FAIRY TAIL ~魔導騎士と星の姫~ 作:ジャージ王子
自分の環境が一息ついたのでこうして更新する事ができました。タルタロス編の終わり方次第で設定や展開を変更しなければな、と思っていましたが特に影響はなさそうなのでこのまま続けます!
再び出現したホワイトマンを辛くも退けたアルトとワイルは、いよいよ謎の球体のある時計塔に近づいていた。
「………」
現状、球体について分かっている事は
1.非常に強い負の魔力を発生させている。
2.ホワイトマンがこの球体の中に魔導士を吸収させていた。
といった点である。
思い返せば、アルトが球体に攻撃を加えようとした時、ホワイトマンがまるで守るかのように現れたのも何か意味があるのかもしれない。とは言え、球体とホワイトマンの明確な関係は分からないままである。
「おっと…」
少し考えながら歩いていたアルトの足がふらつく。先程の戦闘でかなりの量の魔力と体力を消耗した為、上手く力が出ない。
「ほれ、つかまっとけ」
そんなアルトを見かねてワイルがアルトに肩を貸す。一度とは言え、共に死線をくぐり抜けた2人には少しずつ信頼関係が芽生え始めていた。
「どうも」
軽く礼を返すアルトを横目で見てワイルはため息を吐く。
「どうもお前さんを見てると弟子の事を思い出してならねぇな…」
「ワイルさん弟子がいるんですか?」
「まぁ、“いた”っていう言い方が正しいんだがな」
「それって…」
つまりはもういないという事。アルトは迂闊に尋ねてしまった事を悔いた。
「あぁ!勘違いすんなよ、別に死んだ訳じゃあねぇ」
「え?」
「出て行っちまったのさ、ウチのギルドからな…」
あの馬鹿が、と小言で加えてからワイルは近くにある壊れかけの噴水に目をやった。
「お前さんの休憩がてら、少し昔話に付き合ってくれねぇか?」
†††††
辛うじて原形を留めている噴水に腰掛け、ワイルは話の続きを始めた。
「ソイツは昔、村を悪魔に襲われてな…。身寄りのない所を俺が拾ったんだ」
「悪魔…ですか」
アルトは先日倒したララバイを思い出す。
「それからアイツ、自分に魔法を教えてくれなんて言い出してよ。確かに、魔導士ギルドにいるのに魔法使えねえんじゃ話にならねぇから教える事にしたのよ」
迷惑そうに言ってはいるがその表情は嬉しそうで、拾ってからは息子のように感じていたのだろうというのが見てとれる。
「んで、数年したら泣き虫なガキは生意気なガキになっててよ…。両親を殺した悪魔を倒しに行くとか言い出しやがった。勿論俺は止めたよ」
別に心配してたとかそういう訳じゃねぇよ?と付け加え、アルトを苦笑させる。
「あいつにはまだ波動の全てを伝授していなかった。そんなんで悪魔とやらに挑んだとしても結果は目に見えてる。けど、あいつも誰に似たんだか頑固でな、結局仲間と一緒にギルドを抜けちまったのさ」
今じゃどこで何してるかサッパリだ、と少し複雑な表情を見せた。
全てを話し終えたのか、しばしの沈黙が訪れる時、アルトは思う。
(少し、その弟子の気持ちは分かる…)
記憶を探す為、いつか妖精の尻尾を出て行くかもしれない。今までの7年間そう考えながらも一度も行動に移した事はなかった。それは単に当てがなかったからかもしれないし、本当は出て行くのが怖かっただけかもしれない。アルトにとって妖精の尻尾は家であり、今の自分を形作る記憶そのものだったからだ。
(もし、記憶が戻ったら俺はどうするんだろうか)
今まで記憶ばかりを追い続けてその先の事など全く考えていなかったが、もし今でも本当に帰るべき場所があるのならば、自分はギルドを抜けてそこへ向かうのだろうか。
答えは出せなかった。
†††††
ある程度は魔力も回復してきたので休憩を終えて目の前に建つ時計塔へと歩を進める。
