ふりーと・すくーる   作:蒼樹物書

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【17】

 『これより艦娘学園、学園祭を始めます――』

 

 学園中にアナウンスが響き渡る。

 冬の訪れを感じさせる、キンと冷えた朝。今日この日、学園は初めての学園祭を開催した。

 

 

 「ようこそ!」

 「ようこそー。パンフレットはこちらでーす!」

 「はいはい、そこ走らないでー!!」

 

 校門で他の先生方と鈴なりの来客達を迎える。抱いたパンフレットの束から次々と来客に手渡していくが、想像以上の繁盛っぷりだ。

 

 学園祭。

 

 この学園の設立当初から構想されていたイベントだが、ようやく実現に至った。

 外部……国内でその存在意義が疑問視されていた、この学園。そこで更にお祭りをするというのは、それはとても慎重にせねばならないことだった。設立当時はまだ艦娘の配備も十全ではなく、食糧・燃料事情も今よりもっと悪かった。

 『上』を説得する材料として艦娘という存在、その周知や理解の獲得。つまりは広報としての利点。そして学園の目的でもあるドロップ組の艦娘に対する情操教育。

 そういった利点を並べ、加えて社会環境が安定化しつつある現状。地元の夏祭りが今年から再開されたことも、大きく背を押してくれたようだ。

 

 私個人としては学園祭、その開催の意図には大きな意義を感じている。

 出店を行いモノを売るという経験。演劇や歌劇で得られる経験。おままごとのようなモノであっても、将来社会に出た時に必要となる。

 

 ――戦う以外の生き方。

 

 その為に必要となる経験になると、私は思う。

 だから今年初めて開催が決定した時にはとても喜んだ。喜んだのだが。

 

 『……品野先生。こちらの展示が間に合わん。手を貸してくれ』

 「了解です! 先輩、ここ少しお任せします!!」

 

 無線から飛んできた応援要請に応え、手元のパンフレットを矢矧先輩に押し付ける。宮元先生は二階の教室だ、先輩の返事を聞く前に駆け出す。

 

 未だ展示が間に合っていないというのに愚痴りたくなるのだが、何しろ人手が足りない。宮元先生や明石先生を始めとし軍にコネがあるというのが今回はむしろ仇となった。

 展示内容は普段の授業風景や艦娘に関する資料が主だ。

 前者は日々撮影した写真。後者は艤装の展示や艦娘に関する歴史表など。その後者の資料がたっぷり使えることとなったのだ。

 

 元々鎮守府での基地祭は最初の艦娘運用基地、横須賀鎮守府を始め積極的に催されている。

 艦娘に対する社会の理解を深めるというのは政府にとって火急の案件であったからだ。その為の資料や展示品は軍の広報部が主となって製作、配備されている。とはいえ基地祭以外の時期はそれらは倉庫で眠るだけ。

 だからこそ、簡単に集まったのだがそれらを展示する人手までは得られない。

 

 「品野着きました!!」

 「すまんな、こっちのボードに写真を貼り付けていってくれ」

 

 準備中、の札が架けられた扉を開ける。

 普段は教室として使われているその一室には、ボードがずらりと並べられていた。一人展示の準備を進めていた宮元先生に合流し、早速写真をダンボールから取り出して張り出していく。

 ここは艦娘の戦記に関する展示だ。日本近海での深海棲艦制圧作戦。南洋への海路確保作戦。あ、これ私写ってる……こいつは張り出すのやめよう。

 ダンボールにたっぷり詰まった写真を、ボードに貼り出された説明書きの脇に添えていく。

 

 「うむ。これで完成だ」

 

 宮元先生が展示の最終チェックを終えた。

 部屋の外から続々と響いてくる足音……来客達の到着には間に合ったようだ。扉に架けられた準備中の札を取り外す。

 

 『……小町、出店の方でトラブルのようです。応援を頼めますか?』

 「はい行きます!」

 

