FAIRY TAIL ~魔導騎士と星の姫~ 作:ジャージ王子
「お前は一体何なんだよっ!」
ホワイトマンはただ口を吊り上げるだけ。
しかし、その態度が逆にアルトに冷静さを取り戻させた。突然の奇襲に頭に流れ込む悲鳴のような音。予想外の連続に対処しきれなかったものの、少し時間を置けば頭も回り始める。やはり言葉は通じていない。改めてそう感じたアルトはらしくなかったと呼吸を整え困惑していた自分を静める。
(どういう原理か知らないが、剣がぶつかり合うと悲鳴が流れ込んでくる…)
だったら…と呟き風の剣を錬成したアルトは刀身を自分の前で水平に構える。
「吹き飛べ、
「───!!」
ウインドの能力で圧縮された空気が砲弾のように撃ち出され、一瞬にしてホワイトマンに直撃する。回転しながら吹き飛んだホワイトマンはそのまま塔の外壁に衝突、口からなにやら液体を吐き出した。しかし、それは血の赤ではなくやはり銀、水銀のような液体状の金属だと見て取れる。
「化け物だとは分かってたが、生き物でもないか…」
目を向けた先にいるホワイトマンはアルトの予想通り痛みを感じていないような様子で呆気なく立ち上がった。真空の砲弾は対人戦で気絶させる為に使ったりもする。今回はそれより威力を上げて撃ったが、それでも足りなかったようだ。
「…──」
感情は無いと言っても本能は持ち合わせているようで、アルトを危険だと感じ取った怪物は少しの間考え、そしてホワイトマンは判断した。逃げる事はしない、今ここで消すべきだと。
「───────!!!」
そうと決めてからの行動は早かった。全身のバネを使ってアルトへ突っ込む。
「……」
しかし、冷静さを取り戻したアルトはいとも容易くそれを避ける。奇襲をかけたとはいえ、先程まで防ぐので精一杯だった相手がこうも簡単に避けるとはホワイトマンにとって予想外の事だった。一方、アルトにとってはこれが当たり前の事であった。自身の魔法の性質上、相手に対して優位な属性を使い分ける為にはよく相手を視る事が必要になる。度重なる戦闘でその行為を繰り返す内、アルトは見切りの技術を達人の域まで磨き上げていたのだった。
「はっ!」
相手の隙を狙い、少し距離を空けた状態で風の弾丸を飛ばす。ダメージはない、もしくは感じない身体であったとしても反動は受ける。風の弾丸はホワイトマンの剣状の腕に当たり、その腕はあらぬ方向へと弾かれる。
「────!」
普通の人間では折れていて動かせない腕を無闇やたらに振り回し、ホワイトマンは攻撃を続ける。
(動き自体は単調、軌道の予測もし易い…)
その攻撃を避ける度にアルトはカウンターとして素早く風の弾丸を放つ。小さく、積み重ねるように。それは先日のエルザとナツの戦いにおいてエルザがとっていた戦法と同様だ。人間ならこれで体力や集中力を削れるが、相手は人外。腕を折っても、頭部に重ねて当てても勢いが衰えない。
(後はこの勢いを止められれば…)
次の突撃に備え構えようとした瞬間、それはごく自然に、ホワイトマンにとっては当然とでも言ったように行われた。
何度も風の弾丸を受け折れた右腕、その腕の普通ではありえない上側を向いている肘から細身の刃が飛び出してきた。
「なっ!?」
腕が剣になるのだ、全身が武器に変わる事は予測していた。しかし、肘から剥き出しになった骨が刃になるとは考えていなかった。
「ちっ!」
よくよく考えれば予想できた筈だと自身に舌打ちし、剣で弾こうと試みる。しかし、射出されたことにより勢いがました刃は既にアルトの間合いの内側の死角にまで到達しており防ぐ事は不可能。今でも距離が近づいてきているそれを避ける事も当然出来はしない。
(ヤバいっ!)
