千冬へと連絡を取ろうとしていた箒……だが、その前にカイジの機体の異変に気付く……
「なんだ、伊藤のISに何が起きているのだ!?」
箒が抱えるカイジが纏っているヴァルト……その表面は黒い泥状になって波打っていた……!
「機体が修復されていっているのか?ISには自己修復機能があるが、ここまで高速なものではないはず……」
表面が黒い泥に覆われており……そのシルエットしか確認できないが……
ヴァルトは武装のほとんどを修復……そして泥は消えていき修復された姿が現れる……
「特別製ってのはこういうことか……エネルギーさえあれば高速での自己修復も可能、と……VTシステムのあの変貌から考えれば、そこまで不思議な事でもないか……?」
ヴァルトとの会話を終えて、意識が戻ったカイジは自らの機体を眺める……
ラウラのレーゲンが暮桜を模したこと……そこから考えれば自分の元の姿を復元する……
それくらいは訳ないことのようにも思えたカイジであった……
「気が付いたのか、伊藤。ちょうどよかった、私は今から戦場へと戻る。お前はどうする?」
「俺も当然戻るぜ……俺たち二人が戻ってどうにかなるものでも……ないかもしれんが、いないよりはマシなはずだ……」
あの中ではどちらかと言えば足手まといであったか……しかし、弾除けとして数にはなる……
「ならば、私の背に乗っていけ。四度目の奇襲作戦と行こう」
「そいつはいい考えだな……二度あることは三度あるというが……四度目は奴にしても完全に想定外になるはずだ……(そして、なにより味方にとっても奇襲になる……奴は俺とオルコットの奇襲を読んだ……それはもしかしたら、4人の動きから何かを感じ取ったからかもしれない……だが、今回は仲間ですら知らない……動きから今回の奇襲を読み取るのは不可能だ……!)」
福音もカイジの事を完全に撃墜した……まさかこの短時間で戻って来るなど想定外……
福音の場合は、計算外というべきかも知れないが……
「私は空裂でやつのエネルギーウィングの付け根を狙う。あのウィングの片方でも飛ばすことが出来れば、相応に与しやすくなるはずだ」
「それじゃあ俺はその体勢を崩したところに……また破砕砲をぶち込むとするか……」
「奴にしても流石に無視できないダメージになるはずだ。時間稼ぎの役目もどうにかこなせるようになるだろう」
目下の悩みである福音の弾幕……それを生成する翼の片方でももぐことが出来れば……
「あぁ、それじゃあ頼んだぜ……それにしても急がねぇとな……」
残った4人の仲間は意地でも引かないだろう……カイジにも箒にもそれが直感で分かっていた……
場面は福音と4人の代表候補生の元へ……カイジと箒が引いてから幾分か経つ頃……
「(エネルギーの微妙な充填量の違いから、少しは弾幕の法則性が掴めてきましたわ)各機に弾幕の軌道予測データを流しますわ。これでもう少しは楽になるはず」
遠距離機として、なによりもBT兵器稼働のため……三次元射撃戦闘の演算性能は随一……
充分なデータが得られるほどの戦闘時間ではなかったが……データ解析はかけ続けていた……!
「ナイス、セシリア!勘だけで回避するのも流石に限度があるからね!」
「(あれを勘で回避するって一体どうなってるんだろう。僕はガーデンカーテンでどうにか耐え忍んでるけど……)」
中距離で戦うシャルに迫る弾幕は近距離で戦う鈴に比べたらはるかにマシ……
近距離で回避をし続けている鈴の腕前……というよりは動物的な勘というべきか……
ともかく、天賦の才を感じさせるものであった……
「(ここまで解析力に長けた機体だとはな……それにしても米軍からは、このデータを抹消するように言われそうだ)助かる、もう少し楽になりそうだ」
レーゲンや甲龍のような機体は近距離機動戦……それに特化した演算処理装置を積んでいる……
故にティアーズのような遠距離型に対して……その面で劣るのは仕方のないこと……
しかし、それでもティアーズ型の性能には目を見張るものがあった……!
「さて、先生が来るのにあと5分くらいかな。データで少しは楽になったけど本当に苦行だね」
「戦いは最後の5分間で決まると言いますわ」
「ナポレオンだね。フランス人がフランスの革命家の言葉で励まされるなんてね」
軽口を叩きあい、余裕があるかのよう……初めて死を肌で感じ緊張が一線を越えたか……
不思議なほどの落ち着きに、頭に血が巡る2人……戦場で戦士に起こるそれであろうか……
「(ハイになっている、私はもうそのようにはならないがな。というよりはISを纏っているせいで、自身の感覚が鈍ったのか)」
4人の中で1人だけ、ラウラは戦場を知っている……今更精神的にハイになることもない……
なによりも死を明確に意識するような……背筋へと電撃が走るような感覚はまだ来ていない……
とはいえ、これは注意しておかなければ……なにより、戦場を経験してきた自分が……
「みんな、気を引き締めろ。新兵が死ぬのはそういうときだ。自らの腕を勘違いし心が浮つくその時、致命的な隙が出来るというものだ。そうして死んでいくやつを私は見てきた」
ラウラは新兵がそうして死んでいく様を見てきた……自らの妙な落ち着きや閃きを……
まるで自分自身の力そのものと勘違い……ただ脳内物質により興奮しているだけ……
実力に裏打ちされたそれではないのだ……決して当てにしていいものではない……
「ん、ごめんねラウラ。そうだね、これには自分だけじゃない、ここにいるみんな、そしてさらにたくさんの命がかかっているってこと甘く見てたよ」
「つい頭がめぐると口も軽くなってしまいますわね。気を引き締めなおしましてよ」
「ちょっと頼むわよ、二人とも!後ろが頭抑えてくんないとこっちもきついんだからね!」
鈴は軍属として教育を受けたからだろうか……二人とはまた少し違う心持であった……
「えぇ、もう少し弾幕を厳しくしていき……って、なんですの!?」
自身のレーダーにも映らず、福音へと……突如視界外から急襲する影二つ……
「箒!?」
近距離で紅椿を視認した鈴が叫ぶ……すでに箒は鈴よりも前面で……空裂を振りかざしている……
「俺もいるぜ……!」
「カイジ君も!?(箒の機体は損傷はそのままだけど、カイジ君の機体は修復が終わっている。一体どうなってるの?)」
紅椿の重量を少しでも軽くするため……早めに離れていたカイジも到達……
「……♪!!」
こればかりは福音も計算外……完全に箒の射程内、懐へと入られて手立てを失う……
箒はここぞとばかりに空裂を振りぬき……全力でエネルギーウィングを切り飛ばす……
「決まったぞ、伊藤!あとはやれるな!?」
突撃してきた速度そのままに箒は振り返りもせずに切り抜けていく……
急制動はかけられないため……張り付いて第二刃を入れることは出来ない……
「La♪」
体勢を崩しながらもカイジへと視線を向ける福音……
先ほどカイジに落とされたため、脅威として認定していたのか……
カイジが取り付く直前に……片翼のエネルギーウィングを破砕砲との間に挟む福音……!
「(羽根を盾にしやがった……?でも、ぶち込む以外にしようがねぇ……)墜ちろ……!」
破砕砲、福音に対して二度目の炸裂……果たして、福音……!