 矢矧先輩の声が無線機に繋がったイヤホンから響く。即答して展示室となった教室から外へ。

 校門から校舎へと続く、僅かな空間は出店で埋められている。

 

 学園祭の目玉の一つである、生徒……艦娘達による出店。

 来客達、その人混みの隙間を縫うようにそこを目指す。校舎を出れば目的地はすぐそこだ。

 

 「ひっ」

 「またか」

 

 またかお前。

 喧騒にある学園前、出店の列にあって一際大きな騒ぎになっていたそこ。

 

 隙間を埋めるように出されたのは違法店だった。

 ここ、漣がいるこの場所は出店があってはいけないはずの場所だ。つまりは許可なし。

 

 「せ、先生これはですねお祭りによくあるサプライズという」

 「はい皆様、申し訳ございません。全て返金いたしますので。順番に対応致します」

 

 言い訳しようとする漣、彼女にお口にチャックさせて周囲のお客さんに頭を下げる。

 とりあえずは責任者が出てきたことに安堵したのか、混乱は収束に向かってくれるようだ。

 

 「すみませんすみませんすみません……」

 

 ぺこぺことヘッドバンキングのように頭を下げながら、順番に返金対応していく。

 漣の出店。

 端的に言えば詐欺だった。

 

 「詐欺じゃないですよ!? ちゃんと景品は用意してあります!!」

 

 うるせぇ黙れ。

 その景品が問題だ。一等賞、酸素魚雷。

 これが騒動の原因となっていた。

 

 当然、その魚雷は学園の備品だ。

 景品……売り物にしていいわけが無い。艦娘の装備である魚雷は、兵器の常として当然高価で貴重な物なのだが一体どこからくすねてきたのか。本当にこいつはもう。

 

 「はぁ……とりあえず漣はここを片付けてから、曙の手伝いに行きなさい」

 「ぜ、ぜったい儲かったはずなのに」

 

 ソウデスネ。

 仕入れ値無料で高価な一等賞品を用意出来るなら儲けは大きいだろう。しかし、学園の備品である上に国民の所持が許されない兵器を景品、だなんて許されるはずが無い。漣にさっさと撤収を命じる。いつだってこいつは問題児だ。

 

 『小町ィッ! 焼きそば!! 麺足りないッッッ!!!!』

 「りょ、了解っ!!」

 

 悲痛な声が響く無線に応える。足柄の悲鳴だった。

 漣が半泣きで詐欺店を片付けるのを尻目に、再び駆け出す。急ぎ届けなければならない物は食堂の食糧庫だ。

 

 「間宮さん、麺!!」

 「倉庫右側ッ!!」

 

 こわい。

 普段、忙しいはずのお昼時にでも温厚な間宮さんが殺気立っている。ここ食堂では生徒達、艦娘の日々の食事を体験してもらうという趣旨の元に大試食会が催されている。

 内容として普段の定食、その量を少なめにした物で豪勢ではない。しかし一食無料で振舞われるということで、来場した人は皆こちらへ列をなしているのだ。

 給糧艦間宮の食事を食べられる機会なんて一般の人にはそうないことだし、その美味しさが口コミで更に人を呼んでいるらしい。

 

 そこを任された間宮さんの多忙は殺人的だった。邪魔をしたら殺されると確信出来る程だ。

 

 悲鳴のような声に従い倉庫、右側の棚。そこで焼きそば用の中華麺のダンボールを二個担いで外へ。ずっしりと、その重みが両肩に圧し掛かるのに構わず出店の方に戻る。

 

 「麺、今!!」

 「先生ソース取って!!」

 

 私も忙しさに日本語能力を低下させながら、ダンボールを下ろして叫ぶ。

 こちらも忙殺されているようだった。応援を呼んだ足柄も、既に他へ行ってしまったらしい。

 

 学園祭の華、屋台。その一つである焼きそばの屋台。

 そこでは霞が両手でコテを振り回して調理に励んでいた。屋台裏側、そこに置かれたソースのボトルを引っつかんで渡す。

 

