また紛らわしいですが、義信が地の文で父上といったときには家康、会話の中で父上といったときには晴信のことだと思っていただければ幸いです。
「勘助よ」
「ははっ」
「義信を慣例に従わず早めに改名させたが家臣団の反応はどうだ」
晴信は自室においてある隻眼の男と話をしていた。
「…正直に申しまして、賛否両論でございます」
「どっちの声が多い」
「いつの世も古き慣習にとらわれる者は多いです。それを簡単には変えることは難しく…」
隻眼の男の名前は山本勘助といって、新しく晴信が召し抱えた武将である。
「前置きはいい、どうなんだ」
勘助はやや躊躇いつつも述べた。
「…確かに義信さまの評判は良いです、しかしながら武に関してはまだ未知数。家臣の中には義信さまの軍略に対して不安の声も」
「初陣もまだというのに改名は早すぎるということか」
「…恐れながら」
晴信はしばし考えると、ゆっくりと述べた。
「…勘助、お前の意見を聞きたい」
「…はっ、なれば此度の村上との戦、義信さまの初陣となされてはいかがでしょうか。戦というものを知る良い機会になりましょう。さすれば不満を持つものはなくなるかと」
「…なるほどな。確かにあのまま書室でいつまでも書物を読まれていても困る。そろそろ戦場にも出てもらわねばな。わしの側につけておけば万が一ということもあるまい」
「…よき、お考えかと」
こうして、義信の初陣は決まった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「う、初陣でございますか!」
もうすぐ8月も初旬が過ぎようとしている頃、晴信から義信は初陣のことを聞いていた。
「ああ、北信濃の村上ともうすぐ戦になるだろう。お前ももうそろそろ戦を知っても良い歳になると思ってな」
(武田との戦いで初陣を飾ったそれがしが武田家において初陣を戦うとは皮肉なものよ)
「此度の戦は大きなものとなる。だがしかしこの戦が終われば信濃の支配に目処がつく。当分は大きな戦も無いだろう、初陣の機会としてはまたとないと思わないか?」
「は、は!有り難き幸せでございます!此度の初陣の儀、謹んでお受け致します」
義信はこの機会を、あの父上が尊敬してやまなかった武田家の戦い方を知れるいい機会だと考えていた。
「よし、それでは付いて参れ」
「はっ…いったいどこへ?」
「戦となるのだ、決まっておろう」
晴信は笑みを浮かべながら言った。
「軍議じゃ」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
義信が大広間に入ると主だった家臣たちが平伏して待っていた。
「面を上げよ」
晴信の声でみな顔をあげる。
「さて…此度の戦であるが、義信も参戦させることになった。初陣となる、ぜひみなには義信を助けて欲しい」
「おお!」
「いよいよ義信さまが!」
「大丈夫かのう…」
様々な反応が聞こえた。
「早速ではあるが軍議に入らせてもらう」
「「「「ははー!」」」」
こうして義信の武田家初軍議は始まった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「現在の情勢として義清めは北信濃の領主である高梨氏と―」
義信は軍議に参加しつつも周りの観察を続けていた。
「しばらくは本拠である葛尾城には戻らないはずであり―」
まずは席次。当主である晴信を中心として、隣に嫡男義信。
向かい側に信繁を中心として、晴信の弟たち。
晴信の影武者を務めたとされる信廉の姿もある。本当に似ている。
「ここを突けば信濃における武田の勢力は―」
続いて親族や家臣たち。ここまでで義信はまた気が付いたことをまとめていた。
(武田も松平も似たところがある。それは家臣たちが単純な従属勢力ではなく、それぞれが小さな国人としての大名であり、松平や武田はその国人の連合体の代表に過ぎないということ。武田で言えば大井・小山田・穴山といったのが該当し、松平で言えば酒井・井伊・本多といったところだろうか。これは前世と同じといえばやりやすそうだが扱いが難しくなるな。こういった場合は主家への従属意識が低く、あっさりと寝返ってしまいそうだからな。配慮しなければ・・・)
まさにその国人たちを纏めるのに奔走したのが松平で言えば松平清康、家康の祖父に当たる人物であり、武田で言えば信虎、義信の祖父に当たる人物であった。
「この砥石城を落とせばまさに葛尾城は―」
そしてまさに今、しゃべっている人物に義信は目を向けた。
(あの人物は知っている。真田弾正忠幸隆。信濃の豪族ながら信玄に従属しその采配を存分に振るって信玄を助けたという。その息子である昌幸の扱いに父上も苦慮しておられたな、なかなかの御仁とみていいだろう)
そして今、気になる単語が聞こえたことに義信は気が付いた。
(あれ?砥石城と聞こえたがこれはもしや…?)
