ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
・ハリーside
バジリスクが死んだ後のことは、ぼんやりとしか覚えていない。
自分の腕に刺さったバジリスクの牙を抜いたとき、そのまま意識が遠のきそうになったが、癒しの力がある不死鳥の涙によって毒は解毒され、助かった。あの岩をどかしていたロンがすぐに駆けつけ、ジニーの様子を確認すると、すぐに目を覚ました。ジニーが何かを言っていたが、あまり聞いていなかった。
石化したリズを背負って来た道を戻り、信じられないほどの力を持つフォークスによって空を飛んで『嘆きのマートル』のトイレまで戻った後は、まず医務室に向かった。
医務室に入った途端、ボロボロな僕達と石化したリズを見て、その場にいたマダム・ポンフリーとマクゴナガル先生は一瞬固まっていたが、次の瞬間にはリズはマダム・ポンフリーの手に渡り、マクゴナガルは光の速さでどこかへ行ってしまった。
マクゴナガル先生が戻って来た時には、なんとダンブルドア先生も一緒だった。僕はロンと一緒に、どのように『秘密の部屋』のことを突き止めたのか、そしてどのようにリズが石化したのかを説明すると、ダンブルドアは少し考え込んだ後、僕達三人にそれぞれ二百点をくれ、さらにホグワーツ特別功労賞をくれることになった。
あとは、石化した人達が戻れば解決だ。
*
ふと目を開けると、そこは真っ白な世界だった。
こぶし大の大きさの光の球となっている私は、前世の自分の姿形を頭の中でイメージする。次の瞬間には、私は私が想像した姿になっていた。
ここに来るのは、これで二度目。たぶん今は、石化真っ最中か、もとに戻ったばかりの状態なのだろう。死に掛けたために、この世界がとても心地よく感じる。
ジャスティンやハーマイオニーも、ここに来たんだろうか。それとも、私だけなんだろうか。わからないが、私は遠くに見える白い大きなベールのところまで飛んでいった。
ベールの向こうには、『生』の世界がある。このとてつもなく大きなベールが『生』と『死』の世界を分ける。『死』の世界から『生』の世界を見ることは出来るが、逆から見ることは不可能だ。
初めてベールに触れた時は、とても薄く見えるのに、どうやっても向こう側に行くことが出来なかった。その後、もう一度触った時はベールに吸い込まれるような感覚がして、次の瞬間には転生していた。今度はどうだろう。手を伸ばして触れてみると、ベールは最初と同じように優しく、しかし確かに私の手を押し返してきた。
『今のあなたには、行くことは出来ませんよ』
優しい女の人の声が聞こえ、私は久しぶりに日本語で聞いた。
『どうして?』
『あなたは、今は『リズ・フォーリー』ではないから』
確かにそうだ。今の私の姿は前世の私。心は『リズ・フォーリー』ではない。
『……私、今でもあの頃に未練があるんだ……』
我ながら呆れてしまうが、内心納得出来ていた。あちらの世界は、どんなに辛くても楽しいことでいっぱいだし、美しさに溢れている。一度死んだ身としては、毎日がワクワクして、寝る間も惜しいほどだ。
そこまで考えて、私はハッと気がついた。この前まで、私はまた命があることが当たり前のように考えていた。命の素晴らしさを忘れていた。
『リズ・フォーリー』であることを、小さい頃はあれだけ嬉しく思っていたのに……。
私の姿が、前世のものから『リズ・フォーリー』のものに変わる。
『……準備が出来たようですね』
『はい。……行ってきます』
再びベールに触れると、自分がベールをくぐったのがわかった。
目を覚ましたら、何をしよう。
自分の心がワクワクするのがわかった。