 焼きそばを始めとして、食べ物の屋台。それらは、私が顧問を勤める料理部の面々が各店へ散らばって開いている。

 

 「はいこっち出来上がり! キャベツまだ!?」

 「うるっさい! 刻んで……はい出来た!!」

 

 霞の求めに、即座に応えたのは曙。

 少しつたなさを残しながらも手際よく刻まれたキャベツ。それをたっぷり盛られたボウルが霞に手渡される。妙に息が合っていた。

 

 「はい二人前! ちゃ、ちゃんと味わって食べなさいよ!!」

 「ありがとうございます! ありがとうございます!!」

 

 曙の乱暴気味に感じる言葉、それと共に手渡された焼きそばを来客の男性が過剰にありがたそうに受け取る。

 え、何か変じゃない?

 

 「おいしいです! おいしいです!!」

 「べ、別にアンタの為に特別手をかけた訳じゃないんだからね!?」

 「ありがとうございます!! ありがとうございます!!!!」

 

 ……好評のようだしいいと思うことにしよう、そうしよう。

 深く考える前にそう思うことにした。需要と供給というものだ、反響があるというのはいい事だ……周囲の女性客はその様子にドン引きしているが。

 そうして屋台の手伝いをしていると、ようやく違法店の撤収を終えて漣が合流した。特殊なプレイ店になりかけている曙と霞の店から次の応援に向かうことにする。

 

 無線からはひっきりなしに応援要請が舞い込んでいる。

 次は教室の一室でやっている喫茶店だ。

 

 「お帰りなさいませ、お嬢様……あ、先生」

 

 私を来客と勘違いしたのか、決まり文句で迎えたのはメイド服姿の浜風だった。

 メイド喫茶。

 学園祭の出し物として定番の位置まで来たそれだが、誰だこの衣装用意した奴。店員である艦娘達は揃って露出多めのメイド服。ミニスカートに胸元の谷間を晒すフレンチメイドというタイプだ。

 

 ここも盛況。

 接客をしているのは浜風を始め潮、長波、村雨。

 何かその選択に意図を感じないでもないが構わず助勢に参じる。とはいえ、流石に私がメイド服で接客は出来ないので裏方だ。

 

 「こっちミルクティー!」

 「俺はホットミルクね!」

 「し、搾りたて生牛乳で……!!」

 

 客層は男性、さらに注文も皆偏っている気がする。びき。

 私の中の何かがこの状況にイラついている。

 

 はいはーいと村雨が注文を受けに駆けていく。たゆん。

 長波がごめんっ、お待たせー! と飲み物を届ける。たゆんたゆん。

 こちらお釣りです、と潮がお客さんにつり銭を手渡す。ぎゅ、と男性客の手を両手で包んで渡すと男性の頬が緩む。たゆんたゆんたゆん……びきびきィ。

 

 「ねぇねぇ、君。これから暇あるかな?」

 「あ、あのご主人様困ります……」

 「はいはい、お客さんちょっといいですかー」

 

 浜風に言い寄る、軟派の肩を掴む。バックヤードに連れ出して確保。うちの子に手を出す害虫なんて先生許しませんよ。

 不埒者を警備の人に引き渡して、次の応援へ。眼が回る忙しさ。

 新人である私は足を使う。

 

 「――先生、炭!!」

 

 あいよ!

 戻ってきた校舎前。食べ物屋台の列にある、焼き秋刀魚の屋台。

 木炭の入ったダンボールを運び出す。

 ここを担当するのは磯風だ。次々と行列に加わる来客に対応すべく、秋刀魚を焼き続ける磯風。

 ええと次は……と、大根おろしのストックがもうない。屋台裏で次々と大根を摩り下ろす。

 気づけば陽も傾いて学園祭も終了時刻が近づいている。

 

 「はい、どうぞ!」

 

