒々しい様だが……」
『一夏がこうなったのって、あんたのせいなんでしょ?』
『で、落ち込んでますってポーズ?―――っざけんじゃないわよ!』
『やるべきことがあるでしょうが!今、戦わなくてどうすんのよ!』
「(どうやら凰が篠ノ之を戦わせるため……叱咤しているようだが……筋が通っていない……凰は作戦指令室にいただろうから状況は知っているはずだが……?)織斑がやられて参っている篠ノ之を……戦場に引きずり出されても俺たちが迷惑だ……止めなくちゃな……」
幼馴染で恋慕していた相手が撃墜された……たしかにあの場で呆然とした箒は悪いが……
その直接の原因を作ったのはほかならぬ一夏……とはいえ、箒がそのせいにするわけがない……
当然自分を責め立てている……そんな箒を戦場にもう一度引きずり出せば……
どのような事態になるか想像できたものではない……一夏の二の舞になるのはご免である……!
「よぅ、ずいぶん威勢がいいな凰……!」
「な、なによカイジ。今は」
「お前も状況は知ってるんだろ……?なのになんで篠ノ之のせいになるんだ……?」
「そ、そりゃ箒をかばったからこうなったんでしょ!?」
「その原因を作ったのは織斑だろうが……!お前はあの時の織斑、篠ノ之の決断……どっちが正しいと思っているんだ……?」
恐らく凰とても激昂していることだろう……今は結果にしか目が行かないのは仕方ない……
が、物事は筋道立てて考えるべき……ただ、感情のままに責め立ててもいいことなどない……
「そ、それは……どっちも間違ってなんかいないわ」
「そう、そういうことだ……そこから先、間違っていたのは織斑のほうだ……自分以外の選択をした篠ノ之を認めず……あんなところで糾弾しはじめた織斑が悪い……!」
デュノアのことを教室で糾弾した時のことから……何も学んでいないのだろうか……
カイジもさすがに疑問符を抱かざるを得ない事態であった……
「い、一夏は悪くない!わ、私がISを、専用機を手に入れられて浮かれていたんだ!これで一夏の傍に立てると……そのせいで、あの船のことも簡単に見捨ててしまって……」
「市民の命と密漁者という犯罪者……それを天秤にかけて……前者に傾くのは仕方ないこと……あの時の会話の内容だと犯罪者だから見捨てていい……そんな感じの悪い言い方にはなっていたが……お前自身の内側は知らねぇけど……選択自体は間違っていない……!」
「だが、どうにしろ私にはこんな力を持つ資格なんてなかったんだ」
「そう思うんなら、姉にその専用機を返すんだな……それはお前自身の選択だから何とも言えんが……まぁ、いまは少なくとも織斑の傍にいてやれよ……」
「カイジ、そんな甘ったれたこと言ってる場合!?少しでも数が欲しい、しかも第4世代型で性能も十分。どんな経緯であれ、専用機持ちになった以上ワガママが許されるような立場じゃないのよ!?」
「意気消沈……傷心中の篠ノ之を引きずり出すってのか……?お前と二人で出るなら好きにすりゃいい……だが、その場には他の奴らもいるんだぞ……!次はだれを織斑の二の舞にさせるつもりだ……!」
箒が戦場で一夏が撃墜されたことを思い出し……もし呆けられでもしたら……
それこそたまったものではない……その場で見捨てることは簡単だが……
確実に誰かがかばいに動く……そうなったら目も当てられないのだ……!
