ダンジョンに子ギルがいるのは間違っているだろうか 作:てゐ13号
ゆっくり実況動画見ながら書いてます。特にTRPG大好きです。なので色々と変なところや抜けてるところがあるかとは思いますが、運が無かったと思って冷めた目でスルーしてやってください。
「じゃあ、早速ファミリアの証として『神の恩恵』を刻むとしようか」
「…ヘスティア様」
「ほらほら、ベッドに寝転がってごらん?大丈夫、痛いのは最初だけだからさ…」
「あの、ヘスティア様」
俺は耐えきれなくなってヘスティアに向き直った。
「ここがホームって、なんの冗談ですか?」
「ふぁ!?」
俺が連れてこられた、ファミリアの拠点ーー彼女のいうホームは、街はずれの廃墟群の一つ、寂れて今にも崩れ落ちそうな廃教会だった。
人の手が入らないようになってどれだけ経ったのだろうか。少なくとも人が住んでいいような環境ではないだろう。家具も必要最低限だし、部屋は一つだけ。現代日本で豊かとは言わなくとも平均的な暮らしを過ごしてきた俺にとってはあまり住もうとは思えない。
「…」
「あの、吹けてないですよ、口笛」
ひゅぴーと吹けてない口笛ですっとぼけようとするヘスティア。俺はため息を一つこぼして、これが一体どういう事なのか説明を求めた。
「説明も何も、ここが僕らのホームさ…ぼ、僕のファミリアが弱小で零細だって話はもうしただろう?実はちょっと前まではホームさえなくて、友神の所でお世話になっていたんだけどね。この前ついに愛想つかされてさ…」
それでこのボロホームを与えられて、追い出された、と。
なんだこの駄女神。正直今の話から俺が抱いた印象は、長年ニートやってたけどついに親に追い出されたどうしようもないダメニートといった具合だ。本当に神様なのだろうかこの人は。零細ファミリアであるよりも、この神様と一緒にいる事に不安を感じてやまない。
「まあ、今はファミリアも二人だし?この調子でどんどん大きくなって、ゆくゆくはこのホームも改装してもっといい場所にしていくつもりさ!大船に乗ったつもりでいてくれよ、ギル君!」
「そこはかとなく不安ですけど、まあいいです…はあ、不安だなぁ…」
「そこぉ!微妙な顔しない!」
ヘスティアはそのままの勢いで俺をベッドに押し倒して、背中に馬乗りしてきた。
「まったくもう、じゃあ『神の恩恵』を刻むよ?」
「お願いします」
服をめくられる。美少女に馬乗りにされて服を剥がされるというのはなんとも変な気分になっていけない。まあ、俺ももうガキじゃないんだ。動揺は隠すさ。
「それにしても酷いなぁ、押し倒してくるなんて。僕はもっとお淑やかなお姉さんの方が好きなんですけど」
「知らないよっそんな事!」
ちなみにお淑やかなお姉さんが好きってのは本当の事だ。いいよね、おとなしくて清楚な感じのお姉さん。ヘスティアには一つも当てはまる所はないだろう。
「ヘスティア様って呼ぶのなんか違和感があるので、ヘスティアとお呼びしてもいいでしょうか?」
「別にいいけど…なんだい、そんなに僕は威厳が無いってのかい…?」
「まあ、そうですね」
「そこで肯定するなぁ!」
背中を指でこねこねされる事数分。「できたっ」と嬉しそうな声を発したヘスティアが、俺の背中の内容を見て一瞬で身を固まらせたのが気配で分かった。
「な、なんだこれ…スキルだけじゃなく、魔法も?それにこんなに発現するなんて…しかもなんだこの効果!何がどうなってるんだい!?」
何やら大変な事になっているらしい。というか一人で驚いてないで、さっさと見せてほしい。自分の事なのでなおさら気になる。
しばらくわちゃわちゃ騒いでいたヘスティアだったが、俺の視線に気づいてため息を漏らした。人の顔を見るなりため息をつくなんて酷いな。
「…これが君のステイタスだよ」
「あ、ありがとうございます」
硬直から復帰して、紙にステイタスの内容を書き込んで渡されたので早速内容に目を通した。
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ギル・メッシュ
Lv:1
力:I0
耐久I0
器用I0
敏捷I0
魔力I0
《魔法》
【王ノ財宝(ゲートオブバビロン)】
・王の宝庫とつながる門を作る
・門の数は消費魔力に比例する
《スキル》
【対魔力】
・あらゆる魔術的干渉に耐性をつける
【黄金律】
