FAIRY TAIL ~魔導騎士と星の姫~   作:ジャージ王子

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第25話 どちらを取る?

錬金魔導士(アルケミスト)。特殊な魔法石を武器に変え、その武器に己の持つ潜在的な魔法能力を付加させる魔導士。錬金魔法は強力な反面、魔法石に適合できる者しか扱えず、いつの間にか過去の遺物となったある意味失われた魔法(ロストマジック)と言える魔法であり、その為現存する錬金魔導士はアルトのみと思われてきた。しかし、アルト自身も何故自分が錬金魔法を使えるのかは覚えていない。

 

 

そして、その答えを知る可能性を持つ者が今アルトの目の前に立っていた。

 

 

 

「久しぶり…だって?俺はお前の事は知らない」

 

「言った筈だ…7年振りだと。7年前、お前は確かに俺達と共にいた」

 

ドクン…!青年の言葉にアルトの心臓が高鳴る。彼は知っているのだ、自分の事を。恐らくそれだけではない。

 

「この怪物も錬金魔法に関係あるのか…?」

 

しばしの沈黙の後、青年は口を開いた。

 

「記憶をなくしたとは言え、錬金魔法の基本くらいは知っているだろう、錬金魔法はお前のペンダントや俺のピアスのような魔法石に適合できる者にしか扱えない。ならば適合できなかった者はどうなるか…」

 

その口ぶりにアルトは一つの仮説を立てる。

 

「まさか…」

 

青年はアルトを素通りし、先程のホワイトマンが生まれた球体の方へ近付く。

 

「そうだ、魔法石の魔力に耐えきれずに飲み込まれ、やがて全身が武器に変わっていき逆に自身の身体が魔法石に支配される」

 

「……」

 

アルトは咄嗟に自分の胸にあるペンダントに手を当てていた。

 

「そして生まれたなり損ないは、生物が持つ生存本能のままに活動をする。この球体も自身の分身を生み出す為にオリジナルのなり損ないが作り出した装置だ。お前も見ただろう?この街の異様な光景を」

 

「…あぁ」

 

思い出すのは初日に見た銀色のリンゴ。

 

「球体が放つ魔力は細胞に作用する。植物なら1日もせず全て金属化してあの通りだ」

 

「なっ!?」

 

アルトはそれを聞いてワイルの方へ駆け出そうとする。

 

「安心しろ、人間なら1ヶ月浴びなければ影響は出ない。ましてや魔力を持った人間はその影響はごくわずかだ。まぁ、この球体の中に入れられれば元も子もないがな」

 

「よかった…」

 

倒れて気絶しているワイルの横で安堵の息をつくアルト。

 

「変わらないな、お前は」

 

そう呟いた青年は球体を前にして再び刀を錬成し、一閃。

 

(速い…!)

 

その太刀筋はアルトですら捉える事が出来ず、斬られた球体はため込んだ魔力を放出しながら崩壊を始める。

 

「なり損ないは全滅し、球体も消した。これで奴らが増える事はない」

 

(終わったんだな…やっと)

 

この数日間は常にホワイトマンと戦い続けていた。そう思うと疲労感も込み上げてくるが、まだ安心は出来なかった。

 

 

 

 

「お前は何者なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

†††††

 

お前は何者なんだ?その問いに対して青年はアルトの目を真っ直ぐに見据えて答える。

 

「お前自身気付いている筈だ。俺はお前の失われた過去を知っている」

 

「……」

 

アルトもそれは分かっていた。しかし戸惑いを隠せない為か言葉にして口に出していた。

 

「お前の記憶を思い出させるのは無理でも、お前の過去を話す事は出来る。俺について来ればな」

 

「俺は…」

 

アルトは迷っていた。このまま過去を取り戻すべきか否か。勿論、今まで探し続けていた過去を知る事が出来るのならば彼に付いて行くが、妖精の尻尾の、ルーシィの存在がアルトを踏みとどませている。

 

「1つ言っておく。お前は自分の過去を知れば妖精の尻尾には戻れない、いや恐らく自分の意思で戻らないだろう」

 

「どういう事だ…?」

 

「お前の過去はそういうものだ。さぁ選べアルト。お前の未来を」

 

そう言って青年は懐にしまっていた新聞をアルトに投げ渡した。

 

「なっ!?」

 

受け取った新聞の1面を見て驚愕する。

そこには《妖精の尻尾崩壊!ギルド間での抗争が原因か?》という見出しと何かの攻撃を受け穴だらけになったギルドの酒場の写真が映し出されていた。

 

「妖精の尻尾が…」

 

