この恋する女神様に祝福を!   作:山童

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めっちゃ間空いてしまい申し訳ありませんでした。 
久々に書くとカズマさんのゲスさとかアクア様のアホさの加減が分からなくなってて笑えなかったです。
ようやっとずっと書きたかった温泉回だぜヤッター!


湯けむりの中で、ふたり

 いつもならばうるさいぐらいにアクシズ教徒の勧誘の声が飛び交っている街中は、今日は不気味なくらいにしんと静まり返っていた。

 辺りを見回してもアクシズ教徒は黙々と仕事に取り組むばかりで、いつものように絡んでくることもない。

 それ自体は非常に嬉しいことなのだが、普段とあまりに態度が違いすぎて俺はうすら寒さを覚えていた。

 アクシズ教徒が勧誘を自重するなんて、めぐみんが爆裂魔法を打たないレベルでおかしい。

 いつもこうならアルカンレティアは最高の街なのに、と思いながら俺はふと、アクアが先ほどゼスタのところに話をしに行ったことを思い出した。

 

「おいアクア、さっきゼスタさんと何話してたんだ?」

「あー、今日は羽を伸ばしに来たから勧誘をちょっと控えめにしてほしい、って言ったのよ」

「あ、アクアにそんな気遣いが出来たなんて……!」

「何よその感動に打ち震えてるみたいなリアクションは! 私だってVSOPぐらい弁えてるんですけど!」

「それを言うならTPOだ、TPO」

 

 アクアが軽くOHANASHIしただけでこんなに良い街になるとは。さすがにご神体は伊達じゃないということか。

 

「というかもういっそ毎日勧誘控えめにするように言えよ。その方がよっぽど素晴らしい街になるだろ」

「なんでご神体自ら信者が増えなくなるような真似しなきゃならないのよ。バカなの?」

「お前らアクシズ教徒は『過ぎたるは及ばざるがごとし』って諺を知るべきだな……」

 

 あんな勧誘のされ方をしてアクシズ教に入ろうと思うのは、よっぽど意志の弱い奴か、アクシズ教徒と同じく頭のおかしい奴だろう。

 まあ控えめにしたところでこれだけ悪評の広まった現状では焼け石に水だろうが。

 それにしても、アクシズ教徒が絡んでこないだけでこんなに清々しい気分で街を歩けるとは思っていなかった。

 アクシズ教徒のいないアルカンレティアとはこんなにも美しい街だったのか。

 つくづくアクシズ教徒の根城であることが惜しまれる街である。

 はぁ、アクシズ教徒絶滅しねぇかな。

 

「カズマからアクシズ教を貶めるスピリッツを感じるわ……」

「気のせいだ気のせい。んで、この後はどこに行くんだ?」

「いろいろあって疲れたし、かなり早いけど温泉に入りましょうよ」

 

 アクアが指さしたのは、ハンスを討伐した時にも泊まった温泉旅館である。

 アクアと同じように、俺もいろいろあって気疲れしていたので、二つ返事でOKを出した。

 

「そうだなぁ。ひとっ風呂浴びてから観光でもするか」

「私、部屋取ってくるわね」

 

 どうやらアクアは先に部屋の予約を済ませてくれるようだ。

 お言葉に甘えて、一足先に温泉に向かわせてもらうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー……」

 

 早い時間に訪れたからか、温泉の中には誰もおらず、誰に気兼ねすることもなく羽を伸ばすことが出来た。

 浴槽の中で凝り固まった四肢を伸ばすと、一日の疲れがすべて抜けていくような心地がする。

 風呂は命の洗濯とは誰が言ったか、全くその通りだと感じる。

 五臓六腑に染みわたる、と言うと少しおっさん臭いが、とにかく疲れた体を癒すにはやはり温泉が一番だ。

 ちなみに言うまでもないだろうが、俺が現在浸かっているのは「混浴」である。

 前回は猫目のお姉さん――実際は魔王軍幹部のウォルバクさんだったわけだが――と遭遇してなかなか眼福な思いをさせてもらったが、果たして今回もラッキースケベ的展開はあるだろうか。

