名もない英霊   作:なし崩し

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ツイッターにあげた通り、ちょっと書き直していきます。
はい、設定は大幅に変更されとります……。
駄目だね、はくのんはやっぱりextra勢と一緒じゃないとね。というかコラボ決まったのがうれしくてしょうがないね。キノコさんだし!

こっそり書いてたら骨折しそのまま放置してしまったアッチではくのんにはその内頑張っていただきます。


そして巻きでいくのである。



プロローグ


 金色の腕を剣でなぐ。

 稀に混じっている銀色の腕を舌打ちしながらぶった切る。

 

「あぁ、今日に限って多いなぁ畜生め!」

 

「いいから黙って剣を動かせ……私も早く終わらせて帰りたいんだ!」

 

 瞬間、自身の身体能力が強化される。

 恐らくはステータスの攻撃面が大幅に上昇しているのだろう。

 同時に自身に魔力の譲渡が行われ、宝具解放の準備が整う。

 

「先生さん、防御系もよろしく!」

 

「たわけ、貴様には必要あるまい!」

 

「もうちょっとNP欲しい!」

 

「魔力といえ、魔力と!」

 

 ははははは、と笑いながら目の前に現れた腕を切る。

 ポロリと落とす素材はすぐさま回収。じゃないとまた駆り出されてしまうからだ。

 と、ここで再びステータスが上昇。

 たまに飛んでくる腕の攻撃が痛くもかゆくもない。

 

「よっし、それじゃあ仮想展開するんで先生さん退却で」

 

「貴様、自分だけ安全圏に逃げてからいうことかァ!」

 

 ふはははは、と笑いながら魔力を解放。

 正直、こうやって宝具を展開するのは複雑なので遠慮したいのだ。何せ俺にはこの宝具の真名が分からず、勝手に解釈して仮想展開しているに過ぎない。

 皆が皆、それ鉄の看板だろとぬかす、俺の剣を構える。

 

「そんじゃ、仮想宝具展開、『我輩は猫である(名はない)』!」

 

「相変わらずなんの捻りもないな。それでよく使えるものだ」

 

 そんな声を聴きながら、剣を振りぬく。

 密に込められた魔力は解放され嵐となり、射程圏内の敵を削り取る。すり潰し、引き裂き、粉々に粉砕する。暴風は止まることなく進み続け、敵を補足しては進路を変える。

 

「ぷはぁー、あー、しんど。ねぇセンセ、俺ってば今日は何回目の宝具解放よ」

 

「それを私に聞くのか、お前は……なに、今日はあと三回ほど宝具を開放すれば終わるさ」

 

 そういって先生さんはタバコに火をつける。

 その様になる姿を眺めながら、俺も一つため息をつく。

 

「……毎回思うんだ、種火集めは分かるよ。サーヴァントの強化には必須だからね? でもさ、なんで俺と先生さんの二人なの?」

 

「……宝具の回転率を上げステータスを向上させる私に、自身のスキルで宝具の回転率を上げられるからだろう。おまけに低燃費、継戦能力も高いときた」

 

「半面、俺はサーヴァントのくせに疲れるんだけどな」

 

「この程度であればつかれなどしまい。敵はこの通りただの雑魚だ……回収するぞ」

 

 そういいながら地面に落ちる欠片を回収する。

 金色であったり銀色である大小のそれは、サーヴァントたちの霊基を強化するために必要な素材なのである。そのためこの欠片――種火集めは毎日欠かすことができない。

 

「はぁ、日によって敵のクラスも変わってるんだし、戦いやすさを考えて、適正に合わせてくれれば先生さんだけで済むものを」

 

「安心しろ。それでも効率を考えてお前が抜擢されるのは間違いない。なに、外されそうだったら私が異議を唱えるから安心したまえ」

 

「それやってみろよ、戦争だからな?」

 

 言いながら、俺もまた種火を拾う。

 パンパンに膨らんできた袋を見ると、もうすぐノルマも終わりかなと安堵する。これが偶にマスターが同行してくるとこの程度では終わらない。

 実際、俺と先生さんはマスターが同行していないこの環境で戦っている。それが可能なのもカルデアの電力を魔力に変換し、マスター経由で俺たちに供給されているからだ。とはいえサーヴァント二騎が戦闘を行えばそれなりに電力を割くことになる。そのため低コストで継戦能力の高い俺と先生さんなのだ。