義信は家康から聞いた話を思い出していた。
※
「いいか、信康よ。武田信玄という人物は大変戦に強い人物ではあるが、これまでに二度大きな敗北をしている。ひとつは上田原の戦いというものでな、これは北信濃の村上義清と争ってこれに敗北。板垣と甘利という武田の宿老を二人も失う大きな敗北であった。そしてもう一つは砥石崩れという戦いでな、これも相手は村上義清なんだが砥石城という城での攻城戦中、奇襲によって多くの将兵を失うことになったのだ。いいか、信玄ほどの人物といえども戦において連戦連勝ではない、なのでお前も慢心せずに―」
※
「うむ、村上との戦をいつまでも長引かせる訳にもいかん。早急にこの砥石城を抜き―」
(間違いない!この戦が砥石崩れだ!このまま何もしなければ武田は負ける。それがしの初陣が敗北なんていうのはまず許せぬし負けるために戦をするわけではない、勝ちに行くのだ!)
義信は歴史を変えるために動き出した。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
軍議はいつも通り進んでいた。
「では此度の陣立ですが―」
「ちょっと待ってくだされ」
誰もが予想しなかった人物の発言で場は静まり返った。
よ、義信さま?
飯富虎昌は冷や汗をかいていた。
「少々気になることがございまして」
義信はまだまだ初陣を迎えてもいない若輩者。軍議に参加しているとはいえそれは建前的なものであって、発言をするなんて到底考えられないことであった。
「義信さま、どうかお控えを」
「兵部、よい」
制しようとしたところお館さまに止められる。
「はっ」
やはり義信さまはご寵愛を受けている。
「義信、聞かせよ」
「はっ…それがし、此度の戦についてもう少し考える必要があるかと思います」
この発言に対して家臣たちからは動揺が見られた。
戦を知らぬくせにお館さまに気に入られようと必死なのよ、そんな声も聞こえてくる。
それに対してお館さまは、
「此度の我らの陣立てに不満があると申すか、義信よ」
「…恐れながら」
家臣団の動揺が大きくなる。
「此度の戦、義清の不在をついて砥石城を急襲し、義清の本拠である葛尾城攻略への足掛かりとする。そうですね弾正殿?」
義信さまはそう述べる。
「…はっ。現在義清は北信濃の高梨政頼と争っておりまして出陣中。さらに清野や寺尾といった豪族からも内通の約束を取り付けております。」
この真田幸隆という男は抜け目のない男で、義清の背後に位置する高梨氏の娘を自らの長男の信綱に娶らせ背後を突かせたのであった。さらにそれをちらつかせつつ清野や寺尾といった周辺豪族にまで内通を約束させていたのであった。
「それで義清が北信濃にかかりきりの今、堅牢で知られる砥石城を急襲してしまおうと考えているのですね?」
「…はっ、その通りでございます。」
ここまでは先程の軍議の内容と変わりない。
「それでは、もし砥石城を落とせぬまま、義清が高梨氏を和を結び救援に来たらどういたしまするか…?」
義信さまのこの発言で場は凍った。
「ありえぬ!義清は高梨にかかりきりのはず。万が一高梨と和が成ったとしても清野も寺尾もいる。その間に砥石城など踏みつぶしてくれるわ!」
義信さまに食って掛かったのは猛将と名高い原美濃守虎胤。鬼美濃の異名をとる武将だ。
「義信さまの心配もわかりますが、砥石城の城兵は多く見積もっても500ほど。たいしてわれらは10000。仮に義清が戻ってこようともその前にたやすく落とせましょう」
美濃守に同調したのは小山田出羽守信有。こちらは親族集の筆頭的存在である。
「・・なぜそう楽観視できるのだ?」
義信さまは静かに語りだす。
「相手はあの村上義清だぞ?2年前に上田原で辛酸を舐めさせられたこと、みな忘れてしまったのか?」
