ふりーと・すくーる   作:蒼樹物書

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【8】

 「本日は将来の夢についてお話しようと思います」

 

 始業の鐘が鳴り終えるのを見計らって、そう切り出す。

 五限目、C組にて道徳の授業。おい漣そっちの夢じゃないもう起きろ。

 私の投擲した白墨弾が漣の頭に直撃。はいおはよう。

 

 「まずは貴女達艦娘の今後についてですが」

 

 将来の夢……将来の設計をするに当たって、知る必要のある現行制度について説明し始める。

 まず卒業後の着任。兵役の存在。その後。

 学園に在籍する艦娘は一年で卒業、その後各鎮守府へ着任することとなる。

 建造組と同じく二年の兵役が課せられ、満了後に三つの選択肢が与えられる。

 

 まずそのまま軍に残り艦娘として戦い続ける道。

 建造組と違い、ドロップ組の艦娘には耐用期間が確認されていない。未だ十年に満たないとはいえ、最初の発見に近い時期から今現在まで戦えている艦娘は多数いるのだ。

 

 一方、私達建造組は一年から二年程度で艦娘としての能力が低下してしまう。そもそも宮元先生のように適合出来ても戦闘能力が不足している場合もある。建造とは、未だ未熟な技術なのだ。

 それはともかく。

 建造組の兵役期間に合わせて意思確認をする、という側面が近い二年の兵役。

 このことは先入観を持たせないために言わないが、兵役期間を終えたほとんどの艦娘は軍に残る道を選ぶ。自身らを兵器と、戦うことに意義ある存在と信ずる子が多いからだ。

 

 第二に、軍属となって軍に関する仕事に就く。

 軍属とは軍人以外の軍関係者、と言えばいいだろうか。この学園の教師もこれに当たる。私も兵役満了後に選んだ道だ。教師以外にも様々な仕事があり、こちらが先の選択肢に次いで選ばれることが多い。

 軍からの命令に従う義務がある代わりに待遇は一般に比べ良く、またドロップ組ならば軍人への復帰も認められ易い。その点からもメリットが多いと言えるだろう。

 

 そして第三に、解体を受け一般人として暮らすという道。

 人間を艦娘へと改造する建造技術。それと同時に開発された艦娘を人間へと改造する技術が、解体だ。

 建造組だけでなくドロップ組にも可能である。艤装を扱えて身体能力が高い艦娘を、ただの人間にする。

 表向きは建造で艦娘になった人間を元に戻す為の技術だが、それがドロップ組にも有効であると証明されたことで大きな意味を持つに至った。

 

 これはあくまで噂の域を出ないのだが、軍の一部には艦娘不要論というものが存在するらしい。

 超人的な力を持ち深海棲艦に唯一効果的な戦力である彼女達を人外と、怪物と囁く連中。彼女達艦娘が敵になった場合を考えている連中。

 実際問題、艦娘が反旗を翻した場合の威力は六年前の事件によって証明されてしまっている。

 それに脅威を感じることに無理はないが、艦娘を排除またはカウンターを持つべきという論はずっと続いているようだ。

 艦娘の権利が世界的に認められている中、それらは表には出さずにいるが建造と解体の技術開発にはその派閥が大きく関与していることは明らかだろう。

 

 人間をドロップ組と同じ艦娘にしてしまう。

 ドロップ組の艦娘をただの人間にしてしまう。

 

 艦娘達を人類の友と、海の救世主としながらも人類は背後で銃を隠し持つ。

 後ろめたい気持ちになる。このことに彼女達が気づいた時、どう思うだろうか。

 それまでに、誰かと信頼関係を築けていることを祈る。人間も、捨てたものじゃないのだと。隠し持つ背後の銃を、彼女等に向けることがないよう祈っていることを。

 

