またまた誕生日回です。
誰の誕生日回なのかはお察しかもしれませんが……(苦笑)
今回の時系列ですが、前回の羽入ちゃんの誕生日回と同じ時系列になります。
ある意味、前回の続きになります。
視点が色々変わったりしますが、お楽しみください。
祝え! 惨劇の運命を乗り越えた少女と奇跡の魔女の生誕の日を!!
それではどうぞ。
(いや~……楽しかったな)
羽入の誕生日を終えた穹は、自宅に帰路に付いていた。
尤も普通の誕生日をやるのかと思ったが、普通ではなかった。
例えば……
『よ~し! 折角だから、羽入を王様にした中心でやる王様ゲームをやるよ!』
『おっ! 面白そうだな! みんなでやろうぜ!』
部活メンバーの部長の一声と口先の魔術師の盛り上げにより、少々変わった王様ゲームをしたり……
『……おっと、さくたろうストラップが……』
『はぅ~♪ かぁいいよー♪ お持ち帰りぃー♪』
さくたろうがディフォルメされたストラップを穹が落としかけた時、可愛いものには目がない少女がうっかり、穹に向かって不可視の攻撃
(……人?)
境内付近を少し進んだ場所に人影があった。
暗くてあまり視えないが、近づくにつれてその人物の姿が確認できた。
「…あれ? 梨花ちゃん?」
「……ふえ? ……そ、穹!? 」
穹の声に気づいた少女、
同時に驚きたいのは、こっちなんだけどなーと内心思った穹だった。
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……なんで梨花ちゃんがここにいるんだろ?
さっきまで羽入ちゃんの誕生日会をみんなで祝ってたのに。まさか……梨花ちゃんのドッペルゲンガー?
(そんな訳ないか……)
そう思いながらも彼女を見る。肩紐型のライトグリーンで胸元にスリットが入ったワンピースを着て、ベルンと同じ綺麗な蒼い髪、夜の為か一層より魅力が引き立っていた……
「そ、そんなに見ないで……は、恥ずかしい……」
「……ごめんごめん。梨花ちゃんがいつも以上に可愛くてつい……」
「か、可愛っ……!? み、みぃー……」
聞かれた事に対し正直な感想を言っただけなのに、もじもじし始めた梨花ちゃん。再び彼女が落ち着き、さっきまで家にいたのにどうしたのかと聞いたところ……
「ぼ、ボクと……デート……夜のデートしてくださいなのです!」
「はい喜んで」
デートのお誘いだった。
なんで珍しく即答出来たのか? 僕でも分かんなかった。
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夜の雛見沢。
それは星空がキラキラして都会の夜とも見劣りはしない美しかった。
僕達2人は、手を繋ぎながら夜の雛見沢を歩いていた。
(……って、なんて例えを僕はしてんだか……)
ふと隣を見てみると……
「……っ! み、みぃ……」
僕が視線を向けている事に気づいたのか、梨花ちゃんは視線を逸らしてしまった。だけど、手を繋いでる力を強めてきた。
そういえば、ベルンも最初はこんな感じだった気がする……
「梨花ちゃんはどこか行きたいところとかある?」
「……ボクが今から行きたいところを言ったら引いたりしないのですか?」
「まぁとりあえず言ってみてよ」
すると彼女は頬を赤くしながらこう言った。
「……ボクは穹と
その言葉を聞いた僕は即座に意味を理解した。
彼女と恋人同士になったのは、昭和58年の6月を越えた夏休み。花火大会が行われる事になり、梨花ちゃんから誘われて一緒に観に行った時に彼女から告白された。
……その後は梨花ちゃんに押し倒されて色々したのは今でも覚えてる。
「……あーじゃあ……その、僕も久しぶりだから……梨花ちゃんを上手くエスコートできるか分からないけど……行こっか?」
「っ!! はい! ボク……凄く凄く嬉しいのです」
その時の彼女の表情は、月の光に負けないくらい素敵な笑顔だった。
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「んっ……」
まだ眠いと思いながらも、ゆっくりと目を開ける。
目の前には穹が本を読んでいた。
「……あ。ベルン、起きた?」
私が起きた事に気づいたのか、穹が声をかけてきてくれた。
正直に言ってまだ眠い……けど彼がいるので、私は自分の身体をゆっくりと起こす。
「その本、どうしたの?」
「…これ? フェザリーヌに前の本を返すついでに新刊も借りたんだ……って痛い、地味に痛いから噛まないでよ」
「……
アウアウの名前を出た瞬間、私は穹の首元に噛みついた。一応言っておくけど甘噛み、好きな人に対して本気で噛みついたりしないわよ……
穹が望むなら本気でしてあげてもいいけど♪
「それで? アウアウと何を話してたの?」
「……んー? ベルンは可愛いよねとか、ベルン可愛いよねとか、ベルンもっと甘噛みしたいならしてもいいよーとかそんな話」
……絶対嘘ね。
それから露骨に可愛いって言わないでほしい。私の理性が持たなくなるから。
私の思ってる事が分かったのか、穹は口元にうっすらと笑みを浮かべながら私を見た後、再びアウアウから借りた本を読み始めた……
「ん……」
彼の隣から後ろに回り込み、覆いかぶさるようにして抱きつく。
…これ、なんていう抱きつき方だったかしら? 忘れちゃったけど……
私が抱きついても穹は嫌な顔はせず、私が今やってる行動を受け入れてくれた。これで拒否されたら、かなりショックだけど……
「…ねぇ、ベルン」
「なあに?」
「こういう雰囲気の中、こんな事言うのは空気読めてないって言うかも知れないけど敢えて言ってもいい?」
「一応聞いてあげるけど、なあに?」
「……服。着なくて平気なの……って、やっぱり地味に痛い……」
「……
聞かれる内容は予想はしてたけど、実際に言われるとやっぱり恥ずかしい。
だから私は羞恥心を少しでも隠す為、穹の首元に甘噛みをする。ついでに抱きしめる力を強める事も忘れない。
(私がこんな事をするの……穹だけなんだから……)
穹の温もりを感じながら、自分が想ってる事を遠回しに彼に伝える為……
「みぃ……私がなんでこんな事すると思う?」
「…………」
耳元で息がかかるくらいの小声で言った。
その時の穹は、何も答えてくれなかったけど、代わりに手を握ってくれた。
読んでいただきありがとうございます。
最後はベルンの視点にしてみました。
誕生日回、無事に間に合って良かったです……(前回の事がある為)
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。