だが奴は弾けた   作:宇宙飛行士

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Q4.カタパルトタートルで射出!

 

 

 

 

 

 

 

俺がこの世界に来て数日が過ぎた。

 

相変わらず龍亞君と龍可ちゃん先輩の家に居させてもらい、主婦のごとく家事に勤しみ日々を過ごしている俺。

勿論それだけではいけないと職を捜してはみるが、戸籍なしの謎の人物を受け入れてくれるところなどなく、あったとしても傍目から見て、すごく危なそうな雰囲気を感じる職種である。それはアカンと白目になりつつ避けている。

それでもめげずに、なんとか一人立ち出来るよう取り組んではみるが、芳しい結果は得られない。日々は常にハードモードだぜ。悲しい。

しかし、龍亞君と龍可ちゃん先輩、そして牛尾さんのような人の心遣いによって自身の心が荒むことなく生きてはいられる。それに俺はとても感謝しているのだった。

 

 

 

だがしかし━━逆を言えば、もう数日が過ぎてしまった。

 

恐怖心はない、と思う。ただ、言うとしたらどうしようもない焦りだけがそこにあった。なんでそうなのかは分からない。日々に感謝し、人の優しさに触れて恩を返すことに奔走している。自分の直面している現実はそんなに悪いものじゃないと思っている。

でも、ふとした拍子に思うのだ。

 

━━もしかしたらこれは夢で、俺はなんでもないように元の世界で目覚める。そして「楽しい夢がみれた」とちょっとだけ笑って、布団から起きて家族のための朝食を作ることになるのだ。

いつものような変わらない毎日の中に戻れて、でもやっぱり変わらないものなんて無くて。一日一日の自分の周りの変化を実感して、まあそんなもんでしょと一人納得する。

 

 

 

だからただ、焦燥感だけを抱いている。

 

本当にそんなふうに戻れるという確証が得られず、もしかしたら元の世界の時間も同じように、過ぎているのかもしれなかったから。

 

 

 

俺は現在、その焦りの解消法が分からずに、もがいているだけなのかもしれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、最近ぼーっとしてない?」

 

龍可は青年に対して、そう話を切り出した。

 

現在自分達の家に一緒に住んでいる青年、その人の様子が少しだけおかしいな、と彼女は感じていた。

 

━━あ、ごめんね。最近ちょっと寝不足ぎみで。

 

そう言って、青年は笑って言葉を返す。

別に謝ることじゃないよ、と龍可は彼に言葉を返しながら青年の言ったことについて考える。

 

確かに、龍可は最近になって青年が寝ていないことには気づいていた。

 

龍可がどうしても眠れないと思った夜の日に、一人寝室を抜けてリビングに来たときのこと。龍可は何か飲み物でも飲もうと思っていたのだが、その場所のソファーで寝ている筈の青年の姿が見えないことにふと気がついた。

 

龍可は最初に、もっとしっかりとした場所で青年に寝るように進めていたが、彼は「ソファーで一夜を過ごすのって、格好いい気がする」と言ってそれを譲らなかった。

当時はその言い分に呆れていたが、今になって考えてみると、それは申し訳ないと遠慮していたからではないかと思う。いつもは心の底から楽しそうに笑っている彼が、その時は困ったように笑っている気がしたから、そう思ったのかもしれない。龍可は当時はその違いに気づかなかった。数日青年と過ごしてようやく気付くことの出来たことだった。

 

そんな彼の姿が見られないことを不審に思った夜のこと。彼女は青年がどこにいるか探してみたことがある。

家の中には居なかった。それではと今度は外の方に顔を出してみた。すると、青年はそこに居た。白のベンチに腰かけ、背中を丸めながら前を向いている。

 

龍可の場所からでは青年の後ろ姿しか見えず、彼がどのような表情を浮かべているか分からない。

 

ただ、力なく肩を落としたその様子から、彼はひどく疲れているのではないかと思った。

━━そんな毎晩外にいることが、ここ最近ずっと続いている。

彼は毎晩外に出て、白のベンチに腰かけて、肩を落としている。その姿を見る度に、龍可は何故か寂しい気持ちになった。

 

 

その彼の様子は、自分達の前では絶対にみせないものだったから。そう感じたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

満点の星空の下、溜め息を一つ。

 

なんていうか俺って、ここまで心弱かった?と自己嫌悪に近いものを感じていたりする。

周りの人に結構気にかけてもらってるのに、情けねぇと思うのです。こんなに心の内が晴れないのは生きてきて始めてだったり。

 

もう夜も遅く、明日のために疲れをとらなくてはとは思うのだけど、目は完全に覚めてしまって寝られない。それでも無理して目を閉じ横になると、考えても分からないことばっかり考えてしまうし。

