空白の3日間
サーヴァント召喚からの3日のことであり、この間は雨生龍之介と青髭がこっそりヒャッハーしている以外、これといった戦闘イベントもなく、魔術師を含めたほとんどの人々にとっていつもの冬と同じように当たり前に過ぎ去っていく(イリヤとケリィもいちゃいちゃしてたりする)
ただしコレは表面上の話であり裏では聖杯戦争への準備のために色々と小細工を仕込んでいるのが実情である
転生主人公がチートも無しに参加する場合この3日間の間に対策を用意しておかないと高確率で詰む
冬木市の隣町
聖杯戦争の舞台、冬木市にほど近いことと医学校があること以外はこと冬木市以上にこれと言った特徴の無い町
いや、町というかほぼほぼベットタウンた
そんな殺風景な町の中で犬の、猫の鳴き声が木霊する。
それも数匹ではない
何十匹、もしかすれば3桁にすら届くほどの犬猫の大合唱だ
さらに異様なことにその鳴き声は全て1つのトラックから発せられている
もしも見える人、聞こえる人がいたのなら不審がられ通報は免れなかったはずなのだが、家柄から人目につけられないブツを運ぶこともある雨生家の次期当主である雨生達人はトラックの荷台に音声認識阻害の魔術をかけており、犬の鳴き声を聞かれたとしても普通の人にはただただうるさいトラックだと認識されるため、トラックの通った歩道を歩いていた人々はあまりの音量に10人が10人うるさそうに顔をしかめはしたもののそのまま歩いている
誰もその日常から逸脱した光景をそのまま認識している人はおらず、町は平穏なままだった
雨生達人の召喚したサーヴァント
真名:フランケンシュタイン(博士)
彼は全てのステータスがEというある意味、破格のステータスを誇っていた
もちろんその分の利点はあり、彼の持つスキルは多様であったが、ギルガメッシュに勝てるサーヴァントであるかと言われれば、可能性は無いと断言できてしまう程度だった
もっとも、ギルガメッシュに勝つというのは生存という目標において目に見える地雷がなくなることになるが、第四次聖杯戦争のギルガメッシュなら、わりと回避は余裕なためそこまで重要ではなかったりする
そこにおいて、フランケンシュタインの宝具はギルガメッシュより危険度の高い「間桐臓硯」に対抗しうる宝具であったため彼の召喚はむしろ僥倖であったと言えた
二人は昨晩話をしていた。
何の話かと問われれば、それは聖杯に賭ける望みの話だ
「フランケンシュタイン博士、あんたはいったい何を望んで召喚されたんだ?」
達人の質問にフランケンはほんの少し考えると答えた
「私は…そう、私はほんの少し、気がかりなことを残して死んでしまったのです。そのことが私の望みにあたります」
「なんだ?その気がかりなことってのは?」
「娘です」
「娘?あんた娘がいたのか」
達人は驚いた
「はい、娘は産まれたばかりでした。産まれたばかりとはいえ信頼できる友が面倒を見てくれるでしょうが、それでもやはり、友がいてくれるとはいえ、あの子のことが気になって気になって、思わずここに馳せ参じてしまったのでしょう」
なんとも女々しい、とフランケンが自嘲気味の笑みを薄っすらと浮かべる
「そうか…」
「いやはや、小さいことですよ。娘が気になって蘇るなんてフランケンシュタインの名が廃りますね。それに聖杯戦争を勝ち抜くには私ではいささか実力不足、マスターには申し訳なく思っております」
フランケンはそういうと小粋なジョークを聞いたかのようにふふっと笑った
しかし、そこで達人は待ったをかけるように言った
「いや、十分さ」
フランケンは驚きと少し不思議さを交えたふうに達人を見る
「娘を想う親の気持ち、そんな純粋な想いがあるんだ。あんたが呼ばれたのはその想いがそれだけ強いってことだし、下手なサーヴァントを引くよりは召喚されたサーヴァントがあんたで良かったと本当に思っている」
