比企谷君と虜の魔女   作:LY

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第六話

高1

 

夏休み終盤

 

 

「お兄ちゃん出かけるの?」

 

「ああ、ちょっとな。夜飯いらないって言っといてくれ」

 

「いいけど、ご飯食べに行くの?」

 

「まあそんなところだ」

 

 

へ~と言いながらじろじろ見てくる。

 

 

「お兄ちゃんが外食なんて珍しい…、しかもこんな時間から行くなんて」

 

 

ムムム、と悩んでいる小町も可愛いがそろそろ行った方が良さそうだな。

 

 

「それじゃ行ってく「まさか、お兄ちゃん!」…ん?」

 

「…夏祭りに行くんじゃ?」

 

 

あらら、バレちまった。

 

 

「別にいいだろ、なんでも」

 

「まさか、女の人と?」

 

 

無駄に鋭いマイシスターの前で嘘を言っても意味がないので、正直に白状することにした。

 

 

「…成り行きでな」

 

「うおっしゃーーーーーーー!!!!」

 

 

テンション上がり過ぎてキャラ崩壊してますよ。

 

 

「お兄ちゃん、写メ!写メ撮ってきて!

あと今度家に連れてきて!どうしよう、小町美容院の予約しないと」

 

 

 

さて、ほっといて行きますか。

 

 

 

 

 

というわけで駅で小田切を待っている。待ち合わせ時間より五分早く着いたからもう少し待たないといけないだろう。

 

てきとうに近くの壁にもたれかかり、目を閉じて肩の力を抜く。

誰かと出かけるなんていつぶりだろうな。

 

 

 

 

トントン

 

「比企谷」

 

 

誰かに肩を叩かれ目を開くと小田切がいた。

 

 

「まさか寝てたの?」

 

「いや、人ごみにあてられてな」

 

 

どうでもいい嘘をついて小田切の格好に目をやる。

 

小田切は草履を履き、黒い柄のついた浴衣を着ていた。

 

 

「それで、私に言うことはないのかしら?」

 

「そうだな、浴衣にあってるぞ」

 

「い、意外とストレートに言うのね」

 

「こういう時はストレートに褒めろって妹に言われてるからな」

 

 

そう言った後にパシャっとスマホで写真を撮った。

 

 

「そんなに気に入ったわけ?」

 

「いや、別に」

 

 

こうしてまた、どうでもいい嘘を言った。

 

 

「はいはい、それじゃあ行きましょうか」

 

 

おう、と言って小田切の顔を見ようとしたら

 

パシャっと携帯の音を鳴らせて小田切が俺を撮っていた。

 

 

 

「フフン、帰ったら弟に見せてやろうかしら」

 

 

 

…どこの兄弟もこんなもんなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたりを見まわせば人の群れ。

 

屋台から美味しそうな匂いがし、遠くからは祭りでよく聞く音楽が聞こえ、視界の端にはちょうちんが光っている。

 

 

「これぞ祭りの感覚よね」

 

「いきなりどうした?」

 

「いえ、何でもないわ。まずは何しましょうか?」

 

「焼きそば、たこ焼きあたりが鉄板だな」

 

 

お祭り気分で少しはしゃいでる私に対して、比企谷はいつも通りに見える。

 

同級生の女子と二人っきりでお祭りに来ているのになんとも思わないのかしら?

 

ちょっと緊張している自分が馬鹿みたいに思えてくるけど、誘う時の緊張は半端じゃなかったわ。

 

今でも電話で比企谷を誘った時の自分に感謝する。おかげで浴衣も褒められたし…。

 

 

「フフフ…」

 

「急にニヤッとするとかなかなかキモ…変だぞ」

 

「ちょっと、今キモイって言おうとしなかった!?」

 

「してません」

 

 

クッ、思わずにやけてしまったわ。意外と私って顔に出やすいのかしら?

 

 

「なぁ小田切」

 

「ん、どうしたの?」

 

比企谷は何かから視線をそらさず、私に声をかける。

 

「あっちにプリキュアのお面売ってるから見に行ってもいいか?」

 

 

子どもか!

 

 

「せめて仮面ライダーにしときなさいよ」

 

「これは譲れねぇな」

 

 

それからも色々な屋台に行き、色々な話をした。

 

特に妹の話を熱く語っていることからシスコンだということも分かり、比企谷について少し詳しくなったことが嬉しい。

 

 

時間は流れ、祭りの終わりが来る。

 

祭りの終わりは私に夏の終わりを感じさせ、少し寂しい気がする。

 

 

「…来年も、一緒に行きましょうね」

 

「ん、暇だったらな」

 

「絶対だからね」

 

 

 

夏の最高の思い出ができ、来年の約束もした。

 

 

来年の私と比企谷はどうなっているのかしら?