・人生においての金との因果を上げる
【王ノ風貌(カリスマ)】
・圧倒的なカリスマ性により味方の攻撃力を上げる
・認めた者にだけ効果を発揮
・相手により効果の増減あり
【神性】
・神性を得る
・与ダメージを上げる。
・自分の意思でオンオフ切り替え可能
【紅顔の美少年】
・性別を問わず相手に魅了効果を付与する
【全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム】
・|常時発動型(パッシブ)スキル
・自分の意思で効果のオンオフ切り替え可能
・万物の真実を見通す目を持つ
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「まあ、こんなものでしょうね」
記憶の中のFate/GOの子ギルのステイタスや、他のFateシリーズの能力と変わりはほとんどないだろう。
それにしても【王ノ風貌】って…確かにこの身体は王のものだけどさ。中身は一般人なんですけど俺。
と、俺が紙から視線を外して顔を上げた瞬間、視界を美少女の顔がドアップで独占した。眉間にしわを寄せて俺を追い詰める。
「どういうことか説明をしてもらおうか、ギル君?」
「説明って、やだなぁヘスティア。ステイタスって自分で変えることはできないんでしょう?」
事前に『神の恩恵』やステイタスについての説明は受けているが、ステイタスの成長は大まかには本人の意思は反映されないらしい。
「だからってこれは無いだろうこれは!別に僕もねえ、入ったばかりの眷属にこういう事を言いたくはないけれど、でも限度ってやつがあるよ!初めから魔法もスキルも持っていて、しかもそのほとんどが反則級の効果ばかりじゃないか!何よりもこれ!」
そういってヘスティアは紙の一か所を指さした。
「神性ってなんだよ!君、もしかして他の神のスパイか何かだったのかい!?」
「何でですかね。僕記憶喪失ですから」
「そうだったね…!」
ぐぬぬと文句を何とか腹の中に収めているらしいヘスティア。半人半神である事をばらすのは色々と面倒なので彼女にはこのままわからないでいてもらおう。
「うーん…ま、まあ君も僕の眷属である事に変わりはない、か。今はあらゆる疑問や聞きたいことを飲み込んでおくことにするよ」
「うん、ありがとうございます、ヘスティア」
そうしてくれると正直助かる。どうやらこの世界の神たちは嘘を見抜く能力を持っているらしく、あれこれ質問されると色々と話さなければいけない事が多くなって面倒になってしまう。
「うん、とにかくまあ、歓迎するよ、ギル君。これで君は僕の眷属だ。もう一人の子のベル君は夕方になると帰ってくると思うからその時に紹介するね」
「そういえばもう一人いるんでしたっけ?どんな方なんですか、そのベルさんって方は」
「僕の愛すべき一人目の眷属さ。自慢の子なんだぜ?なんたって、優しくてしかもとってもいい子なんだ!」
でへへ、と体をくねくねさせるヘスティア。もしかしてこいつ、そのもう一人の眷属にホの字なのか?これからの人間関係には色々と気をつけなきゃいけないことが多そうだ。
「へー、そうなんですか?早く会ってみたいです」
「うん、きっと君とは気が合うと思うよ」
「ところで」とヘスティアは話を始めた。
「いいかい、ギル君。君が一体何者なのか、それはもう聞かないでおくことにするよ。だけどこれだけは言っておく。君のスキルー主に疑似神格や全知なるや全能の星は、あまりに危険すぎる代物だ。他の神にばれると確実に面倒ごとに巻き込まれると思う。特にうちは弱小ファミリアだ。できれば封印しておいて欲しい」
「分かりました。僕も流石にこんなとんでもスキルをぽんぽん使うつもりはありませんので安心してください」
「そうかい?じゃあ信じたからね?君がもし僕の信頼を裏切るような真似をしたら、僕は柄にもなく泣いてしまうかもしれないよ」
「一度交わした約束を破るような悪い子じゃないつもりです」
「じゃあ安心だね!これからよろしくね、ギル君!」
これで俺はヘスティアファミリアの一員か。
後はもう一人の眷属ーーその、ベルとかいう人と会うだけだ。悪い印象を与えないように、第一印象に気を付けなければな。
そういう事で、夕方でベルさんが帰ってくるまで俺は廃墟でヘスティアと親睦を深めたのだった。
紅顔忘れてたので引っ付けました
間違えてた所直しました