フランケンはしばしキョトンとした後、こんどはニヒルな笑みを浮かべ
「そこまで評価されるのは科学者の端くれとしても気持ちが良いものですね。ふふっ、初めて友ができた時のようです。ふふっ、いい気分ですね。いいでしょう、私は私の持てる全てを持ってあなたの力となります。改めてよろしくお願いします。私のマスター」
「ああ、こちらこそ改めてよろしく」
するとその直後達人は渋い顔ををして言った
「ところでさっきあんたの望みを聞いたばかりなんだが、俺はおそらくあんたの望みを叶えられないだろう」
フランケンはまたも歳に似合わないキョトンとした顔を浮かべたのだった
その後、フランケンシュタインは達人の話を聞いた上で聖杯戦争への参加と達人への協力を誓った
トラックは騒音を撒き散らしながら冬木市へ帰る
「ごめん、フランケン」
車を運転しながら達人が言う
「ごめんとは?」
「あんたの願い、叶えられなくて」
「いえいえ、もともとただの未練、実らなくてもいい、むしろ、実らない方が夢を見れていい」
「そういうものか?」
「そういうものです」
「そうか、そう言ってくれるとありがたい」
少し居心地が悪くなった車内でフランケンはパンと手を叩き
「では、今のうちにどんな使い魔を作るか話しましょうか
」と露骨に話題を変えた
「そうだな、間桐に負けないような強い使い魔を作らないといけないからな」どうしてこんな話をしてしまったのかと後悔していた達人はありがたくその話題にのらせてもらうことにした
結果として二人の使い魔談義は互いの思惑を越えて白熱し、二人がどのような使い魔を作るか決めた頃にはトラックの積荷は冬木市につくどころか全て家の地下に運び込んだ後になっていた
そして夜が更ける
アインツベルン城で儚き家族は家族団欒の最後のひと時を過ごし
噛ませ犬は大荷物を日本へ送り
芽すら出ていない魔術師は王に引き摺られ
うっかり屋はゴマをすり
まだただの麻婆は麻婆を食らい
蟲の翁は悪意を練り上げ
オリ主もまた策を練る
第四次聖杯戦争が終わるまであと6日
にも関わらず未だ戦の気配は冬木市のどこにも無かった
フランケンシュタイン博士は自身が彼に呼ばれたのを必然だと考えている
自身は事実あの夜に終わっていたのだ。
満足して終わっていたのだ
愛すべき家族と信頼できる友がいて、後に続く人々を泣かせて惜しまれてほんの少しの未練を残して死んだ
昨今なかなかできない本当に充実した
本当に充実した
罪を犯した自分がこんなに幸せでいいのだろうかと見まごうほどの誰もが羨むような死を迎えた
そんな自分が自らの意思で聖杯戦争などと言う全能の願望機を求めるだろうか?
否、求めるはずがない
ならばなぜ?
今なら解る
少年が頑張っていたからだ
陳腐な理由だが、それが真実
一人の少年が1つの町を救う為に強大な敵に立ち向かおうとしているのを見て、お節介にも思わず手が伸びてしまったのだ
彼は全てにおいて過去の私とは比べ物にならないぐらい強かったけれども、それでも野次馬根性か、はたまた望郷か、それはわからないけれど
私は混濁した死後のまどろみの中、彼を一目に見て彼に手を貸そうと決意してしまったのだ
自然と笑いが込み上げてきた私を見てマスターが尋ねる
「フランケン、どうしたんだ?」
「いや、なんでもありません。少し思い出し笑いを」
私がそう言うと彼は訝しみながらもそれ以上聞いてこなかった
無用な詮索を避けるのは一期一会の旅路の礼儀だ
この歳で彼はそれを理解している
きっと彼は、彼も私も敵わない立派な青年になることだろう
私はそう確信している
そしてその上で願いたい
彼と我が愛娘の人生に幸多きことを
ただそれだけを
願いたい
ジャプニカ日記帳
♪月☆€日
今日は先輩の影も形も見ませんでした
本当にどこかへ行ったのでしょうか?
もし、行ってしまっていたのなら
少しだけ、そう、少しだけ
寂しいっす