ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
休暇が終わり、再び勉強に追われる日々が始まった。
そんな中、私は今、何をしているか。———答えは、厨房にお邪魔している。
この前、私の生きる目的を確認したものの、ずっと研究を続けていては体を壊してしまうし、すぐ煮詰まってしまうだろう。だから、適度に息抜きをした方が効率がいいのだ。
屋敷しもべ妖精に無理を言って、今は使っていないという厨房の一角を借り、レッツ・クッキング。濃厚でしっとりしたチョコブラウニーを作る。焼き上がり、粗熱がなくなってから食べやすい大きさにカットし、紅茶を淹れる。出来上がったものに保温呪文を掛け、厨房から近いハッフルパフ寮の談話室に運んだ。
今日は休日なので、「たまにはみんなでお茶会でもしませんか?」という私の言葉に賛成し、いつメン+αが集まっていた。
「お待たせしました。チョコブラウニーはいかがですか?」
「あら、それ手作りなの? すごいじゃない」
「おいしそうですね。さっそく頂きましょうか」
スーザンとジャスティンが言いながら、ブラウニーと紅茶を配るのを手伝ってくれる。ちなみにここに集まっているのは、スーザン、ジャスティン、ザカリアス、アーニー、ハンナである。
紅茶を口に含んで湿らせてから、ブラウニーを一口。うん、おいしい。
周りを見ていると、やはり皆幸せそうな顔をしていた。やっぱり、魔法界が笑顔溢れる場所になるには、スイーツが必要みたいだな。カフェを開いてみるのはどうだろう。もちろん、やるからには中途半端には終わらせないが。
そう言ってみると、なぜかみんな賛成してくれた。
「リズのカフェなら喜んで行くわ。リズが作るものって、心が暖かくなるのよね」
「リズなら魔法界一おいしいケーキを作れるんじゃないか?」
とまあこんな感じである。
お世辞が嫌いな私でも、身近な友人からの褒め言葉はやはり嬉しい。将来やりたいことリストにパティシエを入れておくことに決めた。
よし、息抜き完了。研究に戻ろう。
・スーザンside
「……チョコブラウニーが売り切れるなり、すっ飛んで行ったわね、あの子」
あの子とはもちろん、リズのことである。
リズは結構背が低いため、私達三人の中ではかわいい妹のような認識だ。人見知りで知らない人とは思い通りに話せないことがわかっているから、余計に無理していないかと心配にもなる。私達はホグワーツの中で誰よりもリズと仲が良いと自負しているが、それでもリズの親友と名乗れるほどではない。リズは私達に当たり前のように敬語を使っているが、リズの独り言は普通にタメ口だ。私達に気を使っているのか、それとも距離を置いているのか……。きっと両方だろう。あの子は、私達に言えない何かを隠している。そして、何かを見据えて行動している。
リズは頭が良い。きっと、私達が一生かかっても辿り着けない高みに向かって一生懸命進み続けているのだろう。しかし、それを私達が知ることはない。
リズが、本当の意味で心を許してくれることはない。
「……リズのことは見守るしかないでしょうね」
何となく、私が考えていることがわかったのだろう。ジャスティンが、そう返してくる。
ザカリアスも、リズの魔法によって冷めることのない紅茶を口の中に流し込み、ぽつりと呟く。
「一言、相談してくれても良いのにな。悩んでいるなら」
寮の部屋で、リズが何やら試行錯誤を繰り返していることは、私達の中では周知の事実だ。
「とにかく、私達も出来ることをやりましょう」