FAIRY TAIL ~魔導騎士と星の姫~   作:ジャージ王子

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第27話 予想以上だ

立て続けに発生する轟音と共に、ファントムMkⅡの内部が揺れる。

 

「きゃっ!?」

 

「ねーちゃん!」

 

先の振動に加え地面も隆起ができているため、ミラが躓き転んでしまった。

 

「大丈夫よ、エルフマン」

 

エルフマンが支えになりミラが立ち上がる。走り続けてきた一行はそのまま足を止める形となった。

 

「内側からこれ程までの衝撃をかけるとは…。よほど凄まじい戦闘なのだろう」

 

「だからってこれは凄まじいの域を超えてると思うけどな」

 

エルザの言葉にグレイがぼやき混じりに返答する。

現在このファントムMk-Ⅱの内部ではエルザ達が去った一室でアルトとジョゼが、また別の場所ではどちらも滅竜魔導士であるナツとガジルが戦闘を続けている。

 

(私にもっと力があれば…!)

 

見えない所で戦っている仲間の事を考え、そこへ助けに行く事の出来ない自分への不甲斐なさから内心では歯噛みするエルザ。しかし、今の彼女は体力・魔力ともにほとんど残っておらず、こうして殿に徹するしかない。

そんな中、走ってきた道を見返しているルーシィが目に付いた。

 

「ルーシィ、どうした?」

 

「…戻らなきゃ」

 

「何…?」

 

「あたし、アルトの所に戻らなきゃダメだと思う」

 

「…っ!ふざけた事を言うな!何の為にアルトが私たちを逃がしたと思っている!?」

 

ルーシィの言葉にエルザは凄まじい剣幕で返す。

ジョゼはマカロフと同じく聖十大魔導(せいてんだいまどう)の肩書きを持つ強大な魔導士である。万全な状態であるアルトであっても勝てる見込みはほぼゼロに近い。おそらくアルトもそれを理解していながらエルザやルーシィたちを撤退させた。ならば自分たちが果たさなければならないのはファントムMkⅡを脱出し、ジョゼの狙いであるルーシィを安全な場所へ逃す事だとエルザは考えていた。

だからこそ、エルザは今のルーシィの発言がアルトの意思を無下にしているように感じてしまった。

 

「嫌な予感がするの。さっきのアルトを見てからずっと」

 

エルザの剣幕に呑まれる事なくルーシィもまた自分が思うありのままを伝える。確かにルーシィの言うとおりアルトへの違和感はここにいる全員が感じていた。今までのアルトには見られなかった静かな燃えるような怒り。形もなく、目にも見えない得体の知れないものが彼らに不安感を与えているのだった。

 

「だからと言って…っ!?」

 

エルザが何かを言おうとした時、戦闘の余波によって再び振動が発生した。

 

「ごめんっ!」

 

その瞬間に生じた隙を見逃さなかったルーシィはそのままアルトのいる方へ、今まで来た道を走り出して行く。

 

「待て!」

 

エルザもその後を追おうとするが、今の振動によって天井が崩壊、瓦礫が上から降ってきて道が完全に塞がれてしまった。

 

「くそっ!」

 

怒り任せに壁となった瓦礫を殴りつける。

 

「馬鹿者が…!」

 

その表情はただ怒っているわけではなく、不安と焦燥の色が見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

†††††

 

「はあぁっ!!」

 

渾身の力で鋼の剣を振り切るアルト。相手は為す術もなく剣をその身に当てられそのまま切り裂かれていく。

 

「ほら、まだまだ行きますよ!」

 

「くっ!」

 

ジョゼの言葉とともに地面からすり抜けるように幽兵が現れる。アルトが先程から相手をしているのはジョゼではなく、この幽兵になってしまっている。

実際にアルトがジョゼに近づいたのは最初の一撃のみでそれからは幽兵に阻まれ続けジョゼに剣を当てに行く事ができなくなっていた。

 

「次から次へと…!フレイムッ!!」

 

炎の剣を錬成したアルトは魔力から変換した炎を剣に纏わせ大量の幽兵達に向かって振り抜く。それによって発生した炎の斬撃が幽兵達の方へと放たれ、防御も間に合わず幽兵達は炎に包まれ全滅する。

 

「ほぅ…炎の能力ですか」

 

「っ!!」

 

幽兵達が消えた事でジョゼとの間に隔てるものはなくなった。ここぞとばかりにアルトは風の剣に切り替え高速でジョゼへと接近する。

 

「デッドウェイブ!」

 

アルトの接近を阻む為、ジョゼがエネルギー波を放つ。

対するアルトはスピードを極力落とさないようにする為にほんの数ミリ単位の動きでジョゼの攻撃を避けていく。

 

(捉えた!)

