「ワンさん、俺ともバトらない?」
「よう緑川。そっちの隣のは誰だ?」
白龍は緑川の質問に答えるより先に自分の疑問を伝えた。
「玉駒の空閑遊真先輩、俺よりもずっと強いよ。遊真先輩、こちらがワン・パイロンさん。」
「どうもはじめまして。」
「おう、こちらこそ。成程、アンタが噂のネイバーか。あの村上を倒したと聞いたぞ。」
「いえいえ、偶然です。」
謙遜する遊真を余所に緑川が話を戻そうとする。
「ところでバトルはどうすんの?」
「折角だが、俺は断らさせてもらうぜ。」
「え~なんで~?」
「今日はもうこりごりだ。それに、」
白龍は丁度ランク戦部屋に入って来た人影を見ながら続きを言った。
「お前達にはもっとふさわしい奴が居る。」
長めの黒髪はラテン系だが、緑色の目はノルマン系だろうか。
ヨーロッパ系にも関わらず肌には黄色人種並の浅黒さが感じられ、顔の彫りの深さもアラブ系と思われる。
身長は178cm程、丁度白人の平均身長と同じ位。
黒いロングコートという上着に包まれていても分かる鍛えられ引き締まった身体。
二輪用ブーツを履いた足を音も無く歩かせ、周囲を見ているのか一点に注目しているのか分からない視線が常に警戒している様に見える。
すると偶々近くに居たC級隊員が見慣れない多民族人の姿をチラッと見た。
しかしC級隊員は実際見られてもいないのに睨まれている気がして思わず動揺し目を逸らした。
「ブライアン、早速頼みだがコイツらの相手をしてくれんか?」
多民族人より2、3cm低いチャイナ服を着た東洋人がフレンドリーに話し掛けた。
「分かった。」
くぐもった様な抑揚の無い最低限聞こえるだけの声で多民族人は答えた。
「で、ブライアン、この小さいのが玉駒支部の空閑遊真だ。遊真、この目付きが悪いのが俺の隊のメンバーのブライアン・スコットだ。本名はもっと長いけどな。」
「どうもよろしくおねがいします。」
「ああ。」
礼儀正しく挨拶をする遊真に対しブライアンと呼ばれる青年の挨拶は無愛想な物だった。
「それで、俺が相手をしろという事か?」
「おう、緑川にはもう”教え”てやったっけ?それともまた教えてやったらどうだ?」
「いや、俺はもうポイント取られるから止めとくよ。」
緑川が辞退を伝えると、ブライアンは遊真を一目見るなり、
「この世界はトリオンが全てでは無い。それは知っているな。」
と言った。
「勿論だけど?」
遊真はブライアンが何を言いたいのか分からず疑問混じりに答えた。
(そういやスコットさんは何を使うのか分からないな。一応遠距離警戒もするか。)
そう考えた遊真は物陰から見えるブライアンへ、身を遮蔽物に隠しながら接近する。
対するブライアンは道路の真ん中で堂々と仁王立ちをしている。
遊真はブライアンの左側の民家の庭に隠れ、2人の距離は5mにも満たない。
ブライアンは依然として動作を見せない。
遊真はグラスホッパーを使い、勢い良く相手へと飛び掛かった。
直後、ブライアンの手はロングコートの中に突っ込まれ、一瞬で引き出された。
遊真は右手にスコーピオンを握りながら咄嗟に左手でシールドを出す。
拳銃から連射されたアステロイドがシールドにひびを入れた。
反対側へ着地し、相手を確認する。
両手に拳銃型トリガー。
ならば間合いを詰め、しかも両手が塞がれてシールドが使えない筈だから......。
地面を蹴り、距離を詰める。
左右のスコーピオンを交互に繰り出し、首、頭、胸、左腕、右足、喉、左脛、右手首、頭、と狙うが、全て躱される。
その時、遊真の横薙ぎを放つ腕がブライアンの腕に阻まれ、空いたもう片手で遊真のトリオン器官へ銃を向ける。
体を捻って銃弾を避けた遊真は、今度はもう片手を振り下ろす。
するとブライアンは体を回転させ、上段回し蹴りでスコーピオンの平らな側面を蹴り軌道を逸らした。
回転の勢いを更に増やし、首目掛けて回し蹴りを繰り出す。
体を引き蹴りを躱し、剣を空中の無防備な”筈”のブライアン目掛けて跳び上がり居合斬りを仕掛ける。
だが、ブライアンは突然”重力加速度を上回る”速さで地面に着地し、逆に無防備となった遊真を銃弾が貫いた。
(何だ今のは?)