 

あれ?これって鬱病の一歩手前だったり?なんて一人で問いを投げかける始末。アカンですよ、これは。うん。もしかすると自分で思ってるよりもヤバイのかもしれん。少し危機感を感じているのです。

 

龍亞君と龍可ちゃん先輩の庭にあるベンチに座って、一人佇む。

 

どうしましょう?とぼうっとしながら考えてみたり。いや、どうしましょうも何もないのだけどね。どうしても考えてしまうというか。出来る限り考えないようにしようとしてるのだけど難しいわ。というかこれが何日も続いている。

これって思春期のアレに近いものを感じるなぁ~と一人思ってみるのでした。なんで人間生きてるの?みたいな命題について考えるヤツというか、それに近い系統です。

ふむ、なんでこんなにモヤモヤとした気持ちになってしまうのだろうか。

 

 

元の世界に帰れないから?

━━勿論、最初の原因はそれだろう。だがだったら尚更、自分の行動力を増やしていかなくてはいけないのだ。さっさと寝ましょう。

 

職が見つからないから?

━━いや、それはモヤモヤする以前の問題っす。なんとかしなきゃならんわと、毎日奔走中。

 

 

じゃあ、なんでこんなに━━苦しいのだろうか?

 

 

その答えが分からない。

胸が締め付けられる苦しさではなく、胸の内から冷たくなっていくかのような苦しさに近い。どうすればこの苦しみは無くなるのか。

 

そんなふうに眉間を寄せて考えてみる俺。

勿論それでも答えはわからなくて、こりゃあ今回も駄目だと大きく肩を落とした。

 

「隣、いい?」

 

そんな俺の横に、今では寝ている筈の龍可ちゃん先輩が来たのである。

 

いやいや、隣良い?ではなく、もう良い子は寝る時間なんだぜ?と俺は龍可ちゃん先輩にびっくりしながらも言ってみたり。

それでも彼女は「じゃあ座るね」と言って隣りに腰を下ろしたのです。え?じゃあなんで聞いたのと俺は自分の言ったことがスルーされたことにマジかとこれまた驚愕。

 

だって龍可ちゃん先輩は俺が今まで一緒に過ごした限り、なんていうか気が弱いけれども、気が利く女の子という印象だったのだ。時々精神のレベル高いなと思うぐらいで、それ以外は普通の子供である。そんな子がこちらの言い分をスルーして行動するとは思わなかった。だから驚きである。

 

そのまま二人でベンチに座って、お互い無言で時間を過ごす。

 

……やばい超気まずい。え?なんでこんなことになってるの?こんな重い沈黙も生まれてはじめて。

 

サイレントバーニングでもしたのかな?と心の内で思っている俺に対して、龍可ちゃん先輩は「なにかあったの?」と俺に聞く。

 

その問いに「いや何でもないっすよ。うっすうっす」といつもなら返す俺であるが、今日はもう時間が遅いからか、ちょっとセンチメンタルな気分。結局何度も口ごもった後、「いや、それは言えないんだ」と何とも煮え切らない返事をしてしまう。

 

実際、自分の事情は話せない。話したら頭おかしいヤツだと思われるし、それで気味悪がられたら立ち直れる自信がない

第一、今では自分にさえ確証が持てないのだ。本当に自分が異世界移動してるのかさえ分からず、証拠はないので証明出来ない。

 

 

 

もしかして俺は、永遠に覚めない夢を見続けているのではないか━━?

 

 

「それじゃあ、しょうがないね」

 

そんなふうに思考が負のスパイラルに陥っている俺に対して、彼女はそう言った。

 

そうして続けて、

 

「でも話してくれる時がきたら、私はいつでも聞くから」

 

 

その言葉で━━ようやく、肩の荷が下りた。

 

思えば俺は、きっと辛かった。何が辛かったのか。それは俺が隠し事をしていることを、さらに隠して過ごしていたから。周りの人が自分に何の偽りなく関わってくれているのに、自分だけは偽っていることを見せないようにしていたから。

 

でも、周りから見ればバレバレだったのだろう。そもそも今まで馬鹿正直に生きていた俺が、上手く人に隠し通せる筈がないのだ。様子が可笑しいことなどお見通し。コイツ本当に記憶喪失なの?とは常々思っていたのではないだろうか。そんなことを思う。

 

だから、それを聞いてくれると言ってくれる人がいて━━嬉しかった。もしかしたら、これから先話す時は来ないかもしれないけれど、そう言ってくれるだけで俺は救われたと思った。

 

 