完璧に皆黙り込んでしまった。
「これでは駿河さまや備前さまも浮かばれぬ」
「待てぃ!さすがに義信さまといえどもいまの発言は聞き捨てなりませぬぞ!」
この言葉についに美濃守が激高する。
「駿河さまと備前さまの名を借りてわれらを愚弄することこそ駿河さまや備前さまに対して失礼ではないか!そもそも戦に参加したことがない義信さまに何がわかるというのか!」
「・・戦慣れしてないからこそ、わかることもあるというものです」
あの鬼美濃相手に一歩も引かないとは。
虎昌は感心していた。
とはいえ、さすがにこの状況は止めないとまずい。将の動揺は兵に伝わり、やがては士気にかかわる。そして、それは戦の行方を左右しかねない。
さすがに虎昌が口を出そうとしたその時―
「美濃、義信よ。」
ここでついにお館さまが口を開いた。
「・・・控えよ、われらは味方ぞ。争ってどうする」
「しかしー」
「なれば父上ー」
「控えよ!」
有無を言わさぬ強い口調でお館さまは2人を諫めた。
「どのみちこれでは軍議にならぬ。ちょうど長時間続けていたところだ、みなも疲れていよう。しばし休憩とする」
あ、これは。
虎昌は感づいた。
そして予想通り晴信が虎昌に近づいてくる。
「義信の方は任せておけ。兵部、そなたは美濃を頼む」
ああ、また面倒ごとを任されたな。
この後行われることを想像して甲斐一の猛将は頭を悩ませるのであった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「父上!納得がいきませぬ!そもそも剛毅を見せよ、忌憚のない意見を述べよと言ったのは父上自身ではないですか!それをどうして…!」
休憩と称して自室に入ると予想通り義信が食ってかかってきた。
さて、どうしてやろうか。
晴信は少し考えた。ここでの返答は今後の義信の性格に大きく影響を与える可能性があるからだ。
「父上!これではあんまりです!何か言ったらどうですか」
「義信―」
晴信は語り始めた。
「そなたは間違っておらぬ。発言の内容も正しい。よく剛毅を見せてくれたな」
「えっ…」
義信は言葉に詰まった。まさか褒められるとは思ってなかったからだ。
「な、ならなぜ―」
「しかし、」
晴信は義信の言葉を遮る。
「それだけではダメなのだ。なぜかわかるか義信?」
晴信はあえて義信に考えさせることにした。
「えっと…そ、それがしが冷静さを欠いていたからでしょうか」
「それもある。もちろん正しいことをきちんと言えることは良いことだ。普通の武将ならそれでよい、しかし、お前はゆくゆくは大将となるもの。これでわかるか、義信」
「…」
義信は答えられなかった。
「将を使う立場になる者は必ず戦に勝たねばならぬ、そのためには少しでも戦に対する不安要素を消さねばならぬのだ。徒に将の不安や対立を煽るようなやり方は賢いとは言えぬ。お前がまだ幼くてそのようなことを理解するのが難しいというのはわかるが、わしはお前に期待しているのだ。どうかその事をわかってほしい」
「それでは父上は家臣たちの意見が間違っていたとしても、輪を乱さぬようその間違った意見を通すとおっしゃるのですか・・?たとえそれが国を滅ぼすほどの愚策とわかっていても!」
「義信よ、だからお前はまだまだ若いのだ。無論、そのようなことはない、だがな、人はそれぞれみな、必ず何かの意図をもって発言をしたり考えを出している」
晴信は続ける。
「例えばな、よいか義信、今回話を進めていた真田弾正忠幸隆。あの男をお前はどう見る」
義信は思慮していた。
(父上であれば先ほどの軍議のような場面、何も言わずに聞いてくださっていた。しかしこの晴信という男は違う。ここは聞いたほうがよさそうか・・・)