遊真はランク戦部屋ブースに仰向けになりながら考えた。
(グラスホッパーなら移動前に出す必要があるのに出てなかった。いや、それ以前にブライアンさんが片手を空けてはいなかったしな......。)
連射される銃弾で牽制される中、遊真は機動力を言わせあっという間に辿り付いた。
左右からスコーピオンを叩きつけるが、それを上回る速さで遊真の腕は受け止められる。
(でも何でブレードじゃなくてわざわざ銃弾なんだ?)
疑問を抱えながら斬り上げを放つ右手首を止められ、銃口が頭に向けられる。
姿勢を低くし逆袈裟斬りを放つと同時にブライアンが後方へ下がる。
遊真もそれを追おうとするが、ブライアンが銃を持ったままの右手を握り、勢い良く前に突き出した。
遊真には当たる筈の無い距離、しかし、遊真は頭面に強い衝撃を感じた。
トリオン体にダメージは無かったが、のけ反る最中に銃弾をもろに喰らった。
遊真の攻撃を次々と受け止めるブライアン。
続けて腕を払い除けようとするが、直感的に手を引き、後退した。
ブライアンが受け止めようとした腕から刃が生えてきたのだ。
遊馬はグラスホッパーを大量に散布し、地面を蹴った。
「ピンボール」と呼ばれる必殺技を前にしてブライアンは冷静に体の動きだけで斬撃を躱してみせた。
遊真がグラスホッパーを蹴り次の攻撃を仕掛けようとした時、相手の身を包むロングコートが大きく動いた。
斬撃を躱され、代わりに遊真の胸には大ぶりのサバイバルナイフ程のブレードが突き刺さった。
(あの動きにくい服装は隠す為だったのか。)
「おっ、メガネボーイじゃん。丁度今お前ん所のチビスケがバトってるぜ。」
「空閑が?誰と?」
米谷に言われた修はランク戦のスクリーンを見上げた。
現在戦闘中と表示されている名前は空閑遊真、そしてブライアン=ミハイル=ホンダ=スコットと書かれていた。
「ブライアンさんは確か市外の研究所みたいな支部に所属している人だ。」
「市外にも支部があったんですか?」
「俺も以前は全然知らなかったぜ。本部にあまり来ないから何時も珍しがられるんだ。」
因みに現在の戦績はというと、遊真0勝5敗、ブライアン5勝0敗。
「空閑が負けている?!」
「ああ、あの人は実力では迅さんや太刀川さんに迫るかも知れないってさ。それに何より......。」
スクリーン中の遊真のスコーピオンがブライアンのブレードと正面から競り合う。
スコーピオンにヒビが入った。
それを見かねた遊真は体勢を低くし、スコーピオンが割れたものの斬撃を躱し、そのままブライアンの腹へ膝蹴りを決めた。
蹴りを受けたブライアンは空中へ吹き飛ばされ、それを遊真が追い掛ける。
「やはり小柄な遊真の方が攻撃を避ける分には有利か。それにグラスホッパーなら空中で......。」
「と、思うじゃん?あの人に空中戦で勝てる奴は多分居ないよ。」
「え?どういう......」
修が聞き返す最中、スクリーンでは空中を漂うブライアンが何の前触れも無く後方から前方へ、勢い良くベクトル変更したのだ。
擬音語にすると、フワーッ、というようにまるでトランポリンで跳ね返る様に勢いはあるが滑らかに動いたのだ。
両手は起動した状態のブレードが握られており、足も何かを蹴った様な動作をしていない。
不意を突かれた遊馬は頭をブレードに裂かれた。
「出た、初見殺し。両手が塞がっていると見せてあの手に皆引っかかるんだよなー。」
「今のは?!トリガーを使った様子はありませんし......。」
「んじゃあ種明かしするか。あれはな......」
(あの変な動きの仕組みが分かれば1勝は出来そうだけどな。)
50mもの距離から正確に撃ち込まれるアステロイドをシールドで防ぎながら接近する遊真。
拳銃からはマシンガンの様に銃弾がばら撒かれ、遊馬はそれを最小限のシールドで迎え撃つ。
(いや、むしろ逆だ。)
そう判断し、右へ方向転換し、細い路地に入った。
更に奥へ突き進み、大量の廃棄物が散乱する薄暗い路地裏へ来た。
