FAIRY TAIL ~魔導騎士と星の姫~   作:ジャージ王子

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第16話 その為のギルドじゃよ

──クローバーの町、定例会会場。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一行から魔導四輪車、そして死の笛呪歌(ララバイ)を奪い去ったカゲは遂にこの場所まで到着した。

 

「はぁっ…はぁっ…」

 

魔導四輪車で魔力を消費し過ぎたためか、それとも気持ちの高ぶりを抑えられないからか、中々息を整える事が出来ない。

 

(遂に…遂にここまで来た!奴らに裁きを与えるこの瞬間が…!)

 

カゲがいるのは会場のすぐ目の前。ここからでも笛を吹けば中にいるギルドマスター達にその音色を聴かせられる。

 

(やってやる…!)

 

笛を強く握りしめると口元へと運んでいく。

 

─復讐にとらわれすぎなんだよ─

 

「…くっ!」

 

しかし、いざ笛を吹こうとすると、先程のアルトの言葉がそれを遮る。

今まで誰にもあんな事を言われた事はなかった。だからなのか彼の言葉はカゲの心に深く刺さっていた。

 

(あんなのは綺麗事だ、惑わされるな!)

 

有りえもしない理想を魅せられているだけだと自分に言い聞かせ、カゲは再び笛を吹こうとする。

 

「スー、ハー……っ!」

 

何度も深呼吸をして自身を落ち着かせ、今度こそという思いで息を吐き出そうとする。

 

トントン

 

その瞬間、突然後ろから肩を叩かれた。

 

「!?…ゲホッ!ゲホッゲホッ!」

 

予想外の事に驚いたカゲは吐き出そうとした息を詰まらせて咳き込む。

 

「ブヒャヒャヒャヒャヒャ!…ッ!…ゲホッ!ゲホッ!」

 

おそらく後ろから肩を叩いてきたであろう老人がカゲのリアクションを見て嬉しそうに笑い出す。しかし、自分も笑いすぎて咳き込み始めてしまった。

 

「「ゲホッ!ゲホッ!ゲホゲホッ!」」

 

会場前で2人の男性が一緒になって咳き込むという珍妙な光景である。

 

「ゲホッ…んんっ!ふぃー、お前さんこんな所で何しとるんじゃ」

 

やっと咳が治まった老人がカゲに問いかけてきた。

カゲもどう返答しようかと考えるとある事に気付く。

 

(こいつ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスター“マカロフ”!)

 

先程までといい、今といい本日のカゲは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士に邪魔をされてばかりだ。

しかし、今はそんな事よりどう誤魔化すかが先決だと考え、カゲは咄嗟に思い付いた設定をマカロフに説明していく。

 

「実は僕しがない笛吹きでして、時たまこうやって木々に囲まれながら演奏するのが趣味なんです」

 

「ほー、それにしても気色悪い笛じゃのう」

 

まずは何故自分がここにいるのか、それは誤魔化す事が出来た。後はマカロフをこの場に留まらせて音色を聴かせるだけだ。

 

「よく言われるんですよ。でもこの笛が一番自分に合ってて…そうだ!もし良かったら僕の演奏を聴いてもらえませんか?」

 

「ワシも急いどるんじゃがのう…こうしとる間にもアイツらが問題を…ブツブツ」

 

「……?偶には人にも聴いてもらいたいんですよ、お願いします」

 

途中から呟くような声量になった為、後半は聞き取れなかったがあまり感触はよくない。カゲはここぞとばかりに押しの姿勢に出た。

 

「むぅ…一曲だけじゃぞ」

 

「はい」

 

勝った。カゲは内心でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

†††††

 

代わってこちらは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一行。

魔導四輪車を奪われはしたが、カゲが手負いだった事もありなんとか走ってクローバーまで追い付く事が出来た。

 

「どこだ、どこにいるカゲ…!」

 

アルトが林の中を見回していると、隣からグレイの声が聞こえてきた。

 

「いたぞ!じーさんも一緒だ!」

 

(マスターも!?ヤバいだろ!)

 

マカロフとカゲが向かい合っている状況を発見したアルト達は、カゲを止める為2人の方へ走り出そうとする。

 

「しー、邪魔しちゃ駄目よ」

 

だがしかし、それは横から現れた女口調の男性によって遮られた。突然の奇人の登場にルーシィ達が困惑するが、アルトとエルザはその姿に見覚えがある。

 

「「青い天馬(ブルーペガサス)のマスター!」」

 

「「「マスター!?」」」

 

「そんなに驚かなくてもいいでしょ。というかアンタ達みんな可愛いわね」

 

(何この人、オカマ!?)

