成層破戒録カイジ   作:URIERU

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福音編を謎のまま終わらせて、アニメでいうなれば2期に入りたい。


酒蔵探訪録チフユ 中編

西條駅からISを使って数秒……白市の町並に辿り着く一行……

西條から歩いて行く距離ではない……電車を使うか、車を使うか……専用機持ちならISを使おう……!

 

「おぉ、これが古き日本の家屋!海外とはまた違った趣があるな!」

 

漆喰で塗り固められた壁……瓦葺の町屋のある通り……それらを物珍しそうに眺めるラウラ……

 

「そこらへんのことはここにいる教官殿に聞けばいい……!実体験を交えて詳しく教えてくれるだろうよ……!」

 

「ほう、この私がそこまで年増に見えると言うのか……全くもっていい度胸だな、伊藤……何ならこの場でISの実戦教練をつけてやってもいいぞ……?」

 

千冬はせいぜい二十歳前半くらいか……まだまだ年若い、乙女と言えるかは不明だが……

 

「はは、いくらあんたでもこんな市街地でISを武装展開させたら言い訳出来ないだろ……?」

 

ISはどうお題目を並び立てても……綺麗ごとを述べようとも、とどのつまり兵器……

 

「つまり、生身を希望するのか……?せめてISの絶対防御があれば……冥土に行かず済んだものを……」

 

例え生身であっても……カイジ10人を相手にして……手傷一つ負わない千冬である……

 

「いやいや、ここは俺がIS……あんたは生身でいいんじゃないか……?」

 

「条件さえ整えられれば……お前たちひよっこがISに乗っていようが……生身でも負ける気はしないがな……」

 

閉鎖された空間でISの機動が制限……相応の装備さえあればIS相手でも勝てる千冬……

最早半ば以上人間をやめているとさえ思える破格のスペック、身体性能……!

 

「それが冗談に聞こえないのが洒落にならねぇ……」

 

「それは事実だ。ドイツに教官が赴任されたころは」

 

「ラウラ。最早過去の事、その話はいいだろう……さて、ここが木原家住宅だ……中にも入れるから入っていくとしよう……」

 

旧木原家住宅……400年も昔、江戸時代の初期に建造されたとされる町屋……

酒造や塩田業を営み発展していったとされる、豪商ともいえる商人の家……

しかし、木原家の家紋とされる梅ヶ唐花……その由来はさらに500年古く……

平賀氏が壇之浦の戦いで平家の赤旗を射切った……その功績により後鳥羽院より賜ったもの……

それが平賀氏より、木原家に伝わったものとされている……ただの商人とも思えないところだ……

特に時代背景……士農工商という身分制度があった江戸時代なら尚のことである……

 

「このように木組みだけの家とはすごいですね。それが400年たっても朽ちずに残っているとは」

 

「ここの他にも城跡や寺も数多く残されている……歴史的なことを学ぶにはいい場所だ……」

 

「(江戸時代の博打といえば、丁半博打……現在でもヤクザの経営している丁半博打の屋敷ってのはあるらしいが……流石に行ったことはねぇな……)中々風情があっていいもんじゃねぇか……」

 

白市には木原家住宅の他にも見どころはたくさんある……全体的には商家として栄えたところが多い……

立地的には広島、呉、竹原、尾道……それらの近郊、交通の要衝としての……

市場、宿場町として栄えていたからであろう……

 

それらの観光地を堪能した西條へと戻った一行……再び西条市内を練り歩く……

 

「それにしても通るところどころに、酒蔵があるんだな……」

 

「この1km四方の中に6,7件の酒蔵があるのだ……見つけないことの方が難しいだろうな……」

 

「酒蔵というところには大きな煙突があるのですね、教官」

 

「あぁ、ざっと見渡してもいくつか煙突が立っているだろう……あれは酒造りに必要な酒米を蒸すためのものなのだ……最も現在はボイラーを使っているから、必要ないそうだがな……」

 

実際酒蔵巡りをするだけなら……地図などなくとも高い煙突を探し回るだけでもよい……

煙突にはその酒蔵名も……銘記されていることが多いのだから……!

 

「それでも取り壊されずに、残っているものなのですね」

 

「西條の酒蔵の中で最も高い煙突……福美人酒造の煙突は文化財にも指定されている……レンガ造りで特徴的な、ほらあそこの煙突だ……」

 

「目立つな、とはいってレンガ造りの煙突は多いようだが……」

 

「お前にのm……あそこのは西條鶴の煙突だ……あれも同様にレンガ造りで文化財に指定されている……というか、ここらの酒蔵の煙突や建屋は前大戦より前から残っていて……文化財に指定されているものが多い……」

 

これらは古く、大正時代から残存している建築物もある……これらの施設が戦禍に焼かれず……

今もなお堂々と聳え立っていてくれることは……非常に喜ばしいことである……!

 

「戦争は何もかも、歴史すら焼いていきます。さっきの木原家住宅などがあった白市を見ても思いましたが……戦敗国でもある日本にこれだけ綺麗な街並みが残っているのは素晴らしいことですね。ドイツにも戦禍を逃れたバンベルグという街がありますが、あの街並みはとてもきれいなもので、何故かは分かりませんが、懐かしいものを感じることができる。冷たい鉄の子宮から生まれた私のようなものでも……」

 

枢軸国側であるドイツ……ドイツは戦禍によって焦土と化した……

が、そのいくらかはネロ指令……ヒトラー自身による、自国の焦土作戦によるものだが……

日本は陸続きになっていないのがせめてもの幸いか……本土はほとんど空襲で焼かれたのみ……

連合国の兵士が実際に上陸しての地上戦……そうなったのは沖縄くらいのものである……

 

「人が温かくいられるのは……人の腹から生まれたからじゃねぇ……例え人の腹から生まれようとも……そこに大切なものをすべて忘れてきたとさえ思える人間だっていた……だから、そんなところで卑屈になるな……」

 

「そうだな。私が温かく生きていられるのも師匠の手を取ったからだったな!」

 

ラウラにとってはそこが分水嶺……正しく人生の岐路……転機でもあった……

 

「恥ずかしい言い方をするな……さて、そろそろ小腹も空いてきたところだな、先生……?」

 

「時間もいいし、腹具合もちょうどよい塩梅だな……もうそろそろ見えてくる白壁造りの建物が、今から行く本庄という割烹料理の店だ……」

 

「割烹料理というのは初めてです。日本の料理は凝った、小綺麗なものが多いので楽しみです」

 

「そうだろうな、この店は内装から料理までこだわっている……それらを目で楽しみつつ、一杯やるのが最高だ……」

 

店の造りから、客室の細部……そして料理に至るまで実に綺麗に出来ている……

 

「(あんたの場合、酒が8割だろうが……どうにかして、一杯やる算段を考えたいところだが、どうしたもんかな……)そういやISに飲酒運転ってあるのか……?あるならあんたも……」

 

ここはひとまず道連れ作戦……千冬が飲めない理由でも探してみるが……

 

「ISが一般の道交法で語れるわけあるまい……言っておくが、飲酒運転を奨励などするつもりは断じてないからな……?」

 

作戦ならず……ISには当然様々な制約があるが……その項目に飲酒運転という文字はない……!

飲酒運転だめ、絶対……!

 


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