天界から地上に降りて30分後、ボーボボ一行は1つの街にたどり着いた
「ここは?」
「ここは始まりの街「アクセル」。多くの冒険者はこの街で冒険を始めると言われている」
「中世ヨーロッパみたいな街並みなんだ。なんだかいいなぁ」
周囲のレンガ作りの建物を見渡してそう言う
「……あれ?首領パッチくんと天の助くんとへっくんは?」
ふと、いつもの仲間がいないことに気づいて辺りを見てみると、街の門の方から何か騒ぎが聞こえてきた
「いいから離せオマエら!!」
「ふざけるなヘッポコ!テメーオレたちを見捨てる気か!!!」
「オレたち仲間だろ!?なあ頼む置いてかないでー!!」
その中心からヘッポコ丸と首領パッチと天の助の声が聞こえた
「どうしたの3人とも!?」
「あ、ビュティ。実は……」
ヘッポコ丸が説明しようとしたところを遮って、首領パッチが門兵を指差してからハンカチを噛んでヒステリックに叫ぶ
「こいつらが私のことをモンスターだって通さないのよ!!差別!!人種差別よ!!弁護士呼んでちょうだい!!!」
「いや、あんたどう見ても人じゃないし」
冷静なビュティのツッコミ。オレンジの金平糖のような謎生物はどう控えめに見てもモンスターとしか言いようがなかった。少なくとも人ではない
「頼みますよ……どうかここは、これで穏便に……」
「いらん」ポイッ
「ああ!!!」
天の助はところてんで買収を試みるが、門兵は一瞥もくれずにそれを投げ捨てた
ここで首領パッチと天の助の我慢が限界を超える
「このやろう!こっちが下手に出れば調子乗りやがって!!」
「こうなったら強行突破だ!!やるぞ天の助!!」
怒りの形相で槍を持った2人の門兵に首領パッチたちは突っ込み
「冷凍保存!!!」
「「ぶっ!!!」」
「冷蔵庫に無理矢理入れたーーー!!!!」
走る勢いを利用して突如現れた冷蔵庫に首領パッチと天の助をボーボボが閉じ込めた。中は寒いからか中からガタガタ暴れる音がなる
「んもーすみませんね兵隊さん。うちの非常食がご迷惑をおかけして」
「ひ、非常食?生きて喋っていたが」
「それはそれは、とても珍しい非常食なのザマス」
未だ抵抗する冷蔵庫の中の2人を無視して、ボーボボはとある本を取り出す
「こちらの図鑑にも載っているザマス。「首領パッチ」と「天の助」」
「いつの間にそんな本を用意してたの!!!?」
それには凶悪なモンスター的絵面で非常食向きの食材、生け捕り必須、バカ、暴れるから注意、と書かれている
「うーむ、確かに間違いなさそうだ…」
(ん?)
ふとヘッポコ丸が門兵の読んでいる図鑑の裏表紙に目がいく。そこには着物を着て顎に片手を当てるボーボボの顔とその下に書かれた「著作者:ボくたがわ はなげのすけ」の文字
(つーかよく見たらボーボボさんが書いた本だし!!!!)
そして少しの時間の間、ボーボボと門兵の話は続いた
「とりあえず今回のは事故ということにしておくけど、次からはちゃんと保存してもらわないと困るよ」
「ありがとうございます。ではこちらお詫びの、戦う兵隊さんにピッタリな品を……」
ボーボボは車のハンドルを出すと、それを門兵のうち1人に渡した
「ハンドル」
「全然ピッタリじゃないし、それ単品じゃ何の役にも立たないから!!!!」
「お仕事頑張ってくださいね」
お辞儀をして、ボーボボはガタガタ揺れる冷蔵庫の前に立った……そしてマシンガンを2挺手に持って
「血抜き!!!」ダダダダダダダダダッ!!!