 

 

 

 

「どうした、吹かんのか?」

 

 

そんなやり取りをしている間にマカロフがカゲに笛を吹くよう促している。

 

「ヤバい!」

 

胸元のペンダントに手を当て、今にも飛び出していきそうなアルト。

 

「手ぇ出すんじゃねぇぞ、面白ぇとこなんだからよ」

 

今度は帽子を被った初老の男性がそれを止めた。

 

(四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)のマスター…!)

 

左右から2人のギルドマスターに塞がれアルト達もいよいよ手が出せない。

 

 

 

 

「ほれ、いいから吹いてみろ」

 

一向に笛を吹こうとしないカゲにマカロフが焚き付ける。

 

(そうだ、吹けば…吹きさえすれば…)

 

自分は何を迷っているのか、笛を吹いたらそれで終わりなのに。

しかし、吹いたとして今のカゲには吹いた後の変わったと思える未来が思い浮かばない。それがひどく不安でカゲは中々笛を吹く事が出来ない。

 

「不安か?」

 

「っ!?」

 

心を読まれたかのようなマカロフの発言に、カゲは驚く。この感覚は動揺というよりは戦慄に近い。

 

「どんなに強い魔法を持っていたとしても、人間は1人では弱い生き物じゃ。不安にだって勝てはせん」

 

「「「………」」」

 

語り始めたマカロフの言葉を、カゲは勿論、周りにいるアルト達もいつの間にか聞き入っていた。

 

「1人で、勝てないのならば仲間と共に立ち向かえばいい。その為のギルドじゃよ。仲間を思い、寄り添って歩む事で人は強くなる。魔法も、そして心もな。」

 

「……」

 

エリゴールには耳を切られた、カラッカには背中を刺された。しかし、カゲにとっての仲間は鉄の森(アイゼンヴァルト)のメンバーだ。その気持ちに嘘はつけない。

 

「お前さんにだって仲間がおるんじゃろ?だったらそんな笛は頼る必要はないんじゃないかのう…」

 

「全て、お見通しなんですね…」

 

「はて、何の事かの」

 

例え本当に知らなかったとしても、自分は間違いなくマカロフと、そしてアルトの言葉に何かを感じた。信じてみたくなった。そう思うようになってしまったカゲはもう呪歌(ララバイ)を吹く気にはならなかった。

 

「参り、ました…っ!」

 

負けを認めたカゲはそのまま膝を地に付ける。それを黙って見届けたマカロフに声がかかる。

 

「「マスター!」」

 

「じっちゃん!」

 

「じーさん!」

 

上からアルト、エルザ、ナツ、グレイ。4人ともマカロフが問題を起こす前に止めようと思っていた者達だ。

 

「な、なぜお前らがここに!?」

 

マカロフの疑問に答える者は誰一人おらず、エルザは鎧のまま彼に抱きつきダメージを与え、ナツはすげぇと感心しながら頭をペチペチしたりと、会って早々やりたい放題である。

そんな彼らを横目にアルトはカゲに近寄る。

 

「大したもんだろ?ウチのマスターは」

 

「いつの間にか分からなくなってたのかもしれない。何が正しいのかも、仲間が何なのかも…」

 

まだ少し放心しているのか、カゲが独り言のように返事を返す。

 

「今それが分かったんだったらそれでいいんじゃないか?」

 

「……」

 

「ほらー!アンタは病院行くわよ!」

 

途中、カゲが黙り会話が途切れた所でルーシィが割り込んでくる。何だかんだ言いながら相手の事を心配しているルーシィの姿が可笑しくてアルトはついつい笑ってしまった。

 

 

 

 

 

『全く…ドイツもコイツも…』

 

「…?グレイ、何か言ったか?」

 

「いや、俺じゃないが…」

 

『こうなったらワシが自ら喰ってやる…!』

 

突然聞こえた謎の声。全員が声の発せられている方に目を向けると呪歌(ララバイ)の髑髏の意匠から煙が漏れ出ている。

 

「煙が何かの形になってく!」

 

ハッピーの言うとおり、空に昇る煙は段々と集まっていき、木でできたような巨大な怪物に変わった。

 

『さぁ…貴様等の魂をいただこうか』

 

「おいおい、コイツぁ生きた魔法…“ゼレフ”の魔法か!?」

 

「ゼレフ…」

 

黒魔導士ゼレフ。魔法界の歴史上最も凶悪と言われる魔導士。その名前にアルトは何か引っかかりを感じるがそれが何なのかは思い出せない。

 

「僕は知らない…こんなの知らないぞ…!」

 

いきなり現れた化け物に怯え始めるカゲ。そんな事は関係ない呪歌(ララバイ)の怪物は人々の魂を喰らう為、口から死の音色を吐き出そうとする。

 

「やらせるかよ!」

 

それを阻止しようと、アルト、エルザ、ナツ、グレイの4人が立ちふさがる。

 

