比企谷君と虜の魔女   作:LY

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第十二話

高1

 

超研部にて

 

 

超研部での日々はすぐに過ぎてゆき、気づけば中間テストが近づいていた。

というわけで今日の放課後は部室で勉強だ。

朱雀高校はそれなりの進学校だしうかうかしていたらシャレにならないことになる。

数学とかな。

 

「時に比企谷よ、お前は彼女とかいないのか?」

 

 

「…いきなりなんですか?」

 

 

部室で同じく勉強している宮村先輩が急に質問してきた。

 

 

「ずっと勉強していてもつまらないだろう、ただの息抜きだよ」

 

「それは僕も興味あるね」

 

 

またまた同じく勉強している山崎先輩も口を開いた。

 

 

「何の意外性もなくて申し訳ないですけど普通にいませんよ」

 

「「はぁ~~、つまらないな~~」」

 

 

ほっとけ。

 

 

「でも比企谷君も男だ。意中の相手くらいはいるんじゃないのかな~?」

 

「確かにな、そこの所はどうなんだ比企谷~」

 

 

今日の先輩めんどくさっ

 

 

 

「まぁいますけど」

 

「「えっ!」」

 

 

二人がガタッと音を立てて席を立ちあがった。

 

 

「これは勉強どころではないぞ。山崎、超研部の次の部活動はこれだな」

 

「至急、比企谷君の意中の相手を探さないといけないね」

 

 

なんだこの人たち、暇なの?

 

 

「いや、別に隠していないですし名前くらいは言いますよ」

 

「…やけにあっさりしているな」

 

 

当たり前だ、別に隠す必要なんて何もない。

 

俺にとって大切な存在、そんな奴はあいつだけ。

 

 

「小町です」

 

「「小町?」」

 

「はい、小町です」

 

 

 

「…小町君か、そんな名前の子は知らないかな。

お米にはそんな名前があったような…」

 

「私も知らないな。比企谷と同じ一年だろうか?それともお米か?」

 

米じゃねえよ。

 

う~んと唸りながら考える二人をほっといて勉強に戻る。

 

ふっ、永遠に探しているといい。マイラブリーエンジェルは朱雀高校にはいないからな。

 

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

部室のドアがノックされた。

 

この部を訪ねてくる人がいるとは驚きだな。

 

 

「どちら様だ?」

 

 

部長の宮村先輩がドアを開けに行く。

 

どうせ俺には関係ないだろとか思っていた時もありました。

 

ガラッとドアが開きそこにいた女子生徒が問いかける。

 

 

「あの、比企谷って名前の人いますか?」

 

 

遠慮がちな声だが聞き覚えのある声だった。

 

 

「…小田切か」

 

「あっ、ホントにいたわ」

 

そう言えば最近会っていないから部活に入ったこと言ってなかったな。

 

「おぉ、比企谷の友達か」

 

「比企谷君にも友達がいたんだね。それも女の子の」

 

ちょっと、メガネの方失礼じゃね?

 

 

「それで、どうかしたのか?」

 

「まぁ、その、忙しかったら別にいいんだけど」

 

「いや、たいした部活動もしてないし大丈夫だぞ」

 

 

「失礼な、勉強もちゃんとした部活動の一つだぞ!」

 

 

横から文句が飛んできた気がするけど、あなたたちは小町探しだろ。

 

 

「えっと、…も、もう少しでテストがあるじゃない?」

 

「ああ、そうだな」

 

「そう、それでね、よかったら一緒に勉強でもどうかと思って」

 

 

一緒に勉強か。小田切は現国以外の成績良かったはず、

 

…数学聞けるのは助かるな。

 

 

「いいぞ、数学ちょっとでいいから教えてくれ」

 

「ええ、何でも聞きなさい。今日は部活みたいだし、またメール送るわ」

 

「ん、分かった。

でもわざわざ来なくてもメールで言えばよかったんじゃねえの?」

 

「だってひめかわさんが…」

 

「ひめかわさん?べるぜバブのリーゼント頭か?」

 

「違うわよ!別に、偶然通りかかったのよ」

 

 

それじゃあ失礼しました、と言って超研部から小田切は出て行った。

 

 

「なぁ比企谷」

 

「何ですか?」

 

 

そう言えば先輩たちの事忘れてたな。

 

 

「さっきの子、なかなかかわいい子じゃないかぁ~。」

 

 

ニタニタした顔でこちらを見ている。

 

…そう言えば今日の先輩はめんどくさい事を忘れていたな。

 

 

この後、小田切の事をしつこく聞いてきて、勉強出来なかったことは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

・・

 

高2

 

ディスティニィーランドにて

 

ディスティニィーランドの中に入ると何ともウキウキさせてくる音楽が流れており、人々の楽しそうな声と一緒に聞こえてくる。

 

 

「長期の休みじゃなくても休日ならやっぱり人いるわね」

 

「そうだな、そしてなぜ小田切が来てるんだ?飛鳥先輩はどうした?」

 

「明日は日曜だから多少遅くに帰っても大丈夫よね。

久々に遊ぶわよ~」

 

 

ふふん、と楽しそうにしておられる小田切さんは完全に俺の質問を無視する。

 

マジで飛鳥先輩どうしたの?消えたの?透明人間だし消えたの?

