洋上を進む6機と運ばれている1機のIS……疲労のせいかほとんど会話もない……
そんな中、カイジのISに通信……相手は自身のISのコア人格、ヴァルト……
「福音のこと、どうにかしてやれないか?」
「どうにかって……?ていうか、お前普通に話せんのかよ……」
「今は戦闘をしているわけでもなし、システムのリソースをコア人格に回せるからな。で、お前の策とやらでどうにかしてやれないか?」
コア人格として表に出るには莫大なシステムリソースを喰う……気を失ったときに出る理由の一つか……
「そうは言ってもな……奴が仕出かしたことを考えてみろ……暴走して日本の領海内に侵入……男性操縦者の内の1人に重傷を負わせて……さらに各国の代表候補生とその機体を危機に陥らせたんだぞ……?その上、民間人にも犠牲が出るかもしれないところだった……もはや456倍付けどころの騒ぎじゃねぇ……その罪ピンゾロ5倍付け……」
「よ、よく分からん表現だが……とにかく!犯人は分かっているじゃないか、それなのに福音がただ一人悪いなど許されていいのか!」
裏は分かっていても相手が相手である……騒ぎ立てててもどうにかなるものでもない……
「やけにこだわるな……?福音のパイロットと知り合いな訳……?」
「そうではない。福音のコア人格、ゴスペルと呼ぼうか。先ほど福音と接触した際にゴスペルと話すことが出来てな。いきなり暴走させられて、襲い掛かって来る敵から身を守っていたにすぎないと。襲われたから攻撃しただけで、やりたくてやったわけじゃないとそう言っていたのだ」
「それを聞くと確かに放ってはおけないが……(ていうか、コア人格同士の会話も可能なんだな……)」
「だろう?二回目はなにもしていないところをこちらから襲い掛かったのだ。話し合えば何事もなく済ませられたかもしれなかったところを、だ」
ISコア同士が話し合い、暴走を治めることも可能だったのだろうか……
しかし、カイジの持つワクチン……自分を暴走させているウィルスの特効薬……
それを自分が持っていると知ったら知ったで……何やら勘違いされそうではあるのだが……
「IS同士会話させてみるから待ってくれってか……?俺の頭がおかしくなったかと思われるだけだろ……まぁ分かったよ、頭は回してみる……正直、何の手立ても見えてこないがな……(現時点での情報、俺の使える手札……福音の暴走は民間には知られていない……日本が領海内にいたことを認めない限り、各国も騒ぎ立てられない……そして日本政府は絶対に認めない……あの天才の出した指令、かけた圧力……専用機持ちに対処させるということだけで、どの機体に対処させるかまでは指定しなかった……だからこそ、織斑先生も各国の専用機持ちに対処させようとした……一度目は失敗、それは各国も衛星で覗いているはず……いや、天才が日本政府とアメリカにしか圧力をかけていないなら……もしかして各国は知るところじゃない……?当然福音の稼働試験は極秘裏に行われているだろうし……暴走した後の進路を知るのは容易ではないはず……が、これは憶測の域を出ない……二度目は天才に衛星のハッキングをかけさせてある……気まぐれなやつだからやってくれたかはわからねぇが……これも単純に信頼するのは危険か……いや、みんなの機体にデータが残ってる……現場を見られてなくても、戦闘があった事実は消せないか……っ……事実を消す、こいつはイカサマの基本だ……利根川は俺のバイタルを見ていることを消すために話術を使った……俺はイカサマをしていない事実を消すため、利根川を信用した……デュノアが女であることを消して前提を崩した……今回消せるのは……!)」
カイジの脳裏にわずかながら……今回の事態に対する着眼点、発想の転換……
しかし、まだ暗雲立ち込める中……求める雲間は遥か彼方の上空……
差し込む陽光ののもとへたどり着けるのか、カイジ……
福音を引き渡し旅館へとたどり着いた一行……それを待っていたのは千冬……そして一夏……!
