だが奴は弾けた 作:宇宙飛行士
◇
シンクロモンスター、『フルール・ド・シュヴァリエ』。
相手が発動した魔法・罠を一ターンに一度無効にし、破壊する効果を持ったモンスター。
━━俺へのアンチカードかな?
またしても始まった強制ライディングデュエル、相手のDホイーラーが召喚したシンクロモンスターを見てつい、ぐえぇ!と声を出してしまう。
うーん……この!
スピードスペルさえ持っていない俺へ、トラップさえ無効にしてくるのはアカンって。ヤバイって。え?なんなん?シェリー氏マジホントになんなん?俺に修行僧になれって言うことなの?ドSかよ。
ただでさえそれだけでもキツいのに、シュヴァリエさんは攻撃力2700ありますからね。ぼくのさいきょうのまほうつかいにもわけてくれよ!その攻撃力!なに?師匠はサポートカードが多い?だから使えないんですぅ!今度は初期手札に千本ナイフ(笑)が来たし。もう、なんか、俺強いられすぎぃ!
これからこの千本ナイフ(笑)はデュエリストの嗜み、カード手裏剣用としても使おう。やったね!千本ナイフ(笑)君!デュエルでも現実でも投げられまくるよ!最高だね!
現実逃避している俺にシェリー氏━━シェリー・ルブランは容赦なく猛攻を仕掛けてくる。
ぐおぉお!!!リバースカードオープン!『魔法の筒(マジック・シリンダー)』!!
あ、やっぱ無効にします?ですよね!おら!二枚目だよ食らえ!!
なんとか耐えている俺。ちなみに、今相手にしているデュエリストがシェリー氏であることを知ったのは、シンクロモンスターが召喚されてからです。フルール・ド・シュヴァリエは様々な意味で特徴的だからね。白百合だからね。お前の頭の花デケェな。
このライディングデュエル、正直キツい。何がキツいって、ライディングデュエル用のレーンに隔離されたから、目的地のスーパーもう通りすぎてる。というかどんどん遠くになってる。
ああぁぁぁ!俺の予定調理時間がどんどん削られるぅ!!今日は子供が大好きハンバーグを作るのにぃ!シェリー氏このヤロー!お前手伝えよ。多分お前料理出来ないだろうけど手伝えよ!それは俺の完全な偏見だけど!!でも多分作れないだろ!絶対フライパンで玉子焼きが真っ黒になる系女子だろ!!
ミゾグチィー!はやく来てくれェー!はやくこのお嬢様をなんとかしてくれー!
そう俺は嘆きつつも、自分のターンを迎える。くっそ金髪には金髪ぶつけるんだよ、いけ魔法使いの弟子!もちろん守備表示ィ!!攻撃力2700の壁はそう簡単には超えられないからね。しょうがないね。
いけー!ぶらっく・まじしゃん・がーるー!がんばえー!
あ、やっぱやられた。まぁ彼女とその師匠はやられてから蘇生されるまでが仕事だからね。ありがとう弟子。よくやった。きっと次は師匠が逝くことになる。
ふむ、やっぱり。
俺は一人、心の内で納得する。昨日も何度も思ったことだが、やはり相手と自分のカードパワーの差が激しい。デュエルモンスターズは他のカードゲームと違い、相手のプレイングを阻害出来ることが特徴的なのに、俺のデッキではそれは厳しい。相手から一方的に邪魔されてしまうからね。
このデュエル、普通に負けそうだぜ。
おい、シンクロさせろよ。俺に。
◆
シェリー・ルブランは勝負を決めきれないことに焦りを感じていた。今相手にしているデュエリストは、強力なモンスターを使ってくるわけではない。ただ、こちらのプレイングに対して問いかける、こちらを試すような動きが多く見られた。それがシェリーの焦燥感を増す要因となっていた。
━━俺はカードを二枚伏せて、ターンエンドだ。
シェリーは自分のターンを迎える。先ずは一枚カードを引き、そして場を整えてからバトルフェイズに入る。
「私はフルール・ド・シュヴァリエで━━」
━━その前に、俺はこのカードを発動するぜ。
そう言って相手はリバースカードを明らかにする。そのカードは『強欲な瓶』。この罠カードの効果は『自分のデッキからカードを一枚ドローする』という効果。現在の相手の手札はゼロ。これを使われれば相手は次のターンとれる手段が増える。自分のもつ『フルール・ド・シュヴァリエ』は相手のトラップを一度無効にすることが出来るが、それは、ここで使うべきではない━━
━━だが、いいのか?
