Fate/Zero 雨生くんの聖杯戦争   作:筆折ルマンド

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こんにちは米粉大福と申します
今回が三作目になりますが、前作前々作は真面目に書けていなかったので今作こそはきちんと小説したいと思います


プロローグ

アインツベルン城

 

ピー ガガガガガガ

 

吹雪荒ぶ中にぽっかりと浮かび上がる白亜の城

まるで時の流れがぱったりと止まっているかのようにゆらめく火に照らされた洋館の一室、その雰囲気になんともマッチしたいかにもな風貌の古風なプリンターから何枚かの紙が印刷されている

部屋の中には男女合わせて二人、男性がプリンターの前に座り、女性はそれを後ろから覗き込んでいた

 

「切嗣、それは?」

「これかい?これは今回の聖杯戦争に現在参加すると思われる魔術師をピックアップしたリストだよ。アイリも一緒に見るかい?」

「ええ」

 

なんとも主人公然とした髪型をした男 衛宮切嗣が印刷されたばかりで仄かに熱を持った紙の束をとる

 

一番上の紙に載っているのは金髪オールバックの死亡フラグ

 

「まず、一人目…ケイネス・エルメロイ・アーチボルト、時計塔の実力者だが、典型的な魔術師。たしかに優秀だ、けど言い換えればただそれだけ、今まで僕がやりあってきた連中よりは数段手強いだろうけど、行動そのものはそう大して変わらないだろう。正直に言ってしまえば恐るるにたらない」

絶対の確信を持って紡がれる切嗣の言葉にアイリスフィールは安堵の笑みを浮かべる

 

次の2枚目はなんともうっかり冬木を滅亡させる存在を作っちゃいそうなダンディな男だった

 

「遠坂時臣、こいつもアーチボルトとさして変わらないが御三家の一人だ。特に今回の聖杯戦争には並々ならぬ気合いを入れているらしい」

「へぇ、…勝てるわ…よね?」

アイリスフィールが切嗣の顔を少しだけ心配そうな顔をして覗く

「もちろん、彼もさっきのと同じごく普通の魔術師だ」

 

3枚目と4枚目を同時に出す

 

「むしろ、彼の弟子だと呼ばれるこの二人の方が厄介だ」

出された2枚の紙を流し読んでアイリスフィールが聞く

「弟子?その遠坂って人が師匠で、その弟子なのになんでこの二人の方が厄介なの?」

「こっちの聖職者の方、言峰麻婆は中略(執着心が無くて何考えてるかわかんない)。こういう奴は…危険だ」

 

切嗣の真剣な声色に自然とアイリスフィールも緊張感を帯びる

 

「そう、切嗣が危険視するのも分かったわ。でも…じゃあ、こっちの人はどう危険なのかしら?」

 

アイリスフィールが指差したほうの紙に載っているのはいまだ学生ほどの歳であろうオレンジ色の髪をした少年だった

切嗣はその紙を眺め少しだけ顔を歪める

 

「雨生達人、彼はある意味最も警戒すべきかもしれない…」

「どういうこと?」

「情報によれば彼は魔術にそれほど執着していないようだ。そして彼の使う魔術も僕のやり方とはかなり相性が悪い。言峰麻婆のほうは思考が読めないが、彼の場合は純粋に分が悪い」

 

切嗣が危険視する人間が増え、アイリスフィールは一層心配を募らせる

 

「そう…でも、でも切嗣なら、勝てるわよね?」

「あぁ、勿論、勝ってみせるさ」

 

切嗣はその緊張と心配をほぐすためにもそう断言してみせた

一旦心配したアイリスフィールだったが写真の中で朗らかな笑みを浮かべるその少年が魔術師殺しである切嗣を害せる程の実力を持つとは、箱入り娘だった彼女にはどうしても見えなかった

 

 

 

 

冬木市

 