遮蔽物で入り組み、銃弾は通らないだろう。
少ししてブライアンが正面から堂々と現れた。
手にはナイフ2本、遠距離攻撃を仕掛けるつもりは無いらしい。
(しかし、自分から不利な条件に入るなんて普通は無いと思うが......。)
遊真がこの路地裏を選んだのは道具類も重なる狭さを活かし地の利で攻める作戦だ。
だがブライアンはそれを承知か知らずか、わざわざ遊真の罠にかかる形となっている。
2人はダッシュしながら正面からぶつかり合った。
4本の剣は互いの持ち主に操られ攻防を繰り返す。
その内遊真は相手の思惑に気付き始めた。
(成程、見えにくい。)
頭を除いた全身を包む黒い服装はただでさえその輪郭が見づらく、このように暗い場所では尚更だ。
だが大柄な向こうも動きにくい筈だ。
正面からの連撃同士の衝突が続く。
変化を作るべく前と後ろにグラスホッパーを撒き、壁を蹴り、素早い動きでブライアンを取り囲む。
全方向からの攻撃をナイフ2本で受け止め、宙を舞う遊真へ的確に反撃してみせる。
突然、遊真は足を何かに引っ掛けてしまいバランスを崩した。
見ると足元には重そうな鉄骨が存在していた。
体勢を整え、再び攻撃を仕掛ける、がその試みは再びバランスを崩した事によって潰えた。
足元を見れば同じ鉄骨が”違う方向”でそこにあったのだ。
動揺を見せた遊真はこれで8回負けた事になった。
最後の試合。
(一か八か、やってみるか。)
これまで一度も勝っていない遊真はまだ使っていない手を使う事にした。
拳銃連射で牽制されながらも何とか10m以内に接近出来た。
しかし、今度はブライアンが変化を付け始めた。
拳銃を持つ両手を1発撃つごとにランダムに動かし、しかも全て正確に狙いが付けられている。
手が素早く動いているので銃口から軌道を読む事が難しくなり、直径1mの円エリアから銃弾が発射されるので少しながら軌道に多様性を持つ事となる。
それでも遊真は自分の機動力、トリガー、技術を駆使し、残り5mへと距離を詰めた。
グラスホッパーで更に近づき、残り1m。
ブライアンが右の銃をナイフに取り換え、スコーピオンを迎え撃った。
遊真の軌道は後ろに逸らされ、両手を拳銃に持ち替えたブライアンが銃口を向ける。
(この距離ならいける!)
遊真は両手のスコーピオンを合成し、「マンティス」を発動させた。
5mの距離から離れながらスコーピオンが目標の首目掛けて真っ直ぐに突き進む。
残り1mを切った。
ブライアンは拳銃を持ったまま右手を向けた。
突然、刃は曲がった。
進行方向には何も無いのにまるで”何かに逸らされる”様に曲がり、掠りもせずに通り過ぎた。
次の瞬間、遊真は正面から強い衝撃を受け、アスファルトの地面に叩きつけられた。
慌てて起き上がろうとするが、体が動かなかった。
トリオン体にダメージが入った訳でも無い。
力が入らないのではなく、力を入れれば入れる程それと”同じ力で押し返される”のだ。
遊真が動けないままブライアンがすぐ正面に立った。
見ると何も持っていない左掌を向けている。
「どういう事なんだ?こんなトリガーなんて見た事も聞いた事も無い。物を動かすのか?」
「違う。」
短く答え、右のナイフを握る手を深く握り締めた。
「一応言っておいた筈だ、この世界はトリオンが全てでは無い。」
「......つまりこれはトリオン関係無しって事か?」
「俗に言う「念力」だ。物体、電磁波、音波、素粒子、エネルギー伝導、そしてトリオン、あらゆる物を動かせる。」
「じゃあ空中でおかしな動きをしたのも鉄骨を動かしたのもスコーピオンを曲げたのも全部?」
「そうだ。」
こうして遊真は10回目も負けたのだった。
「さっきの念力は本当にサイドエフェクトじゃ無いの?」
ブースから出て来た遊真が既に出ていたブライアンに対して質問した。
「観測ではトリオンは検出されなかった。それにもし念力がトリオン由来であればそれで直接攻撃すれば早い。」
「へえー。念力って他に何か出来ないの?」