 そういった裏を持つ解体ではあるのだが、何も悪いことばかりではない。

 解体を受ければ建造組、ドロップ組関わりなく艤装制御が不可能となり妖精さんとのコミュニケーションも取れなくなる。完全な、ただの一般人としての生を得ることが出来る。

 その力から一般の人間と比べ様々な制約のある艦娘から、普通の女の子となるのだ。

 艦娘が軍と縁を切る唯一の方法。

 その後に監視が付く、という噂もあるがこちらを選ぶ艦娘もある程度いる。

 理由は様々だ。軍に嫌気が差したとか、結婚し家庭に入るとか。

 

 「このように軍に残る、軍属となる、解体を受けるといった選択肢があります」

 「あの……よろしいですか?」

 

 おずおずと手を上げる大和にどうぞ、と促す。

 

 「……二年の兵役というのは、拒否できる場合もあるのですよね?」

 「ええ、様々な手続きは必要ですが可能です」

 

 本当に、申し訳なさそうに尋ねる大和。

 大和がこの質問をした意味。

 彼女の感じている恐怖が、どれ程大きいことの証明だろう。特訓を続けたいと、自身の不甲斐なさに涙した大和。

 戦う為に大きな意義を感じる艦娘。

 その自身が戦いに、水上に立つということへ拒絶感を感じていることに後ろめたさを覚えている。

 苦しいだろう。悔しいだろう。

 彼女に原因のない内面の歪み。私は、それを。

 

 「はぁ? あんた戦いたくないの?」

 「……ぅ」

 

 ありえない、とばかりに口を挟む曙。

 

 「曙。発言は許可を得てからするように」

 

 か、と頭に血が昇るのを抑える。曙達生徒には大和の過去は知らされていない。

 想定出来た状況だ、理性的に対処しなくてはならない。

 

 「……曙。近代戦、人間の場合ですが、歩兵一人の戦闘の為にバックアップが何人必要かわかりますか?」

 「さあ、知らないわよ」

 「十人以上です」

 

 その答えに、固まる曙。

 計算方法は様々あるが、労力という数字にした場合で前線の兵士一人にそれだけ必要となる。

 装備の整備、運搬、食料などなど。

 

 「……それが何だって言うの」

 「戦っているのは、前線の兵士だけではないということです」

 

 深海棲艦との戦争中の今。

 誰も彼もが戦っている。艦娘を始めとする軍人。それを直接支える軍属。

 それらを支える税金を納める国民。誰もが、生きる為に戦っている。

 

 「場所は違えど誰もが戦っています。大和」

 「は、はい!」

 「戦う場所が違うことを、気に病む必要はありません。それに」

 

 前線で戦えないことを気に病むということは、後方を下に見ることに繋がりかねない。

 後方がなければ砲一発どころか燃料一滴用意できないというのに。特に我が国は過去、痛い目を見ている。

 勿論プライドを持つことは大事だし、前線を経験した身からすれば安全な後方を羨ましく思う気持ちも理解できる。

 

 「他の皆さんも、戦い方は一つでないこと。選択肢があるということを忘れないで下さい」

 

 曙はまだ少し不満そうだが、概ね皆理解してくれただろうか。

 戦うことに意義を持つ艦娘の価値観を否定はしない。だが、戦い方は一つではないということ。

 それを知ってもらうことは、この学園で学ぶ上で大切だと思うから。

 

 「なお、兵役に就かなかった場合ですが」

 

 その場合は軍属として一定期間働くことになる。適正に合わせた部署で、期間は内容毎に異なっているが大体二年から十年ほど。

 宮元先生は性能不足が理由であり多くの艦娘と接触できる学園を自ら志願した形だが、こちらのパターンだ。

 

 「さて、以上が大まかな選択肢となります。これらを踏まえた上で、将来の夢を考えてみましょう」

 

 これはすぐに答えを求めなくてもいい。

 学び、遊んで。その上でいずれ見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない。

 私のように教師となることを夢見て目指す。それもいいが、なくたって構わない。

 漠然と生きること、それを恥とは思わない。

 生きることは戦うことで、戦っていれば気づかずとも誰かの為になっているからだ。

 ただ、胸を張って生きていてくれればいい。

 

