霊感少女   作:Mr,J

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第6話

千夏は鎮痛剤の入った瓶を掴んで彩未の前に見せる。

 

「ほら、どうしたの?薬が欲しいのでは無いの?」

 

その言葉に彩未は悔しそうな表情をしていた。

 

「く…うう…」

 

結衣は異様な光景を目の当たりにしていた。学校で人気者の神山先生が普通とは思えない行為を行なっている事、更に今年から入学したばかりで、霊感が強いと噂されている1年生の田中彩未…。2人の不思議な光景を見ていた結衣は、彼女達の行動が理解出来なかった。

先生の手から薬の瓶を奪えば、それで済む事…しかし、彩未には何故か…それが出来ない状態である。結衣は彩未を見て思った事は…蛇に睨まれた蛙の様に感じた。

 

「し…診察を、受けます…」

 

彩未はようやく観念したかの様に悔し紛れに千夏に向かって言う。

 

「最初から素直に、そう言えば良いのに…素直じゃ無いわね貴女は…」

 

千夏は向かい側の椅子に座るように手を差し伸べる。

 

「ごめんなさい篠崎さん、後ろに立って彼女を支えて置いてね」

「は…はい?」

 

訳も分からず結衣は彩未の後ろに立って、彩未の両肩に手を置いた。

 

「彩未ちゃん、両手を真っ直ぐに伸ばして」

 

言われた通り彩未は両手を真っ直ぐに伸ばす。

千夏は、彩未の両手の掌を触る。

ビクッと彩未は反応して「痛ッ!」と、険しい表情をする。

 

「凄い才能ね…お姉ちゃん位かも…?」

 

千夏は彩未の両手をゆっくり撫ぜる。

その感覚に彩未は全身に電気が走ったかの様に激痛を感じて

 

「イ…痛いッ!」

 

と、叫びながら立ち上がろうとする。その時後ろに居た結衣に押されて座り直す。

結衣は突然の事に押し倒れそうになった。

 

「も…もう良いですか?」

 

彩未は震えながら言う。

 

「まだよ、貴女の体をしっかり調べなければ…」

 

そう言って千夏は腹部を手で撫でる。

その時、再び体中に激しい激痛が走り

 

「イ…痛いー!」

 

と、反応して立ち上がろうとするが結衣に押されて、椅子に座り直される。

結衣は彩未の顔を見ると、彼女の顔は涙目で震えていた。保健室に入る前の少し強気だったような顔から一変、僅か数秒で少女は恐怖に怯えた様に震えていた。

 

「あと…ちょっとね」

 

そう言って千夏は彩未の両脚を撫でる。

再び険しい表情をしながら彩未は首を横に振りながら痛みを堪えるが…

 

「ギャアー!」

 

と、叫びながら椅子から飛び出ようとする。

椅子を押し倒した彩未は地べたに倒れる。

 

「まあ…診察は以上だけど。貴女、相当疲労が激しいようね」

 

全身を震わせながら彩未は千夏を見ながら

 

「わ…私は、普通です」

と、声を震わせながら言う。

 

千夏はハア・・・と、ため息吐きながら

 

「あのね…普通って言うのは」

 

千夏は結衣を見て、手招きさせると…彼女を椅子に座らせる。

 

「ちょっと触らせて貰うわね」

「はい…」

 

千夏は結衣の体を撫でるが特に反応は無かった。

 

「痛かった?」

「え…?全然、平気です」

 

結衣の反応を見た千夏は彩未を見て

 

「普通は…こう言う事よ」

 

それを見た彩未は震えながら立ち上がり

 

「診察は終わったから失礼しますね・・・」

 

と、鎮痛剤が入った瓶を取り保健室を出ようとする。

 

「待ちなさい」

 

千夏は彩未の両目と後頭部に手のひらを押し当て、少し念じると彩未は千夏の腕の中に落ちた。

 

「全く・・・聞き分けの悪い子ね・・・」

 

深い眠りに落ちた彩未を両腕で抱きかかえ、千夏はベッドの上に彩未の体を寝かせる。

それを見ていた結衣が彩未の上履きを脱がせた。

 

「先生・・・一体何をしたのですか?」

 

結衣は一部始終を目の当たりにしていたが・・・自身の常識の範囲を超えた出来事に理解が追い付かない状態だった。

 

「そうね・・・まず先に、私と彼女は霊感があるのよ」

「それは分かります。彩未ちゃん本人は自分は霊感が無いとか言ってますが・・・学校中の生徒は皆、この子に霊感ある事を知っています」

「まあ・・・ある意味有名人の様な感じね、ちなみに私にも霊感はあって、彼女にとって私は近寄りたくない存在なの」

「何故ですか?」

 

「霊能者が持つ波長そのものはある意味磁石の現象に似ているかもしれない。波長そのものが本人のテリトリーであって、その中に自分と同じ素質のある者が来るのは不快に感じてしまう。その為同じ霊能者同士がくっつく事は無いの。磁石でも同じ極同士はくっつかないでしょ?」

それを聞いた結衣は「なるほど・・・」と、頷いた。

「同じ霊感体質同士、自分のテリトリーの中に同じ素質のある者を入れたくは無いものなのよ。彼女にとって私は煩わしい存在なのよね」

 