「基本的にこの世に存在する物ならば何でも動かすもしくは曲げる事が出来る。質量体、トリオン体、電磁波、熱、質量すら持たない素粒子まで理論上は可能な筈だ。」
「可能な筈、って実際にやった事は無いの?」
「動かす対象を何らかの手段で認識する必要がある。」
「成程。見えない物は動かせない訳か。」
遊真が感心した様に言い、次の話題を持ちかけた。
「そういえば、ブライアンさんの隊は他にメンバーは居ないの?あの素手のワンさんって人もそうだよね。」
「ああ、パイロンは隊長だ。あとメンバー1人とオペレーターも居る。今は本部に居るかも知れんな。」
「ヒャッハー!トリオン兵は消毒だ!」
雄叫びとともに大型のアサルトライフルからトリオンの銃弾が連射される。
1秒で20発、中威力中速中距離。
銃弾達が建物から出てきたトリオン兵達を襲う。
トリオン兵はどれも身長2m程の人型、合計6体。
それぞれ手に銃らしき物体を持っている。
トリオン兵が左手をかざすと、シールドが銃弾を防いだ。
だが間に合わないのが1体、右足に被弾した。
負けじとこちらに銃弾を飛ばして来る。
近くの民家を盾に銃弾を避ける。
民家から飛び出し、銃口はトリオン兵たちに向かれている。
【Slag】
対するトリオン兵達はシールドをかざした。
「ざんねーん。」
煽り文句を添えて引き金を引いた。
高威力と高弾速を備えた銃弾が1発のみ。
銃弾はシールドをいともたやすく貫通し、更にトリオン兵の胸まで貫いた。
バシューン!
胸を貫かれたトリオン兵から何かが勢い良く上空へ飛び出てた。
ガシャン!
後方から何か聞こえ、振り向くと剣を持ったトリオン兵が3体。
「我ながら嫌な物作ったな......。」
【Shot】
存在を確認し、銃弾を乱射する。
近距離用散弾がばら撒かれ、これを見かねたトリオン兵達は身を物陰に潜めた。
【Sword】
銃口からビームの様な物が出て来たか思うと、ビームは更に5mにも伸びた。
ビームは障害物ごと薙ぎ払われ、半径5m以内を一周、支えを失った壁やブロック塀が落ち、トリオン兵の1体が爆発した。
だが気を抜いては居られない。
銃を持ったのが右方から2体と左方から2体、仕留め損ねた剣を持ったのが前方から2体。
だが、先制を掛けたのはそのどれでも無い方向だった。
勢い良く後ろを振り向き、銃を胸の前に掲げた。
丁度銃から生み出されたシールドが後方から迫っていた銃弾を2発受け止めた所だった。
「......こりゃ良い物を作ったな。」
後方にある少し高いアパート、その位置にスナイパーが2体。
【Rocket】
銃口から発射されたのは飛距離を伸ばし、威力を上げた低速単発弾。
弾は遅いが、アパートの屋上に命中し、屋上が爆発に包まれた。
だがその中から何かが飛び出た気配は無かった。
【Gatling】
今度は周りを囲む6体へ向けて秒間100発という驚異的な速度で銃弾が吐き出された。
機銃掃射により、トリオン兵達が距離を取る。
ならバラけた所をやれば良いだけだ。
銃口を一番近い正面に向け、銃弾の嵐が巻き起こる。
正面の1体が慌ててシールドを出すが、大量の銃弾によってあっさりと削られ、頭に大きな損傷を受けた。
しかし、残る5体から復讐とでもいうようにアサルトライフル型の銃弾を大量に発射される。
【Sonic】
銃口からは何も発射されなかった。
その代わり、強烈な反動が発生し、身体が銃口とは反対方向に吹き飛ばされた。
そして、前方のトリオン兵が突如吹き付けた突風によって後方に吹き飛ばされた。
トリオン兵の包囲から脱出し、
【Sniper】
銃身に取り付けられたスコープを覗いた。
トリオン兵が2体、こちらをスナイパーライフルで狙っているのがスコープ越しに見える。
迷わず引き金を引き、相手も引き金を引くのが見えた。
咄嗟に身を捻り、1発の銃弾が脇腹を掠めた。
だが、アパートの屋上で爆発が1つ。
「あと......6かよ。」
ぼやきざまに残りの地上部隊がこちらへ向かっているのを肉眼で確認した。
