単純に姦しい、女三人よればなんとやら、で使ってるんだけども。
今回はセシリア・ラウラ・シャルロットの三人娘です。
シャルも本編で助かったのでこうして絡ませることが出来ます。
では、どうぞお楽しみ下さい(この話では作者のキャラのイメージが強く出ております。僕の、私の、○○はこうじゃない!と思う方はそっ閉じしてください。
セシリアの心中より物語を始めよう……!
今日はデュノアさんがどうしても行きたいというカフェがあるとのこと……
ゴルフ場の脇を通り抜けた先にその店はありましたわ……
遠目に見えるのは日本の灯篭、というやつでしょうか……?
それに、よく分からない像……石造りの小路……よく分からない看板……
日本のホラー……怪談というべきかしら……また違った装い……
遠目に見ても怪しさ全開……空いているのかどうかすら怪しいですわ……
車を降りて店の前へ立つ一行、今日はセシリア・ラウラ・シャルロットの三人娘!
「ほら、ラウラ。歩きにくいってば、離れなくちゃ」
「そ、そんな無慈悲なことを言うな!」
「意外ですわ、ラウラさんがこういったものが苦手なんて」
ラウラはこの中でも最も鍛え抜かれた、いわば戦士、軍人である。
そのラウラがホラーが苦手というのは不思議なものであった。
「駄目なんだ、得体の知れないものというのは……しかも奴らには攻撃すらできず、一方的に呪い殺されるというではないか!」
「そういう、理由ですのね」
「ラウラらしいと言えばラウラらしい、かな」
生きている人間相手なら教官でも来ない限り、そうそう遅れは取らないラウラ。
しかし、幽霊は別。戦う前から負けと決まっているようだ、彼女の中では。
「う、うぅ……それにしてもこれはどう見ても閉まっている、今日は休業日だ!」
「うーん、駐車場の入口のチェーンが外されてるから空いてるはずだけど」
筆者が行った際はその後の予定もあり早めに出発した。存外道路が空いていたため、開店時間とほぼ同時につくことになり、入口のチェーンがかかったままであった。そこへ店主がちょうど出てきて開けてくれたので、ためらいなく店内に入れた。しかしそうでなければ……
「明かりはついていないんですのね、とりあえず進んでみませんこと?」
「ほら、ラウラ。逃げようとしないの!女は度胸!だよ」
「ま、まだ心の準備が!無理やり引っ張るな!なぜだ、なぜ私が力勝負で負けるのだ……!」
ずるずると駄々っ子を引っ張るように連れていかれるラウラである。だが、ラウラが特別臆病という訳でもない。いや、臆病ではあるのだがこの店の趣を見ればきっと分かる。残念ながら写真は用意していない。ここは初見で行ってこそだからだ。なので、折角の楽しみをふいにするような真似はしたくない。言葉で表現はするが、写真として見てしまうとやはり駄目なのだ。
「っひぃ!」
突然カコンッ……と物悲しい音が響き渡る。思わぬところから聞こえてきた乾いた音。
それに思い切りビビるラウラ、咄嗟にセシリアにしがみつく。
「正体はこれですわ、ラウラさん。竹の筒に水が入っていって……それが重みで動くようになっていますわね」
「ふ、ふん。こけおどしもいいところだったな!」
「あはは、鹿おどしって言うんだったかな。今のラウラは小鹿みたいになってるから、ちょうどいいかもね」
足をプルプルとさせながらセシリアにしがみつくラウラ。その姿はまるで生まれたての小鹿のようである。因みにここの鹿おどしは水をためているのがジュリアン坊や。分かりやすくいえば小便小僧……勿論普通に石臼で作られた鹿おどしもある。
「この仏像の周りにお金が置かれているのはなんなのでしょうね?」
「さぁ、これは僕もよくわかんないや。でもなんとなく、置いておこうかな」
「不可思議な風習があるものだな」
筆者も詳しいことは本当に知らない。知っている人がいたら教えて欲しい。
「ここから先へ進むのはなんとも、勇気がいるね」
「シャルロットさんが先導してくださいましね」
「もしかして、セシリアも怖かったり?」