「私は、私だって戦えるなら戦うさ!またあのように呆然と立ち止まったりなどしない!福音は一夏の仇なんだ!」
箒の目には闘志があった……福音は一夏を落とした……いわば仇でもある……
仇討ちに人が走る時……思った以上の力が出るものでもある……
「(篠ノ之は浮かれていた時でさえ……作戦遂行のために忠実に動いていた……それを考慮すれば篠ノ之は戦力になるんだろうが……果たして変わらない動きが出来るのか……?復讐する気持ちが先走ったりしないだろうか……)だが、次はもうお前をかばってくれる奴はいない……いや、いる……いるが、それは見捨てることができないが故……お前が呆けて止まれば、それを助けに誰かが動く……その時はお前には何の言い訳も許されない……お前にそれが、受け入れられるのか……?それに今から行くのは、仇討ちじゃねぇ……これ以上進行を許して町に被害がでないようにするためだ……」
「な、一夏がやられてどうとも思わないっての!?そりゃカイジと一夏の折り合いは良くないかも知んないけど」
カイジからしてみても一夏は哀れ……束の計画に乗せられ結局失敗してこの様……
巻き込まれた末に怪我を負って重傷とはついてないとしか言えない……
しかし、映像を見る限り仕留めるチャンスはあった……それを自分の選択で潰した……
そして、逃げることが出来なかったわけでもない……自分から生還の道を潰した以上……
哀れとは思っても、義憤に駆られるようなことはなかった……
「そういう問題じゃねぇ……ISなんて兵器を個人の復讐劇に使うなっていってんだ……前も言ったろ、ISはお前らのおもちゃじゃねぇって……!」
「カイジは一体どうしたいってのよ」
「危険性を、排除したいだけだ……不確定要素となりうるようなものはな……(次の戦闘において……福音のスペックが先ほどの通りとは限らねぇ……あの天才の制御を離れたのなら暴走も収まって敵対することもないかもしれないが……楽観視できる状態じゃない……)」
今回の事を引き起こしたのが束だとして……その性能を弄っていたとする……
もしなんらかの要因でその制御を離れたとしたら……弄られたスペックも元通り……
そうなっている可能性も当然ある……暴走も収まっている可能性もあるが……
「(私は、私は力を手に入れてどうしたかったというのだ……私はただ一夏の傍にいたかっただけ、ただそれだけ。力を制御しきれずに振り回されてこんなことになって、いや、違う。ISは私の力などではない。結局その強さは私のものではなく、ただISの持つ力。それを振り回してしまえば、自分の分を超えた事態を招くのは当然ではないか……思い出せ、私を律するもの、剣道とは私にとって私を律するための力、教えであった。力とは杖のようなもの、自分を支えてくれるが自分そのものではない。より高みを目指すためのものであったはずだ。いつから私はこのように歪んでしまったのだ……)」
言い合いをしているカイジと鈴をよそに……箒は自らの過去に思いを馳せていった……
それは私が小学二年生の頃のことだったはずだ―――
私を囲んでいる男子生徒たち。何やら私の事を馬鹿にして、囃し立てていた。その場には教室で一人掃除をしている一夏もいて、一人真面目に掃除をしていた。それをその男子たちが馬鹿にしたことを私は怒った。まじめにすることを馬鹿にすることは許せなかった。しかし、それでも暴力は振るわなかった。男子と殴り合いをしたところで負けるべくもない。一夏をかばったためか、夫婦だなんだと揶揄をされた。そして、わたしは男子に男女だのリボンをしていることを馬鹿にされた。
なんだ―――わたしはなにを思い出そうとしているんだ―――?
箒が思い出している目の前の男子生徒の顔が突然歪む。そして目の前から消える。
なぜだ―――?
殴られたからだ。だから、この男子の顔は歪んで飛んでいった。目の前で男子生徒たちが殴られ蹴られて、やられていく姿が映る。
殴ったのは私か―――?
いや、違う。この男子を殴ったのは一夏だった。私がリボンをしていることを馬鹿にしたことに、怒ってくれたのだ。それはいま思い返しても私にとって嬉しいことで。いや、違う。今大事なことはその事ではない。
なんだ―――なにを思い返そうとしているというのだ―――?
恐ろしい、恐ろしい、過去は埋められているべきなのに。どうして地面に埋まったものを掘り返そうとしているのだ。そこには綺麗な花が咲いているではないか。
その花をひっくり返してまでなにをしようというのだ―――?
私にとって大切な感情以外を掘り起こそうというのか。なぜそんなことをする必要があるんだ。人は過去から逃れられない。だから、私はきれいな思い出だけを引き継ぐんだ。
それでいいの―――?
やめろ、やめろ。囁くな、私の心よ。
過去からは逃れられない―――それはあなたも知っているでしょう―――?
夜眠い中投稿して朝起きて確認したらあまりに誤字多すぎて笑えた。冒頭もなんか間違ってるし……あかんなぁ