冬木市はまだ雪も降る季節で厚着は欠かせない

天気予報は晴れだと言ってもどうせ寒いんだから変わらないだろうと学生や社会人は愚痴をこぼす

冬晴れの雪降り積もる通学路での帰路の途中

 

遠坂さんちの後継者問題も俺と雁夜さんの全力の吹き込みにより良い方向に纏まった。

 

厚手のコートに身を包んだ少年はそう自画自賛しながら学校帰りをニヤニヤとニヤつきながら満喫していた。

今の彼には刺すような寒さもいつもなら鬱陶しい分厚い雪もとても楽しく軽やかに感じられた

 

ざくざくざくっと雪を踏む音が一気に増える

ビュッと風がなり、少年は僅かに顔を向けようとする

 

「とう!」

 

いつの間にやら彼の背を取っていた少女は正しくいつの間にか竹刀を目一杯振りかぶっていた

少女の振り上げた竹刀は少年が気付いた時にはもう振り下ろされ始めていた

 

勿論避けられるはずもなく

 

「あで」

 

竹刀は見事に少年の頭を打ち据えた

 

「何ニヤついてんすか〜?雨生先輩は〜、何かいいことでもあったんすか〜?」

 

後輩口調の(というか後輩の)少女はさっと少年の前に立ち竹刀を肩に担いで言う

 

「あいてて、ん?いいこと…いいことは…まぁ、あったな」

「ほう、では申してみるがいいです!場合によっては偉い偉いってしてあげますよ!」

「いらないよ、あー、そうだな、うん、悪いクソジジイからか弱い女の子を人知れず守ったってとこだな」

 

は?何言ってんだコイツ?後輩少女の顔は一瞬真顔になり、声も出さずに正確にその意を伝えた

 

「そ、そうっすか〜、あー、エライエライー」

 

少女が伸ばしてきた手を即座に払いおとす

本当に痛いのか果たしてオーバーリアクションなのか、はたき落とされた手を少女は大事にさする

 

「痛いっす」

「うるさい、無理矢理撫でようとなんかしないでいい」

「そいつは失敬でした、でも先輩も悪いっすよ、そんな面白くない冗談言うんですから」

冗談じゃないんだよなぁ

 

達人は確かに少女を救っていたのだから

 

「ん?何か言ったっすか?」

「いや何も」

「そっすか」

 

信じて貰えないからいいさ、達人はそう思った

 

 

 

 

「おーい、達人くーん」

 

少し離れた公園の前にいる人影が達人たちに声を掛けた

 

「おー、雁夜さーん」

「誰なんですか?」

「女の子を助けた時の共謀者」

 

少女は少し達観した顔つきで

「…そうっすか」

信じてないな

 

事実、信じてなかった

 

「達人くーん」

 

ファーのついたコートを着た青年が手を振っている

手を振っていない方には割と有名なお菓子屋さんのロゴが入った紙袋が握られている

 

「あー、ごめん、なんか話があるみたいだ。じゃあ、また明日な」

「え」

少女は唐突な話で動けない

 

「そんじゃな」

そんなことも知らず達人は駆け出す

 

「ぁ…」

少女は少し残念がったがすぐに気持ちを持ち直し

竹刀を持った手を振って

 

「いいっすよー」

声を張り上げる

 

「妄想談義に花を咲かすがいいですよー!」

本当なんだってー

達人が走りながらも思わず言った声は少女には届かなかった

そして

「ちぇっ、先輩はいけずっす」

少女の声も達人には届かなかった

 

 

 

公園

 

「良かったのかい?置いていって」

間桐雁夜は心配そうにそう尋ねた

 

「いいよ、いつものことだし」

「いつものことねぇ」

 

雁夜にほんの少しだけ哀愁が漂う

彼の目にはどこか既視感があった

もちろん今作の主人公達人はどこにでもいる普通の朴念仁であるためそんなことには気づかない

 

「で?何かようですか?」

「何かようというか、そろそろアレが始まるだろう?その前に一度顔を見ておこうかなってね」

「そうですか」

 