 まあ、時間帯的にあまり期待はしていないが。

 

 ――と、そこで、脱衣所の方から何やら物音が聞こえる。

 どうやら誰かが浴場の中に入ってくるようだ。

 九割九分おっさんだろうな、と思いながらもそちらの方をちらりと眺める。

 数瞬ののち、扉が開いて入ってきたその客は――

 

「って、あ、アクアっ!?」

 

 完全に虚を突かれる形になって思わず叫び声をあげてしまう。

 入る所を間違えたのか。このアホなら十分あり得る事態ではあるが、入ってすぐに悲鳴を上げて出ていなかった当たりそういう訳ではなさそうだ。

 アクアは身体に巻いているバスタオルをキュッと握りながら、恥ずかしそうに洗い場の方へと歩いて行った。

 何かしら反応をもらえないと、こちらとしても恥ずかしいのだが。

 

「お、おいアクア。お前なんで混浴に来てるんだよ。いや俺としては眼福なんで大歓迎なんだが」

「…………」

 

 だんまりしたまま洗い場の椅子に座るアクア。いや、なんか言えよ。

 体を洗うためにバスタオルを取ると、その下から艶めかしい肢体が現れる。

 毎度毎度言っている気がするが、アクアはやはりスタイルだけを見ればバツグンに良い。

 めぐみんのように貧相ではないし、ダクネスほど豊満すぎることもない。まさしく女神のスタイルと言っても過言ではないだろう。

 ダクネスほどではないが大きな胸と、食っちゃ寝してるくせに嫌味なほどキュッとしまった腰。

 そして何と言っても、アクアと言えばケツ。

 アクアと言えばケツである。大事なことなので二回言った。

 この駄女神は下着というものを日によって履いたり履いてなかったりしてるので、このケツを目にする機会はなかなか多いのだが、見るたびにその素晴らしさに感嘆してきたものだ。

 欲情はしないが。

 だが旅行効果と言おうか、風呂場効果と言おうか、今この場において俺はアクアの後ろ姿に劣情を催していた。

 幸いにしてマイサンこそぎりぎり反応してはいないが、このままだと「俺がアクアに欲情した」という不名誉な事実が国中に広まる可能性が無きにしも非ずである。

 それだけは絶対にダメだ。俺の名誉とプライドにかけて。

 性欲に忠実なクズマさんと評判の俺とは言え、欲情していい相手としてはならない相手の区別くらいはつくのだ。

 そういうわけで、俺は何か面倒ごとに巻き込まれる前に、風呂場から退散することにした。

 

「俺は先に上がるぞ。ゆっくり浸かってていいからな」

 

 腰にタオルを巻いて、ささっと風呂場から上がろうと脱衣所の方に歩こうとすると、背後から聞き取れない程度のか細い声が聞こえて来た。

 

「……よ」

「ん、なんか言ったか?」

「……い、一緒に入りに来たんだから、残ってていいわよって言ったんですけど!」

 

 アクアは耳まで真っ赤にしながら、そっぽを向いたままそう言った。

 俺はそのアクアから出たとは思えない発言を耳にしてから、これなんてエロゲ? という言葉が脳裏を駆け巡る十秒ほどの間、その場で間抜けに立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクア、である。