「「ぎゃああああああああああ!!!!」」
「首領パッチくんー!!!!天の助くんー!!!!」
バカ2人が入った冷蔵庫に乱射した。開けられた穴から血がドバドバ噴き出す。非常にスプラッタな光景である
冷蔵庫から引きずり出された穴だらけな首領パッチと天の助を無視してボーボボは先に進み始めた
「いくぞビュティ、ヘッポコ丸」
「待ってよボーボボ!どこに行くの?」
「ギルドに行こうと思う」
「「ギルド?」」
ビュティとヘッポコ丸は疑問符を浮かべる。後ろには死に体の首領パッチと天の助がフラフラと歩いていた
「この世界には冒険者と呼ばれる者がいて、その冒険者に依頼するのがギルドだ」
「フ、冒険者だと?」
首領パッチが声をあげる。ビュティとヘッポコ丸の2人が振り向くと、視線の先には踊り子の服装の首領パッチと笠と刀をつけて地図を書き込む風来坊な姿の天の助がいた
「どんなモンスターが来ようとアタシの踊りでイチコロよ!!!!」
「地図書きはまかせろ!!!!」
「何やってんの2人とも!!!?」
某樹海をめぐる冒険者のコスプレをするバカにビュティが目を剥く
「あ、やべ!マッピングミスった!」
「おたすけーーー!!!!」
「…………」
3DSを手に焦る首領パッチに巨大な緑の鳥に喰らわれる天の助。ビュティはそれを見てただただアホらしさを感じるのだった
そしてボーボボは遮られた説明を再開する
「つまりそこに行けば、エリスが言っていたアクアの情報が見つかるかもしれん」
「そっか!情報収集ですね!確かにそれならすぐ見つかりそうだ!!」
「あれ?でもボーボボすごくこの世界のこと詳しいね。もしかしてきたことがあったの」
「ああ、それはだな………」
ー回想ー
ボボボ社、面接の日
「それでは次に872番、ボボボーボ・ボーボボさん」
「ハイ」
スーツ姿のボーボボが扉を開けると、等身大亀が腹筋をしていた。ボーボボはイスの横に立つ
「本日はよろしくお願いします」
「よし、まずはワシの体を起こしてくれ」
「分かりました」
そう言ってボーボボは亀の腹に座った
「さて、キミはなぜ御社を選んで入社しようとしたのか、その理由を述べてくれないか?」
「それは」パカッ
黄色いアフロが横に割れると、アフロの中で鼻歌を歌ってアブラゼミが油絵を描いていた
『フーンフン♪セミはセミとていっしゅうか〜〜ん♪』
そのセミをボーボボは鼻毛で掴むと窓ガラスを割って外に放り投げた。『唐揚げーーー!!!』という断末魔が室内に響く
「こういうわけです」
「なるほど。今時の若者にしては珍しい」
アフロを戻しながら答えるボーボボに亀は満足しながら、部屋を退出するボーボボを見送った………
「ーーというわけだ」
「わけわかんないんだけど!!!?」
意味不明な回想にビュティは悲鳴とツッコミの合わせ技でボーボボに抗議した。だがボーボボはこれ以上答える気はないようだ
「そんなことって…!!そんなことって…!!」
「なんて自己犠牲な野郎だ!!セミ太郎!!!」
「オマエらはなんで感動の涙が流せるんだよ!!?」
そして首領パッチ、天の助は感動の涙を流して膝をついていた。こちらでもヘッポコ丸が混乱の声を出す
ボーボボは涙する首領パッチたちを同じく泣きながら強く抱きつく
「オマエたち!!オレのこの気持ち、分かってくれるか!!!」
「ああ!!分かるさ!分かるとも!!」
「こんな悲しみをこれ以上増やさないためにも…!!!」
ボーボボはジャギ、首領パッチはサウザー、天の助はアミバの格好で声を合わせる
「「「打倒!!!邪神アクア!!!!」」」
「駄女神から邪神にランクアップしたーーーー!!!!」
ビュティのツッコミは今日も冴え渡る
『…ん?ねえねえカズマ、今私の名前呼んだ?」
『あ、呼んでねえけど?とうとう耳からダメになったかこの駄女神は』
『ちょっと!これからダメになる要素なんてこれっぽっちもないんですけど!?そうじゃなくて本当に聞こえたんだってば!!これはきっと、私のことを敬う人が尊敬のあまり私の名前を呼んだに違いな……』
『めぐみん、あのバカはおいてとっとと行こう』
『ラジャーです。…フッ、今日も私の爆裂魔法が世界を震わす……』
『ちょっと!今また私のことバカにしたわね!!?ねえちょっとカズマーーー!!!!』
ギルドから出て行く団体の中に、こんなやりとりがあったとかなかったとか
セミのところは、自分でも何考えて書いたのは分からなかった。これが魂の解放……?