 「はいはーい」

 「どうぞ、漣」

 「楽して生きたい」

 

 お前。

 

 「……苦楽は等価値なので楽したい分、たくさん苦労しましょうね」

 

 若いうちの苦労は買ってでもしろ。

 諸説あるが私は体力気力のある若いうちに経験を、人生の貯金を作ることを促す言葉だと思っている。

 一気に脱力してしまったが、助けられてしまったかな。

 クラス内の空気も弛緩してくれた。色々とトラブルメーカーな漣だが、こういう時は本当に助かる。

 それからはそれぞれに将来について語り合う場とした。逐次質問も受け付ける。

 料理に興味があるとか、艦隊のエースを目指すとか。興味も目標も様々だ。

 未来を語り合う生徒達の姿は、とても輝いていた。

 

 

 放課後、料理部。

 大和を連れて家庭科室の扉を開く。

 既に部長の磯風、そして浜風と創部からしばらくして入部した霞が揃っていた。

 

 「あ、先生……と、大和?」

 「はい。活動参加は不定期ですが、新たに入部する大和です」

 「よ、よろしくお願いします!」

 

 霞は少し驚いたようだがすぐに馴染んだようだ。

 学園内で大和がいることは結構有名らしい。駆逐艦はおしゃべりな子が多いので、噂話も含め学園内の情報は共有化されやすい。学園に十三種類も七不思議があったほどだ。何それ。

 

 「では本日は一食分のメニューを作りましょう」

 

 月曜日の今日。

 霞と新たに大和を加え四人となった料理部、初の複数メニュー同時調理に挑戦しようと思う。

 すでにメニュー内容は決めており、そのレシピも人数分用意してある。

 

 「えーと、肉じゃがにポテトサラダ、油揚げと若芽のお味噌汁。あとご飯……」

 

 メニューを読み上げる浜風。ごくり、と小さく喉を鳴らすのが可愛らしい。早く作って早く食べよう。

 材料はちょっと多めに食べたい私の分も含める為、ちょっと多め。

 既にテーブルの上に各種食材が置かれている。

 

 「さて、それじゃあ分担して進めましょうか。私はご飯と食後のデザートを用意しておきますので」

 

 肉じゃが担当に浜風と霞。

 ポテトサラダは磯風、大和にはお味噌汁をお願いする。

 各メニューを皆でやっていくのもいいが、分量を始め調理方法はレシピを用意しているので同時並行でチャレンジしてみる。

 ちなみに大和はある程度料理が出来るらしい。ホテルは伊達じゃない。たぶん本人に言ったら怒るだろうけれど。

 

 分からないことや手伝ってほしいことがあれば言うように、と伝えてから私も調理に移る。

 まずはご飯。

 計量カップできっちり量ったお米をざるに落とし、軽く水で洗う。糠や油の匂いを流す為だ。

 そして水を張ったボウルへ。濁った水はすぐに捨ててしまう。

 時期によって研ぎとすすぎの回数は変わるが、四月の辺りなら三、四回だっただろうか。

 私の得意分野は洋食だが、お米の炊き方についてはある程度教え込まれている。

 さて、研ぎとすすぎが済んだので浸水。お米の入ったボウルに新しく水を張って置いておく。この時期は冷水で浸水すると美味しい。さて、これで後は一時間ほど置いておく。

 空いた時間、デザートの用意をする前に部員達の様子を見ることにする。

 

 「調子はどうですか?」

 

 まずは肉じゃがを担当している浜風と霞。

 材料を切り終え、炒めている所のようだった。ちなみにお肉は牛肉。

 

 「煮汁はこれで大丈夫でしょうか」

 「ん……はい、問題ありません」

 

 浜風が差し出す煮汁をスプーンで一舐め。レシピ通りの配合だ。

 出汁も今回は顆粒を使っている為、量をきっちり量っていれば味にブレはない。

 

 「それじゃ入れるわよ」

 