それとも俺が嫌いだから逃げたの?

 

…後者に違いないな。そもそも今は玉木が透明人間だし。

 

 

「で、ホントに何で小田切が来たんだ?」

 

「飛鳥先輩は熱を出して来れなくなったから代わりに頼まれたのよ。

私じゃ不満かしら?」

 

「いや、ぶちゃけ助かったわ。飛鳥先輩相手じゃ間が持たないしな」

 

「どういたしまして」

 

ニッコリ笑って頭を下げる小田切。

 

なぜかその顔から視線をそらしてしまった。

 

 

「それで、何から乗る?私スぺマンに乗りたいわ」

 

「いいぞ。俺は基本的について行くスタイルだから」

 

「よし、さっそく向かうわよ」

 

 

 

 

それからは俺にとっては本当に夢のような時間だった。

 

 

あの時と同じ様に小田切と話し、あの時と同じ様に笑った。

 

 

だが話をすればするほど、

 

 

彼女が本当に覚えていないのだと実感してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷って話してみれば意外と面白い。

 

これが素直に思ったことだった。

 

 

アトラクションに並んでいる時間も全然暇じゃなかったし、話が尽きることもなかった。

 

この勢いなら何でも話してしまいそうで怖いくらいだ。

 

飛鳥先輩の代わりに来て本当に正解だったわ。

 

 

 

 

だいたいの乗り物は制覇し、お土産コーナーなどもたくさん見て回った。

 

比企谷は妹にキーホルダーを買っていたが、ここは普通私に買うものじゃないのかしら?

別にいいけどね。

 

 

…別にいいけどね。

 

 

 

「そろそろ暗くなってきたし、帰りましょうか?」

 

「そうだな、久々に歩き回ったからさすがに疲れたわ」

 

「確かに、バイオハザードに出てくるゾンビみたいよ」

 

「ゾンビみたいなのはデフォだから大丈夫だ」

 

「はいはい、そうだったわね」

 

 

 

こんなくだらない会話でさえも、とても楽しく感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

それから私達はディスティニィーランドから出て駅へ向かった。

 

駅に行くまでも電車に乗っている時も比企谷との話が尽きることはなかった。

 

 

「そう言えば朱雀高校の生徒はいなかったわね。よくよく考えてみれば知り合いに見られたら少し面倒なことになるところだったわ」

 

潮君とか能力をかけた親衛隊の子とかに見られたら特にね。

 

 

「ふっ、俺は友達いねえからそんな心配はいらないがな」

 

「はぁ、何の自慢にもならないわよ。

あなたそんなんじゃこの先彼女もできないわよ」

 

 

「……彼女か」

 

 

おっ、意外と気にしてるのかしら?

 

 

「言っておくけど、わたし「おい、この駅で降りるだろ」…あっ、ホントだ」

 

 

話に夢中で気が付かなかったが、もう駅に着いたのか。

 

駅のプラットホームから改札に向かって歩きながらも話の続きをする。

 

 

「話は戻るけど、私は好きな人いるから狙っても無駄よ」

 

 

今までこんな事誰にも言わなかったのに普通に言ってしまった。

 

変にテンション上がっているせいで言ってしまったが比企谷なら別にいいか。

 

 

改札を出て今日の集合場所だった所に到着して、私も比企谷も自然と足が止まった。

空はすっかり暗くなり、周りを歩く人たちは多くなかった。

 

 

「……まぁ高2の女子なら好きな人の一人や二人いてもおかしくはないな」

 

 

「……そう、…そうよね」

 

 

比企谷の返事を聞いて私はガッカリしたような気がした。

 

でもそんなはずはない。私が傷つくようなことは何一つないのだから。

 

 

 

だって、

 

 

 

だって私は、

 

 

 

 

 

「私、山田の事が好きなの」

 

 

 

 

 

言った。言ってやったわ。誰にも話していない秘密を。

 

 

比企谷がどんな反応をするのか彼の顔を見てみると、その顔は驚いているのか困っているのか悲しんでいるのかよく分からない表情だった。

 

 

 

「なぁ…小田切…」

 

 

 

比企谷に声をかけられて気が付いた。

 

水滴が私の頬を伝っていき、ぽたっと地面に落ちていく。

 

 

 

一度流れればもう止まってはくれなかった。

 

 

 

 

「泣かないでくれ」

 

 

 

私は山田が好きで、それを比企谷に言った。

 

ただそれだけなのに、

 

どうしてこんなにも私の心は泣いているのだろう。

 

 

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