 ここにマスターが入れば俺たちへの魔力供給率は跳ね上がる。そのためより継戦能力が向上し、より長い時間より多くの種火を回収することが可能なのである。こうなるとマスターが満足するまで戦いは終わらない。マスターの護衛に一人サーヴァントを置いて、俺と先生さんは敵の蹂躙に入るのだ。

 

「と、いうかだよ。こんだけ種火集めてるんだから……そろそろ俺の霊基なんとかしてくれも良くない?」

 

「――――うん? まさか、再臨もまだなのか?」

 

 その言葉に、グリンと首を回して先生さんを見る。

 余計なことを言ったかと自分の失言を後悔する先生さんを見るに、どうやら彼はすでに霊基再臨が行われているらしい。どういうことだ、これは。

 

「先生さん、段階はどれくらい?」

 

「いや、うむ、まぁなんだ……もう終わっている」

 

 何やらおかしな発言を聞いた気がする。

 終わってるって何がさ、ああ、一段階目がってことかな!

 

「そういえば先生さん、ちょっと服装変わったよな。見れば、霊基もしっかりしてるし。そういえば一時期、先生さんに似た少年にあった気もする」

 

「あぁ、その、最終段階まで霊基再臨が終わったからな。それと少年なんぞ知らん。親戚でもない、あんな未熟者は」

 

「いや、未熟者て思いっきり知ってるじゃん……」

 

 それにしても衝撃である。

 なんで先生さんだけ霊基再臨が終わってるねん。

 俺は、ねぇ俺は? 一応俺ってば、マスターの初鯖だからね?

 マシュを抜けば。

 

「……はぁ、なんか、落ち込むな、ほんと」

 

 まぁ、俺が後回しにされるのもわからなくはない。

 何せ俺は、出自不明、真名不明、宝具もスキルの正式名すらわからないのだ。

 宝具も仮想展開しかできないし、スキルも何となくこんな効果がある程度しかわからない。そのため宝具もスキルもその効果は大きく減衰しているだろうとはドクターの談だ。

 そして出自不明、真名不明。

 要は、俺には一切、俺が何者であるのかどういう英霊なのかの記憶がない。

 ドクター曰く、マスターに合わせて強引に霊基を削り取って召喚に応じたからじゃないかとかなんとか。確かに当時のマスターは疲労困憊、魔力も残りわずかと限界が近かった。それに合わせて自分を削って召喚されるとか、元の俺はそこまでする男だったのだろうか。

 

「最近は冬木のセイバーもきたし、もう俺のお役御免じゃね?」

 

「住み分けができている以上、問題はあるまい。だが、私も不思議でならない。なぜマスターがお前を再臨しないのか……」

 

 先生さんは顎に手を当て熟考する。

 それで答えが出ればいいけどと、また湧いていた腕を切る。

 

「礼装はソコソコいいの渡してくれるんだけどな。まぁこれも効率のためだろうし」

 

「私の場合は完全にサポート系だがな」

 

「で、アタッカーの俺は未強化と。いや、この段階で限界までは霊基を上げてもらってるけどさ。ここまできてるんだし再臨してくれないかな、ホント」

 

 それでも一応、特異点には同行させるんだよね、マスター。

 今のところ十分に戦えてるけど、敵の強さは徐々に上がっている。恐らく次、聞いた話ではロンドンだったかでは俺も通用しなくなってくるだろう。継戦能力は高くとも一撃は痛いし、宝具なんて以てのほかだ。下手をすれば一撃必殺なのだから継戦もなにもあったもんじゃない。

 

「っと、敵さん集まってきたからもう一発ぶっぱする!」

 

「む、もうか。分かった、支援は必要か?」

 

「あー、取り合えず一発分は自分でどうにかできるかな」

 

 自身に貯蓄された魔力を確認してそう告げる。

 先生さんもそうかと言って魔術による攻撃を開始する。

 

「さぁてと、それじゃあ本日何発目かもしれない宝具展開っと!」

 

 そして再び、多くの腕が光に飲まれた。

 

 

 

 

 そして数時間後。

 目標を達成し先生さんは俺に袋を渡し、さっさと休憩に入ってしまう。

 てめぇ、と思いながらも仕方なく受け取り、マスターの元を目指す。

 