 

 

もっと仲良くなって来れたらいいけど…。

 

 

そんな気持ちで家に帰ったが

 

 

 

 

 

 

比企谷との約束が守られることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

・・

 

高2

 

林間学校二日目にして最終日

 

 

今日は川の近くでバーベキューだ。

と言っても、めちゃめちゃ暇だがな。

 

てきとうに自分の分を焼いて皿に盛り、離れた場所で食べる。

これぞボッチの極み。

 

ふわっとアホ毛を揺らす風が気持ち良い。木の陰でゆったりしながら食べるのも悪くないな、と思っていたがそれもここまでの様だ。

 

 

「アーラ、お一人で食事かしら?」

 

 

こいつ同じ班になってからやたらと絡んでくるな。

 

 

「ああ、なんか用か?」

 

「せっかく同じ班になったんだし一緒に食べてあげてもいいわよ」

 

 

小田切さん、そういう態度だから五十嵐以外友達できないんだぞ。

 

 

「いや、遠慮しとくわ。

俺は本持ってきてるし」

 

「む、本なんて帰りのバスで読んだらいいでしょ」

 

バスで本読んだら気持ち悪くなるらしいけどな。

 

「わかったよ。で、最近何で絡んでくるわけ?」

 

「まぁとりあえずいつもの親衛隊の勧誘よ、それでもう一つは玉木の情報を教えて欲しいのよね」

 

玉木の情報?生徒会長戦絡みか。

 

「あいつやけに山崎会長に気に入られてるっぽいのよね。

内容は知らないけど仕事とかも任せられてるし」

 

 

なるほどな、玉木は小田切が魔女であることを知らないし逆に小田切も玉木が魔女殺しであることを知らないのか。

 

 

「それで、あなた玉木と仲いいんでしょ。何かあいつの弱点知らない?」

 

「別に趣味が似ているだけで、とくに弱点とかは知らねえな」

 

「はぁ~、やっぱりそんな簡単にはいかないか…」

 

しかし相変わらず生徒会長目指しているようだ。

 

「まあいいわ、じゃあもう一つあるんだけど」

 

「まだあるのか?」

 

「あなた、親衛隊のメンバーじゃなくて私の仲間にならない?」

 

 

…何時しかの事を思い出させるセリフだった。

 

 

「何でそんなに俺にこだわるんだ?別に必要ないだろ」

 

「そうかもしれないけど、なんて言ったらいいのかしら?」

 

珍しくはっきりしない。

 

「まあ、インスピレーションってやつよ」

 

紅の豚か。

 

 

…カッコイイから俺も今度使おう。

 

 

「前にも言ったが俺はどこの派閥にも入らねえから」

 

「言うと思ったわ、それじゃあ友達になりましょ。

あなたの事、なんとなく気になるのよね」

 

 

…これは昔の事が関係しているのか、それともたまたまか。

 

どちらにせよ、俺は小田切に近づくべきなのか?

 

どうしたら正解なのかが分からない。

 

 

「…何よ、そんなに迷う事なの?」

 

 

返事に困っていたら先に小田切が口を開いてしまった。

 

 

「比企谷ってやっぱり私の事嫌いなの?

話しているときちょっと困った感じしてるし」

 

「別にそんな事はねえよ。友達とかいないから話すのに慣れてないだけ。」

 

「そう、よかったわ…」

 

 

ホッとしたような顔をしている小田切

 

こういう表情ははっきり言ってとてもかわいらしい。

 

 

「まぁなんだ、適度によろしく頼む」

 

さすがの俺もここまで言われて断れるほど無神経ではない。

 

「ええ、さっき言ってた玉木の情報とかはもういいわ。

私には不思議な力があるし、やっぱり自分で解決するわ」

 

冗談めかしに言っているが本当にあるから怖いな。

 

「本当はあなたも魔法にかけてやろうと思ってたけど、やめといてあげるわ」

 

「へいへい、それはどうも」

 

「あら、信じてないわね?」

 

「いや、信じているぞ。

とりあえずそろそろ戻ろうぜ、片付けとかもあるだろ」

 

「…そうね。」

 

こうして俺の林間学校は終わる。

 

どこぞの誰かが願った通り、女子との出会いがあったようだ。

 

 

 

 

 

 

*

 

帰りのバスにて

 

「ちょっと窓側私に譲りなさいよ」

 

「え?また隣座るのか?」

 

結局、小田切の相手をしていて本が読めなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌々日の月曜日の放課後

 

林間学校で買ったお菓子をぶら下げて目的地へ向かう。

前に一度だけ行ったことがあったが道をちゃんと覚えていないのでたどり着けるか心配だ。

 

案の定分かれ道で迷っていたが何となく見覚えがありそうな方へ行ってみたら、どうやら正解だったらしい。

 

 

「相変わらずでかい家だな」

 

 

ひときわ大きな豪邸を前に思わず呟く。

 

元気にしているだろうか。

 

本当に最近は会っていない、俺の数少ない先輩。

 

豪邸の表札にはオシャレにローマ字でこう書かれている。

 

 

 

 

Miyamura




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