「装填、完了したよ! 」
「こっちも同じく! 」
「副砲準備よし! 」
「機銃は?」
「副砲同軸準備OK! 」
「側面も大丈夫だよ! 」
鋼鉄に覆われた車内に6人の少年、少女達の声が響く。
「よーし......じゃあ行こう!出撃! 」
『応!』
掛け声と共に鋼鉄の巨象が動き出す。
「!?あれは! 」
「出たぞ!ハクだ! 」
「歩兵小隊、横隊に展開! 」
雪原の中、突然森の茂みから現れた鋼鉄の巨象。旧日本帝国陸軍の試作戦車『5式中戦車チリ』を見て慌てて隊列を組む銃兵達だったが、彼等が弾込めするまでの時間を少年たちが待つはずがなった。
「機銃、撃て! 」
「了解! 」
隊列を組もうとする兵士達車体前面に配置されている副砲同軸の機銃から放たれる弾丸がなぎ倒す。
「く.....!後方砲部隊はなにしてる!早く撃て! 」
隊長の叫びに従い、部隊後方に待機する砲兵部隊の砲口が一斉に向けられる。
「放....! 」
そう指揮官が号令を放とうとした次の瞬間、突如響いた重々しい轟音と共に彼らの体を業火と光が包み込んだ。
悲鳴をあげる間もなく、爆風に吹き飛ばされあるいは身体を切り刻まれて絶命する砲兵達の惨状を見て帝国軍兵士達に動揺が走る。
今の攻撃は目の前に迫る鋼鉄の巨象、彼等が「ハク」と呼ぶ装甲車輌からのものではない。
先程、機銃で射撃はしてきたが、機銃で地面に耕したような後は作れないし、人を吹き飛ばすことはできない。
ならば、その攻撃はどこからきたのか?
「こちら白魔。轟雷、こちらの攻撃は当たってる? 」
「こちら轟雷。確かに命中してるよ。さすがはヒダ王国軍の要だね 」
「そっか.....良かったよ。見越し射撃だったから少し不安だったんだ 」
積雪による白一色に覆われた森の中にそれはあった。
白い雪原迷彩を施した比較的小型の車体に、不釣り合いな大型の砲塔、そしてそこから突き出す短砲身の114ミリ榴弾砲。
かつて北欧と呼ばれた地域、そこに存在した国家「フィンランド」が第2次世界大戦中に開発した突撃砲、BT42クリスティである。
「こちらは打ち合わせ通り撃ち込むから歩兵部隊は任せて 」
「分かってる。僕たち神風団はここを強行突破して本命に向かう。本命を倒さなきゃ、この戦いは終わらないからね 」
喉頭マイクによる通信を終えた特殊車輌『轟雷』の車長、高杉信義は車内の仲間を見渡して口を開いた。
「白魔が敵を引きつけている間に僕らで本命を叩こう。白魔ではアレには不利だからね 」
車内の皆が頷くのを確認し、高杉は一度目を閉じ、ついでゆっくりと開いて、叫んだ。
「行くよ!突撃にぃ......前へ! 」
高杉の号令と共に鋼鉄の巨象こと、装甲車輌『轟雷』は速度を上げて敵部隊のど真ん中を突っきていく。
西暦2150年。世界はその日も賑やかだった。