「い、一夏!?なんで歩いてるのよ、ってかあんた怪我はどうしたのよ!」
「いや、なんだか知らないけど治った。傷も無くなってるし」
「そんなバカなことがあるか!あれだけの大怪我だったんだぞ!」
鈴と箒の二人がぐる……ぐる……と一夏の周囲を回りながら確認……
しかし、傷一つなし……今さっきまで意識不明だったとは到底思えない状態である……
他の候補生たちも不思議そうに一夏のことを眺めていた……そんな中、カイジは……
「(織斑が回復している……!?待て、これは使える……二つ目の消せる事実だ……織斑が怪我したという事実を消せる……!ネックだったのが奴が怪我しているということ……)」
まさかの利用……一夏が回復したことすら利用する方法はないかと模索……
「みんな、ご苦労だったな……全員無事に帰ってきてくれてよかった……」
「(そう、こいつに協力させる必要があった……どうあがいても俺だけじゃ声を通せないからな……しかし、どうしたものか……福音は弟を怪我させた仇ともいえる存在……が、いたとして協力してくれるのかどうか……)あぁ、あんたも弟さんが無事でよかったな……それにしてもこれからどう処理をつけるんだ……?ずいぶんな大問題だろ、これ……?」
カイジがヴァルトに言ったように今回の事は大事件……なぁなぁで済ませられることではない……
「正直私もどうなることか全く読めない……各国の動きもいまだ見られない……水面下の情景はどうなっていることか……福音はIS委員会の手によって精査された後に、どうなることか……」
「あんたとしては恨み言とかないわけ……?福音は弟をやった仇みたいなもんだろ……?」
「もちろん思うところはある……だが、今回は裏にいる人間の事も知っているし、出撃を許可したのも私だ……結果的には回復しているしな……一方的に恨むというのもお門違いだ……全くあいつは何を考えているのか……」
「奴に関しては頭の痛い所だな……で、物は相談なんだが……(正直協力するメリットってものがないんだよな、こいつに……そこをどう説明したものか……)」
「一体どんな厄介ごとを持ち込もうというのだ……?私は逃げ出したいのだが……」
カイジからわざわざ自分に持ち込んで来る……何を考えているかは分からない……
が、確実に厄介極まりなさそうな事である……出来れば関わりたくないが……
「福音の処遇について、どうにかしてやりたくてな……あんたもさっき言った通り、今回の犯人は束博士だ……だが、アメリカもそれを言い立てることは出来ない……相手が相手だし、証拠もない……となると、アメリカの出方を考えれば解体が有力なところか……?可能な限り調査をされないためには……それ以外の方法はないだろうからな」
精査されても暴走した証拠が残っていない……となると、パイロットに責が問われるか……
とはいえ精査すればパイロットによる行動ではないことが判明する……
そうなると全くもって原因不明……解体か凍結以外の道はなくなるだろう……
ならばアメリカは解体の道を取る……凍結となれば自国からコアが一個失われるのだから……
そう考えると原作における凍結という選択肢は一体何の意味があるのか……
一種のアメリカに対するペナルティのようなものだったのだろうか……
原作世界に他の国の責任追及するなんていうシビアな考えはなさそうだが……
「まぁ、それが妥当なところだ……お前が気に掛けるところがあるか……?犯人が束と分かっていて、それが責められない……故にアメリカも濡れ衣というか、福音のパイロットが処罰されるのは理不尽ではあるが……(待て、こいつはコアの処遇について話していないか……?そもそもパイロットについて話していない……パイロットが不運だから、何か手を打ちたいというなら分からないでもない……そうだとしても、自分と関係ない相手のために……人道的な意味合いで動くか……?デュノアのこともラウラのことがあるから救ったというくらいだ……積極的に動く理由が全くなさそうだが……)」
千冬が先に言った福音という言葉には機体だけでなくパイロットの事も含まれている……