実際、松平信康という人物は勇猛果敢ではあったが少し浅慮な部分があったようだ。それを示す逸話として鷹狩りの際に出会った僧侶を縄をつけて殺してしまったことがあるという。これは狩りの際に僧侶に出会うと獲物が少なくなるという因習を信じていたからだという。
「穏やかな人ではございますが目に見えない強かさをお持ちの御仁という印象でございます」
「なるほど、そうだな。あの男は確かに強かそうだ。それでは義信、なぜあの男が今回の軍議を取り仕切っていると思う」
「…」
「弾正は最近武田家に下った信濃の一豪族という立場に過ぎない、いわば新参者だ。だからな、手柄を上げようと様々な謀議を巡らせて今回の砥石城攻略に臨んでいる。そんな並々ならぬ心意気を持って立てた作戦に意見されたらどうだ、義信よ。しかもまだ戦もしたことがない子倅にだ、わしならいい気はしないな」
「しかし・・それでも正しいことは述べねばならないでしょう、弾正殿には申し訳ないですが」
「正しいとはなんだ、義信」
「えっ?」
義信は戸惑ってしまった。この人はいったい何を言っているのだろう。
「それはもちろん、戦に勝つことにございます」
「それではお前は戦に勝ち続けて民に負担を強いて、国が荒廃することも正しいというのか?そう、わしの父上のように!」
晴信の口調は激しさを増す。
「よいか、義信。小さい利益にとらわれて大きな利益を逃してはならぬ。仮に先ほどの場面でお前が意見して作戦を訂正して戦に勝ったとしよう。すると弾正の立場は無くなる。戦もしたことがない子倅の意見に負けた挙句その意見で成功してしまったのだからな。するとどうだ、武田は新参者には厳しいという噂が流れるかもしれぬ。義信、先ず隗より始めよという言葉を知っておるか?」
「・・恐れながら、その言葉は存じませぬ。」
「明の戦国時代に郭隗という人物がおった。燕という国の昭王という王からどうすれば賢者を招くことができるかと問われたときに郭隗が、「まず私のような凡人を優遇することから始めて下さい。そうすれば優秀な人材が集まってくるでしょう」と言ったという。昭王はその通りに実行して結果多くの人材が集まったという。」
「父上はそれと同じことをやりたいということでしょうか?」
「その通りだ。優秀な人材を集めるというところは魏の武帝(※作者注 曹操のこと)にも倣っている。まったく、明には学ぶところが多いな」
義信は信玄という人物の教養の高さにも驚かされていた。幼少期に勉強した時にも感じていたが置かれている書物の質が三河とは大違いだ。
「‥それでは弾正殿の作戦を採用して失敗してしまった場合はどうするのですか?」
「簡単なことだ。挽回の機会を与えればよい。まあそれでもダメなら責任を弾正に押し付けてしまえばいいことだ。そうすれば武田は新参者であっても有能な人材は登用するし、失敗しても挽回の機会が与えられるという認識が流れるかもしれぬ、いうなれば先ず弾正から始めよ、だな」
「‥父上のおっしゃることはわかりました。ただ、わたしにはどうしても解せないのです。自分がやりたいことと違うことを認めるのは」
「その心意気やよし。なにもすべて否定しろと言っているわけではない。ただ、先ほどの軍議での発言は一番ふさわしくないものであったということだ。徒に将たちの不安を煽り、新参者の機会をつぶす。此度の戦にも武田の今後にも悪影響を及ぼしかねない悪手だったのだ」
ここで晴信は間を置いた。
「わしが言いたいのはな、目先の利益にとらわれるな、ということなのだ。常に大局を見据えて一時的な不利益を被ってでも最終的な利益をとらえねばならぬ。大局観、とでも言うべきものが大将に求められるものなのだ。とはいえ、義信、お前はまだまだ若い」