本当に、本当にそれで良いのだろうか?そんな迷いが一瞬、シェリーの脳裏を掠めた。楽しそうな声色で自身に問いを投げかける相手。このデュエリストは、自分との駆け引きを楽しんでいる。
(いや、相手の雰囲気に呑み込まれては駄目。ここで効果を使うのは得策ではない。あれはブラフ。あとの一枚が私を仕留めるためのカード!)
そう確信して、シェリーは次の指示をする。
「いいえ、無効化しないわ。私はフルール・ド・シュヴァリエで、そのままダイレクトアタック!『フルール・ド・オラージュ!!』」
そのまま白百合の騎士は銀色のDホイーラーの元へ向かっていく。次にどんな罠カードを使って来ても、シュヴァリエの効果で無効化することが出来る。この攻撃は確実に通る━━!!
━━リバースカードオープン!『聖なるバリアーミラーフォースー』!相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する!
(やはり!)
シェリーは自身の考えが正しかったことに内心で喜びを浮かべる。
「私は『フルール・ド・シュヴァリエ』の効果を発動!ミラーフォースの効果を無効にし、破壊する!」
パリン、と聖なるバリアーミラーフォースーのカードは粉々に消え、白百合の騎士は相手に攻撃を与えた。
これで相手のライフは風前の灯火。そしてフィールドには何も存在しない。手札は一枚。これで自身の勝利は揺るがないものとなったと確信する。
━━なのに、
そんなピンチに陥っているデュエリストは、心の底から、楽しそうに笑っていた。
━━俺は『冥府の使者ゴーズ』を手札から特殊召喚する!このカードは自身の場にカードが存在しない時、相手がコントロールするカードによってダメージを受けたとき召喚出来るモンスター!そしてさらに受けたダメージにより効果が変わる。俺が受けたのは戦闘ダメージ。よって、俺は場に受けたダメージと同数値の攻撃力、守備力を持った『冥府の使者カイエントークン』一体をさらに特殊召喚する。来い!!
自分のターンだというのに、相手のフィールドに突然、二体のモンスターが召喚される。攻撃、共に2700。そんな大型モンスターが並んだ。
思えば疑うべきだったのだ、とシェリーはここで思考を再開する。相手は『フルール・ド・シュヴァリエ』のモンスター効果を知っていた。故に、何の策もなく無効にされ破壊されると分かっているトラップを、発動させるわけがないのだ。
「くっ……私は、ターンエンド」
まさか目の前の相手はここまで計算していたのか。そんな考えが浮かぶが、そんなことはあり得ないとその思考を振り払う。何の細工もなく、デッキから望むカードを引くことなど不可能だ。そう、これは偶然によって起きたことだ。シェリーはそのように納得する。
━━俺のターン。……まさか、ただ負けただけで済むと思ってないよな?
そう言って、相手は先ほどの純粋な笑みではなく、今度は邪悪な笑みを浮かべシェリーに声をかける。
突然、強制的にライディングデュエルに持ち込んできた相手。ただ者ではないことは明白。
最後にシェリーは、自分を慕ってくれた執事のことを思い、そうして、自身の敗北を受け入れた。
◇
罰ゲーム、シェリー氏は俺に負けたので荷物持ち。
そう言って彼女とともに買い物に来た俺。おばあちゃんが言っていた通りだ。ここのスーパー超安い。常時タイムセールかよってぐらい。俺の主婦センサーが激しく反応している。ここで燃やさず、いつ俺のバーニングソウルを燃やすというのか。今回はクリアマインドは捨てて、激しい闘争本能剥き出しで行かせてもらおう。その牛の合い挽き肉は俺の物だ!
俺がスーパーの中を移動している間、件のシェリー氏は雛が親鳥の後を着いてくるが如くの様子。しかし、その視線は人が殺せそうなほど冷たかったり。
ヒエッ(畏怖)
でも、一人が抱えられる物量は限られてるじゃないか!
申し訳ない、申し訳ない!許してくれないか!
