超短編集   作:黒灰

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お題「便所飯」 便所のグルメ

にちゃりと、頭蓋の中で響く。

それに付随するくちゅり、という音がリノリウムに反響する。

静かだ。ああ、一人だ。

個室で孤独に、食事を摂る。空虚な動機でここにいる。

一人じゃないと寂しいから、と。

 

何を隠そう、僕は友達が居ない。

 

ここにいるのは、コミュニティから逃げたいからだ。

目の前に賑やかがあると、胃がキリキリして食事にならない。

これが劣等感というやつだろうか。

 

まぁ、いい。

 

「ものを食べる時は―――――――――誰にも邪魔されず、自由で」

 

なんだこれは、救われないじゃないか。

 

 

ひとりごとと同時に、弁当箱をかき回す箸が止まる。

気がつくと、塩味がおかずの上に降り注いでいた。

僕は奥歯の上に苦味を感じながら、鼻にツンとする微妙な、しびれとも痛みともつかぬ何かの感覚を得ていた。

 

一人の飯は、辛い。

それよりも、大人数の中の、一人の飯が辛い。

 

ここに居るのは恐れているからだ。

ここに居るのは寂しいからだ。

ここに居るのは嫉妬深い自分が胃を締め付けるからだ。

これは逃避なのだから、これ以上を望んではならない。

妥協だとしても、最善なのだ。

 

気がつけば、身を折っていた。背を丸めて、太ももの上の弁当箱を見つめていた。

 

箸は当然動くはずもない。口は食い縛っているから開かない。

漏れてくるのはただただ、呻きとすすり泣き。未だ涙も止まらぬ。

そこに、音が落ちた。

ふりはじめの雨のように。

足音だ。

僕は、悲しみを堪えなければならなかった。こらえてこれなのだが。

 

どうやら、二人だったようだ。

話し声が聞こえる。だが、内容は覚えない。

それは、僕のかかわれる内容じゃないから。

知ったところでどうにもならない。

 

だが、僕はくしゃみをした。

そして箸を取り落とした。汚い。

そして、箸は個室の仕切りの下をくぐり抜けて行った。

 

頭が真っ白になった。でもどうでも良かった。

何も起きなかったが。

二人は、箸が転がり出た瞬間には話を止めたが、そのあと何もなかったかのように会話を再開した。

気遣いだろうか。

しかしトイレを出ればきっと僕のことで色々話したに違いない。

 

箸は、当然のようにそこに放置されていた。

もう、食欲も失せていたから、弁当箱を閉じ、箸を洗面台で洗ってからトイレを出た。

まだ12時40分だ。あと20分で講義が始まる。

一日は長い。まだまだ続く。 

生きている。

毎日を。毎日。

毎日生きているだけ。

でも、生きているってのは、ものを体に入れていくものなんだな。

情けないな。そんなことを思う。

終われ一日。そう願いながら、僕は毎日を生きている。

 

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