刃はアルトの額目掛けて飛んでくる。腕で防ごうにも間に合わない、もはや絶体絶命、刃を見ている事しか出来ないアルト自身がそう感じていた。
刃がアルトに着弾するその瞬間…
「…ん?」
しかし、その瞬間はいつまで経ってもやってこなかった。
刃はアルトの顔面ギリギリの所で止まっている、刃が直進しようと未だにカタカタと動いているので何か見えないものに遮られている、という表現が正しいかもしれない。
「魔法…なのか?」
そう呟くと同時に正面に立つホワイトマンとは違う方向から息を切らしているような荒い呼吸が聞こえてくる。ゆっくりと振り向くと1人の中年男性がゼーゼー言いながら立っていた。なにやら構えている所を見ると、どうやらこの男が刃を止めたらしい。
呼吸を整え終えた男はニィッと笑い話しかけてくる。
「よぉ、間一髪だったな、あんちゃん」
「………誰?」
†††††
「はぁ~ぁ…」
偶にはベテランの意地を見せてやると意気込んでロウアーの街にやって来たはいいものの、初日に出くわした討伐対象は身体が剣になる想像以上に危険な怪物だった。幸い彼の防御向きの魔法で難を逃れてこの廃墟までやってこれたのだが、そこからが問題。自分1人で対象を倒す事はまず不可能、かと言って怪物がうろつく一種の閉鎖空間であるロウアーの街、一体どうやって門まで戻るのか、と。
(数日もしたら俺みたいに新しい魔導士がこの街に来るだろうよ…)
そんな風に思い待ってみる事2週間、一向に魔導士がやってくる気配がない。もしかするとやって来たがあの白いのにやられてしまった可能性もある。そうなるとあまり考えたくないが、外の世界では自分は名誉の戦死扱いにでもなってるのではないかと思い始めてきている。実際、廃墟に隠されていた缶詰めや水で食いつないできたが、それも3日前に尽きてしまい、いよいよ体力よりも生命の危険を感じているのも確かだ。
「う゛ぁ~~~~~~!」
怪物に聞かれても構わないと大声で呻き大の字に倒れる。
ここで人生が終わってしまう、そう考えると色々な思いが頭から吹き出してくる。死ぬまでには結婚したかっただとか、主にそんな事ではあるが。
ドゴォォーン!
「っ!?」
そんな中突然鳴り響く轟音。今まで怪物がこのように見境なく暴れ回る事はなかった。そうなれば、新しい魔導士が戦闘を行っているのではないかという予想もつく。
(行くしかないでしょうよ…!)
もし、怪物しかいなかったとしても今更構いはしない。どうせ後数日すれば餓死する未来が待っているのだから。自分にそう言い聞かせてワイルは残りの体力を総動員して音のした方へと走り出したのだった。
†††††
そして現在、街の中心部までかけつけたワイルは結果としてアルトの命を救ったのである。
ワイルの視点から見てもアルトと刃の距離は正に紙一重、本当にギリギリの所だった。ふぅ、と安堵の息をもらしたワイルは魔法を解除、すると同時に止められていた刃も力なく地面に落ちた。
「うぐっ!」
力を抜いた途端、ワイルの身体もまた膝から崩れる。長距離ではないとはいえ3日飲まず食わずの状態で全力疾走をし魔法を使ったのだ、体力はとうに限界に達していた。
「おいおい、大丈夫かアンタ!?」
アルトは慌ててワイルの元へ駆け寄るとすぐに顔色や状態を診る。
「へへへ、年甲斐もなく無茶しちまったかな…」
「無理して喋んなくていいって…!」
やつれたその表情を見る限り今すぐ危険といったレベルではないが、このまま置いてホワイトマンとの戦闘を続けるのは得策ではないだろう。そう判断したアルトはワイルのから少し離れてホワイトマンと対峙する。
「今度は手加減なしだ、終わらせてやるよ…!」
ウインドを大振りに構え、先程とは比べものにならない程の風を剣に纏わせる。その影響でアルトの周りに空気が収束されており、その様はまるで小さな竜巻のようであった。
対面しているホワイトマンもまたアルトの剣が放つ魔力を感じ取っており、それが危険だとは察している。だが今までアルトに与えられたダメージが蓄積し身体を思うように動かす事が出来ない。
「いくぜ、
咆哮と共に振りかざされた剣、しかしそれまでに起こっていた荒々しさに一転して何も起こる事なく一瞬の静寂が訪れた。
「…───?」
ホワイトマンは何が起こったのか分からず硬直する。あれほど膨大な魔力が一瞬にして消えた。一体どうなっているのか?
「─!?!?」
突然、ホワイトマンに襲いかかる衝撃、攻撃を受けたのだと判断する前にまた一つ、また一つと絶え間なく風の刃がホワイトマンを切り刻んでいき、斬撃から抜け出す隙がまるでない。それでもホワイトマンは風に包まれながら必死にもがく。
「真空の刃はお前が消え去っても続く、耐えられるなんて思うなよ?」
そう言ったアルトは剣をペンダントに戻すとホワイトマンに背を向けワイルの方へと向かって行った。
「─────────!!!」
アルトに対しての恨み言なのか、それともただの雄叫びかその真意は誰にも分からないまま金切り声と共に白き怪物はその身体を一片も残さず無へと帰していった。
ワイルのおっちゃんはガンダムUCのジンネマンみたいなイメージ。フェアリーテイルにそういうタイプのオヤジがいてほしいとか思ってます。
感想やご指摘、質問などお待ちしています。
以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