まず、最初に知覚したのは爆音だった。
次に悲鳴。
上方から響いたそれにすぐさま反応できたのは、偏に知識があったからだ。
まずは肉体と、その周囲を強化。次に両手で耳と目を覆い、急所への衝撃を減らすためにコフィンの中で体を丸めた。熱気を吸えば、内側から焼かれてしまう。ので、呼吸を止めて備える。そして、再び響く爆音。それは、紛れもなく自分の足元に。
それで私は確信した。これは、事故なんかじゃない。”私たち”を確実に殺すために仕組まれた、意図的な出来事なのだと。ならば、そうであるならば。きっと彼女は。吹き飛ばされる小さな
「来い、バーサーカー。」
コフィンのすぐ側に膨大な魔力の塊が出現する。それはすぐさま私のコフィンを掴み、固定した。下ろされたコフィンの扉が力任せにこじ開けられる。その向こうに広がっていたのは筆舌に尽くしがたい光景だった。ありていに言うならば、正しく『地獄』。目に映る範囲で動いているのは静かに爆ぜる炎だけで、うめき声の一つも耳には入ってこなかった。
「ます、たあ」
振り返れば、不安げな目をした大きな子供がいる。ああ、そうだ。今はそんな時ではない。
「…大丈夫。大丈夫だ、バーサーカー。取りあえず、火を消そう。」
上を見れば、どうやらスプリンクラーが作動していないらしい。先ほどのアナウンスでは、発電所が爆破されたと言っていた。電源が作動していないのだろう。ならば予備電源に切り替えに行かなければと入口の方へ足を向けた途端、何やら騒がしい声が聞こえてきた。何かを叫んでいる。
「…は、地下 発電所に 」
微かに拾えた声は知人のものだった。あの男ならば、おそらく予備電源への切り替えをやってくれるはずだ。切り替えが終わればすぐにスプリンクラーが作動するだろう。ここは彼に任せて私は生存者の保護をするのが望ましい。そう判断して、私は自分のサーヴァントに目をやった。
「やっぱり先に生存者の保護をしよう。」
こくりと頷いた彼とともに一歩踏み出したところで、瓦礫の向こうを走っていく少年の背が見えた。思考が止まる。足も止まる。誰だあれ。カルデアの魔術礼装を着ているということはマスター候補生なのだろうか。いや、問題なのはそこではない。魂に、直接訴えかけるような強烈な
「藤丸、立香?」
それは、知らない名前。だがなぜかその字面が頭に浮かぶ。そしてきっと、これは間違っていない。
「ますた?」
舌足らずな声に現実へ引き戻された。きょとんした瞳が私を見下ろしている。はっとして、正気を取り戻した瞬間、彼の肩越しにガラスの吹き飛んだ管制室が目に入った。そこで動く人影も。傷一つなく、トレードマークの深緑の礼装には煤一つなく。目の合った男は意外そうな表情で私たちを見下ろした。
「おや、確かに死んだと思ったのだが。流石はナガレの一族といったところか。」
その言葉を認識する。その言葉に理解する。
「そうか、お前が…」
周囲が青い光に包まれていく。自身の身体が金色の粒子に変わっていくのがわかった。
「全行程
ファーストオーダー 実証を 開始 します。」
無情にも、アナウンスは告げる。青く染まっていく視界の中で悔し紛れのガンドを撃った。
「
こちらを嘲笑う男を最後まで睨みつけながら、私の意識は途切れた。
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少しばかり、私の話をしよう。
私の名前はナガレという。日本にその端を開いた魔術師の一族、その末裔だ。いや、厳密に言えばこの表現は微妙に違う。何故ならば私の一族は少し特殊で、そもそも「一族」という概念がないからだ。”ナガレ”は常に一人だけで親族は居ても、それは名もなき”息子”が一人だけ。というのも、私たち”ナガレ”は『群』ではなく『個』、それ故に、”ナガレ”に終わりはなく、死を持たない。永遠を生きる一つの生命体…という認識を世界に刷り込むことで「」に辿り着こうとしている魔術師なのだ。ぶっちゃけた話、どういうことなのかは私にもよくわかっていない。
さて、では何故今こんな話を始めたのかというと、これが結構重要な話題だからである。”ナガレ”はいついかなる場合でも一人だけ。これは先ほど説明したとおりである。跡取りは一人しか作らないし、サブなんて必要ない。それが基本スタンスだ。しかも跡取りに魔術刻印を継承した後はとっとと死ぬことが推奨されている。
ちなみに、私の先代である父は最後の魔術刻印を移植した瞬間に私の目の前で爆発四散した。事故でも事件でもない、スタイリッシュな自殺である。いっそ清々しささえ感じる潔さ。ちょっとばかり流行の最先端を行き過ぎているような気もする。戸籍がないのではっきりとしたことはわからないのだが、当時の私の年齢は推定15歳。親戚なんていないのでその歳にして文字通りの天涯孤独である。爆発オチなんてサイテー!