 底が深めのフライパンで肉と野菜を炒めていた霞が煮汁の入ったカップを受け取り、注いでいく。

 やがてふつふつと煮汁が沸き始めると、良い香りが立ち昇ってきた。

 

 「あとは灰汁を取ってから白滝を入れて。落し蓋をして二十分ほどですね、その間に片づけも進めましょう」

 

 指示をしてから次のテーブルへ。浜風、何時までも煮物の匂い嗅いでないで作業を進めるように。

 次は味噌汁を作っている大和。

 といっても既に包丁とまな板を洗っているようだ。

 

 「どうですか、大和」

 「あ、はい! あの、味見して頂けませんか?」

 

 そういって鍋から小皿に味噌汁を注ぎ、手渡してくれる大和。

 丁度出来たところだったのだろう、火を落とした鍋からはまだ湯気が立っている。

 

 「ん……うん、美味しい。何かひと手間かけましたか?」

 「はい、ちょっとお醤油足してみたり……」

 

 昔の記憶を掘り起こして用意したレシピ、私の味とは少し違うように思う。

 が、これはこれで、というより悔しいが美味しくなっている気がする。

 なるほど、醤油か。塩分が増える分味噌は控えているのだろう、しかしコクが増している。

 私も豚汁には入れたりするが、若芽と油揚げが具なら相性がいいのかもしれない。今度真似してみよう。

 

 「油揚げもしっかり油抜きしているようですし……いいお嫁さんになれますよ、大和は」

 「おッよめ……っ、あ、ありがとう、ございますッ……」

 

 うーん、初々しい。

 セクハラぎりぎりだが、こんなお味噌汁なら毎日飲みたい。

 固まる大和を後に、次は磯風。

 

 「……磯風?」

 「ああ先生。申し訳ない、もう少しかかりそうだ」

 

 磯風?

 なぜどうしてポテトサラダで芋を茹でるのでもなく、煮込む行程が発生するのですか? 何故マヨネーズだけでなくケチャップや甜麺醤が用意されているのですか? どれも使用済なのは何故?

 既に、どうしようもなく遅かったことを理解する。最初に見回るべきだった。

 

 「あの、レシピ」

 「ちょっと私なりに手を加えてみた」

 

 うん、大和もしていたことだしそれは責めませんよ先生。

 これまで私がしっかり見ていたこと、皆と一緒に調理していたこともあって気づかなかった。

 この子はその、あれだ。本当はちょっと料理が苦手だったのだ。

 味覚はそうズレていないはずだが……。

 

 「基本も、大切に、ね……?」

 「ああ、だが自信作だ、期待していて欲しい」

 

 控えめにそう言うのだが、磯風は胸を張ってそう答える。その自信は一体どこからくるのだろうか。

 い、いや。まだ食べてもいないのに評価を下すわけにはいかない。

 鍋の中がサイケデリックな色合いで、微かにアスファルトの匂いがするが美味しい可能性が僅かにある。きっとある。あって欲しい。

 

 とりあえずさり気なく窓を開けて換気をしつつ、自身の調理スペースに戻る。

 そうこうしている内にお米の浸水は十分。家庭科室には炊飯器もあるが、今回はせっかくなので土鍋を使う。

 浸水させたお米をざる上げし、土鍋へ。しっかり量った水を注いで平らに均す。

 後は中火にかけて沸騰したら二分、火を弱めて三分。その後は弱火で五分ちょっと。

 つきっきりで土鍋とにらみ合う。赤子泣いても蓋取るな。赤子いないけど。そもそもお相手すらいないけど。

 合計十分ほど過ぎたらようやく蓋を取り様子を見る。うん、水分は残っていない。

 再度蓋をして土鍋内の下がった温度を戻す為、中火で十秒。気持ち長めに、ちょっとだけおこげも作る。

 そして火を落として蒸らしだ。

 肉じゃがの方がもう少しかかりそうだったので、布巾を鍋と蓋の間に挟んで蒸らしておく。こうしておけば余分な水分を吸ってくれる。

 時間を計って火力を調整したりと、手はかかるが土鍋は炊き上がりまでが早い。

 炊飯器も便利だが、こちらに置いてあるものはお手頃価格、味も土鍋で炊いた方が勝るだろう。既に炊き立ての香りが鼻腔をくすぐっているが我慢。デザートに取り掛かろう。

 