「相手は幽鬼の支配者(ファントムロード)だ」

 

幽鬼の支配者。今までも何かと因縁を付けて妖精の尻尾と小競り合いをしていたが、ここまで大掛かりな進行はこれが初めてだ。ギルド間での抗争は評議院によって禁止とされているが、ここまでの事をすれば幽鬼の支配者はもう止まる事はない。

 

「昨日は遂にマスターマカロフが堕とされたらしいな。ギルドそのものの消滅も時間の問題だろう」

 

「マスターが…やられた…!?」

 

青年からもたらされる新たな情報にアルトの焦りは増す。妖精の尻尾の旗印であるマカロフが倒されたとなるとギルドメンバーの士気の低下は著しい筈だ。

 

「お前はどちらを取る?自分の過去か、消滅寸前のギルドか。この2つは決して相容れる事はない…さぁ、選べ!アルト!」

 

 

 

「俺は…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

†††††

 

 

マグノリアの街に黒煙が立ち上る。

 

敵地でマカロフを倒され撤退を余儀なくされた妖精の尻尾メンバー達だったが、再び戦力を整える前にマグノリアにマスタージョゼ率いる幽鬼の支配者が襲来。穏やかだったマグノリアの街はギルドの酒場を中心として戦場と化した。

 

幽鬼の支配者の破壊兵器、超魔導巨人ファントムMkⅡはナツやグレイ、エルザ、エルフマン達の活躍により機能を停止し、禁術“煉獄砕波(アビスブレイク)”による街の破壊は食い止めたものの、ジョゼが魔法で作り出した大量の幽兵(シェイド)とナツと同じく滅竜魔導士である鉄竜のガジルがいるため、妖精の尻尾は依然劣勢のままである。

 

 

 

 

 

 

「ご覧なさいルーシィ嬢、この光景を」

 

「……」

 

ここはファントムMkⅡの一室。ルーシィはこの中でジョゼに囚われていた。

 

ルーシィ、本名ルーシィ・ハートフィリア。彼女は巨額の資産を有するハートフィリア財団の令嬢であった。そんな彼女は父ジュード・ハートフィリアに反発して魔導士ギルドに入る為家を飛び出し、妖精の尻尾に加入した。しかし、ジュードはルーシィを家に連れ戻す為に幽鬼の支配者へ依頼。これを好機と見たジョゼはこうして妖精の尻尾への侵攻を行ったのだった。

 

モニターに映るのは数で圧倒する幽兵に圧されるカナ達妖精の尻尾のメンバーの姿。

 

「痛々しいでしょう?貴女が素直に家に戻ると仰られるのならば、これ以上の侵攻は止めにしましょう」

 

「……」

 

ルーシィは警戒しているのか返答はしない。ただ睨むだけ。

 

「嘘ではありませんよ?もう誰もが幽鬼の支配者と妖精の尻尾の実力の差に気付いた筈だ。私の幽鬼の支配者こそフィオーレ王国一のギルドだと分かっていただければそれで良いのです」

 

「妖精の尻尾は…負けない…!アンタ達みたいな卑怯なやり方しか出来ないヤツらが妖精の尻尾より上な訳ないでしょ!」

 

「まったく、捕まっているというのにその威勢。大したものだ。しかし少々やかましいですね…ガジルさん」

 

「あいよ」

 

ショゼに呼ばれ近付いてきたのは鉄竜のガジル。その名の通り鉄の滅竜魔導士である。

 

「やり方は任せます。少し黙らせておきなさい」

 

「いいんですかい?傷物になっても」

 

「程々ならかまいません」

 

「ギヒヒヒ」

 

独特の笑い声をあげながらルーシィに近付くガジル。

 

(アルト…!)

 

涙をこらえるようにぎゅっと眼をつむるルーシィ。言葉ではどんなに強く言ったとしてもその身体は恐怖に震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガジルーーーーーーーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

「「っ!?」」

 

 

雄叫びがファントムMkⅡの中全体で響き渡ると同時にガジルとルーシィの間の床が盛り上がる。

 

 

ドゴォン!!!