俺はデュエルをしている最中思ったんだ、「冷蔵庫空っぽだから、たくさん入れて置きたいな」って!俺は悪くねぇ!悪いのは全部、メカメカしたバイクのせいなんだ。奴が「デュエルするぞー、バリバリー」と張りきらなければ貴女は巻き込まれてはいなかった。
これが運命だったのだよ。受け入れてはいただけry、ヒィ!すみませんすみません!ごめんなさい!シェリー氏、目力強ェ!!
内心ビクビクしながらも買い物かごの中に商品を入れている俺。わかった、このチョ○ボールで手を打とうじゃないか。なに?チロル○ョコの方がいい?でぇじょうぶだ、きっと金の天使が当たる。俺は知ってるんだ。だがキャラメル味はやめておくんだぞ。歯にくっつく。
買い物かごに調味料や、その他諸々の物を入れレジへ。するとレジのおばちゃんが「綺麗な彼女さんね~」と精算中声をかけてきたので「でしょう?」と調子に乗ってみたり。
そしたら、シェリー氏が俺の足を思いっきり踏んづけました☆
ぐおぉとその痛みに悶絶しつつ、おばちゃんに対しての笑みは崩さない俺。コミュ力っていうのは相手に気遣わせないこともその範疇に入るのだ。だから必死にその痛みに耐えているのに、シェリー氏はそれを効いていないと思ったのか、続けて追い打ち二連打からのグォレンダァ!!
流石に耐えきれず「やめろ……やめろォ!!」とアクセルシンクロが不発に終わる回の時の遊星先輩のように声を荒げる俺。
そこで満足したのか、彼女からの追撃はなくなった。
やっぱドSだわこの人。
◇
そうして、龍亞君と龍可ちゃん先輩の家に着いた。
やはり荷物は俺一人では持てないほど多くなり、シェリー氏にはかなり感謝していたり。
ありがとうシェリー氏。ほら感謝の印の○ョコボールだよ、と渡すために買い物袋の中をゴソゴソと漁ってようやく発見。
ぷっ、イチゴ味か随分かわいらし、グハァ!!やめろォ!つま先で脛を蹴るなァ!!俺が悪かった!煽った俺が悪かったから!
報酬のお菓子をふんだくり、すぐにDホイールのエンジンをかけてシェリー氏は去っていく。
それにしても、シェリー氏のDホイールって変わってるよね。
前後に赤色の先端尖ってる危ないヤツが付いてるし。ライディングデュエル中刺されなくてよかったぜ。ずっといつ突いてくるのかとビクビクしてたし。けっこう脅威でした。
コンセプトとしては馬を意識してるのかな?しっかりDホイールの名前もあって、確か『シュトルム・ウント・ドランク』だった気がする。遊戯王では始めてリアルファイトをした機体として有名だよね。返り討ちにあったけど。
よっこらせ、と買い物袋を両手に持ち、メカメカしたバイクを中に入れる。
……そういえば、俺のこのあまりにもメカメカしいバイクにも名前つけた方がいいのか?やっぱり、ロマンだし。つけましょう。よし!お前の名前はこれから『もっとシルバー巻くとかさ!号』略して『MS』だ!全体的に銀色だし、これでいいでしょ。うん。
そして家に入り、買ったものを冷蔵庫の中に入れてから調理開始。作るのは当初の予定通りハンバーグ。
ハンバーグはみんな大好きだからね。ハンバーグ師匠もそう言ってた。なんだ?付け合わせのミックスベジタブルを見るような目で俺を見やがって。ハンバーグの鉄板ジョーク先ずは100グラムから、
お、龍亞君と龍可ちゃん先輩が帰って来たぜ。
「たっだいま~!お、何作ってるの?」
「ああ、ハンバーグだよ。龍亞君と龍可ちゃんは、どう?ハンバーグ好き?」
「「勿論!!」」
やはりハンバーグ師匠は偉大。改めてそう思った。
次回予告(予定)
龍亞と龍可、そしてメガネ君は神隠しの森へと探検に出かける。そしたら案の定、龍可が神隠しの屋敷に捕らえられてしまった!
龍亞は龍可を助けるため安定のデュエル脳で勝負に踏み切る。そんな時蟹さんがDホイールで登☆場。デュエルをしている龍亞を尻目に屋敷の中へそのままダイナミック入店。
それだけでもドン引きなのに、龍亞の目の前にはさらに新たなDホイールが現れた。そのDホイールは龍可が捕らえられている屋敷に向かって━━飛んだ。
次回『Q.カタパルトタートルで射出!』
デュエル、スタンバイ!!