高2
白石たちと話した次の日の放課後、俺は山田を探すことにした。
家に帰っていればゲームオーバーだが、探さないよりマシだと思い、とりあえず超研部の方に行ってみる。
部室につくと、白石が昨日俺と会った後に山田が部室を訪ねてきたと教えてくれた。
何でも入部したいと言って、部活に参加したがすぐに帰ったらしい。
そして今日は不参加だと。
超研部にいなければ他に探すところが思いつかないので、帰ろうかと迷いながら歩いていると、2-B教室から何やら物音が聞こえた。
興味本位でこそっとドアから覗いてみると、
普通に山田がいた。
「ふぅ、くすみ一つない仕上がりだぜ」
他に誰もいない教室の中で黒板に向かって独り言を言い、達成感に満ちた顔をしている。
「そんじゃ、次は窓でも磨くか」
そう言ってあらかじめ用意していたであろう水の入ったバケツに雑巾を浸け、絞り、窓を拭き始める。
どうやら掃除をしているらしい。
…いや、なんでだよ。
「おぉ、窓の裏側って結構汚れるな」
何故か窓が汚れている事で喜んでいる山田を見ていても仕方がないので、相手が気付くように音をたててドアを開く。
「…?誰だお前?
B組だったか?」
「…いや違う、お前に用があって来た」
一応、猿島の家で会っているんだが覚えられていないようだ。
「別にいいけど、今掃除中だからその辺を汚すなよ」
俺と話しつつも窓を磨く。
そう言えば猿島の家でも掃除したり、部屋の模様替えやら布団干したりもしていたな。
…もしかするとこいつ、俺と同じ専業主夫希望か?
「それで、俺に何の用だ?」
「…超研部に行っても誰も覚えていなかっただろ?」
「っ!…お前、俺が誰だかわかるのか!?」
山田は窓を拭くのをやめ、俺の方を向く。
「ああ、それでお前に頼みたいことがある」
しばらく沈黙して、山田は俺に聞いた。
「…お前誰だよ?」
「比企谷八幡。
お前と同じ、専業主夫を夢見ている」
「…俺は別に専業主夫に興味はねえよ?」
*
それから俺は宮村先輩の後輩で超研部に所属していたことや、七人目の魔女に会ったこと、俺が玉木と同じ能力を持っている事を教えた。
「…なるほどな。魔女の能力が効かないから俺の事を覚えてるってことか。
と言う事は玉木も俺の事覚えてるのか?」
「あいつも能力が効かないはずだから覚えているだろうな。まぁ玉木だし居ても居ないようなものだけどな」
「そうだな」
ちょっと玉木さん、陰でボコボコに言われてますよ。
「それにしてもお前すげえ奴だな。何か解決策を知ってるんだろ?」
「いや、可能性はあるが絶対じゃない。つまりこのままかもしれない」
「…そっか」
さっきまでテンションの高かった山田だが、絶対じゃないと言うと少ししょんぼりした。
「まぁこればっかりはしょうがねえか。
美化委員の仕事も飽きてきたし、お前を手伝うぜ、比企谷」
「ん、よろしくな」
山田のコピーの力と行動力は必ず何かの役に立つので味方としては心強い。
「それで、まずは何をすればいいんだ?」
「…そうだな、とりあえず宮村先輩の所に行きたいな。
俺よりあの人の方が色々知っているし。
…あと玉木も引き入れるか」
玉木は透明人間の能力を持っているから後々必要になるかもしれない。
「玉木を入れるのはいいけどあいつが味方するか?結構性格悪そうなやつだぜ?」
「まぁどうにかなるだろ」
山田は俺と真逆の考えを持っていた。
あいつなら一瞬で頭を縦に振りそうだ。
「いろいろやりたい事はあるがとりあえず今日は帰ろうぜ。また明日ここに来るわ」
時計を見てみると18時前、授業が終わってから結構時間が経っている。
「そうだな。それじゃあまたここで」
意外とあっさり俺の提案を受け、帰る支度をする山田。
俺もカバンを手に取り、教室を出ようとしたその時
がたっ!
教室のドアから物音が鳴り、外で誰かが走っていくような気がした。
「ん?誰かいたのか?」
「…気のせいだろ」
こうして俺達は家に帰った。
*
生徒会室にて
「会長、比企谷さんが山田さんに接触しました」
「はぁ~、全く比企谷君は…。
意外とやんちゃなんだから」
「フフフ、そうですわね」
「…ところで飛鳥君。なぜ比企谷君を見張っていたのかな?
僕は頼んでないと思うけど…」
「個人的な趣味ですわ」
「…そうか」