 自他ともに認めるダメ人間である俺と同レベルで堕落してらっしゃる元女神様である。

 酒と宴会芸を何より愛し、酒場で飲めば高確率でゲロをお吐きになるようなお方である。

 女神らしい美貌とプロポーションを持っているのに中身でチャラどころかマイナスで、『人は見た目じゃなくて中身』という言葉を心底理解させてくれた駄女神様である。

 そんなアクアと俺は、肩を並べて湯船に浸かっていた。

 お互いに身に着けているものはタオル一枚だけ。

 タオルを付けて湯船に浸かるなんてマナー違反だが、こればかりはお互いに譲れない部分だった。

 流石にこれだけ至近距離で裸のお付き合いなんてことになれば、いくら相手がアクアとはいえそのまま裸のお突き合いにまで発展する予感しかしない。

 というか今の状態でも正直相当キツいのだが。

 ちらり、と目線を隣に向ける。

 いつもなら話の内容の貴賤問わず会話が途切れることが少ない俺とアクアだが、この場においてはひたすら気まずい沈黙が二人の間を支配していた。

 アクアも顔を真っ赤にして押し黙ったまま、目線を水面に向けている。

 湯に浸からないように結い上げた髪から滴る水滴が水面に落ちて波紋を作る。

 暑さで火照って紅潮している頬とうなじが異常に色っぽい。

 タオルでかろうじて隠しているものの、妖しい艶を放つ双丘は相当に目の毒だ。

 そこから視線を下に移せば、……いやこれは本当にまずい、ここから先はR-18の領域だ。

 というか俺はなぜアクアのセミヌードの実況などやっているのか。

 とっとと風呂を上がればこの苦境からも脱出できるのに。

 そもそもなんでこいつは自分から誘っといて一言もしゃべらないんだよ。

 色々と思考を巡らせながらちゃっかりアクアの方をガン見していると、アクアがようやくぼそりと口を開いた

 

「……カズマ、ガン見しすぎ」

「バッ、べっ別に見てねーし! 駄女神のセミヌードなんぞ誰が見るかバーカ! 向こうの景色見てたんだよバーカ!」

 

 いつもなら売り言葉に買い言葉で口げんかに発展するところなのだが、生憎アクアは二の句を継ぐことなく再び押し黙った。

 いい加減何かしら言ってくれないと、暑さと性欲に耐えながらこの場に留まっている俺の努力の意味が分からなくなってくる。

 痺れを切らした俺は、アクアから目線をそらしてそっけなく言った。

 

「んで、この珍妙な状況の意図をいい加減説明してくれ。早くしてくれないとのぼせそうだ」

「……こういう場面で女の子を急かしちゃう男の人って」

「女の子……? 実年齢を鑑みて発言しろよ」

「下半身に解けない封印施すわよ」

「すみませんでした」

 

 それだけは本当に恐ろしい。

 もしもそんなことになれば俺は確実に自害する。男は基本的に下半身で生きているのだ。

 しかしそんな普段通りのやり取りに緊張がほぐれたのか、アクアはようやく俯いていた顔を上げて、ぽつりぽつりと話し始めた。

 

「……今から真面目な話をするから、茶化さないで聞いてよ」

「アクアが真面目な話とか、明日は雪でも降るのか」

「茶化すなら、話さない」

「……わかったわかった、ちゃんと聞く」

 

 アクアは俺の言葉を聞いてから、一拍置いて話し始めた。

 

 

 

「私ね、カズマの事が好き」

 

 

 

 …………。

 

 

 …………。

 

 

 …………は?

 

 

 

 およそこの駄女神が発することのなさそうな言葉を耳にして、俺の脳は十数秒の間活動を停止していた。

 好き? アクアが、俺の事を? 

 俺とアクアの関係性はそんな色恋沙汰とは対極の位置にあるとばかりずっと思っていた。

 思い込んでいた。

 俺とアクアの関係を一言で表すのならば「悪友」だろうと、前日までの俺なら言っただろうと思う。

 とはいえ、正直言って今日のアクアの態度を見て、もしかして? と思ったことは事実だ。

 俺は鈍感系主人公じゃない。アクアがもしも俺の事を好きなのなら、めぐみんやダクネスよりもよほどわかりやすく態度で表してるな、とは思っていた。

 だが予感と実感は違う。実際にアクアの口からその宣言を聞くと、あまりの衝撃に軽口の一つも叩けないくらい俺は動揺していた。

 

「口では憎まれ口を叩きながら、なんだかんだ助けてくれるあなたが好き」

「守銭奴のくせに、仲間のためなら全財産だって投げ出してしまえるあなたが好き」

「ヘタレのくせに、私の為に命まで賭けて助けてくれたあなたが好き」

「ゲスで、変態で、チキンで、気が多くて、どうしようもない男だけど、本当はとても優しいカズマが好き」

「あなたのことが、好き、です」

「…………」

 

