比企谷君と虜の魔女   作:LY

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本日二話目


第二十六話

高2

 

 

「神よ、僕の所に比企谷君を返してくださったことに感謝します。

アーメン」

 

「そう言うのいいから早くしろ、ほっていくぞ」

 

「待ってくれ!もう僕を一人にしないでくれ!」

 

 

そう言って俺の足にしがみつく。

 

 

「ええい!離れろ!

お前はもともと一人だろ」

 

 

無理やり引きはがそうとするがなかなか離れない。

 

 

「そうだ、僕は一人だ。だがそれがどうした!それがどうしたというんだ!!」

 

「お前の方がどうした?頭でも打ったのか?」

 

 

どうやらついに頭がパーになったらしい。

 

 

「私はここにいる!!」

 

「うるせぇ叫ぶな!」

 

 

はた目からするとかなり気持ち悪がられるこの光景を作り出しているのは、

毎度おなじみ、…いや本当におなじみの玉木真一である。

 

 

こいつのウザさがいつもの十割増しなのは理由がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分前

 

俺は昨日の約束通り、2-B教室で山田と話をするつもりだったがある事を思い出した。

 

 

「…あぁ、そう言えば玉木を引き入れるんだったな」

 

 

少しめんどくさいが俺は山田に会う前に玉木を探すことにした。

 

探すと言ってもあいつのいる所には何か所か心当たりがあったのでそんなに手間を取らないと思い、散歩するような気持ちで探し始めた。

 

 

 

 

 

そして案の定、心当たりの二つ目である図書室に玉木はいた。

 

しかし様子がおかしく、玉木は本も読まずに椅子にもたれかかり魂の抜かれた屍の様だった。

 

 

「おい玉木、大丈夫か?」

 

「……ん?……あぁそうか、幻覚の比企谷君が見えるくらい僕の頭はダメになってしまったんだね」

 

 

…何言ってんだこいつ?

 

 

「…今まで会長になるためだと思い山崎の雑用を我慢してやって来たというのに、

遂に訪れた会長戦には敗れ、僕の夢は潰えた。

そしてそれだけじゃなく、まさか周りの人から忘れられるなんて…」

 

 

まさか西園寺先輩にやられたのか?

 

 

「おぉ神よ!他の人達はいい、ただし親友の比企谷君の記憶だけは持って行かないでください!もし持っていかれたのならお返しになって下さい!」

 

「おい、そろそろ戻ってこい」

 

「…フッ、そんな事を言ったって何も変わるわけないか。

現実は残酷だね」

 

 

何だかイラっとするな。

 

 

「おい、バカやってないで話を聞け」

 

 

バシッと頭を叩き、こっちを向かせる。

 

 

「なっ!なぜ幻覚の比企谷君が僕に触れられるんだ!?」

 

「どういう発想をしたら俺が幻覚になるんだよ。

俺はお前と同じ体質だから記憶は消されていない。つまりお前に話しかけてもおかしくない」

 

「…確かに。と言う事は比企谷君は僕の事を…」

 

「ああ、お前のウザさは忘れられねえよ」

 

 

そう言うとさっきまでただの屍だった玉木は魂を取り戻し、山田の所まで連れて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に戻る。

 

 

玉木を2-B教室に連れて行こうとしてもはしゃぎまわって一向にたどり着かない。

小学生を相手にしているようだ。

 

 

「おい、山田を待たせてるから早くしろ。お前も周りの人の記憶を戻したいんだろ?」

 

「そうだね、あまりの嬉しさではしゃぎすぎたようだ。以後気を付けるよ」

 

 

少し落ち着いてきたのか俺の言う事を素直に聞き入れ、教室の方まで歩き出した。

 

 

「それで、なぜ山田君の手助けをするんだい?

比企谷君がそんな事をしてもメリットはなさそうだけど…」

 

「別にあいつの為にやってるんじゃないからな。

…俺も思い出させたい人がいるんだよ」

 

「……?

比企谷君も周りの人から忘れられたのかい?」

 

「もうずっと前の事だけどな」

 

「ずっと前?」

 

 

玉木は首を傾げ、続きを聞きたがる。

 

 

「もうこの話は終わりだ。

 

ほら、目的地に着いたぞ」

 

 

話しながら歩いていると2-B教室の前まで来ていた。

 

教室のドアは空いており、中から誰かの声が聞こえる。

 

 

 

 

「おっ、……俺と付き合ってください!!」

 

 

 

「「っ!!」」

 

 

 

その瞬間、教室に入りかけていた俺と玉木は瞬時に近くの壁に張り付いた。

 

 

 

こ、これは…。

 

 

教室の中で誰かが告白している!

 

 

「比企谷君どういう事だい?こんなの聞いてないぞ」

 

「俺だって知らねえよ」

 

 

教室内に声が届かないようにひそひそ話をしていたらまた声が聞こえてきた。

 

 

 

「ごめんなさい。……私好きな人いるから。

 

…そういう事だかもう行くわ」

 

 

 

そう言うと教室から俺たちの方に足音が近づいてくる。

 

マズい!こっちに来る!

 

隠れないと!!

 

 

 

 

出てきた女子は教室のドアを閉め、俺たちの前で止まった。

 

 

「……比企谷君?なんで両手で顔を隠しているの?」

 

 

俺と玉木はとっさの事で逃げることもできず、手で顔を隠すというバカみたいなことしかできなかった。

 

しかしそれも無意味なことで、俺の名前が呼ばれた。

 

 

「…おぉ白石か。ご機嫌麗しゅう」

 

「ええ、それで何で顔を隠していたの?

それにそっちの人は友達?」

 

 

白石はなおも顔を隠している玉木に目をやり俺に問いかける。

 

 

「…気にしないでくれ。ただの趣味だ。

 

それにそっちの人は友達じゃない」

 

「そうなの?

…それじゃあ私は部活あるから」

 

「おう、じゃあな」

 

 

別れの挨拶をしてスタスタと白石は歩いて行く。

 

 

「白石が出てきたってことは…」

 

 

俺はドアを開けて教室の中に入った。

 

 

「やっぱりか」

 

 

さっきの告白で断ったのは白石うらら

それじゃあ断られたのは誰でしょう?

 

 

 

 

正解は……

 

 

 

 

「山田、大丈夫か…?」

 

 

 

山田は床に顔を伏せ、微動だにしない。

 

たぶん膝から崩れ落ちたんだろう。

 

 

「はぁ、これからどうするんだよ…」

 

 

俺達魔女殺しはまだスタートすらできていなかった。

 

 

「フン、無様だね」

 

 

宮村に負けて生徒会長になれなかった腹いせなのか、玉木は瀕死しかけている山田に追撃を食らわせる。

 

 

 

「玉木、お前はいつまで顔を隠しているんだ?」

 

 

何故か顔を隠したままで…。

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

本当に先が思いやられる。

 




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