霊感少女   作:Mr,J

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プロローグ2

引っ越し作業が終わり、ひと段落付くと夫婦は彩未を連れて家から少し離れた場所にある学校『市立菊花小学校』に転校の手続きを済ませに向かう。

 

学校は車で10分程の距離の場所にあった。3月中旬の土曜日…。校内に生徒の姿は無く、静かで穏やかな雰囲気が感じられた。

 

白く染められた鉄筋コンクリートの4階建の校舎が2棟建ち並び、校舎の隣には体育館があった。体育館にはスポーツをしに来ている男子達の姿があった。

 

正面玄関は閉ざされていて、事務所から吉原一家は入って行った。

その日、当直の教師に応接室へと案内される。彼等が待っていると菊花小の校長が現れて、吉原夫妻から転校手続きの名簿等の書類を受け取り、名簿に目を通す。

転校生と…言う事で校長も最初は穏やかな表情だったが…彩未の経歴を見て少し表情が固くなった。

 

「え…と吉原彩未さんは…これまで3度も姓を変えられて居ますね…」

「はい、色々とあって…」

 

彩未は顔を俯いて、左腕を摩りながら答える。

 

「今のご両親とは、どんな関係で?」

「私達が彼女の里親になると決めて、家族になりました」

男性が答える。

 

「そうですか…分かりました。ただ…我が校では、少し規則がありまして…女子の髪は肩までと…あと、前髪も眉の上まで…と決められていますが、大丈夫ですか?」

「ゴメンなさい。古傷を隠す為に、髪を伸ばしてます。ダメですか?」

「まあ…理由があるのなら、例外は認めますが…左腕もずっと触ってますが…何かあるのですか?」

「こちらも古傷があって、時々疼くのです」

「そうですか…」

 

校長は、少し冷や汗を掻いた。何かとんでもない子供が学校に来た…と感じた。

 

「では、貴女の担任となる方を、お連れしますね」

 

そう言って、しばらくして30代位の男性が部屋に入って来た。

 

「初めまして、青野と申します」

 

スーツ姿で、体格の良い男性は夫婦と少女に軽く挨拶をする。

 

「ふ…ん、彩未ちゃんね…。昔は田中、滝川…吉原と苗字を3つも変えているの。珍しいね…」

 

青野はチラリと彩未を見た。そして彼女が持っているランドセルが新しい事に気付く。

 

「今度小5になるのに彩未ちゃんのランドセル綺麗だね」

「前のランドセルは壊れちゃって…」

「セカンドランドセルって言う事なんだね…まあ、たまにウチの学校にも3年間で2つのカバンに変える子がいるけどね」

「これは4個目です…」

 

彩未は恥ずかしそうに答えた。

 

「4個⁉︎何で…そんなに新しいカバンにしてるの?」

「何かと色々とあって…」

「ちょっとした出来事などが立て続けにあったのですよ」

 

彩未が言いかけた時に吉原夫人が言葉を掛けた。

少し呆気に取られた青野は、彩未の経歴を見直した。

前の学校名が『見山小学校』と記入している事に、青野はある事を思い出す。

 

「見山小て言えば…昨年、あの学校に通う児童達が、ちょっとした騒ぎに巻き込まれたようですね。我が校でも話題のタネになっていますが…彩未ちゃんは知ってる?」

「私は…その、あまり良く知りません…」

 

彩未は視線を逸らしながら言う。

青野は長年の教師の感で彩未が何か隠している事に気付く。

 

「彩未ちゃん、左腕を触っているけど…そっちの腕はどうしたの?」

「え…⁉︎これは…昔、遊んでいる時に転んで怪我をしちゃって…」

「ふうん…そうなの。分かりました、他に何か聞きたい事とかはありますか?」

「席の配置とか選べますか?」

「え…まあ、希望があれば大丈夫だよ」

「出来るだけ、中央にしたいです」

「珍しいね…皆は、窓際や後ろの方を選びたがるのに」

「私が窓際や後ろにすると、多分…皆に迷惑が掛かると思うので…」

「そうなんだ、分かりました」

 

青野は不思議そうな表情で愛想笑いしながら答える。

一連の話が終わって、皆が部屋から出て行く時に彩未が夫婦に向かって言う。

 

