FAIRY TAIL ~魔導騎士と星の姫~ 作:ジャージ王子
「フリ~ダァーーーーム!」
4人まとめて牢屋に入れられたら翌日、アルト達の言っていた通り彼らはその後何もされることなくギルドに帰ってきた。
「ったく、うるせーヤツだな。お前だけ牢屋に残ってくりゃ良かったのによ」
「んだとグレイ!」
2人が連れていかれた当初は不穏な空気だったらしいギルド内もすっかりいつもの調子に戻っている。
「グレイだって心配してた癖に。素直じゃないわね」
「アイツらしいけどな」
一種の習慣のように始まったナツとグレイの喧嘩を見ながら会話をしているのはカウンターに立つミラとアルトだ。その横にはテーブルの上にちょこんと座っているマカロフがいる。
「あ、そうだマスター。近々俺、評議院の“アレ”こなしてくるから」
「…そうか。苦労をかけてすまんな」
「大丈夫だって。マスターもミラもそんな辛気くさい顔って…ん…?」
話してる途中でアルトが何か違和感を感じる。
「どうしたの?アルト」
「眠くなってきた…」
「“ヤツ”じゃな」
「あ」
アルトとマカロフの言葉を聞いているとミラも次第に瞼が重くなっていくのを感じる。彼女だけでなく酒場にいるほとんどが眠りに落ちてしまった。
「ミストガン」
おそらくこの中で唯一起きていたマカロフが酒場の扉を通ってきた人物に話しかける。目元以外の全てを覆い隠しているその男は返事をする事なくクエストボードの依頼書を一枚ちぎりマカロフの下へ持ってきた。
「行ってくる」
「眠りの魔法を解いてから行かんか!」
「直に解ける」
短く言い残しミストガンと呼ばれた男は霞のように消えていった。
「「「!!!」」」
「この感じミストガンか!?」
「相変わらずすげー眠りの魔法だな…」
ミストガンの言った通り、彼が去ってすぐに全員の眠りの魔法は解かれた。ただ1人、ナツだけが未だに寝続けているが…
「ミストガン?」
久しぶりに現れた男の話題でギルド内が盛り上がる中、ルーシィだけはその名前に疑問符を浮かべていた。
「
「なんか怪しい人ね…」
「だからマスター以外にミストガンの顔を知ってるヤツはいねぇんだ」
「俺は知ってるぜ。あとアルトもな」
ルーシィの疑問にグレイが説明していると上から別の声がした。
「「「ラクサス!」」」
「あの人が…」
「そう、もう1人の最強候補。ラクサスだ」
他の者とは違い、2階からギルドメンバーを見下ろす形になっているラクサス。その目は“見下ろす”ではなく“見下す”ように思える。それを察したのか少しばかりグレイはイラついた様子だ。
「ミストガンはシャイなんだ。あまり詮索してやるな」
「ラクサス!俺と勝負しやがれー!」
いつの間にか目を覚ましていたナツはラクサスの姿を見た途端2階に登るため階段へと走り出していく。
「お前はまだ駄目だ」
「ふごっ!」
しかし、カウンターから出てきたアルトの腕に首を引っ掛けられて止められてしまった。
「はははっ!だせぇなナツ!」
「ラクサスもナツを煽るのは止めろ」
アルトとラクサスが目を合わせると周りのメンバー達が気まずいような、そんな空気が漂う。
(…?アルトとラクサスって人は昔パートナーだったんじゃないの?なんか変な雰囲気だけど…)
昨日、ラクサスの話題はエルザの口から出てきたのみで“アルトとよくクエストをこなしたパートナー”のような印象で頭に留めておいたルーシィだったが、どうやら何かの因縁があるようだ。
「ったくアルト…。おめぇもすっかり落ちぶれちまったなぁ」
「何?」
「そんな弱ぇヤツらと群れやがって。あの頃より弱くなったんじゃないか?」
「んだとー!もういっぺん言ってみやがれ!」
「お前は静かにしてろ」
「ふぶっ!」
未だ叫ぶナツに対して今度はアイアンクローで口を塞ぐ。アルト自身言い返すことはしないが視線は決してラクサスから外さない。それは相手も同じようでお互いに敵意が無いという事が見ている者達にとっては救いのようではあった。
「いい加減にせんか、ラクサス」
「はっ!これだけは言っておくぜ。
マカロフがなだめた後、ラクサスはギルドメンバー全員に伝えるかのように宣言して去っていった。
†††††
「2階って何がある所なんですか?」
一悶着終えてしばらくが経ち、ルーシィがアルトやミラのいるカウンターにやってきていた。
「2階のクエストボードにはこの階に貼ってある依頼とは比べものにならない位に難しい仕事が貼ってあるの。私達はS級クエストって呼んでるわ」
「S級…」
「S級クエストは危険が多いからアルト、エルザ、ラクサスやミストガンみたいなマスターに認められたらS級魔導士しか受けられないわ。危険度が高い分、報酬も良いのは確かだけどね」
「へー…」
ルーシィには、ミラの横でプルーとじゃれているアルトが死のリスクを伴う危険な仕事に赴くとはあまり想像できなかった。
(アルト…今はいつも通りだけど、さっきは別人みたいだったなぁ…)
ラクサスと対峙していた時のアルト。今まで見た事のない無機質のような印象がルーシィの頭から離れない。
(思い切って聞いてみる?いやでも、触れられたくない事だったらどうしよう…)
う~んと呻きながら手を組んで考え込むルーシィ。
「ルーシィは何を唸ってるんだ?」
「ププーン?」
そんな様子を見たアルトとプルーの声もルーシィには聞こえていないようだ。
(んー!やっぱり気になる!)