「俺がドデカいので倒す!それまで足止め頼むぞ!」

 

「「おう!」」

 

「了解した!」

 

アルトが指示を出すと3人はそれぞれ怪物に突っ込んで行く。

 

「さてと。カゲ、見せてやるよ。人を守る魔法ってのをな」

 

「……」

 

カゲの前に立っていたアルトは大地の剣を錬成すると下へと振り下ろすような構えとなる。

 

「いくぜ…チャージ!」

 

そう叫んだアルトの周りから黄金色のオーラが発せられ、大剣に纏われていく。

 

(まずはファースト…)

 

まだ完全な溜めが終わっていないアルトは不動のまま、仲間達の戦いに目を向けた。

 

 

 

 

「はあぁっ!」

 

まず先陣を切ったのはエルザだ。駅で男達を倒した天輪の鎧に換装し、剣の連撃を足元に当てバランスを崩す。

 

『ぬぉ!?』

 

よろけた怪物を今度はナツが足に炎を纏って蹴り上げる。

 

「おらぁ!」

 

顎を蹴られた怪物はふらつきながらもなんとか体勢を立て直す。

 

(セカンド…あともうちょい!)

 

溜めが第二段階まで到達したアルト。完全に溜め終わるまであともう少しだ。

 

 

 

 

『おのれぇ…!』

 

先程から攻撃を受けてばかりの怪物も反撃とばかりに口から砲弾を放つ。

 

「よっと!」

 

空中にいたナツは手から炎を吹き出しそれを軽々と避ける。が、砲弾はそのままアルト達のいる方へと向かっていく。

 

「何やってんだクソ炎!」

 

アルトの前に立ったグレイは両手を合わせながら魔力を込める。

 

「アイスメイク…“盾”(シールド)!」

 

着弾の直前、グレイが氷で作り上げた盾が全ての砲弾を防いだ。

 

「よし…皆離れてろ!ドデカいのぶっ放すぜ!」

 

そして仲間達が繋いだ時間でアルトは剣に大地の力をフルで溜め込む事が出来た。

 

『ぐぅ…』

 

怪物が蓄積したダメージで怯んだその瞬間、アルトは大地のオーラによって巨大化した剣を振り下ろす。

 

大地衝断(グランドフィナーレ)!!!」

 

『ぐ、ぐぉっ!?』

 

「うおぉぉぉぉおっ!」

 

怪物の身の丈と同等の大きさの剣を力を込めて振り切る。

 

『ば、馬鹿な…!こんな事がぁぁぁ!』

 

オーラの剣は怪物を両断し、その勢いで地響きを立てながら地面と衝突した。

 

「見事」

 

定例会に来ていたギルドマスターが唖然とする中、マカロフだけは笑みを浮かべていた。

 

「ふい~、お疲れさん」

 

ミラが思い付きで名付けた妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チーム。今日の彼らの活躍は正にその名通りのものとなった。

 

「アルトー!」

 

完全勝利に浮かれたのか、走ってきたルーシィがアルトに抱き付く。

 

「うおっ、ルーシィ!?」

 

「お、天下の魔導騎士(エクィテス)もこういうのは弱いのか」

 

突然の事に驚くアルトと、珍しいものが見れたとそれをからかうグレイ達。

こうして見ればただの若者の様に見える彼らがあの呪歌(ララバイ)の怪物を倒したとはギルドマスター達にはにわかに信じられなかった。

しかし、煙となって消えていく怪物と、崩れ落ちた定例会会場がその力は本物だと証明していた。

 

魔導騎士(エクィテス)の二つ名は伊達ではないという事か…」

 

「うむ…」

 

 

 

 

 

「「「「「ん?」」」」」

 

何かがおかしいともう一度あたりを見回す。はしゃいでいる妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々と、煙となって消えていく怪物と、崩れ落ちた定例会会場。

 

 

 

 

 

崩れ落ちた定例会会場。

 

「「「「「ふぁっ!?」」」」」

 

「会場が粉々じゃ!」

 

全員の視線は当然、アルトの方へ向く。

 

「……」

 

「アルト?」

 

「ごめんなさい!」

 

魔導騎士(エクィテス)は逃げ出した!

 

「「「追えー!妖精の尻尾(フェアリーテイル)を捕まえろー」」」

 

 

 

 

「全く…何が“人を守る魔法”だ。滅茶苦茶じゃないか」

 

辺りを見ながら苦笑してそう呟くカゲ。

 

「僕も彼らの様になれるかな?」

 

慌てて逃げる妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一行を見送りながら誰に聞くでもなくそう問いかけたのだった。




なんとか、なんとかララバイ編が終了しました!

原作では次はデリオラ編。しかし次回からアルトは…

引き続き感想やご指摘、質問などお待ちしています。

以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ
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