「ちょっと教室を見たいけど良いかしら?」

それを聞いた夫婦は、笑いながら答える。

「分かった、見て来なさい。車で待っているから」

「ありがとう」

 

彩未は叔母にランドセルを預けて青野と一緒に4月から始まる新しい教室を覗きに行く。

新しい教室、5年1組の教室に入り教室内を見た。

一呼吸して気持ちを落ち着かせると、安心した表情で彩未は教室を出て行く。

 

(大丈夫そうね…)

 

一緒にいた青野は不思議そうな感じで彩未を見ていた。

教室を後にする彩未を追うように付いて行く青野は、疑問に感じた事を瑠璃に投げ付けた。

 

「君って、もしかして霊感とかあるの?」

 

その言葉に彩未はギクッとして、少し動揺しながら答えた。

 

「わ…私、そんな霊感なんてありませんよ…」

 

彩未はオロオロしながら答える。

 

「転校生って、大体後ろの席が定位置なのに、中央の席にして欲しいとか、事前に教室を見たいとか…さっきの面談でも少し変わっていたし…」

「私…怖がりな性格なんです」

「なんだ、そうなのか」

 

安心した様子で青野は階段を降りて行く。

 

「先生は、幽霊とか霊感とか信じますか?」

「昔は信じていたけど…今は、あまり信じないね。ウチの学校にも自分は霊能者とか言っている生徒がいるけど…あまり皆は信用してないしね」

「そうですよね、安心しました」

 

2人は学校の玄関前へと来る。

 

「まあ…幽霊とかも、ある意味…夢見たいなものだよ」

「ええ…そうですね。先生は良い人だと、昨年6月に亡くなられた息子さんの健太君も言ってますから」

「ハハ、そうなんだ」

 

笑っていた青野は「エッ⁉︎」と我に返り

「ちょっと、どう言う事⁉︎」

 

青野は思わず彩未の左肩を軽く掴んだ。

その瞬間「ギャアー!」と、悲痛な叫び声を上げて彩未は、その場に蹲る。

 

「ゴ…ゴメン」

 

衣服の上から彩未の肩から背中に掛けて、僅かに赤い染みが浮かび上がる。

 

「左肩は触らないで下さい。お願いですから…」

「悪かったよ…それよりも、どうして僕の息子の事を君が知っているの?君と僕は今日、初対面なのに…僕の息子の事、それも昨年亡くなった事まで言い当てるなんて普通じゃないよ」

「え…と、そんな感じがしただけです」

 

戸惑いながら彩未は、苦しい言い訳をする。

 

「ウソだ、君は霊感があるのだろう、だから教室も見たかったんだろう?」

「私は…その…違います」

 

彩未は俯きながら答える。それを見ていた青野は溜め息を吐きながら…

 

「君の左肩の傷って、本当に遊んでいた時に出来た傷なの?」

「は…ハイ…」

 

青野は彩未を見ながら話す。

 

「見山小で起きた事件では…ある女子生徒が、廃墟に入った児童達を救う為に我が身を犠牲にしながらも助けたって聞くけど…本当に違うの?」

「私は…知りません…」

 

少し震えながら彩未は答える。

 

「彩未ちゃんのランドセルだって、あれは最近買ったばかりで綺麗じゃない…。事件の経緯を考えると辻褄が合うと思うけど…」

「私は…」

 

次第に追い詰められている様に感じた彩未は言葉が詰まり返事に迷い始める。

 

「すみませんが…今日は、これで失礼します!」

 

彩未は急いで靴を履いて学校の玄関を飛び出して行く。

駆け足で出て行く少女を見ながら青野は少し呆れた表情をしていた。それを傍らで見ていた校長が青野の側に来る。

 

「風変わりな生徒が来たものだな…」

「あの子は、かなり強い霊感を持って居ますよ」

「そうなのか…?」

「私の倅の事を、何も話さないうちから直ぐに知りましたからね…」

「なんと、まあ…」

「新学期から賑やかな年になるかもしれませんね」

 

2人の教論は去って行った児童の後ろ姿を見続けていた。

 

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