ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第1章 賢者の石
第1話 ホグワーツ特急


 世の中には不思議なものが溢れている。

 その中で、私が一番興味があるものが『魔法』というものだ。

 魔法とは、常人に操ることは不可能で、とにかく謎に満ちたもの———二十一世紀の日本では、だいたいこの認識がされている。私はそんな魔法が大好きだった。

 小学校中学年の時、私は『ハリー・ポッター』という小説に出会った。作者の描くその世界は詳細まで考え込まれ、奥が深く、イギリス魔法界という社会が裏で築き上げられていても全く違和感がなかった。とにかく私は魔法に惹かれ、出来る限り呪文を覚えたり、ホグワーツから手紙が来たりしないかなと思ってみたりもした。まあ、手紙は来なかったのだが。

 『魔法』が大好きだった私。そんな私は、様々な出来事を経た後、こうして魔法使いのタマゴになったのだった。———転生という形をとって。

 

 そう、私は『ハリー・ポッター』の世界に転生したのだ。

 

 少し語ってしまったが、とにかく私は偶然手に入れたこの第二の人生を大いに楽しもうと思う。

 

 *

 

「こんにちは、相席よろしいでしょうか」

 

 コンパートメントをコンコンと礼儀正しく叩き、顔を覗かせた少年に対し、私は「はい。もちろんです」と当たり障りなく返した。———お分かりだと思うが、ホグワーツ特急での恒例行事である。

 向かい側の席に座った彼は、これまた礼儀正しく自分の名を言った。

 

「ジャスティン・フィンチ=フレッチリーです。マグル生まれで、今年新入生です」

「私の名前はリズ・フォーリー。私も一年生です」

「ああ、同い年なのですね。少し安心しました」

 

 多分、同学年と比べてかなり小柄である私が一年生であると見当は付けたものの、少しは不安に思ってくれていたようである。とにかく、もう少し肩の力を抜いてもいいだろう。

 

「リズは魔法使いの家系に生まれたのですか?」

 

 マグル生まれと言っていたこともあり、若干血筋を気にしている部分もあるのだろう。少し不安そうにジャスティンは問い掛けてきた。

 

「はい。私は聖二十八一族という、歴代純血の家系に生まれました。だからと言って、優秀だとは限らないんですけど」

 

 相手が不安に思わないよう、最後の一言を付け足しておく。

 

「そうなんですか。なら、魔法界のことにも詳しいんですか?」

「えーっと……それなりに」

「なら、『組分け』について教えて頂けませんか」

 

 組分けか。ホグワーツの新入生が入学する前に、自分が所属する寮を決める儀式。長年の伝統なのか、まだホグワーツに入学していない者には暗黙のルールのように知らされないことが多い。

 どう言おうか迷っていると、救いの手が天から差し伸べられた。

 

「ああ、組分けの儀式ね。私もその会話に加わっても良いかしら?」

 

 コンパートメントの入り口には、一人の女の子が立っていた。

 

「えっと……?」

 

 ジャスティンが私の気持ちも代弁するように言葉を発すると、少女は私の隣に座りながら自己紹介をしてくれた。

 

「私はスーザン・ボーンズよ。新入生。組分けの話をしているってことは、あなたたちも同学年なのね?」

「僕はジャスティン・フィンチ=フレッチリー。あなたの言う通り、同学年です」

「わ、私はリズ・フォーリー。一年生です」

「よろしくね、ジャスティン、リズ。堅苦しいから敬語は使わなくてもいいのよ?」

「僕のは癖ですから」

 

 そこで会話が一旦途切れ、スーザンが新たな話題を切り出した。

 

「リズは組分けの仕方について知っているの?」

「は、はい。『ホグワーツの歴史』という本に書いてありました」

 

 前世の知識もあるのだが、それ以外に知る方法がないのかと入学前に模索した結果、『ホグワーツの歴史』というハーマイオニーお馴染みの本で見事発見したのだった。

 

「———ですが、お教え出来ません。そもそも、魔法族出身の新入生までもが『組分けの儀式』の内容を知らないのは、それを経験した在学生、または卒業生が敢えて伝えないからなんです。その心は、新入生へのサプライズというもの。偶然知ってしまった私のようなパターンは仕方がないですが、それ以外には伝えるべきではないと思うんです」

「そうね。それなら納得よ」

「実際に体験するまで楽しみにしておきましょうか」

 

 私の言葉に二人は納得してくれたようで、私は少しほっとした。内心では様々な喜怒哀楽が渦巻く私ではあるが、基本的に人と付き合うのは苦手。というよりも、人との距離感が上手く計れないのだが、この二人は気を使ってくれているのか、本当に流れるように言葉が出てくる。この二人となら上手くやっていけるかもしれない。

 私は珍しく、自分から話題を振った。その内容はもちろん———

 

「お二人は、どの寮に入りたいですか?」

 

 定番のこれに尽きる。

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