比企谷君と虜の魔女   作:LY

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第十四話

高1

 

休日、サイゼリヤにて

 

 

サイゼリヤの中は珍しく客が少なく、勉強しやすい環境だった。

 

聞こえてくるのは誰かの話声や食事中の食器の音、窓から聞こえる雨音と、

ときどき話す彼の声。

 

何故かとてもこの場所が心地よく、ずっとこの時が続けばいいと子供じみたことを考えてしまう。

 

 

「そういや、二学期の終わりくらいには生徒会役員の募集が始まるんじゃねえの?」

 

「ええ、そうよ」

 

 

比企谷も私も視線は手元の問題からそらさず会話する。

 

 

「毎年一年生から二人副会長になるんだろ?割と余裕なのか?」

 

「はぁ~、甘いわね、比企谷。

あなたがたまに飲んでるあの馬鹿みたいに甘いコーヒーより甘いわ」

 

「マックスコーヒーを馬鹿にするな。俺のソウルドリンクだぞ」

 

 

比企谷が飲んでるから真似して飲もうとしたけど、あれは甘すぎるのよね。

 

 

「いいかしら。朱雀高校の生徒会は学校内でかなりの権力を持っているの。学校行事のイベントはすべて取り仕切り、新しい部活の申請の受理や部費の配分なども全て生徒会が行っているわ」

 

 

問題を解くのをやめ、ビシッと手に持っていたシャープペンシルで比企谷の方を指す。

 

 

「それって先生の仕事入ってねえか?」

 

 

比企谷もキリがいいのか問題を解くのをやめて私の方に顔を向ける。

 

 

「ほかの学校ならそうね。だけど朱雀高校は全て生徒会任せ、つまり学校内ではそれだけ大きな存在ってことね」

 

「生徒会すごすぎるだろ…」

 

「朱雀高校では常識よ」

 

 

比企谷のように生徒会に興味がない人はほとんどいないわよ。

 

 

「それで、当然のことながら私たち一年生の中でも生徒会に入りたがる人は多いわけよ。

たぶん副会長に立候補する人数は少なくても十人はいるでしょうね。ちなみに選出は生徒会メンバー前での面接で決まるわ」

 

「思っていたよりも競争率高いな。しかも面接か」

 

「大丈夫よ。何人だろうが全員蹴散らしてやるわ」

 

「かっけぇ…」

 

「だってそのためにずっと比企谷にも手伝ってもらったしね」

 

 

そう、私の目標は生徒会長になる事。その前段階の副会長なんかでコケるわけにはいかないわ。

 

 

「…そう言えば、

小田切は何で生徒会長目指してるんだ?」

 

 

たしかに、初めに会った時からなりたいとは言っていたけど理由を言ってなかったわね。

 

 

「そうね、やっぱり上があるならそこまで登りたかったんだと思う」

 

「実に小田切らしいな。

それじゃあ、今はどうして目指してるんだ?その言い方だと過去形になるが…」

 

「今か」

 

 

今の私が生徒会長を目指している理由なんて言ってしまえば大変なことになるわね。

 

 

「まぁ私も乙女ってことよ」

 

「いや、どういうことだよ」

 

 

入学したての私はただ強い権力に憧れた。

 

でも今は“生徒会長の私と秘書の比企谷で楽しく生徒会をやりたい”

 

なんて事を思ってしまうのだから、

 

恥ずかしながら実に乙女の様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

・・

 

高2

 

放課後 朱雀高校中庭にて

 

 

「それで、今のところ何人魔女を知ってる?」

 

「えっと、私を入れたら4人よ」

 

 

山崎先輩から滝川ノアの話を聞いた翌日、俺は猿島から魔女について知っていることを聞いている。

 

 

「じゃあそいつらの名前を聞いてもいいか?」

 

「ええ、私たちと同じ学年の白石うららさん、大塚芽衣子さん、小田切寧々さんよ」

 

 

白石うららと大塚芽衣子

 

学年一位の秀才と補習の常連が魔女か。

 