 俺の瞳を覗き込みながら切々と語るアクアは、いつものようにふざけた雰囲気は微塵もなく、ただただ真剣な表情で。

 俺はそんなアクアの言葉を聞きながら、気の利いた言葉の一つも返せなかった。

 アクアを「そういう対象」に見たことは一度もなかった。

 それはアクアの残念すぎる中身もあるけれど、理由はそれだけではなくて。

 アクアを「そういう対象」に見てしまったら、もう今までのような関係ではいられなくなってしまうと思ったから。

 なんだかんだ言い合いながら、お互い困っているときには助け合えるアクアとの関係が、俺にとっては心地よかったから。

 だが、アクアから想いを伝えられた以上、今までのままでは居られない。

 一歩先へと、進まなければならない。

 

「俺、は――」

「返事はまだ、言わなくていいわ」

 

 とにかく口を開こうとした俺を、アクアが止める。

 俺が目線でなぜ、と問いかけると、アクアは少し困ったように笑った。

 

「旅行だとか、混浴だとか、そういう力を借りないと多分私は言えなかったし、こういう時に返事を催促するのは、なんだか卑怯な気がするから」

「卑怯、か」

「吊り橋効果、って言うのかしらね。そういうものには頼りたくないの。ちゃんと屋敷に戻って、めぐみんやダクネスとも向き合ってから、よく考えて返事を返してほしい。そうじゃないと、フェアじゃないでしょ」

「……お前がそんな殊勝なことを言うとは思わなかったな」

「何よ、私は初めから女神様なんですけど」

 

 張り詰めた雰囲気が弛緩して、ようやく俺は軽口を返すことが出来た。

 アクアの言葉を聞いて気付いた胸の中にある感情。これは俺の本来のものなのか、この場の雰囲気に呑まれてのものなのか、今はまだわからない。

 だから、これからしっかりと自分や周りと向き合って、ゆっくりと結論を出したいと思う。

 幸いにして、時間ならいくらでもあるのだから。

 

「……さ、堅苦しい話は終わり! 早いところ上がって観光に行きましょ」

「ああ、そうだな」

 

 話を終えた俺とアクアは、一緒に湯船から上がろうとして。

 ふと気づいた。

 さっきまで、「そういう対象」に見ていなかったにもかかわらず、俺はアクアの半裸体を前にして本能との戦いを余儀なくされていたのだ。

 こうして告白されて、思いっきり「そういう対象」として意識し始めた今、改めてアクアのあられもない姿を視界に捉えると。

 ……まずい。これは非常にまずい。

 さっきですら相当ヤバかったのに、お湯で濡れてタオルが身体に張り付いている今の状態では、しっかりと身体の線が浮き出ていて、さっき以上に煽情的だ。

 うちの駄女神のプロポーションが魅力的すぎてつらい。

 俺のちゅんちゅん丸が完全に戦闘態勢に入りかけたので、俺は慌てて湯船にもう一度浸かった。

 

「……? カズマ、なんでもう一度湯船に浸かっているの?」

「い、いや、俺はまだ湯に浸かり足りないなーと思ってな。先に上がってていいぞ」

「なんで前かがみなの?」

「ちょっとお腹が痛くてな。湯の中で粗相はしないから安心してくれ」

「なんでお腹が痛いのに股間の辺りを押さえて――」

「ああああああもう察せよ! いいからとっとと上がれこの駄女神!」

 

 わかってるのかわかってないのかわからないまま俺に追及を仕掛けてくる駄女神を、俺は無理やり脱衣場の方へと追いやってから、俺はようやく一息をついた。

 結局こういう色気のない展開になるんだな、と苦笑を零しながら。




やっとここまで来れました。
アクア様のプロポーションの素晴らしさをもっとしっかり表現したかった。
私の文章力じゃとても無理でした。
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