「ラ、ラウラさんがしがみついてて、動きにくいからですわ!」
どう見ても嘘なのは見抜いてるシャルロット。くすくすと笑いつつ、先へ足を進めると
「う、うわぁ!」
「なんですの!?」
「な、なにがあった!」
入口の扉へ向かう最後の一直線、そこの段差は降りた途端沈み込む床になっているのだ。
突然の事で驚いたシャルロットはつい悲鳴を上げた。
「あ、あぁ、ごめんね。床が急に沈んだからびっくりしちゃって」
「やっぱり、シャルロットさんも怖いんではないですの?」
驚く人を見ると逆に冷静になる、そういう経験はないだろうか?今のセシリアの状態が正しくそれである。誰でも、急に床が沈み込めば驚くものだ。それがおどろおどろしい入口に向かう道であればなおさらである。足腰の弱い方は気を付けて欲しい。特に足元には……
「これは卑怯だよ。まったくもう!」
照れ隠しのためか少し怒って見せ、先へと進んでいくシャルロット。これも常套手段といえよう。
「これはばね式で出来ているのだな。ふん、仕組みが分かればこんなもn」
「いらっしゃいませ」
「っ!!」
先へ進むシャルロットが扉を開けると同時に機械音声がお出迎え。
強がって見せているところへの不意打ちを喰らい、声もでないラウラであった。
「シャルロットさん、からかったわたくしが悪かったですから、ラウラさんのことを」
「あ、あぁ。ごめんね、ラウラ。僕も知っていたわけじゃないし、おどかすつもりじゃなかったんだよ」
きれいな赤い瞳はたっぷりの涙で歪んでおり、こぼれだす寸前であった。
店主の話によると入口の扉に入るまできゃっきゃと女性の声がしていたかと思えば、扉を開けたときのこの機械音声でびっくりして、店に入らずに逃げ帰っていくことも稀によくあるそうだ。よく経営が持っているものだと感心する。この機械音声は別になんのことはない、普通のファミレス、COCO'Sなどで使われているものと同じに聞こえた。人の心理状態というのは普段聞きなれた、怖くもないものを怖くさせるのだから面白い。
さて、それでは店内に入っていこう。外とはまた一線を画すおどろおどろしい内装となっている。ラウラはこの店内へ入れるのであろうか……
「うわ、店内薄暗いなぁ。昼か夜か、全くわかんなくなっちゃうね」
「本当ですわね。足元に十分注意しないとこけてしまいますわ」
「もう帰りたい……」
入ってすぐ左手はお手洗い、前へ進むとカウンター、テーブル席のある場所へ行ける。
しかしこの道がまた狭いのだ。人が一人通るのがやっとで、筆者も体を細めて入ったものだ。
「お、入ってこられましたね。ずいぶん驚いとってだから入らずに帰って行かれるかと思いましたよ」
「やっぱり、入れずに帰っていく人って多いんですか?」
「多いってほどではないですけど、飽きない程度にはいますよ」
「わたくしもラウラさんと二人だったら、帰っていたかもしれませんわね……」
「私は今でも帰りたいぞ!」
ラウラはすぐそばにある生首を見つめていた。
見つめたくもないのだが、目をそらせば襲ってきそうで顔を背けられない。
「あぁ、その子ね。たまに髪が伸びるから切ってあげないといけないんですよ」
「あ、あわわ、の、呪われているんだ。やっぱり呪われて……」
「店主さん、手加減してあげてください」
シャルロットには店主の顔が見えている。驚かせるための冗談であることは見抜いていた。しかし、ラウラはそうではなかった。嘘は嘘であると見抜けないと(このカフェを楽しむのは)難しい。どうにも信じきってしまい、余計目をそらせないラウラであった。
「お嬢ちゃん、冗談さ、悪かったよ」
「こ、この私がそんな非科学的なことを信じていると、そう思っているのか!」
「(やっぱりラウラは可愛いなぁ)」
「(お人形のような瞳にそんな涙一杯で強がられましても……)」
最早尊厳はずたぼろなラウラだが、更に止めとなるようなそんな一撃を喰らうことなど露知らないことなのであった。
頑張れラウラ、めげるなラウラ……まだ恐怖のお化け屋敷喫茶は入ったばかりだぞ……!