だがまだ20m以上は離れていて十分な距離だ。
【Heavy】
トリオンを消費し、三脚の銃座が銃の株に付けられた。
「出てこいクソッタレ!」
罵声と共に消費を無視した高威力かつ高弾速かつ高射程の銃弾が秒間20発もの速さで発射される。
対物ライフル並の銃弾の突撃を前にトリオン兵達はシールドを翳すが、すぐに割れてしまい建物の陰に隠れた。
それを見かねたスナイパーのトリオン兵が照準を合わせる。
「盛り上がってるかーい!」
銃の向きが突然変えられ、屋上のトリオン兵を襲う。
十数発が周囲の壁に命中し、1発だけが頭から胴体を貫通し、爆発した。
安堵している暇は無い。
銃を残った5体へ向けようとした。
だが見えるのは1体だけ。
「速っ?!」
慌てながら銃に取り付けられた三脚を外し、腰の位置に構える。
3体がそれぞれ前、右前、左前から近接武器を持ち、
残る2体が後方から銃を構えている。
【Sword】
銃口からトリオンの剣が出現し、前方からの3本の刃に対抗すべく振り回される。
後方からの銃弾は同時に銃の周囲で張っているシールドで対処済みだ。
だが、
「......やっぱパイロンからカンフー習おうかな。」
そう呟いたのと同時に右のトリオン兵が足元を掬った。
残る2体が剣を振り出し、それに合わせて銃の周囲に展開されたシールドを翳す。
それを見逃さず、離れた2体が銃撃を仕掛ける。
(仕方ねえ。あれ使うか。)
考え事をしながら被弾したが致命傷にならない様に避け、両手に持っている銃を投げ捨て、ポケットから何かを取り出した。
手に持った試験管程度の飾り気のない物体を放り投げ、地面に達した。
試験管もどきから黒い閃光が発されたかと思うと閃光は形を作り出した。
現れたのはスポーツタイプのバイク、の形をした物だった。
速攻でシートに跨り、ハンドルの右グリップを捻った。
バシューン!
爆発する様な噴射音と共に車体が急発進した。
ドガッ!
加速中に段差を越えた様な手応えを感じた。
振り向きはしなかったがバックミラー越しには体中にヒビの入ったトリオン兵が倒れていた。
体を右に倒し、そして急に左に倒す事で重心移動し、車体ごと180度回転した。
「俺の目を見ろ!」
カッコつける様に言うとアクセルをふかし、トリオン兵達の中へ突っ込んで行った。
当然トリオン兵達は迎撃しようと全員銃を構え、一斉射撃を行う。
バイクを盾に突進し、左右側部に付けられた機銃を乱射する。
その銃弾によって2体倒したが、こちらも受けた銃弾によってバイクが故障した。
「ばんざーーーーーい!!!!!」
喉が裂けんばかりの声量でハンドルから手を離し、車体がトリオン兵へぶつかって行った。
自分は地面に不時着すると共にトリオン兵と一体となったバイクが爆発炎上した。
(あーあ、めんどくせえ......。)
起きながら見えるのは、目の前に残る1体。
「あんちゃん、悪いけど格闘モード頼むわ。」
トリオン体標準装備の通信機能を利用し、空間の向こう側の人物へ話し掛けた。
『良いですよ。でも本来ならこれで負けなんですからね。』
聞こえて来たのは若い、まだ10代半ば位の、トーンが高く、うんざりした様な少女の声だった。
「分かってら。」
通信が終わり、するとトリオン兵が構えている武器をしまった。
脇を締め、肘を脇腹に合わせ、拳を顎の高さに、右足を引き、ボクシングの構えか。
(ならこちらは......見よう見まねだが。)
左半身を前に出し、左手を首の高さに、右手の親指で時々鼻を擦る。
「アチャー!」
折りたたんだ左腕を勢い良く伸ばし、裏拳を放つ。
受け止められ、続けて右正拳、左裏拳、左横蹴り、そして右回し蹴り。
トリオン兵は慌てる事も無く(そもそも慌てたりしないが)攻撃を捌き、最後の蹴り足を掴んだ。
持ち上げながら前進し、結果右足を伸ばされたまま後ろに倒れた。
「いでででで!股裂ける!」
倒れたまま、次は四の字固めを決められる。