「そうですか・・・でも、すごいですね会って直ぐに相手の名前とか分ってしまうなんて」

「そう・・・かな?彩未ちゃんは私よりも霊感が強いから・・・霊視すれば相手の所在の大部分を知ることも可能かと思うわ」

「え・・・?この子が先生より上なの?」

「私の見立てでは、お姉ちゃん位かな・・・上位に匹敵する霊能者の素質があるようね、彼女には・・・」

 

夏美は彩未が着ていた上着を脱がし始める。

 

「霊能者には霊位があるのよ。最高位の霊能者は国内で3人しかいなくて。国宝級とも言われているわ、その下に最上位、上位とあって・・・私のお姉ちゃんが最近になって上位の位に達したの。上位に上がるまでかなり大変だったらしいわ」

「え・・・?そのお姉さんの位に近い素質を彩未ちゃんが秘めているの?」

「そう言う事ね。でも・・・彼女は、まだ幼いから・・・霊能者としての位は得られないの。基本は16歳以上なのよ、私の見立てでは鍛練を行えば相当な霊能者になれるかもしれないわね」

 

千夏は彩未の体をシャツとズボンだけにすると、保健室の奥から軟膏の薬を持って来た。

 

「貴女・・・多少の際どい物とかは平気?」

「まあ・・・兄とかがスプラッタ映画を観るので、多少の事なら平気ですが・・・」

「そう、じゃあ・・・ちょっと手伝ってくれるかしら」

「はい?」

 

結衣は何を手伝うのか良く分らないまま、千夏が彩未のシャツを脱がすと、体中に無数の引っ掻き傷や切り傷、アザがある事に驚く。

 

「せ・・・先生、これは?」

「先程の診察は、この子の傷の度合いを測る検査だったの、あの子が痛がる理由がこれだったのよ。逃げる際に眠りの念を行ったから、しばらくは起きないわ」

「でも・・・誰にされたの?こんなに…まさか家で虐待されているの?」

「まさか…彼女の母親が今日来て本人の口から、自分の方が彩未に注意されている程だと言ってた。この子の少し意地っ張りな態度を見れば何となく分かる気がするわ…。彼女の傷は全て霊がした行為よ。生身の人間なら、多少の引っ掻き傷でも治るけど、霊による怪我は中々治りにくいのよ」

 

千夏は軟膏を彩未の傷に塗り始める。

傷が染みるのか、彩未は眠った状態でもビクンと反応する。

彩未の身体の体の向きを変えて背中に軟膏を塗る時、結衣に彼女に体を支えて貰う。

 

「そう言えば先程彩未ちゃん、先生の掌から薬を取らなかったのは何故ですか?」

「取らなかったのでは無く、取れなかったのよ」

「それは一体?」

「私に触れるのを恐れていたのよ、少しでも私に触れたら。自分の弱点を晒してしまう・・・と、直感で感じたから。この体の傷も私に見られると分っていたのよ。」

「それで・・・彩未ちゃんは薬を取るのをためらったのね」

 

大分不明な箇所が分り、結衣は納得する。

 

「私くらいの霊能者でも、初対面で相手の僅かな部分の素性は読み取れるわ。更に相手の爪や髪にでも触れれば、その相手の少し先の事や身内で不幸が起きる事等感じ取る事が可能なのよ。ただ…彼女を少しでも知りたかったのよ。少し前から彼女の波長が最近弱いと感じていたからね…。まさか保健の先生が教室まで行って、生徒に保健室に来い…なんて言えないでしょう?彼女自身から来るのをずっと待っていたのよ」

 

軟膏を塗り終えると彩未の衣服を着せる。衣服を着せ終えると、千夏は簡単な指圧を行い布団を掛けさせて彩未を休ませる。

 

「ふう…彼女も、もう少し聞き分けが良いと楽なのに…」

 

隣で見ていた結衣は苦笑しながら

 

「この子…寝顔は可愛いのにね」

 

と、彩未の寝顔を見て言う。

 

「これで性格も素直だったら言う事無いのに…まあ、こんな性格だから学校で人気かもしれないけどね」

 

そう言いながら2人は保健室を出る。

静かになった保健室の中では、眠っている彩未だけが残された。

どの位眠ったのか…彩未は眼を覚ました。自分が眠らされたのだと気が付くとベッドから起き上がり大きく伸びをする。

その時、普段は腕や肩に違和感があったのに、自然と腕が伸びた事に気付く。

 

(あれ…痛くない?)

 

ベッドから降りる時も自然と足が伸びる。

知らない間に体の調子が良くなっている事に彩未は少し驚いた。

ベッドから降りた時、保険室の机の近くに千夏がいる事に気付く、机の上には彩未のランドセルが置いてあった。

 

「お目覚めね、貴女の友達がランドセルを持って来てくれたわよ」

「え…?」

「既に学校は下校時間を過ぎたわ」

「え…本当ですか?」

 

それを聞いて彩未が外を見ると、日が傾いている事に気付く。今日は母…友美が帰り遅いから洗濯物を取り入れる様に言われていたのを思い出す。

 

「失礼いたしました!」

 

彩未慌てながら保険室を出ていく。

走り去って行く彩未の姿を見ていた千夏はフッと軽く微笑んだ。

 

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