「さてと、準備はいいか?あんちゃん」
「いつでも行けます」
そうして階段を上った先に待っていたのは崩壊して無いに等しい扉。その空洞からは特有の魔力が流れ出ていて、やはりと言うべきかそこには変わらず球体が存在し続けていた。
相変わらず吐き気が込み上げてくる不快感があるが、そう何度も表情を崩されるのも癪なので、アルトは感情を表に出さないよう努めた。
「やっぱりありやがる」
目の前に立てばアルト程魔力の感知に長けていないワイルもその負の魔力を感じ取る事が出来た。
「……」
アルトは無言のまま剣を錬成し、球体に近付く。
ワイルもまた緊張を緩める事なくアルトを見つめた後、球体へと視線を移す。
「…ん?」
ごくわずかな小さな変化。先にそれに気付いたのはワイルだった。
「ヒビが入ってやがる…」
次の瞬間、小さかったヒビは上下に延びていき大きな亀裂になる。
「何!?」
その球体は卵であり、繭だった。
「まさか…」
魔導士という魔力を豊富に持つ生物はその中で身体を書き換えられる。肉は鉄に変わり、肌は銀に変わる。
「ホワイトマンが複数いたのはこういう事だったのか…!」
アルトが触れた悲鳴のようなノイズは正しく魔導士の悲鳴そのもの。今も流れ続ける魔力には魔導士の未練や怨念が込められている。
そして繭は完全に割れ、かつて魔導士だった白い怪物は産声という名の悲鳴をあげた。
†††††
「っ!」
ホワイトマンの姿を見て先に動き出したのはワイルだった。ホワイトマンとアルトの間に入ると同時に波動を掌に圧縮させ放つ。
「──────────ッ!!!」
しかしその攻撃も叫び声でかき消される。
「なっ…!?」
ワイルにとって今の攻撃は全力だった。いくらワイルとホワイトマンに力の差はあれど、これまでのホワイトマンになら怯ませる事は出来ていた筈。しかし今目の前にいる怪物はかつての怪物達とは違った。
「ワイルさ…!」
アルトがワイルに駆け寄るよりも先に、ホワイトマンがワイルの懐に潜り込む。
(いつの間に!?)
ワイルがそう考えた瞬間、自身の身体は宙を浮いて吹き飛んでいた。
「ワイルさんっ!!!」
吹き飛んだワイルは壁に衝突。そのまま力無く地に落ちていった。
「くそ…!」
今はホワイトマンを倒すのが先だと判断したアルトは三度、白い怪物を相手に剣を構える。
ホワイトマンと呼ばれているこの怪物は自身が生まれ出てくる球体を通して先に生まれた兄弟達の感覚を共有する事が出来る。故に今アルトの目の前に立つホワイトマンにとってアルトは自身の分身を二度も葬った敵だった。
「────────ッ!!!」
金切り声を発してアルトへと飛びかかった瞬間。
「なっ…!?」
ホワイトマンの上半身と下半身が離れた。
ボトッ、と鈍い音を立てて崩れ落ちた白い怪物は、先ほどアルトにやられた怪物と同じように全身にヒビが入り粉々に砕け散る。
それと同時にアルトも緊張の糸が切れたのか膝の力が抜ける。
「一体何が…」
「錬金魔法を受け入れる事の出来なかった肉体よ…。せめてその魂は安らかに天へと昇れ」
「っ!」
突然背後から聞こえてきた声にアルトが振り向く。
そこに立っていたのは髪が腰までかかるほど長い黒髪の青年。その青年はアルトの目の前で自身の持つ刀をピアスに変えた。
いつも自分が剣を待機状態のペンダントに変える時と同じように。
「まさか…錬金魔導士!?」
「記憶喪失というのは本当らしいな…。一応7年振りの再開だ、久しぶりだなアルト」
次回、オリジナル編ラストとなります。
感想やご指摘、質問などお待ちしています。
以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