 お代と交換に、じゅうじゅうと焼きたての表面を焦す秋刀魚を小さなお客さんに手渡す磯風。

 その香ばしい匂いに、受け取った子が表情を崩す。お代はどこも揃って原価ぎりぎり。お祭りとして、来場者に喜んでもらうことを優先として出店している。儲けなんて出ないし、生徒達に給料が出るわけでもない。

 しかしそれでも、磯風は嬉しそうだった。

 

 労働の対価。

 支払われるのは金銭だけではない。それとは別にある喜び。

 それを識るということは彼女達にとっていい経験となるだろう。なって、欲しい。

 

 「先生? ほら、お客さんが待ってますよ!」

 

 感傷に浸る間もなく、磯風に次のお客さんへの対応を促される。

 次々と焼きあがる秋刀魚。行列はずっと続いている。

 

 「……そうですね」

 

 そう答えて、止まってしまっていた手を動かす。

 働くということ。

 

 その対価。それは艦娘の本懐、戦いで得られる物と比較出来ることではない。比べていいことでもない。

 だが『どちらも』価値あることなのだと識って貰いたい。

 

 さて、次……いや最後は体育館に準備された合唱会場だ。

 来客達の流れがそちらに向かっていくのを、腕時計の刻む時間と共に確認して急ぐ。

 

 

 「……、ッ!」

 

 指揮棒を振るう。

 それに合わせてピアノの音が走り始める。

 

 「――」

 

 静かに、体育館の大空間に大和の音が走っていく。

 それに合わせて歌唱隊……全校生徒の歌声が重なる。

 

 学園祭その最後の出し物。

 授業や訓練の合間を縫って練習していた合唱。選曲は学園祭の締めに相応しく、落ち着いた静かな歌だ。

 

 「……」

 

 合唱の指揮だなんて、私自身付け焼刃。

 けれども。

 学園の生徒達は、それに合わせてくれている。

 

 間奏。

 ピアノの声が駆ける。大和の独奏。

 

 全員、黒一色の衣装で纏められた壇上。

 スポットライトに大和の姿が晒される。客席の視線が集中するのにも構わず、ミス一つなく堂々と鍵盤を叩いていく。

 

 合わせ、指揮棒を振るう。

 

 壇上の生徒達が再び喉を楽器として奏でて、大和の演奏に音を重ねていく。ラストスパート。

 

 「――っ!!」

 

 大きく腕を振るう。ぴたり、と全ての音が静止した。

 

 ぱち。ぱちぱち。

 最初はまばらに、追いかけるように続く拍手。

 それらに精一杯の礼で生徒達と迎える。大きな空間を埋め尽くすような、盛大な拍手。

 左右からそれを遮断するように伸びていく幕に惜しさを感じながら頭を下げ続ける。

 

 「……お疲れ様でした」

 

 閉じ切った左右の幕を確認してから、振り返って背後の生徒達に労わりの言葉をかける。

 艦娘学園、最初の学園祭。

 響き続ける拍手の音に、その成功を確信していた。

 

 

 普段の学園であれば、就寝時間を疾うに過ぎている時間。

 しかし、未だあちこちで喧騒が散らばっている。

 

 「ふう」

 

 寮屋上。

 普段締め切られているそこ。開いて、独り占め出来るのは寮長たる私の特権だ。

 学園祭の片付けに一応の目処をつけて漸く夕食。昼間の忙殺を乗り切って手早く済ませられる食事として、用意してくれた間宮さんのおにぎり。

 それと残った材料で作り切った屋台の焼きそば。それらを空腹に掻き込んで、ペットボトルの緑茶で流し込んで漸く一息つく。

 

 食堂で食べてもよかったのだが、少し一人で落ち着きたかった。

 

 「……うん」

 

 固い床に腰掛けながら、呟く。

 この時期この時間。少し冷えるが、昼間の熱気で火照った頬を撫でてくれて心地いい。

 初めての学園祭。成功と言っていいだろう。

 

 時間に追われながら進めた準備。予算も何もかも足りないばかりだったが、いざ始めてみればお客さんの反応は良かったように思う。

 拙いながらも料理部を始めとして艦娘の生徒達は接客出来ていたし、合唱も大きな拍手を頂いた。

 時間と予算が許すならば、来年はもっと色々してみたいというのは欲かもしれないが。

 