なんとか振り解き、対抗すべく両足でトリオン兵の首を掴み絞める。
だが振りぬかれ、トリオン兵は起き上がると自分の背後に回り腹に手を回した。
そのまま持ち上げられ、頭から勢い良く叩きつけられる。
「野郎、ジャーマンスープレックスとはやるじゃねえか。」
『何やってるんですか、もう......。』
通信越しに苛立った声が聞こえた。
「待ってくれ、もうちょっと......」
『もうデータは取れましたよ。』
「へいへい。「ベイルアウト」。」
渋々呟き、視界が眩むと体が浮き上がる様な感覚を覚えた。
「あーあ、ジャーマンさえ決められなければな、ジャーマンさえ......」
作戦室に帰還し、俺が愚痴をこぼすと少女の苛立った返事が返って来た。
「もう、何でいつも勝手な事ばかりするんですか?」
「そう怒らんでも、あんちゃんは笑った方が可愛いから......」
「話を逸らさないで下さい!」
オペレーター席に座る自分より8歳も年下だという少女に怒られ、青年はこれ以上何も言い返せなかった。
「お前ら仲良いな。何なら杏樹ちゃんをうちのオペレーターにしたい位だ。」
割って入ったのはボーダー元エンジニアであり、現冬島隊隊長の冬島慎次だ。
「冬島さん来てたんすか?」
「まあな。統、お前面白い物作ってるじゃんか。」
「褒めるのは良いですけど、これタヌキ野郎に認められなきゃ意味無いですからね。」
「はっはっは、そう悪く言うなよ。鬼努田さんと”お前達”の方向性が違うのは分かってる。でも俺は面白いと思うぞ。こちらの技術で独自のトリオン兵か。それも人型で元プログラマーのお前の組み込んだ人工知能搭載だって、良いじゃないか?それにお前が使っていたあの武器とかあんなん思い付かないって。」
「元々ロボット作るのが俺の夢でしたからね。「ノア」に関しては玉狛の奴の逆バージョンですよ。負担が激しいから詰め込み過ぎている機能を添削しなきゃ。」
と苦笑しながら冬島さんと談笑する俺の名は新条統。
今は25歳でボーダーのエンジニアと研究者をしながら「白龍隊」のメンバーでもあるが、1年前までこれでもかなり有名なIT企業に勤めてたんだぜ。
そのIT企業をある事情で辞めた所をボーダーに拾われたって訳。
俺は主に「ロボットベースのトリオン兵」と「誰にでも扱える万能な武器」を研究している。
トリオン兵に関しては人員不足が補えるし、ネイバー侵攻から出動に時間が掛からないし。
万能武器に関しては玉狛のレイジの改造トリガーチップとは違って一つの武器で多用途という奴だ。
ちなみに、この俺があんちゃんと呼ぶオペレーター席に座ってる娘は花咲杏樹と言って確か今17歳だったか。
ただ見た目はそれ相応だと思うが声が少々幼いかも知れん。
こいつ俺にツンツンする癖にブライアンの奴にはデレデレしてやがる、全く、何でアイツを気に入ってるんだろうな。
俺達2人とブライアンとあと隊長のパイロン、この4人が俺達「白龍隊」だ。
人物紹介
名前:ブライアン=ミハイル=ホンダ=スコット
年齢:19歳(職業:不明) 1月12日生まれ
身長:178㎝
血液型:B型
好きなもの:不明
所属:ボーダー某支部所属 A級白龍隊
階級:A級隊員 隊員
肩書き:オールラウンダー
所持トリガー:
メイン> 弧月(改) アステロイド(拳銃) シールド Free
サブ > 弧月(改) アステロイド(拳銃) シールド Free
名前:新条統(しんじょう とう)
年齢:25歳(ボーダーエンジニア) 11月8日生まれ
身長:171㎝
血液型:A型
好きなもの:ゲーム プログラミング ネット アクション・SF映画
所属:ボーダー某支部所属 A級白龍隊
階級:A級隊員 隊員
肩書き:スナイパー兼ガンナー
所持トリガー:
ボーダーのノーマルトリガー:
メイン>アステロイド(突撃銃) アステロイド(散弾銃) イーグレット シールド
サブ >メテオラ(榴弾銃) ハウンド アステロイド(拳銃) シールド
オリジナルトリガー:「ノア」