むしろ千冬が先ほど言った福音の事……それは機体よりもパイロットの事である……
「(やっぱりどうにも納得いってないか……まぁ当たり前だよな、俺が救う理由がまるでねぇもんな……ISコアに頼まれたから、とでも言ってみるか……?)」
「もしお前が福音の事を救いたいとして、一体どうするというのだ……?流石に奴がやったことは消しきれるものではない……各国家も今回の顛末はすでに知っていることだろう……」
「(今回の事件、演習を装うにしても重傷を負った織斑がいたんじゃ演習には出来なかった……あの場を衛星で見ている奴がいたかいないかは分からないが……いたとして考えて、演習ってことにしたら確実にそのことを突っ込んで来る……だが、もうそれを突っ込んできたとしても……織斑はすでに怪我一つ負ってない……ほかに各国が突っ込んでくるかもしれない部分……自国の代表候補生をっていうのは特記事項で押し通す……建前としての部分、どの国家にも所属しないって文言……いわばIS学園所属として……今回行ったのはあくまでデータ採取……実戦形式での各機のデータ蓄積……アメリカとしては乗ってきやすい理由のはず……各国もそれを否定しきることは難しいはずだが……)今回問題となっている部分……暴走して日本の領海内に侵入したこと……男性操縦者の内の1人に重傷を負わせたこと……さらに各国の代表候補生とその機体を危機に陥らせたこと……民間人にも犠牲が出るかもしれないところだったってこと……おおよそこんなところだな……?」
「特に異論はないが……」
カイジ、千冬の意見は一致……今回の問題の争点となるべき部分……
「一つ目の領海内侵入……これは日本政府がひた隠しにした……それによって公には存在しないことになっている……二つ目の男性操縦者の怪我……これも織斑が完治したことによってなかったことに出来る……三つ目の各国の代表候補生のこと……これもあくまで実戦形式での演習故に一定の危険はあったが、絶対防御でカバーできる範囲内だった……」
「今回の事をあらかじめ組まれていた演習にしろと、そう言うのか……?」
千冬とてカイジの言うことは察知……たしかにそれで押し通せば福音の責任問題はなくなるが……
「正直かなり厳しいお願いだ……俺としても急場しのぎで穴がないとは言い切れねぇ……そもそもあんたにそうする理由もない……これをしてしまえば、あんたの弟の怪我がまるでなかったことにもなっちまう……」
「……私自身の、感情はどうにかできる……だが、他の関係者たちは難しい……」
「っむ、そいつは……」
今回の事件の関係者……それはなにも千冬とカイジに一夏、福音だけではない……
そこには各国の代表候補生……鈴、セシリア、シャル、ラウラの4人と箒……
「お前は言えるのか……?あいつらに、さっきの事が茶番であったと……演習だったという事にすると……お前の呼びかけで、あの鉄火場に残った者たちに……」
「それは……奴らの尊厳を踏みにじることになる……」
彼女たちは誇りと誠意をもってあの場に残り、任務を完遂したのだ……
今回の事を暴走事件ではなく、演習にする……それは彼女たちへの侮辱に他ならない……
「そうだ……もちろんお前自身が呼びかけなくても、だれからともなく残ったかもしれないがな……私もお前が言うことが分からないわけではない……実際の始まりはいわば茶番であったし……犯人を知っている私やお前からしてみれば……責任をただ福音に押し付けるのは決して褒められたことではないだろう……」
とはいえ、彼女たちに事の真相を伝えると言っても難しい所である……
1人は実の姉であるし……何よりISの生みの親でさえある……
そして、自分たちは犯人を知っていた……それを隠し欺いていたことにもなる……
実にシビアかつ、デリケートな問題であった……
「……」
「お前の中に、答えが明確に出たのなら……それを聞いたうえで動きを決めよう……とはいえ、時間は残されていないがな……」
今回の事は早急に、迅速に事へ当たる必要がある……今は各国共に出方を窺っている状態……
企み事をするならば……先んじて行動をしなければならないのだから……
そして……そして、カイジは……