ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第49話 あちらの世界

 ・ハリーside

 

 バジリスクが死んだ後のことは、ぼんやりとしか覚えていない。

 自分の腕に刺さったバジリスクの牙を抜いたとき、そのまま意識が遠のきそうになったが、癒しの力がある不死鳥の涙によって毒は解毒され、助かった。あの岩をどかしていたロンがすぐに駆けつけ、ジニーの様子を確認すると、すぐに目を覚ました。ジニーが何かを言っていたが、あまり聞いていなかった。

 石化したリズを背負って来た道を戻り、信じられないほどの力を持つフォークスによって空を飛んで『嘆きのマートル』のトイレまで戻った後は、まず医務室に向かった。

 医務室に入った途端、ボロボロな僕達と石化したリズを見て、その場にいたマダム・ポンフリーとマクゴナガル先生は一瞬固まっていたが、次の瞬間にはリズはマダム・ポンフリーの手に渡り、マクゴナガルは光の速さでどこかへ行ってしまった。

 マクゴナガル先生が戻って来た時には、なんとダンブルドア先生も一緒だった。僕はロンと一緒に、どのように『秘密の部屋』のことを突き止めたのか、そしてどのようにリズが石化したのかを説明すると、ダンブルドアは少し考え込んだ後、僕達三人にそれぞれ二百点をくれ、さらにホグワーツ特別功労賞をくれることになった。

 あとは、石化した人達が戻れば解決だ。

 

 *

 

 ふと目を開けると、そこは真っ白な世界だった。

 こぶし大の大きさの光の球となっている私は、前世の自分の姿形を頭の中でイメージする。次の瞬間には、私は私が想像した姿になっていた。

 ここに来るのは、これで二度目。たぶん今は、石化真っ最中か、もとに戻ったばかりの状態なのだろう。死に掛けたために、この世界がとても心地よく感じる。

 ジャスティンやハーマイオニーも、ここに来たんだろうか。それとも、私だけなんだろうか。わからないが、私は遠くに見える白い大きなベールのところまで飛んでいった。

 ベールの向こうには、『生』の世界がある。このとてつもなく大きなベールが『生』と『死』の世界を分ける。『死』の世界から『生』の世界を見ることは出来るが、逆から見ることは不可能だ。

 初めてベールに触れた時は、とても薄く見えるのに、どうやっても向こう側に行くことが出来なかった。その後、もう一度触った時はベールに吸い込まれるような感覚がして、次の瞬間には転生していた。今度はどうだろう。手を伸ばして触れてみると、ベールは最初と同じように優しく、しかし確かに私の手を押し返してきた。

 

『今のあなたには、行くことは出来ませんよ』

 

 優しい女の人の声が聞こえ、私は久しぶりに日本語で聞いた。

 

『どうして?』

『あなたは、今は『リズ・フォーリー』ではないから』

 

 確かにそうだ。今の私の姿は前世の私。心は『リズ・フォーリー』ではない。

 

『……私、今でもあの頃に未練があるんだ……』

 

 我ながら呆れてしまうが、内心納得出来ていた。あちらの世界は、どんなに辛くても楽しいことでいっぱいだし、美しさに溢れている。一度死んだ身としては、毎日がワクワクして、寝る間も惜しいほどだ。

 そこまで考えて、私はハッと気がついた。この前まで、私はまた命があることが当たり前のように考えていた。命の素晴らしさを忘れていた。

 『リズ・フォーリー』であることを、小さい頃はあれだけ嬉しく思っていたのに……。

 私の姿が、前世のものから『リズ・フォーリー』のものに変わる。

 

『……準備が出来たようですね』

『はい。……行ってきます』

 

 再びベールに触れると、自分がベールをくぐったのがわかった。

 目を覚ましたら、何をしよう。

 自分の心がワクワクするのがわかった。

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