ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第56話 ハロウィーンと罠

「リズ、許可証を持ってないけどホグズミードに行くにはどうすればいい?」

「許可証の捏造ですかね」

 

 真顔で聞いて来たハリーに真顔で返すと、ハリーとロンは揃ってガックリと項垂れた。

 それだけで全てを察した私は、意地悪とは知りつつも追いうちをかける。

 

「何なら、私が字を変えて許可証にサインしてあげましょうか? いくらマクゴナガル先生でも、あなたの叔父さんと叔母さんがサインしたのかどうかはわからないでしょう」

「それがわかっちゃうんだよ……」

 

 「許可証にサインが貰えなかったこと、言っちゃったんだ……」と呟くハリーに心の中で謝りつつ、代案を述べる。

 

「図書室の娯楽コーナー、一番奥の棚の一番下の段、一番左端。著者は———」

「ミステリズ・ガール、出版社は『虎七味社』、だろ?」

「残念ながら、自費出版のようで出版社からは出ていません。著者は『悪戯仕掛け人』です。が、役に立つ内容とは言えませんね」

「リズ、ありがとう!」

「いえいえ。これ、お詫びの品です」

 

 そう言って差し出したのは、『グリフィンドール・クッキー』である。いちごジャム、プレーンの生地を使って市松模様を作ったアイスボックスクッキー。食紅は使いたくなかったので、濃いピンクと小麦色だが、まぁこれもグリフィンドールカラーだと強引に自分を納得させる。

 

「お詫びの品?」

「はい。あの本を読んだ後に納得して頂けると思います」

 

 ……だって、あの本に書かれているのは、学校中に悪戯を仕掛け、先生方の注意がそちらにいっているうちに抜け出すという方法なのだから。

 

(あなたたちには、別の手段があったでしょうけどね)

 

 心の中で呟きながら見た方向には、もちろん、闇の魔術に対する防衛術の先生がいた。

 

 *

 

 ハロウィーンの朝。

 七時に談話室に戻ると、既にS(スーザン)J(ジャスティン)Z(ザカリアス)がテーブルを囲み、今日の予定を話し合っていた。

 

「おはようございます、リズ。リズもホグズミードに行きますよね?」

「もちろんです。気になるところもありますしね」

 

 特にハニーデュークスは。すっぱいペロペロ酸飴とか、超気になる。今度溶かしてザカリアスのドリンクに混ぜてやろうか。

 

「で、ちなみに何をしてたんだ?」

 

 ザカリアスの問いには、

 

「気の毒な居残り組と、とあるご婦人に差し入れを」

 

 *

 

 結論から言うと、ホグズミードはとても楽しかった。

 ハニーデュークスのお菓子は、試食できる限り試食した。ここで売っているものは基本的に手作り出来ないようなものなので、気に入ったものは買っておく。ルーナへのお土産も忘れずに購入。

 『ゾンコの悪戯専門店』は、一度入ったものの、あまりの人の多さに人酔い。耐え切れずにすぐに出て来たのだが、気を遣ったジャスティンも一緒だ。一人で待っているから大丈夫だと言ったのだが、人の良いジャスティンも一緒に居てくれるという。申し訳ないが、ここは甘えさせてもらうことにした。

 次に、ザカリアスの提案で『叫びの屋敷』へ。『大量殺人鬼(嘘)シリウス・ブラック』の拠点だと知っている私は、さりげなく「怖いので中に入るのはやめましょう」と言って、大量殺人鬼(嘘)との対面を避ける。外から見ての感想は、ボロ屋敷。中も似たようなもんだろうと納得した三人とともにその場を後にし、ホグズミードで有名のパブ『三本の箒』でバタービールを飲み、ホグワーツへと戻った。

 

 さぁ、次は待ちに待った夕食だ。

 

 *

 

 ・ハリーside

 

 今日はホグズミード行きの日だが、居残り組の僕は、城の中をウロウロしていた。途中、ルーピン先生に会ってお茶に誘われ、暇だった僕はお邪魔することにする。

 

「……凄いですね」

「……ある生徒にとあるものを貸したんだが、そのお礼にと貰ってね。毎日のように食べているから、太りそうだよ」

 

 机に山積みのお菓子。ほとんど……というか、全てがチョコレート製品だった。

 

「全部手作り……もしかして、リズが?」

「よくわかったね」

「よく貰うんです」

 

