がたり、ごとり。
その音は耳からではなく、足元から、体を通して、響いてくる。
耳が聞いているのは姦しい雑音だ。
早朝の潮騒の音は、たかだか数時間でいともたやすく忘れ去られた。
耳の底で聞こえるほど、聞いてきたと思うのに。
とりあえず、もうすぐ着く。
次の駅で降りて、学校へと歩く。
駅からの道のりは、少々混み合う。
そのため、ようやく自動車の規制が入った。
今までの危なっかしさというのは、想像には難くない。
道路の端を歩け、というのも無茶な話だ。
高校生は青春の代名詞だ。
朝から気分を上げて、眠気を覚まさなければやってはいられないのが学校生活だ。
そのため、歩きながら話をするなら、必然的に横並びだ。
当然、危険だ。
僕は、そこからは少々外れているが。
僕の参加するお話グループというのは、教室でようやく形成される。
理由としては、そのグループの僕以外の構成員が自転車通学であることがあげられる。
自転車は学生で混み合う道路では邪魔者だ。
走り抜けていくならそうでもないが、引いて歩くなんてのは迷惑の極みだ。
だから、列車を降りた後は退屈だ。
その上、人にもみくちゃにされる。
これはもう慣れたけれど。
いつものことを、さも特別なように考えていると、慣性に襲われた。
すし詰めの車内では、転ぶこともないのが幸か不幸か。
空気の抜ける音と、気のないアナウンス。
そして列車は群衆を吐き出した。
ドアの近くで、窓を背に立っていた僕は、まず方向転換をしなければならない。
後ろ歩きというのはリスキーすぎる。
かばんは両手で胸に抱えていたから、すぐさま半回転。
そして、歩く、足を踏み外さないように。
勢い余って転ばない程度に早歩き。
だが、人混みの先頭というのは落ち着かない。
ホームから出たら、うまく群れを躱して後方集団に下がっていく。
寒空の下を歩いていると、冷たい風がたたきつけられた。
暑いとさえ思われた車内。
過剰に温められたこの身には、丁度よかった。
電車は、既に次の駅へ向かっていた。
それを背中の向こうに置き、今日も学校へ歩き出す。
その途中、閉店した文房具店を見、これから文房具をどこで買おうか、と思っていた。
制服と髪色で黒黒とした、けたたましい響きの、冬の道を辿りながら。
僕は歩いて行く。
歩いて、学校に行く。
さぁ、友達に会いに行くんだ。
僕の少ない、けれど大切で特別な、そんな友たちに。
そう思うと、授業への気の重さなんて気にならないくらい、足取りは弾んでいった。