閑話休題
まあそんなわけで
では本題に入ろう。
いまや”ナガレ”は即死さえしなければ身体が半分近く吹っ飛んでも自身を修復できる領域まできている。もう1代か2代、代を重ねれば行き着く先は不老不死かもしれないというレベルだ。そんな
もう、お気づきだろう。そう、『私』は転生者だ。ちなみに、
思い出すのが遅かったがために取りこぼしたた命が沢山ある。それでも、今からなら救うことができる命もあるのだ。様々な礼装を詰めたウエストポーチを軽く叩く。何はともあれ、主人公組に合流せねば。腕につけた通信機は未だ反応を示さない。ならば自力で彼らを見つけ出さねばならないだろう。
「じゃ、行こうか」
こくりと頷いた自分のサーヴァントとともに燃え盛る街を行く。彼らもきっと、私たちを探している。
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藤丸立香は魔術師の孫である。ちなみに、そのことを知ったのはつい5日ほど前のことだ。それまで彼は、魔術の一切を知らされることなく生きてきた。本人はあくまでも一般人でしかなく、しかしその祖父母は神秘の徒で、更に言うならば彼の叔父夫婦といとこもまたそうであった。それなのになぜ、ここにいるのは魔術なんて一つも使えない自分なのか?自身を『先輩』と呼ぶ少女に手を引かれ、かばわれながら藤丸立香は考えた。
この現状を、どうにかしなければならない。彼らに襲い掛かってくる骸骨たちは、一体一体は弱くとも数が増えればマシュ一人では対処しきれなくなるはずだ。骸骨たちは音に寄ってくる習性でもあるのか、戦闘をすればするほど集まってくるようだった。しかし、あまり知性はないのかこちらが姿を隠せばすぐに見失いフラフラとさまよい始める。細い路地からは骸骨が出てこないことに気づいてからは出来るだけそういった場所を通るようにしているが、マシュの宝具はお世辞にも日本の狭い路地向きとは言い難かった。しかもこういった道はとても見通しが悪い。人探しには不向きなのだ。
人探し。そう、彼らはいま人を探しているのだ。名前はナガレ。冬木にレイシフトする直前、聞こえたアナウンスは確かにその人物の名前を告げた。彼はその人物に会ったことがないのだが、マシュ曰くあの爆発で致命傷さえ負っていなければ間違いなく無事にこちらへ来ているはずだとのことだった。その言葉には確かな信頼があり、彼女はその人物のことを『教官』と呼んでいた。
「ここも…ダメですね。骸骨が沢山います。」
大通りを覗いていたマシュが悔しそうに唇をかんだ。路地に逃げ込んでからは敵に襲われることが減った代わりに、探し人の捜索が難航しているのだ。自分がもっと強ければ、そう思っているのかもしれない。藤丸にしても、この状況は辛かった。何よりも、精神的に。藤丸立香は日本人だ。同じ国内の住宅街なんて、どこも似たようなものである。生まれ育った街に似ているこの場所が燃えている光景は、非常に堪えた。
カルデアの所長たるオルガマリーはここを特異点と呼んだ。本来は存在しない場所であると。今回のファーストオーダーは、それを解消するためのものだったのだ。ならば解決する方法がどこかにあるはず。彼の人物はそれを知っているはずなのだ。なぜなら、レイシフト先でAチームを纏め、オーダーを実行する。その責任者がナガレだったのだから。
「せめて骸骨さえ居なければもっとスムーズにナガレさんを探せるんだけどなあ。」
「そうですね。何か、一時的にでも骸骨たちを一か所に引き付けることができれば或いは…。
すみません、先輩。私がもっと魔術に秀でていれば、離れた場所で爆発でも起こして骸骨を誘導できたんですけど…。」
申し訳なさそうに身を縮こまらせるマシュに、藤丸はこちらこそ、と首を振った。肩に乗っていたフォウが慌ててしがみつく。
「俺なんて魔術のまの字も知らなかったくらいだし、マシュには助けられてばかりだ。
もちろん、フォウにもね。」
フォウ!と声を押さえながらも元気に鳴く小さな獣の頭を、藤丸はそっと撫でた。じつはもう、彼には一つの打開策が頭に浮かんでいるのだ。ただ、それを実行に移すのには勇気がいる。彼は支給されたカルデアの制服のポケットへ、手を滑り込ませた。
つい数分前、カルデアとの通信が繋がった。通信相手はロマニ。顔色を悪くさせた彼がいうには、カルデアからナガレの場所が特定できないのだそうだ。それはつまり、ナガレは今誰からも観測されていないということ。その状態が続けば意味消失も起こりうる。時は一刻を争っていた。
「…?
それは?」
おもむろに取り出されたスマートフォンに、マシュが不思議そうな顔をする。藤丸はちょっと困ったような顔で笑いながら画面をスライドさせた。目的の画面を呼び出し、サイドに取り付けられたボタンを目一杯に押す。
「うん。ちょっとね、思いついて。
…これでよし。」
そうして彼は、今一度自身の手のひらの中に納まるスマートフォンを見下ろす。カルデアへ来るずっと前から所持していたそれには、友人や家族のデータが詰まっている。普段はどこへ行くにもカバンやポケットにいれていた。いわば彼にとっての日常の象徴。彼は一度だけ、それを強く握りしめて…力の限りに道の向こうへと投げた。指が離れるその瞬間、もう日常には帰れないのだと、誰かにそう言われた気がした。
「先輩!?」
驚きに声を上げるマシュをそっと手で制す。
「あと30秒もすれば大音量のアラームが鳴る。
それで骸骨を引き付けられると思うから、その間に大通りに出てナガレさんを探そう。」
覚悟を決めた瞳でそう告げた彼を、小さな獣は不安そうに見つめていた。
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ハーメルン初投稿
投稿の仕方はこれであってるのか…?
おれのかんがえた さいきょうの ますたー(ただしぽんこつ)が、すったもんだしながらも自分のバーサーカーを愛でるだけのお話(になる予定)。
この話で伝えたいことは一つだけ
バーサーカワイイ。