FAIRY TAIL ~魔導騎士と星の姫~ 作:ジャージ王子
ここまで更新期間をあけてしまって本当に申し訳ないです…
感想欄以外にも直接メッセージを送ってくださった方々ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い致しますm(__)m
時刻は陽もすっかり落ちた夜。戻ってきた避難キャンプでアルトは星空を見上げながら先の戦闘を振り返っていた。
謎の悲鳴に巨大な球体、ワイルを街の外へ連れていく為に確認する事はしなかったが、この日は不可解な出来事が多かったように思える。そしてもう一つ、アルトには引っかかる事があった。
「………」
ホワイトマンの刃が飛んできたあの時、確かな死を感じながらもアルトは思った。「ここで死ねない、死にたくない」と。
今までの自分では考えられない事だった。7年前、
「だから俺は…」
無価値な自分を犠牲にしてでも価値ある人達を守る。いつの間にかこの考えがアルトの生き方になっていた。
─魔法は人を守る為、笑顔にする為の希望の力
この言葉が頭から離れなかったというのもあるが、自分を犠牲にする事は優先順位の上で当たり前なのだと疑いもせず生きて、その裏で人らしさを手に入れたくて過去の記憶を追い求めた。
─過去を持っていなければ生きている意味などない、記憶がないままならば死すらも受け入れられる。
歪みや矛盾したものだと分かっていてもその考えは渇望した自我の一部なのだろうと期待して生きてきた。
─ならば何故死を恐れたのか?
自分可愛さなどでない事は言い切れる。アルトは自分に価値を見いだしていないのだから。
─ならば何故死を恐れたのか?
「………」
答えなど出てこない。アルトを責めるかのように積もっていく一方的な自問。それを消し去る答えをアルトは見つけられない。
「結局、何も変われてない…か」
自嘲した笑みを浮かべながら吐き捨てる。周りから変わったと言われようと、結局根の深い部分は何もない空白のまま。過去の自分を取り戻せず、新しい自分にもなれてはいない。
「まるであのホワイトマンと同じだな」
自身の手で無になるまで消した怪物。そうまで徹底的にしたのはもしかしたら戦闘時から同族嫌悪のようなものを感じていたからかもしれない。
「……」
一瞬、自分の中に黒い何かが生まれたような気がして考えを止め、押さえ込んだ。
誰にも見せないように。
誰にも察せられないように。
“彼女”に会う時に気付かれないように。
†††††
翌朝、アルトはワイルのいる救護テントに向かった。
「よぉ、あんちゃん。助けたつもりが助けられちまったみたいだな」
テントに入って早々にワイルが話しかけてくる。その顔色は昨日の弱った状態が嘘だったかのように健康そのものだ。
「普通ならあと3日は寝込んでいてもおかしくはないんですが…」
一緒にやってきた秘書官が隣でブツブツと呟く。
(このおっちゃんはギルダーツとかそういうタイプな感じがするしな…)
対してアルトは慣れているせいか、しぶとそうなおっちゃんという感覚で秘書官からワイルに視点を移す。
アルトの目の前に立つワイル。中年らしい少し太った体型をしてはいるが彼自身の貫禄によるものかそれがマイナスのイメージには感じられない。
「今日も街の中に入るのかい?」
「ん?…あぁ、そのつもりです」
ワイルを観察していた為、突然話しかけられて一瞬、返事が遅れた。対してワイルはアルトの言葉を聞いてすぐにニィと表情を明るくする。
「やっぱりそうか!手ぇ貸すぞあんちゃん」
「え?いやいや、流石に病み上がりに無理はさせられないですよ」
突然の申し出に驚きながらも断るアルト。しかしワイルはその言葉を聞き入れることなくアルトの方へ近寄って耳元で話しかけてきた。
「あんちゃんも見たんだろ?あの金属の球体を。俺はそいつと白いバケモンの関係を知ってる」
「!?」
時計塔の内部にあった謎の魔力を発する球体、今日はそれを調査する為に現地入りしようとしていたが、ワイルは既にその秘密を知っていると言うのだ。
「どうして…っ!?」
どうして知っているのか、その質問を遮るようにワイルは強引に肩を組んできた。
「まぁまぁ、現地に向かいながら作戦でも立ててしこうや。そういう訳でそこのねーちゃん、ちょっくら2人であの街に入ってくるわ」
「え!?あの…ちょっと!」
突然の事に事態を把握しきれていない秘書官に背を向けワイルとアルトはテントを出て行った。
(アルトさんを街まで連れていくのは私の仕事なのに…!)