 出て来た紅茶を飲みながら、ルーピン先生が紙箱を持って来る。

 

「リズが、もし君に会ったら一緒に食べて欲しいと言っていたんだ。一人でいると思うからって」

 

 紙箱を開けると、一口サイズのパイのようなものが。たぶん、そこまで量が多くないのは、今日の夕食が豪華だからだろう。リズらしい気遣いだ。

 お茶会の最後、スネイプが持って来たゴブレットからルーピン先生が薬を飲んでいたことを、帰って来たロンとハーマイオニーに忘れずに伝えるのだった。

 

 *

 

 夕食前、ハリーにお菓子のお礼を言われた。

 ロンとハーマイオニーがどっさりお土産を持って帰って来るだろうし、今日はハロウィーンの御馳走があるので、軽くつまめる『パイ◯実』擬きを作ってルーピン先生に差し入れたのだが、好評だったようだ。また作って欲しいと言われたので、今度はロンとハーマイオニーにもご馳走しよう。主な材料はパイシートとチョコくらいだから、手軽に作れるし。

 楽しみだった夕食は、期待を裏切らなかった。近いうちに屋敷しもべ妖精にお礼を言おう。彼らは見返りを認めているわけではないが、料理の感想を伝えたり、リクエストしたりすると、とても嬉しそうな顔をするのだ。

 

 で、だ。

 寮に戻ったところ、すぐに全員大広間に呼び出された。やはり、シリウス・ブラックが侵入したか。

 ダンブルドアが今日は全員が大広間で寝ることを伝え、大広間を後にすると、生徒達は次々にしゃべり始める。

 

「何があったのかしら」

「私、聞いて来ます。私の分の寝袋を確保しておいて貰えますか」

「わかったわ」

 

 もちろん、事情はハリー達に尋ねる。

 

「何があったんですか?」

「シリウス・ブラックがグリフィンドールに侵入しようとしたんだ」

「『太った婦人(レディ)』を刃物で斬りつけようとしたらしいけど、彼女、防護装置を持っていたみたいで、それで身を守ったらしいわ。ダンブルドア先生が、それが無ければズタズタに斬り裂かれてただろうって」

「トラウマになっちゃったみたいだけどな」

 

 三人が口々に説明してくれたお陰で、原作通りの展開だということがわかった。

 

「それにしても、リズ、防護装置を渡すタイミングが良かったみたいだな」

「本当ですね。間に合ってよか———っ!?」

 

 当たり前のようにロンが言うもんだから、普通に返してしまった。

 慌てる私に、三人が顔を見合わせる。

 

「やっぱりリズだったのね。どうして防護装置を渡したの?」

「前に、濡れるのを嫌がってたし、その、役に立つかと思って、えっと、あの、」

 

 あらかじめ『太った婦人(レディ)』に言ったのと同じ理由をつっかえつっかえ話すが、三人は苦笑い。身長差もあって、小さい子に対するお兄さんお姉さんな雰囲気を出してやがる。

 もう! だから不意打ちされるのは嫌いなんだよ!

 

「つまり! おやすみなさいっ!!」

 

 もう何を言ってもダメな感じだったので、捨てゼリフとしてそれだけ言って、スーザン達の元に帰るのだった。

 

 ・ハリーside

 

「やっぱりリズだったのね」

 

 ロンがさりげなくカマをかけたのだが、あっさり引っ掛かったリズ。いつもこちらを驚かせる反面、予想外の事態は苦手らしい。赤くなったり青くなったりしながら視線を泳がせ、最終的には拗ねたリズを思い出し、苦笑い。身長差もあって、なんだか小さい子みたいだった。

 

「本当にタイミングが良いよな。『超直感呪文』でも使ってるのか?」

「とりあえず、パーシーが怒り出しそうだから寝よう」

 

 ・ジャスティンside

 

 グリフィンドール三人組から事情を聞いて来たリズは、ちょっと不機嫌になりながら聞いて来た話を教えてくれた。その顔は若干赤い。

 

「リズ、どうかしましたか? 顔が赤いですけど」

 

 尋ねると、リズはふいっと視線を反らせてしまう。

 

「あんなわかりやすい罠にまんまと引っ掛かった自分が恥ずかしいだけです! おやすみなさいっ!」

 

 三人組に何かされたらしいが、リズが寝てしまったのでよくわからない。スーザン、ザカリアスと顔を見合わせ、僕達も寝ることにした。

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