 

「ぬうっ!」

 

アルトがジョゼへと剣を当てに行くその瞬間、アルトの真下からデッドウェイブが繰り出され強烈なカウンターとなってアルトの腹部に直撃。

 

「かはっ!?」

 

これによってアルトは剣を当てる事ができないまま吹き飛ばされていく。

 

「ごほっ…くっ…」

 

「中々やりますね、少しばかり惜しかったようだが」

 

飽くまで余裕の表情を見せるジョゼだが、それを見てアルトも笑みを浮かべる。

 

「確かに…惜しかったな」

 

「…?」

 

アルトの態度に疑問符を浮かべるジョゼは自身の頬の違和感に気付いた。そっと手を当ててみると触れた指先には赤い液体。間違いなくジョゼ自身の血である。剣そのものを当てる事はできなかったが、風による斬撃はジョゼの頬に切り傷を付けていたのだった。

 

「ふむ…」

 

普段、格下の相手に顔面を傷つけられる事があれば激昂するであろうジョゼだが今回ばかりはそうはならず、指先に付いた血を舐めながら目の前のアルトを見据えた。

 

まるで品定めをするかのように。

 

 

 

「まだまだぁ!」

 

再び仕掛けたのはアルトだった。次は大地の剣を錬成するとそのまま地面に突き刺す。

 

大地咆吼(グランドブレス)ッ!!!」

 

アルトの掛け声とともに周囲の地面に亀裂が入る。すると剣の突き刺された部分からジョゼの方へと亀裂が伸びると同時に、亀裂部からは大地のエネルギーが吹き出し巨大な柱のような斬撃となってジョゼへと襲いかかった。

しかし、巨大なそれを目の当たりにしてもジョゼの余裕は崩れない。腕にデッドウェイブを複数発生させ回転させる事でドリルのような形状を形作る。

 

「デッドリィスパイラル!!」

 

放たれたデッドリィスパイラルは回転を続ける事で更に勢いを増しアルトの大地咆吼と衝突してその進撃を阻む。最終的にはデッドリィスパイラルが貫通し大地咆吼のエネルギーは霧散していった。

そのまま突撃していくデッドリィスパイラルであったが、その進行方向にアルトはいない。

 

「何っ!?」

 

「はあぁっ!!」

 

大地咆吼によって自身の姿を隠したアルトはジョゼの頭上へと跳んでいた。その手に握る水の剣アクアを振り抜き、スパイク状の氷の礫を大量に放つ。

デッドリィスパイラルは複数のデッドウェイブをまとめて放つ魔法であるため、放った後に反動による隙が生じる。結果、今の状態のジョゼはアルトの攻撃に対してデッドウェイブによる防御が行えない。

 

為す術のないジョゼに氷の礫が全て直撃した。

 

 

 

 

「っ!?」

 

驚きの余り息を呑んだのはジョゼではなくアルトだった。氷の礫は確かにジョゼに当たった。そのままジョゼを貫通して地面に突き刺さるほどの勢いで直撃している。

しかし、的となったジョゼからは血が出ていない。更に言えば貫通して穴の空いた身体からは黒い瘴気のようなものが溢れ、砂のように消え去ってしまった。

 

「残念ながらあれはダミーだ」

 

次の瞬間、ジョゼはアルトの背後に回っていた。

またしてもジョゼは複数のデッドウェイブを掌に集中させ、今度は縄のような形状にする。

 

(早い!いつの間に後ろに!?)

 

空中から落下を続けていたアルトもまた攻撃を放った後は隙が生まれる。次はアルトが何もできないまま縄のようなデッドウェイブに捕らえられてしまった。

 

「ぐっ!」

 

強力に絡み付いたそれは力を入れても破る事ができず、無防備なアルトはそのままジョゼの蹴りで地面へと叩き落とされる。

 

「ぐあ…うっ…」

 

落下の衝撃も加わり、激痛に身をよじるアルト。身体には今もなおデッドウェイブの縄が縛り付いていた。

 

様々な手を尽くしても悉く潰されていく。その実力にジョゼもまたマカロフと同じ聖十大魔導なのだと痛感させられる。

 

(何も届かない…。こんなにも圧倒的なのか、聖十大魔導は…!?)

 

「……」

 

そんな中、ジョゼが無言のまま横たわるアルトに近づいてくる。

 

「っ!」

 

デッドウェイブに縛られアルトは動く事ができない。このままジョゼの攻撃を受ければ敗北するのは勿論、命の保障もない。

 

(ここまで…か。くそっ)

 

覚悟を決めるアルト。いよいよジョゼの足が倒れたアルトの頭のすぐそこまでたどり着いた。

 

無意識に心臓の鼓動が早まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい…」

 

「…何?」

 

いつまで待っても攻撃はやってこず、代わりにジョゼの言葉が沈黙を続けていた空間に響いた。

流石にこれにはアルトも予想ができなかったので、思わず聞き返してしまう。

 

「正直言って予想以上だ」

 

「だから何を…」

 

「やはり私はお前が欲しい、アルト・イミテイティヴ!」

 

「なっ!?」

 

気分が高揚しているのか普段の丁寧な口調はいつの間にか彼の本質である高圧的なものに変わっていた。

それよりも驚くべきはジョゼの放ったその言葉の意味。実際の所アルト自身驚きよりも戸惑いの方が強く、状況の整理ができないでいる。

 

「どういう…事だ…?」

 

「私は幽鬼の支配者の戦力として貴様が欲しい。そういう事だ」

 

(コイツ、本気で言ってるのか…?)