 

粉砕された床穴から全身に炎を纏った火竜が姿を現した。

 

「ナツ!」

 

「ルーシィ大丈夫!?」

 

「ハッピー!」

 

「おやおや。私とガジルさんがいる所に1人で来るとは…命知らずにも程がある」

 

「ナツだけではない!」

 

ジョゼを否定するようにルーシィの背後から聞こえる声。その方向へ振り返ると、先程まで戦っていたのだろう傷だらけになりながらここまで駆けつけた仲間達が立っていた。

 

「エルザ!それにグレイにエルフマン、ミラさんまで…!」

 

ハッピーによって拘束が解かれたルーシィの下にエルザ達が駆け寄る。

 

「お前ら、俺達の家や家族にここまでしたんだ。ただで済むと思うなよ…!」

 

「ギヒッ、やっと来やがったかサラマンダー」

 

「ガジル、竜の喧嘩にここじゃ狭ぇな。場所を…」

 

「なら俺が変えてやるよ!」

 

ナツの言葉を遮ったガジルは目にも止まらぬスピードで接近しナツを天井へ蹴り上げる。

 

「んがっ!」

 

「ギヒヒヒ!」

 

天井に穴を開けながら吹き飛ぶナツを追ってガジルも上へと跳んでいった。

 

 

 

「ナツ!」

 

「ナツなら大丈夫よ…大丈夫…」

 

「ミラさん…」

 

ルーシィに対してのその言葉をまるで自分に言い聞かせているかのようだった。ミラはルーシィを見る事なく、ジョゼの方への警戒を強める。

 

「エレメント4を破ったのは貴方達ですか…」

 

そう呟きジョゼは自身の魔力を放出し、戦闘態勢に入る。

 

「「「!!!」」」

 

ジョゼの放つ魔力はまるで極寒の風のようにルーシィ達を恐怖によって凍り付かせる。

 

「何…これ…」

 

「何て邪悪な魔力…」

 

「エレメント4を倒した事に敬意を評し、幽鬼の支配者のマスターであるこの私が貴方達を完全に屈服させてあげしょう」

 

「くっ!」

 

それぞれに構えながらジョゼと対峙するエルザ達。

 

そんな彼女達の横を通りルーシィが前に出てきた。

 

「ルーシィ!」

 

「お前、馬鹿!何やってんだ!」

 

エルザやグレイが叫ぶ中ルーシィが口を開く。

 

「さっきも言ったでしょ…妖精の尻尾はアンタなんかに屈しない…」

 

「何…?」

 

「どっちのギルドが強いかとかそんな事しか考えてない、ギルドにとって本当に大切な事も分からないアンタじゃ妖精の尻尾には勝てないわ…!」

 

妖精の尻尾には勝てない、その言葉がジョゼの逆鱗に触れた。

 

「小娘風情が…!こっちは生きてさえいれば手足など消し去ってもかまわないんだよ!」

 

本性を現したジョゼは怒りのままにルーシィめがけて魔法によるエネルギー波を放つ。

 

 

「「「ルーシィッ!」」」

 

ルーシィの方へ駆け出すエルザ達だったが、エネルギー波のスピードには到底間に合わない。

無論、ルーシィ自身ジョゼの攻撃を避けられるとは思っていない。しかし、それでも言わなければならないと思った。妖精の尻尾のメンバー達が戦い続けているのに自分だけ逃げたり守られたりするのは我慢出来なかったのだ。

 

(アルト…)

 

アルトが今の自分を見たら何て言うだろうか。きっと怒られるかもしれないなどと思いながらも、目をつぶって浮かんでくるのは初めて会った時の笑ったアルトの顔だった。

 

そうしている間にもエネルギー波はルーシィ目がけ向かってきており、遂にルーシィも身体を強張らせる。

 

(アルト…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、いつまで経っても衝撃はおとずれず、代わりに暖かい感触がルーシィを包んだ。

 

「……?」

 

 

「遅くなってごめん…」

 

聞き覚えのある声にルーシィの目が開かれる。

 

 

 

 

 

ジョゼの放ったエネルギー波は何かに衝突し、衝撃と共に砂煙をまき散らす。砂煙が少しずつ晴れていくと、ジョゼの前方に2つの人影が見えた。

 

「何…?」

 

完全に砂煙が晴れた所でその2人の姿もはっきりと見えてくる。1人は攻撃を食らっていない為無傷であるルーシィ。そしてもう1人。

 

「馬鹿な…何故ここに…!?」

 

ルーシィを抱き寄せ、恐らくそれでエネルギー波を消したであろう剣を構える1人の青年。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルト!」

 

ルーシィの待ち望んだ魔導騎士、アルト・イミテイティヴがそこには立っていた。




今回の話で入れられなかった補足説明を少し。
ホワイトマンとの2戦目でホワイトマンが風の能力を使ったのは、前話で明かされたホワイトマンの経験が情報として繭である球体に送られていたからです。なので、本来ならば3体目のホワイトマンは熱の力や波動が使えていました。まぁ、その前に呆気なくやられましたが…。

感想やご指摘、質問などお待ちしています。

以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ
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