†††††
「で、何でテントで話してくれなかったんですか」
避難キャンプから少し先の林に入った所で抵抗もせず連れてこられたアルトが口を開いた。
実際に球体を目撃したのはおそらく自分とワイルのみ、ならば秘書官達の前で話したとしても通じることはないので避ける必要はない筈だ。
「お前さん、あの球体に近づいた時どう思った?」
「………」
言葉では言い表せない不快な感覚、その為アルトは口には出さず苦い表情で答えてみせる。
「まぁ、そんなもんだろうな」
ワイルもその表情でアルトが何を言いたいのか察しがついて苦笑する。
「じゃあよ、あんちゃん。お前さんはなんであの球体があんな禍々しい魔力を帯びていると思う?」
「………」
分からなかった、その為下手な推測はせずワイルの解答を待つ。
「俺の予想ではあるんだが…あの球体には、人の怨念みたいなもんが詰まってんのさ」
「怨念?」
聞き返してみたものの、そう言われればホワイトマンから発せられた悲鳴のようなものにも納得がいく。
しかし、そこで新しい疑問が浮上する。
「何でワイルさんがそんな事を知ってるんですか?」
お互いに足を動かすのを止め立ち止まる。アルトにいたっては臨戦態勢の一歩手前だ。返答次第によっては戦闘もやむを得ないという意思表示と共にペンダントに手を触れている。
「見たからさ」
「見た…何を?」
「化け物があの球体に人を埋め込んでいるとこをだよ…目の前でな」
「なっ…!?」
「俺もあんちゃんと同じさ。自分より前にこのクエストに就いていた魔道士がいて、そいつと一緒に一旦逃げようとした」
重く語り始めるワイル。アルトはそれを静かに聞いていた。
「しかし、逃げようにも俺の魔法じゃあの怪物を怯ませることも出来なくてな…。結局、前任の魔道士は捕まり俺1人逃げて隠れ続けていたのさ」
自嘲的な話し方をするワイルだったが、アルトは責めることもなければ返事や相づちをすることもなかった。
「あの時に聞いた悲鳴は今でも頭から離れねぇ。だからか俺はあの街から出られなかった…」
一度息を吐き出し「けどよぉ…」と続けるワイル。
「ケジメはつけなきゃならねぇ。あの魔道士の為にも人任せで全部終わらせる訳にはいかねぇんだよ」
言い終わった後のワイルの表情はそれまでとは違い真剣そのもの。それを感じ取ったアルトはワイルに手を差し出した。
「行きましょう」
一瞬驚いた表情を見せたワイルだったが、すぐに意味を理解しその手を取った。
「よろしく頼むぜ、あんちゃん」
†††††
門から入り、街の中央にある塔までたどり着いたアルトとワイル。アルトは塔に向かう途中から近付くにつれ球体の放つ魔力を感じ始めており、重い扉越しの今の状況でさえ不快な感覚を拭えない。
「大丈夫かあんちゃん、顔色が悪いぞ」
「どうもこの魔力の濁っているような感じに慣れなくて…」
「そこまで魔力探知が出きるのか。俺はかろうじて魔力を発しているのが分かるくらいだがなぁ」
魔力探知の感度には個人差がある。とは言っても2人でこれほどまではっきりとした差が見られるのも珍しい事だ。
「とにかく、俺は大丈夫です。早く球体の所まで行きましょう」
そう言ってアルトが歩き出した時、“それ”は現れた。
「───────ッ!!」
「なっ!?」
咄嗟に剣を錬金し“それ”の奇襲攻撃を受け止める。
「あんちゃんっ!!!」
ワイルの言葉は届かなかった。それほどアルトは困惑していた。
鈍い銀色の光沢を放つ身体。
口以外の部位が存在しない顔。
刃に変形した腕。
そして頭にこべりついて離れない悲鳴にも似た金切り声のような発声。
「何で…」
そこには消え去ったはずの怪物、ホワイトマンが立っていた。
段々遠くなっているように感じますが、これの原作は間違いなくフェアリーテイルでございます。(前置き)
そろそろアルトを原作に戻していきたいですね。このオリジナルがどのように終わり、原作のどの部分からアルトが復帰するのか…楽しみにしていただけたら幸いです。
感想やご指摘、質問などお待ちしています。
以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