ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
キングス・クロス駅。
「遅れちゃう! ロン、早く!」
「ハリーが先に行け!」
二人は短くそんなやり取りを交わすと、ハリー、ロンの順に九と四分の三番線ほホームへ向かうための柱に向かって勢いよく走って行った。
ガッシャーン!!!
壁としての仕事を立派に果たしている柱に思いっきりカートをぶつけ、跳ね返されてしまう。飛ばされたヘドウィグのカゴを回収しながら、私は辺りを見回してドビーの姿を捜すが、見つからない。たぶんもう帰ったのだろう。せめて通れるようにしてから帰れよ。
仕方ないので、こんな事もあろうかと用意していた氷を二つ三つ割り、ポケットに手を突っ込んで羊皮紙と万年筆を取り出す。ちなみに氷の中身は『マグル認識不可呪文』、『目くらまし術(効果は半径三メートルのみ)』、『耳塞ぎ呪文』だ。
騒ぐハリーとロンの口にマドレーヌを押し込み、万年筆を動かす。
『九と四分の三番線が出入り不可能につき、ホグワーツ特急に乗り遅れました。対処をお願い致します。リズ・フォーリー』
ちょうど書き終わったところで、ホームの時計が十一時になる。ごっくんとマドレーヌを飲み込み、再び騒ぎ始めた二人を見て、私は羊皮紙の最後に一文を付け足した。
『———
PS. ハリー・ポッターとロン・ウィーズリーも一緒です』
危ない危ない、忘れるところだった。
「ハリー、ヘドウィグ借りますね」
吹っ飛ばされてご機嫌斜めなヘドウィグをなだめすかし、念のため用意しておいた超高級ふくろうフーズを与えてから羊皮紙を足にくくりつけて飛ばす。超特急でマクゴナガルに届けるように言ったから大丈夫だろう。
「リズは何で落ち着いてるんだ! ホグワーツ特急に乗り遅れたんだぞ!」
「はい。ですが、魔法によるゲートが何故か閉じてしまっているからであり、こちらに落ち度はありません。ですから、ホグワーツにふくろうを飛ばして迎えが来るのを待てばいいだけの話です。ヘドウィグに手紙を託したので、しばらく待てば誰かが来るでしょう」
「……あれだけの短時間でそこまで考えたのか」
「はい。ちなみに、あなた方が持ち前の無鉄砲さを遺憾なく発揮して、ウィーズリー氏が秘密裏に魔法を掛けた車で、七人のマグルと一台のカメラに証拠として残りつつホグワーツに飛んで行き、貴重な魔法植物である暴れ柳に多大な損害を与え、罰則を受けるルートもシミュレートしました」
「…………リズがいて良かった」
そうでしょうとも。そのために私はハリーとロンの後ろでホームに入れるか見張っていたのだから。夏にウィーズリー家に滞在した理由の一つでもある。
バチン、という軽い音がして、フリットウィック先生が現れた。スネイプ先生だったら二人が不機嫌になるだろうから、私としてはほっと一安心だ。
「ミス・フォーリー、非常事態でありながらの迅速な対応は見事でした。さあ、ホグワーツへ行きましょう」
フリットウィック先生がカートに杖を向けると、荷物は全て消えた。たぶん先にホグワーツに送られたのだろう。
こうして、私達は安全にホグワーツへ向かったのだった。
*
「おったまげー。乗り遅れたのに一番乗りでホグワーツに着くなんて……」
ロンの言う通り、私達は列車組より一足……いや、ふた足先にホグワーツへ到着していた。現在午前十一時五十分。ホグワーツ特急が着くのは午後五時頃、ホグワーツに到着するのは午後六時頃なので、かなりの時間を持て余すことになる。
私達はホグワーツの教員と共に昼食をとった後(少人数なので全員ハッフルパフのテーブルについた)、私達は騒ぎを起こさない限り自由に過ごすことになった。
「こんな時には———」
「図書館ですよね♪」
何か言おうとしたロンの言葉を遮り、私は二人を引きずって図書館へ向かった。
「図書館で何をするんだ? 宿題どころか授業も始まってないのに」
「魔法生物について調べようと思うんです。ほら、ハグリッドとの話題作りにもなってちょうど良いでしょ」
ちなみに去年のうちにハグリッドとは接触済みである。『ふんわりしてる♪簡単ロックケーキ』のレシピを教え、実物を贈呈したのが好感度UPに繋がったらしい。あと、『怪物的な怪物の本』を紹介してみた。ハグリッドは知らなかったようだが、原作ハグリッドはどうやってこの本の存在を知ったのだろう。 ……ダンブルドアの紹介? ありそう。
今度、巨人の歯でも砕けないクッキーのレシピを仕込んでおくか。