 

未だに理解ができず戸惑うアルトであるが、ジョゼは更に話を続けていく。

 

「風、火、土、水…。どの魔法もエレメント4と同等…いやそれ以上だった。おそらく1人の戦闘力として見ればあのガジルさえも凌ぐ力を持っている…そんな魔導士が妖精の尻尾だと!ふざけるな、最強のギルド幽鬼の支配者こそがお前のいるべき場所だ!」

 

様々な感情が混ざり合い、既にジョゼの言っている事は滅茶苦茶である。

 

「本来ならばお前以外の妖精の尻尾を潰し、居場所を失わせてから手に入れようと思っていたが予定が狂った」

 

「何だと…?」

 

ジョゼの呟いた言葉をアルトは聞き逃さなかった。まるで自分がいない時を狙って妖精の尻尾を襲ったような口ぶりだったからだ。

 

「考えなかったのか?何故このタイミングでこの戦争を起こしたかを…。私はジュード・ハートフィリアから娘のルーシィを連れ戻すよう依頼を受けた時からずっと待っていた。お前が妖精の尻尾から離れるのをな」

 

「ルーシィ?何でそこでルーシィの名前が出てくる!?」

 

「ハートフィリア財団の令嬢、ルーシィ・ハートフィリア…。彼女こそがこの戦争のきっかけなのだよ。ハートフィリア財団の莫大な財産を幽鬼の支配者のものとする。彼女はその為の鍵だ」

 

それに加えて…。と邪な笑みをアルトに向けるジョゼ。

 

「彼女を人質としてとっておけば、お前も私の言う通りに働いてくれそうだなぁ?」

 

「!!!」

 

「圧倒的な財力と強き兵!幽鬼の支配者は間違いなくフィオーレ王国一のギルドとなる!今に見ていろ、妖精の尻尾を噂する声は全て幽鬼の支配者のものに変わるのだっ!!」

 

「…けるな」

 

「…何?」

 

新たな自分のギルドを想像し熱くなるジョゼをアルトの声が遮る。

 

「ふざけるな…!お前のエゴの為に…皆が、ルーシィが!どれだけ傷ついたと思ってるんだ!!」

 

「そんな事を気に掛けてどうする?この戦争という盤面を支配しているのは私だ。他の者など全て駒に過ぎん。壊れたのなら新しい駒を用意するだけだ」

 

「っ!」

 

ジョゼの言葉が決定打となり、アルト怒りはいよいよ頂点に達する。今までこれ程怒りに呑まれる事のなかったアルトは始めての感情に身体中が熱くなるのを抑えきれなかった。

 

 

─力を解放しろ…─

 

(何…?)

 

そんな時、頭の中に直接流れてくるかのように声が伝わってきた。

 

─既に鍵は開いている。後は自分(テメェ)の怒りで扉をブチ開ければいい─

 

(誰だ?どこから話しかけてきてる?)

 

─んなコト関係ねぇよ。あの野郎をぶっ倒してぇんだろ?─

 

(そうだ…。皆を、ルーシィを傷つけたジョゼを俺は許さない!)

 

まるで、アルトの内心を読んでいるかのような言葉にアルトも素直に自身の感情を吐露する。

 

─そうだ、その怒りで扉を開け─

 

「うおぉぉぉぉおっ!!」

 

その声に誘われるようにアルトは怒りを込めた魔力を手に握っている剣に送り込む。まるでその方法を知っていたかのように。

 

「な、何だ、何をしている!?」

 

─そうだ!(オレ)を解放しろぉっ!─

 

 

 

 

 

アルトの雄叫びが止みしばしの沈黙が訪れた後、アルトを縛り付けていたデッドウェイブが爆ぜるように吹き飛んだ。

先程までどんなに力を入れてもびくともしなかったものが一瞬にして破られたとあってジョゼも目を見開いた。

 

「貴様…何者だ?」

 

今まで相対してきたアルトに、あえてジョゼはそう尋ねた。それほどの変化がアルトに起きていたからだ。

剣は黒く染まり、その黒は剣からアルトの右腕に浸食し顔の右半分まで伸び、灰銀だった髪もまた飲み込まれるような黒に染まっていた。

何よりもアルトの放つ雰囲気は完全に別人であるとジョゼは感じていた。

 

 

 

 

ジョゼの質問に対してアルトは弧月のような笑みを浮かべ、その真意を見通す事は出来なかった。




感想やご指摘、質問などお待ちしています。

以上、ジャージ王子でした。ではでは( ・_・)ノシ
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