「アルト!」
「なんだ?」
「あのね…!「アルト・イミテイティヴ氏はいらっしゃいますか?お迎えにあがりました」…へ?」
意を決してラクサスとの関係を尋ねようとしたルーシィ。しかし、その言葉は酒場にやってきた人物の声によって切られてしまった。
「来たか、案外早かったな…」
アルトもそれを予想していたようで、あまり驚きもせず掴んでいたプルーの手を離した。
「んじゃマスター行ってくるよ」
「気ぃつけて行くんじゃぞ」
「無理はしないでね…」
「あぁ」
ルーシィだけが意図を汲み取れていないが、この重い雰囲気はまるで先ほど話していたS級クエストに送り出しているように思えた。
「アルト、仕事に行くの?」
「ん、ちょっと評議院からのお達しでな」
「だったらあたしも…「駄目だ」…え」
ルーシィがこのギルドに入ってから、アルトの仕事にはほとんど同行していた。だから当然のように今回も行けるものだと思っていた。
「評議院から俺への依頼は大体が誰かが失敗した事例のある仕事、ほとんどS級と同じだ。だからルーシィは連れて行けない」
「S級って…!アルト1人で行く気!?」
嫌な予感が当たったルーシィは声を強めて尋ねる。
「あー、心配するなって。
「……」
アルトが言っても強い視線でアルトを通そうとしないルーシィ。その目には涙が浮かんでいる。
その様子を見てため息をついたアルトはルーシィの頭に手を乗せた。
「絶対帰ってくるから。約束する」
「……うん」
「よし!プルーもルーシィの事頼んだぞ?」
「ププッ!」
アルトに言われ敬礼のようなポーズをとるプルー。そんなプルーの頭にも手を置いた後、アルトは扉の前で立っている使者の元へと向かった。
†††††
評議院からの直接の依頼、と言っても依頼をしてくる評議員はジークレインだけだ。彼は評議員になってすぐにアルトに目を付け、依頼を持ちかけた。当初のアルトはそれを断った。しかし、そこでジークレインはある取り引きを提示する。問題児ばかりの魔導士ギルド
「で、今回はどういう仕事なんだ?」
酒場を出ると使者が馬車と共に待っており、アルトはそれに乗って目的地に向かう事となった。
「内容は討伐。ただし対象が少々厄介なようでして…ロウアーの街はご存知ですか?」
説明をしているのは先日のカエルとは違い人間の使者だ。ショートの金髪に眼鏡が特徴の女性で、アルトが評議院からの依頼を受ける時は基本的に彼女がやってくる。
「たしか商人の街だろ?街全体が壁に囲まれてるとかいう…」
「その通りです。商人の街だからこそのある意味での防御壁。今回はそれが仇になりました…」
「立てこもりって事か?そうなると相手は闇ギルドとかか、面倒くさいな」
アルトの愚痴に金髪の秘書官は言いづらそうに否定をした。
「そうではないらしいんです…」
「?」
「街から逃げてきた商人の話によると襲ってきたのは“白い化け物だった。それも一体だけだった”…と」
「……。街の中に取り残された人は?」
「いません。ロウアーの街はほとんど流れ者の商人ばかりなので家なども少なく素早く非難を完了させる事が出来たそうです。現在は街の近くにテントを張って集落を作っているのだとか」
「たくましいな…。最後に1つ、この仕事“何人が受けた”?」
その言葉を聞いて秘書官が少し口をつぐんだが、意を決したように話し始めた。
「確認しているのは3人。最初と2回目は小規模ギルドの魔導士が向かいどちらも音信不通に。事を重く見た評議院が危険度を上げた後
「なるほどね、そりゃ昨日の今日でお迎えが来るわけだ」
アルト自身、この仕事に誰かを連れて来なくて正解だったと思った。想定されるのは市街戦、しかも相手は人間でない分行動の予測が困難だと考えられる。
(さて、どうするかな…)
まだ到着には時間がかかるだろう。車窓から沈みかけた夕日を眺めながらアルトは予測を立てる事から始めた。
原作ではガルナ島編ですが、アルトはそちらとは別行動となります。さてさてどんな形で原作に復帰するのでしょうか。
感想やご指摘、質問などお待ちしております。
以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