ふっ と達人が意地の悪い笑みを浮かべる

 

「そんなに桜ちゃんのことが心配ですか?」

的を射た と達人は思った

 

「いや、桜ちゃんのことは心配していないよ。君と君の家族を信頼しているからね」

「あ、そう」

 

残念ハズレ

 

「むしろ心配なのは葵さんと凜ちゃんのほうだ」

 

当たらずとも遠からず、だが達人は意外だと思った。桜ちゃんよりもその二人を心配するとは

けれど、すぐに思い直す

彼は愛した人の子供だから命を掛けたのだ

なら、愛した人自身と本来のルートで命を掛けた方とは別の方にもその思いは向けられて当たり前なのだと

 

しかし

「どう、心配なんですか?」

そこまで心配する要素は無いのではないか?

 

「君も知っての通り、間桐は俺以外にまともに魔術師としての才のある子供はいない。既に衰退し始めて何世紀も経って間桐はもう死に体だ」

「ええ」

「身内からはもう系譜を続けられないと悟った臓硯は遠坂を頼ろうとした」

 

本来なら遠坂桜は間桐桜になり、ラスボス系ヒロインになるべく間桐臓硯から地獄の英才教育を受けるはずだった

 

「ところが俺と雁夜さんによって内情を洗いざらいぶちまけられていたおかげで間桐行きは真っ先に否定され」

「虚数属性の魔術師である君の後継者として桜ちゃんは預けられることになった」

 

そう、この世界では間桐雁夜は聖杯戦争に参加しない

間桐桜は転生者の虚数魔術師「雨生達人」の家の養子となり、雁夜の戦う理由はなくなっていたのだ

 

故に

 

「だから、臓硯にはもう後がない」

 

間桐臓硯には後がない

 

達人にも理解できた

誰にでも簡単に理解できる

後の無い狂人など恐ろしくないわけがない

 

「…はい」

「くれぐれも気を付けておいてくれ。あの妖怪じじいは何でもやるだろう。俺はそこが心配なんだ、そう、やけになった臓硯が葵さんや凜ちゃんを攫いにくるんじゃないかって」

「それは…」

無いとは言えない

 

間桐桜がいたからこそ、次の切り札が有ったからこそ第四次聖杯戦争を間桐臓硯は流したのだ

だが、その切り札は無い

もはや臓硯はその身その腕一つで聖杯戦争を勝ち抜かねばならなくなった

間桐臓硯のことだ

きっとどんな手でも使うだろう

トッキーを暗殺し、遠坂葵、凜を奪ってしまうことも100%ありえないとは言えない

…遠坂だから

だから

「可能性はあります」

ありのままを告げる

「…ッ」

でも

「でも、俺が守ります」

達人の目には確か堅い意志が見られた

彼とて覚悟無しに原作に首を突っ込んだ訳ではないのだ

 

「ありがとう、遠坂時臣を俺は信用できないけど、君なら信用できる。どうか二人を守ってやってくれ」

雁夜の目からも強い意志を感じられる

 

雁夜だって遠坂葵、凜、桜を誰も不幸にさせないために達人の策に乗ったのだ

達人なら二人を任せられる、雁夜は本気でそう思っている

 

「はい」

そして達人もまた雁夜の思いに本気で応えようと思っていた

ここに男の約束が交わされた

 

お前ら親でも家族でもねーだろというツッコミは野暮である

トッキーを信用しろとかゴール直前に地雷原のあるレースをするようなものだからだ

トッキーは爪が甘ったるいから仕方がない

 

 

 

 

さて、

 

冬でも公園には子供がいるのは当たり前で、なら勿論保護者もついているはもはや自明の理であり

つまり

「おかぁさんあの人たち何話してるのかなー」

「しっ、見ちゃいけません」

 

 

 

二人の熱い約束はお決まりの台詞によってはたから見て、どうにも締まりの悪い様相を呈していた

 

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