前回投稿からかなりの間が空き、申し訳ありません。
本日は046と046.5の2話載せています。
エキシビジョンマッチのラストでコリンクがルクシオへ進化する、という予想外の事態が起きたものの、結果的に会場の空気を盛り上げられた私たちは無事に舞台から退出していった。そして一旦控室へ向かい、着ていたドレスから普通の服に着替えた後で続くマスターランクのコンテストを観覧する。私の隣にはアヤコさんが陣取り、丁寧に今回参加する各トレーナーとポケモンたちについて逐次解説してくれたが、やはり一番ランクが高かったこともあり彼らのパフォーマンスは皆どれもハイレベルなものだった。ちなみに参加者の中には、ヨスガシティのジムリーダーであるメリッサさんの姿もあり、彼女はアヤコさんに気付くと軽くウインクを送っていた。アヤコさん曰く、二人は長年ポケモンコンテストに出場している友人であり、尚且つ切磋琢磨し続けてきたライバル同士でもあるらしい。
数々の審査種目を経た末、今回のマスターランク優勝者は――最後まで堂々と満面の笑みを浮かべていた、前述のメリッサさんだった。
「コリンク……じゃなかった、もうルクシオだね。今日は本当にお疲れさま。たくさん頑張ってくれて、ありがとう」
コンテストの表彰も終わり、観客が大勢集まっていたホールを出て入口周辺にまで歩み寄ると漸く一息つけたような心地がする。コリンクだった頃の小さな体格から、二回り程度は成長したルクシオの頭を撫でつつふと会場内を見回すと、コンテストが終了した今や残っている人はまばらだった。ぱっと見て華やかな衣装を身に纏っていることから、おそらくそのほとんどがコンテスト関係者なのだろう。
本当は表彰終了後、アヤコさんから一緒にメリッサさんの元へ挨拶にでも行かないかと誘われていたが、互いに積もる話もあるだろうからと丁重に断っていた。大分残念がられてしまったが、これまで私やヒカリがいることで余り遠出する機会もなかったのだし、その分も羽を伸ばしてほしいと伝えたら最終的にアヤコさんが折れてくれた感じだ。但し、次に家へ寄る時はよほど急ぎでもなければゆっくりしていってほしいと頼まれたので、勿論快諾した私と別れたアヤコさんは今頃メリッサさんと控室辺りで語り合っていると思われる。
『ところでセツナ、この後はどうする予定なの?』
「うーん……実を言うと、今もちょっと決めかねているんだよねえ……」
というのも、ヨスガジムの休業期間終了まであと一週間残っているという現実が私の頭を悩ませる最大の理由だった。憶測だが、多分これからの一週間はヨスガジム全体でコンテスト会場の後片付けや、所属トレーナーたちの休日に充てられるのだろう。その一週間を私たちも待ってから、そのままヨスガジムへ挑むのも一応ありではある。もしくは以前、ナタネさんからおすすめされたとおり一旦ヨスガシティを離れてノモセジムか、トバリジムへ向かうのも悪くはない選択肢だと考えていた。距離を鑑みるとここから近いのは断然ノモセジムの方だったが、所持品の充実という意味で一度トバリシティのデパートにも訪れてみたいという気持ちもあるので正直悩ましいところだ。どのみち、あと数時間で夕暮れを迎える今日はポケモンセンターで宿泊し、移動するなら明日以降が望ましいことには変わりないが。
「……とりあえず、一度ここから出ようか。詳しいことは、また後で皆にも伝えるよ」
『うん、分かった!』
元気よく頷いてくれたルクシオを一度ボールに戻し、会場の外へ出た私はのんびりポケモンセンターへ向かうことにした。今日アヤコさんたちと一緒に参加したエキシビジョンマッチが楽しかったのも嘘ではないが、やはり煌びやかなスポットライトを浴びるよりかは、こんな風にゆっくりとしたひとときを過ごす方が性に合っているのだと今更ながら自覚する。エキシビジョンマッチの練習に集中していたこの一週間は、余りゲッコウガやモウカザルに構ってあげられなかったので、明日の天気さえよければ再びふれあい広場に行ってみるのもいいかもしれない。そのようなことをつらつらと思い描きながら、遂にポケモンセンターまで到着すると見覚えのある人とポケモンの姿が目に映った。彼らに声をかけるよりもずっと早く、駆け寄ってきた小さな子が“いつか”と同じように私の足元へしがみつく。
「久し振りだね、リオル。元気だった?」
私からの質問にこくこく、と何度か頷くリオルを微笑ましく見守っていれば、若干申し訳なさそうな表情を浮かべた彼と付き従っているポケモンもこちらへと歩み寄ってきた。
「やあ、セツナ。お久し振り。出会い頭にまたリオルがすまないね」
「ゲンさんとルカリオも、お久し振りです。そんなに困った顔はしなくても大丈夫ですよ?あれから変わらず元気そうで、安心しました。ところで、どうしてヨスガシティに?」
「ヒョウタに会った後、暫くポケモンたちと修行していたんだけど、偶には息抜きにコンテストでも見にいってみようかなと思いついてね。そうしたら、今日のエキシビジョンマッチにセツナが出ていることに気付いて……ここで待っていれば、また君に会えるかなって考えていたところだったんだ。会場だと人が多くて、ゆっくり話せなさそうだったからね。驚いたけれど、お母さんとの共演、なかなかさまになっていたよ。お疲れさま」
クロガネシティ以来の再会となったゲンさんも、まさか今日のコンテストを観ていたとは思わず少々気恥ずかしさを覚えてしまったが、彼はそんな私に対してただ穏やかな視線を向けながら会話を続ける。
「そういえば、ヨスガジムにはもう挑戦したのかい?」
「ああ、いえ。コンテスト開催の都合で、どうやらあと一週間くらいは休業状態だそうで。その一週間で、先にノモセジムやトバリジムに行ってみるのもいいかなと考えてはいるんですが……ひとまず、今日のところはルクシオも疲れているだろうし、このポケモンセンターで宿泊していくつもりですね」
「ふむ、なるほど」
『……リオル、いつまで彼女に縋りついているつもりですか?』
『……』
『……あなたも相変わらず、頑固な子ですね。本当に』
私からいっこうに離れる気配がないリオルに、深く溜め息を吐いたルカリオの頭をゲンさんが労わるように撫でていく。彼らはこれからどうするのだろう。コンテストも終わった今、再び修行の日々へ戻るのだろうか、なんて思っていると、ゲンさんははっきりとした口調で私に『とある提案』を持ちかけてきた。
「……そうだな。せっかくの機会だ。セツナ、もし君さえよかったらの話なんだが。これから最低一週間、私たちとともにミオシティで過ごしてみるのはどうだろう?」