俺は龍可ちゃん先輩に「ありがとう」と言った。

そうして続けて「早く寝ないと背が伸びないぜ」と言って彼女と一緒に家の中に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

一夜明けてそのまま朝を迎え、龍亞君と龍可ちゃん先輩はデュエルアカデミアに登校して行った。

 

前夜に『……それがお前の心の闇か』状態だった俺もぐっすりと寝て体調は万全。

 

よっしゃあ今なら何でも上手く行けそうな気がするぜぇ!と就活に励み、結果は撃☆沈。

人生そんな上手くいくわけないだろォ?と現実に直☆面。

 

べ、別にいいし?今日は近くのスーパー特売だから、しっかりと買い込んで御飯作るからいいもんね。

そうしてスーパーに行き、顔見知りとなったおばちゃんと談笑してから帰路へとつく俺。

 

思えば昨日、龍可ちゃん先輩にメンタルカウンセリング受けた俺だけども、よくよく考えれば超恥ずかしいやつじゃね?と客観的に自己分析。というか普通は立場逆でしょうよ。もしかして龍可ちゃん先輩の方が俺より精神年齢高かったり。

いやそんなことあろうはずがない(迫真)。俺は頼れる(笑)お兄さんなのだ。

 

今までを振り返るとそんなことないけど、だったら今から成れるよう努力するんだよ!と意気込む俺。流石に自分の下の兄弟と同じくらいの子に負けるわけにはいかない。対抗心を燃やしているのであった。

 

そんなふうに決意を固めている俺が龍亞君と龍可ちゃん先輩の家に着くと同時に、デュエルアカデミアの制服を来た生徒━━メガネ君が息を切らしながらやってくる。

ちなみにこのメガネ君とは、前ハイトマン教頭とデュエルした時に知り合った龍亞君と龍可ちゃんの友達である。メガネが特徴であり、メガネが宿命の子だ。

 

お、どうしたメガネ君?今日もメガネしてんなと声をかけた俺だが、メガネ君はそんな俺のことなど構わずに「龍可が神隠しの森で迷子になって!龍亞もそれを探すって言って、森の中に入っちゃったんだ!」と俺に伝えてくる。

 

俺はそれを聞き「あの屋敷に捕らえられるヤツか~」と最初は「よくある、よくある」とメガネ君に言っていた俺だが、ふと一つのことを疑問に思った。

 

メガネ君は俺のところまで来て、その異常を伝えて来たのである。おそらくだが、龍亞君が俺に伝えるよう彼に頼んだのだろう。だから彼は龍亞君と龍可ちゃんの家まで走って来て、それを伝えることとなったのだ。

 

そう、つまり。まさかとは思うけれど、メガネ君。

 

 

━━それ、先に遊星先輩に伝えてあるんだよね?

うん?なるほど。伝えてないんだ。よし、分かった。

 

 

━━今すぐ行ってこい。

 

 

 

 

 

 

 

「龍亞!大丈夫か?」

 

「遊星!」

 

神隠しの屋敷に捕らわれている龍可を助けるため、龍亞はその元凶である少年とデュエルをしていた。その彼の元に、赤色のDホイールに乗った不動遊星が駆けつける。

 

「遊星、あの中に龍可が!」

 

「分かった!」

 

遊星は龍亞が元凶の少年を引き付けている間に、龍可が捕らえられている屋敷の扉をぶち破りながらDホイールで侵入。件の元凶の少年は、自身の家の扉がいとも容易く壊され、それにドン引いていた。

 

 

━━しかし、それだけでは終わらない。

彼の目の前に広がる森から、また新たなDホイールが凄まじいスピードで向かってくる。

 

銀色のボディをした、様々なパーツを後付けしたような金属の塊。それに乗るDホイーラーは怨嗟のような声を漏らしながら、え?どっちが悪霊なの?と自身と比べてしまいそうなオーラを放って此方を睨んでいる。

 

 

そうして、そのDホイーラーは「━━龍可ちゃん解放しろやゴラぁアアア!!!!」と叫び、木の根を台にしながら、Dホイールごと━━飛んだ。

 

 

それは綺麗な放物線を描く。龍亞と元凶の少年の頭上を悠々と越し、まるで鳥のような滞空を見せ、そうして、

 

 

 

龍可が捕らえられている屋敷の二階部分に、ぶち当たった。

 

 

 

 





龍可ちゃん先輩は主人公のメンタルカウンセラー。この小説のオーバートップクリアマインド。
今回はあまりギャグに傾倒していないんだ。すまない。作者の力量不足だ。
それと次の更新は用事で最低でも三日後になると思う。重ね重ねすまない。ガッチャ。
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