ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第36話 クィディッチ ②–I

 あ、クィディッチの試合、来週じゃん。

 

 ズドドド、ガッシャーン!

 

 ……あーあ。

 

 *

 

 必要の部屋で起こった本の雪崩れを元通りにするのに、半日も掛かってしまった。来週のクィディッチの試合で、原作ドビーはハリーをダーズリー家に帰すためにブラッジャーに魔法を掛け、ハリーを追い掛け回す。何とかしなくては、下手するとハリーが死んでしまう。

 魔法を強制終了させる魔法薬を上空からばら撒く? スニッチや箒に影響が出るだろうし、何よりそんな魔法薬は禁書の棚にしか無いだろう。事前にブラッジャーに細工避けの魔法を掛けておく? 試合用のブラッジャーはマダム・フーチが管理しているし、屋敷しもべ妖精の魔法は強力だ。

 研究室になっている必要の部屋をウロウロしながら分厚い本をめくり、棚に所狭しと並べた魔法薬の瓶を引っ掻き回す。手が一番奥の小瓶に触れ、そっと取り出した。

 

「……これで何とかするしか……」

 

 金色の液体が一滴だけ入った小指ほどの大きさの小瓶をローブの内ポケットに入れ、私は研究室を出た。

 

 *

 

 クィディッチの試合が始まった。私はハリーをブラッジャーが追い掛け回すのを歯がゆい思いで見守りながら、こっそり腕時計を見た。そろそろウッドがタイムアウトを取る頃合いだろう。

 観客席を下り、ザーザー降りの雨の中をグリフィンドールが話し合っている中に入っていく。ちょうどそこでは、ハリーが自分をブラッジャーから守っていたフレッジョに、もう守らなくてもいいことを告げたところだった。

 

「ハリー……」

 

 パッとクィディッチ・チームのメンバーが振り返った。私は一瞬、小瓶を取り出そうとしたが、やめた。

 

「ハリー、あのブラッジャーは何者かに操られています」

 

 マダム・フーチが近付いて来ているのに気が付き、私は早口で言った。

 

「ですから、ハリー、あなたは操っている何者かの予想外の動きをするといいでしょう。何でもいいですから、術者がギョッとするような動きを。ただ、忘れないで下さい。あのブラッジャーは、あなたを殺すために動いているわけじゃないんです」

「何でわかるんだ?」

「……あなたには、犯人がわかると思いますよ」

 

 それだけ言うと、私は走って観客席に戻った。

 思い描くのは、あの小瓶。フェリックス・フェリシスの不完全な複製だ。

 これを使わなくて良かったのか、自分ではわからない。ドビーはハリーを殺すつもりはないとはいえ、事故が起きる可能性はある。

 

「これだから、転生者は嫌なんだ……」

 

 日本語でぽつりと呟くと、私は深呼吸をし、濡れている顔をタオルで拭ってスーザン達の座る席へと向かった。

 

 *

 

 ・ダンブルドアside

 

 泣いているのか、それとも雨に濡れているだけなのか……。濡れた顔を拭い、去って行ったミス・フォーリーを見送りながら思う。彼女は、何を考え、何を行動に移しているのか。そして、最後に彼女が呟いた意味不明な言語。彼女の正体についての謎は深まるばかりだ。

 しかし、少なくとも彼女は自分から進んで闇に染まることは無いだろうとは思っていた。確かにトムと同じように優等生ではあるが、何か根本的にトムとは違うのだ。

 リズ・フォーリーは、何を目指しているのじゃろうか。

 

 *

 

 ハリーは、予想外の行動を取っていた。

 超高速でクィディッチ・ピットを飛び回りながらスニッチを探したり、スリザリンの選手の中に突っ込んで行ってブラッジャーを撒こうとしたり、マルフォイの周囲をグルグルと回ったりしているのだ。

 

「彼は一体何がしたいのよ……」

 

 スーザンが呆れたように呟く。

 

「リズ、何か彼らに助言して来たんですよね? 何て言ったんですか?」

「たぶん、あのブラッジャーは誰かに操られているだろうから、術者の予想外の行動を取るように、と」

「……でも、ブラッジャーに強力な細工魔法避けの呪文が掛けられているはずだろ。何であんなに簡単に操られてるんだ?」

「リズはどう思うのよ」

 

 スーザンがズバリと切り込んできた。おいおい、私は万能型の天才じゃないんだよ? 答えはわかるけど。

 

「……もともと、魔法界の中では魔法使いの魔力は弱いです。それは知ってますよね? なら話は簡単です。さらに強力な魔力の持ち主が、魔法を掛けてしまえばいい」

「つまり、どういうことなんです?」

「魔法生物の可能性がある、という話です」

「あり得ないだろ。魔法生物は魔力を持っていたとしても、自由に魔法として使うのは困難なはずだぞ」

「あなたがたは二フラーやボウトラックルなどを思い浮かべて言っているのでしょうが、自由に魔法を使う事が出来る魔法生物は存在しますし、そこまで希少なわけでもありません。この城にだって何百といますよ」

「何なんです、それは?」

 

 ジャスティンの問いに、簡潔に答える。

 

「屋敷しもべ妖精です」

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