本当に魔女は問題児ばかりだな。

 

 

「ありがとな、猿島」

 

「ヒッキーのお役に立てたのならよかったわ。

 

それにしても、やっぱりヒッキーって魔女の事知ってたのね」

 

「まぁちょっとだけな」

 

 

そう言えば猿島の家でそれらしいことを言った気がする。

 

 

「ああ、あと一つ頼みがあるんだが」

 

「なになに?」

 

「知り合いの魔女全員に今は能力を使うなって伝えてくれるか?」

 

「いいけど、何で今は使ったらダメなの?」

 

「ちょっと話は長くなるが、猿島には話していいか…」

 

 

 

それから俺は山崎から聞いた事を猿島に話した。

 

 

 

「なるほど、つまり1年の滝川って名前の魔女が私たち魔女を狙っているのね」

 

「ああ、旧校舎の火事の原因もたぶん滝川って奴のせいだと思う。

もし未来を変えられなかったら猿島は火事の犯人として退学処分されていただろうしな」

 

「そんな…」

 

「つまり猿島はもう魔女だと滝川にバレている可能性が高い。

だから十分に注意しておいた方がいいぞ」

 

「…分かったわ。何かあったらすぐにヒッキーの所に逃げ込みに行くね」

 

「俺でもいいけど超研部でもいいぞ。あそこには山田がいるし、たぶん山田も滝川の事は既に知らされていると思う」

 

 

山崎先輩が手を焼いているのだから俺だけに頼むわけがない。

 

 

「フフフ、ヒッキーは随分と山田の事を買っているのね。

仲いいの?」

 

「いや、話したことない。ただ山田の事知っている人に聞いただけだ」

 

 

山田の事は前に山崎先輩から聞いた。

本来の目的は超研部の事を聞いたら山崎先輩がどんな反応をするか知りたかったから聞いたのだが思いもよらぬ収穫だった。

 

 

「とりあえずはさっき言った通り警戒しとけよ」

 

「任せなさい。言われた通り他の子にも伝えとくわ」

 

 

えっへんと胸を張る猿島

 

もう張る必要ないくらい大きいのでそういうのはやめていただきたい。

 

万乳引力で目線が引っ張られる!

 

 

「それじゃ、まだ用事あるからそろそろ行くわ」

 

「うん、またね」

 

 

 

 

 

 

 

 

猿島と別れてからまっすぐ超研部の部室に向かう。

 

猿島に言った通り能力を隠すことと普段から滝川に注意することで守備はいいだろう。

あとは実際に滝川に接触して根本的な事を解決しないといけない。

 

たぶんまた山田が動くと思うが、さすがにこのまま何もしないと言う訳にはいかないから一応山田に会って話を聞こうと思う。

 

正直ぼっちの俺がいきなり他人に話しかけるとか嫌すぎるのだが今回は仕方がない。

 

 

「久しぶりに来たな…」

 

 

超研部の部室が見えて思わず呟く。

 

部室からは誰かの話声が聞こえるのでまだ部活はやっているようだ。

 

「はぁ、やっぱり入りたくないな」

 

部室のドアに手を伸ばそうとするが止まってしまう。

 

だっていきなり目の腐った奴が訪ねてきたらみんな警戒しちゃうでしょ。

それに“こいつ誰だよ“みたいな雰囲気で目線刺されるとか超嫌だし。

 

 

なんて事を頭の中で考えていると部室の中から大きな音が響いてきた。

 

 

「なんだ?机でもひっくり返したのか?」

 

 

ドアに耳を近づけると、次々と物が壊れるような音が聞こえてくる。

 

 

「……まさか」

 

 

意を決して戸を開くと、そこには超研部のメンバーではない男子生徒2人と女子生徒2人がいた。

 

 

「お前ら何やってんの?」

 

 

思わずいつもより声のトーンが下がり、鋭い口調で言う。

 

俺の目の前にはむちゃくちゃに荒らされた超研部の部室があった。

 





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