「…父上も、それを言われるほどまだ老けてはいないではないですか」
時に武田晴信29歳、武田義信12歳である。
「…そうじゃな、だからわしの後ろで見ておれ。幸いわしらには時間はまだ残されている。わしの一生をかけてお前を教育してやるからな」
「…父上が早死にしなければよいのです。あるいは…父上こそ、私に追放されないように頑張ってくだされ」
義信はある程度信玄という人物を理解したような気がした。
「これは一本取られたな!」
ワハハ、と武田の親子は笑い合った。
「さて、軍議に戻るぞ。なに、わしの言う通りにしておれ――」
 ̄ ̄ ̄
お館さまと義信さまが戻ってこられた。
その光景を見て飯富虎昌は安心した。
なにせ自分と家格でいえば同等の美濃守を一時的とはいえなだめるのは骨の折れる作業であったからだ。
くわえて、美濃守は勇将で知られる者。気の強さは半端ないものであった。
「まず、」
お館さまが口を開く。
「美濃よ」
「はっ」
「義信がそちに申し上げたいことがあるそうだ」
家臣団に緊張が走る。
「なんでございましょうか」
そう申し上げた美濃守の前まで義信さまが進み出る。
と、その時。
義信さまがいきなり土下座をした。
「それがしの不徳の至すあまり、先ほどは失礼な発言をしてしまって大変申し訳ありませぬ。どうかこの通り許してはいただけませぬか」
この時代、立場が上の者が下の者に対して頭を下げるということは考えられないことであった。
家老とはいえ、美濃守は家臣である。それに対して義信は主君の子。どう考えても立場は美濃守よりは上であった。
「美濃、わしからもこの通りだ。頼む、許してやってはくれぬか」
なんと、お館さままでもが頭を下げるとは!
こうなると美濃守としても許さないわけにはいかない。いかに国人の連合体とはいえ、主君と主君の息子に頭を下げさせて許さなかったら今度は美濃守の器量の狭さが疑われてしまうからだ。
「なんとそのような!どうか義信さまもお館さまも頭を上げてくだされ!それがしも少々熱くなり申した、それがしこそお許しいただきたい!」
これで禍根は完全になくなる。さすがお館さまじゃな。常人にはできないことを簡単にやってのけてしまわれる。
「さて、休憩を終えたところで、弾正―」
「はっ」
「そなたの考えを聞かせてもらおうか」
軍議は再開した。
―――
「清野、寺尾といった豪族は少数ではありますが地理的に要所に位置しており―」
基本的には弾正殿の進行で軍議は進み―
「かりに義清が取って返してもこれらを突破するのには時間がかかるので―」
たまに勘助殿が意見を挟み―
「うむ、基本的にはそれでよいであろう。ただ、補給路の面で我らは不利であるということを―」
お館さまが意見を聞きつつ修正を入れ―
「それがしの意見など聞き捨て頂いても構いませぬが―」
義信さまもたまに発言をし―
「…よかろう。それでは此度の陣立は以上とする。さっそく信友、信繁、出羽は先遣として近いうちに発ってもらう」
「はっ!」
「われらも数日中には出陣となろう。各自補給・軍備の準備をゆめゆめ怠らぬようにな!」
「「「「ははっ!」」」」
無事に軍議は終了した。
そして数日後―
「出陣するぞ!」
「「「「「「おおーっ!」」」」」」
武田晴信を主将として、武田軍総勢10000は砥石城に向けて出陣した。
ちょっと曹操の話が出てきたのでついでに話しますが、いわゆる三国志は正史と演義というふたつがありますが家康をはじめとする一般的な戦国大名の間では演義が一般的でした。しかし信玄は珍しく正史を好んでいたとされています。風林火山の旗印を孫子から引用したところからも高い教養を持っていたのではないかと考えてこのようなキャラ付けになっております。