 まずは、やり遂げた事を喜ぼう。 

 

 「先生……?」

 

 がちゃり。

 屋上の扉、それが開かれたことに背筋が伸びる。声の主は、大和だった。

 

 「はいっ、ど、どうしました?」

 「あ、あの……先生がこちらにおられると聞いて……」

 

 聞けば、片付けが一段落着いたという報告の為に来てくれたらしい。

 後は売り上げ管理や、各所の施錠確認といった私達の仕事が残るのみだ。

 お疲れ様です、と労ってゆっくりと休むように伝える。

 

 「その……ちょっとだけ、いいですか」

 「……うん。ほら、座って」

 

 言いにくそうに、そう答える大和に隣を勧める。

 おずおずと隣に腰を下ろす大和。

 喧騒は遠く、この屋上に色々な音が届くけれど。どこか、静かだ。

 

 「今日は、楽しかったですか?」

 

 中々話し出せない大和。こちらから、話しかける。

 

 「――はい」

 

 静かに、しかし確かに応える大和。

 何もかも初めてばかりの学園祭。彼女は私と同じく、あちこちへの応援に入る遊撃要員だった。

 展示室や、間宮さんの食堂。曙と霞の焼きそば屋台や浜風達のメイド喫茶、磯風の焼き秋刀魚の屋台。そして最後の合唱、そのピアノ奏者。

 私と同じように駆け回りながら、多くの事を経験してくれたようだ。

 

 未だ熱冷め切らぬ様子の大和。

 

 経験したことのない今日、その一日に興奮が抑え切れない。

 願わくば、得られたこの経験が彼女のこれからの糧となることを。

 

 「皆、楽しそうでした」

 

 隣で、それこそが楽しく嬉しいことだと呟く大和。

 

 「……大和は」

 

 その言葉には、決意が乗っていた。

 

 「こんな日が、続けられるようにしたいです」

 

 決意の言葉。それは、私が彼女に望む『それ以外の日々』との決別だ。

 こんな日。

 私が学生だった頃、深海棲艦との戦争が始まる前の日々。平和が当然であって、当たり前の平穏が続く日常。

 それを続けられることは、当たり前ではなくなってしまった。

 

 不安定な海路、突然の空襲に焼かれる町。

 それが現在の当たり前だ。

 

 「大和は、今日初めて何が守りたいのか本当に分かった気がします」

 

 守るために戦いたい。戦うべき者としての責務を果たしたい。

 しかし、守るべき物は一体何なのか。隣に立つ戦友。それは何より分かり易い。それだけでもいいと、私は思う。だが、戦い続けた先に得られる、求めるべき答えが無ければ自身の身を磨耗し続けるだけの日々になる。だとすれば最後は目に見えている。

 

 しかし、確信を得たように彼女は言う。

 私はただ、その言葉の続きを待つ。

 

 「今日、この日がまた続けられるように。私は戦いたいと思います」

 

 うん。

 今日、この日。ただお祭りを楽しんで、家に帰って。特別な一日でも、何時も通りの一日であっても何者にも犯されない日常。

 それを続けられる為に戦う。

 

 「……大和」

 

 戦うことの意味。自身が傷つくことがあるとしても、それを抱いて進むというのならば。

 私の仕事は、もうその背を押すことだけだ。

 

 「貴女は、必ず。良い戦艦になれます」

 

 それは確信を以って口に出た。良い戦艦、良い船。

 

 「大和。その成果に、期待します」

 

 全身全霊の願い。

 既に一線を引いた私の出来ることはこれくらいだ。

 これから先を担う若人に、精一杯の道を標して託す。後は、願うだけ。

 

 叶うならば、今日この日が続けられるように。

 今日より明日がいい日であるように。

 

 「――はいッ!!」

 

 応える大和の声は、とても頼もしく思えた。

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