 出番のなかった炊飯器だが、こちらを使う。

 材料は板チョコレート、生クリーム、ホットケーキミックス。混ぜるのも炊飯器の釜を使うためお手軽だ。

 

 「先生、お手伝いしましょうか?」

 

 既に作り終え片づけもして、手持無沙汰になったのか大和が申し出てくれる。

 ありがたくお願いすることにする。

 

 「それではメレンゲをお願いできますか?」

 「はいっ」

 

 これだけで全て了解するのだから、結構得意なのだろう。味噌汁の味見の際も思ったがやはり出来る子だ。

 手際よく卵四個分の卵白を泡立て器にかける大和を横目に思う。

 先ほどの冗談、お嫁さんというのも存外合っているかもしれない。旦那さんは幸せ者になるだろう。

 ……我が身を省みて複雑な心境に陥りつつも調理を進める。

 炊飯器の炊飯ボタンを押して、蓋を開けたまま砕いたチョコレートを溶かす。溶けたら生クリーム、卵黄を加え混ぜていく。あとはホットケーキミックス、大和から受け取ったメレンゲも混ぜる。

 ムラなく混ぜたら後は炊飯器にお任せだ。

 焼けた後冷まして冷蔵庫で二時間ほど置くとしっとりした生地になって美味しいのだが、出来立てのまだ温かいのも美味しい。食後に合わせて調整したので今回は後者だ。冷たい紅茶でも用意するとしよう。

 

 「先生、こちらも完成だ」

 「……そ、それでは配膳しましょうか」

 

 にこにこと、サラダボウルに山盛りのポテトサラダらしい何かを持っている磯風。

 形容し難きモノだった。私はその物体を説明する術を持たない。

 己の無力さを痛感しつつ、私も土鍋をテーブルへと運ぶ。

 ご飯とお味噌汁を各々のお椀へ。肉じゃがとポテトサラダカッコカリは大皿から取る形にする。

 

 「では、新入部員の加入を祝って」

 

 いただきます。

 号令で一斉に箸を取るが、満面の笑みの磯風を除き皆挙動不審だった。

 ポテトサラダと思いたい何かから明らかに目を逸らしている。

 味噌汁や肉じゃが、ご飯は好評。土鍋での炊き方にも興味を持ってくれたようだ。しかし話題に上らず誰も箸を延ばさないそれ。少しずつ磯風の笑みが曇り始める……子供を、生徒を守るのは私の役目だ。腹を括る。

 

 「磯風のポテトサラダも、頂きますね」

 

 私の宣言に周囲の空気が凍る。ただ一人、表情が綻ぶ磯風。

 

 「ど、どうぞ!」

 

 勧める磯風。ぎちぎちと拒絶するように動かない腕を動かして箸を伸ばす。

 箸を当てるとがちり、ぐみょりという良くわからない感触。息を止め匂いを嗅がないようにして口へ勢いよく運ぶ。運んでしまう。

 

 「――美味しイ。気に入っちゃったのデ全部先生が食べチゃいますネ」

 

 すぐさまサラダボウルを抱えるようにして掻き込んでいく。

 あはは、おいしー。

 おいしー。

 お。

 

 「そ、そうですか! そんなに気に入っていただけましたか!」

 

 嬉しそうな磯風の声はもう認識できない。ただポテトサラダを口に運び続ける。

 止まってしまえば、もう動けないという確信があった。

 

 磯風の特訓もしよう、うん。

 最後に残ったのはその決意のみ。

 炊飯器で作ったガトーショコラ、食べたかったな。

 ぽてとさらだおいしー。

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