レゾンデートル   作:嶌しま

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お久し振りです。
遅くなりましたがお気に入りや評価等、ありがとうございます!
今回更新分はクロガネシティでのとある出会い~初のジム戦までのお話です。
引き続き、まったりとご覧いただけたら幸いです。


020

ポフィンを食べつつ適度に休憩をとった私たちは、それからクロガネゲートを通過して目的の町、クロガネシティへと辿り着いた。日が暮れはじめていた夕方の時間帯、まずポケモンセンターに立ち寄った私は昨日以上の連戦で疲れを見せていたヒコザルとゲッコウガの入ったモンスターボールをジョーイさんに預けると、手早く今日の宿泊手続きも済ませる。ゲームだと一瞬で済んでいたポケモンの回復は、現実におけるこちらではそう簡単に終わるわけではなく、やはりある程度の時間を要するもので。ボールを預かってくれたジョーイさんから、診察も兼ねて最低でも一時間はかかりそうだと聞いた後、宿泊予定の部屋で休んでおくべきか考えていた私にある提案が寄せられる。

 

 

「もし興味があったら、すぐ近くのクロガネ炭鉱博物館を見てみるのもおすすめですよ。ここからだと歩いて五分もかかりませんし、閉館時間も今からちょうど一時間後くらいですので。逆方向に行けばクロガネ炭鉱もあるんですが……入口はともかく、奥に進むと野生のポケモンが出てきますし、何より炭鉱の従業員さんからバトルを挑まれる場合もありますので。そちらについては明日の明るい内にでも、改めて見学されることをおすすめします」

「そうですか。ご丁寧に、どうもありがとうございます」

 

 

笑顔でカウンターの奥に向かったジョーイさんにお礼を告げると、久し振りに一人になった私は彼女にすすめられたとおり、クロガネ炭鉱博物館へ行ってみることにした。確かに炭鉱の方に行くのならポケモンがついていないと危ないだろうが、博物館という場所柄バトルを仕掛けてくるトレーナーはまずいないだろうし、それなら一人で行ってきても然して問題ないと判断したためだ。閉館まであと一時間もないからか、館内に入るとせいぜい二、三人しか人がおらず、とてもひっそりとした空気が流れていた。夕方の柔らかな陽射しを受けて尚存在している、炭鉱で見つかったポケモンの化石の一部や炭鉱に関する歴史を紹介したパネルなどを眺めながら、私はゆっくりと博物館を見て回る。そうしておよそ半分ほど、見終わった頃だったろうか。

 

 

「……、え?」

『……』

 

 

突如、足元に何かが抱き着くような感触を覚えたので振り向くと、この辺りではまず見かけないあるポケモンがなぜか私の足元にひっついていた。おそらく誰かトレーナーの手持ちだとは思われるものの、周囲にそれらしき人が全く見当たらず首を傾げていると、向こうも私を真似したような仕草をとる。

 

 

「どうしたの?迷子?」

『……』

「トレーナーさんとはぐれたのかな?どっちから来たか、分かる?」

『……』

 

 

視線を合わせるように少し屈みながらいくつか質問してみるが、私にひっついたままであるそのポケモンは鳴き声の一つすら上げず、ただ静かに私を見つめていた。決して混乱しているようには見えない。それどころか、ポケモンの中でも賢い部類に入るだろうその子はおそらく私以上に今の状況を把握しているはずなのだけれど、どういうわけかぱたぱたと尻尾を振っているだけでこちらに何も伝えようとしてくる気配がない。かと言ってまるで敵意は感じないので、このまま誰も現れなければいっそ博物館の誰かに聞いてみるべきかと考えを巡らせていると、別方向からばたばたと誰かが走ってくるような足音が響いた。

 

 

「リオル!どこに行っていたかと思えば、こんなところにいたのかい?」

 

 

真っ青な帽子に、同じく真っ青なジャケットを身に纏ったその男性は私にひっついていたポケモン――リオルに声をかけながら、焦った様子でこちらに駆け寄ってくる。私が覚えている原作通りならば、彼と出会うのは少なくともここからもっと先の場所だったはずだ。いや、そもそも彼があの場所以外にいることは現実である今、決しておかしいことでもないのだが。しかしながら、思わぬ出会いに驚いていたのは何も私だけではなかったらしい。

 

 

「君は……?この辺りでは見かけない子だね。ああ、突然すまない。私の名前はゲン。そのリオルを連れている、ただのポケモントレーナーさ」


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