「あぁ、死ぬ……サーヴァントって疲れとかないはずなのに」

 

 あの後、先生さんの予想した回数通り、に宝具を解放した。

 あと何回なんて考えながら戦うのは中々くるものがあった。

 ホント、聞かなければよかった……。

 

「もうさっさと渡して、俺も休もう……」

 

 カルデア内をうろちょろと歩き回り、職員やサーヴァントたちとすれ違う。彼らから向けられる視線は複雑かつ、ちょっとの憐れみを含むものであった。あと厄介ごとだなと確信し近寄るまいとする者。

 そこで一人、お人よしを発見。

 

「――おーい、我らがオカンよ!」

 

「だれがオカンか! ッ、いや、私も忙しい身だ、君に構っている余裕はない」

 

「そういうなって……弓を使わないアーチャーよ」

 

「……今はイメージ回復に努め、しっかりと矢を使っているがそれがなにか? すまないが私はこれから厨房に入る。要件は手早く済ませてくれ。手早くな!」

 

 そういって何故か焦りを浮かべる赤い外套のアーチャー。

 

「いや、ちょっとマスターの居場所を知らないかと思って」

 

「マスターならば今は管制室で次のレイシフトに関しての打ち合わせを行っているところだ。マシュやドクターとともにいることだろう、行ってやりたまえ」

 

 それだけ言うと、アーチャーは急ぎ足で姿を消した。

 そういえばアッチには食堂と厨房があるなと思いつつ先に視線を送れば、そこにはいつぞや対決した黒いアルトリアが両腕を組んで立っていた。同時に俺はアーチャーが急いでいた理由を把握する。

 黒いオーラが、彼女のおなかの状態を表していた。

 

「すまん、アーチャー……すまん! それでも時間を割いてくれるお人よしには必ず報いるから!」

 

 ならば今! とかいう声が聞こえた気がするけど聞こえない。

 無理無理、ハングリーな獅子の前に飛び出すほど冒険家じゃないので。

 後で台所事情の改善をマスターにお願いするから許してくれ。叶うか別だけど。

 そうしてその場を去り管制室へ。 

 すると管制室に入る前にこちらに向かって歩いてくるマスターを見つけた。

 

「あ、セイバーだ! お帰り、種火はどうだった?」

 

「見ての通り、中々集まったぞ。なんか知らないけど、今日はやたら湧いてきた」

 

 言いながら袋を手渡せば、マスターは目を輝かせる。

 まるで欲しいオモチャを手に入れたような子供のようだ。

 見ればマシュも苦笑しながらマスターの後ろに立っていた。

 

「ブリーフィングは終了したのか?」

 

「はい。第四特異点はやはりロンドンとのことでした」

 

「霧がすごいんだったか……スタートメンバーは誰が?」

 

「あ、それなんですが――――――」

 

 マシュが何か言いかけたその時、ポンと肩に手を置かれる感覚が。

 振り返れば手を伸ばし、俺の肩に手を置いているマスターの姿があった。

 

「今回もよろしくね、セイバー」

 

「ごめん、人違いかも。ちょっと冬木の呼んでくるわ」

 

 くるりと来た道へと戻る。

 しかし、そこには既に盾を装備したマシュが立っていた。

 

「すみません、こうなるだろうからと……」

 

「マシュが守るのは取り合えずマスターでいいから。俺の撤退ルート塞ぐ必要ないから」

 

 しかし無情。

 こうなれば先には管制室という行き止まり。

 後ろにはマシュによる城壁。

 無理。

 

「燃費よし、宝具も使い分け可、そしてクラスによる相性も問題なし。おまけに戦闘能力も申し分なし。ドクターも推してたよ。クー・フーリンとで迷ってたけど」

 

「じゃあクー・フーリンでよくない!?」

 

「残念、相性の問題があったり。マシュにセクハラするからね! 令呪一画なくなっちゃうよ」

 

 いや、令呪で何するつもりなのか。

 セクハラに対して令呪とか、後輩への愛情すごい。

 

「その点、他の女性サーヴァントが、セイバーならそんな度胸ないでしょって」

 

「……女神か、あの女神どもか!」

 

「ううん、マルタ」

 

「――――――姐さんかぁ」

 

「……それ、本人の前で言っちゃだめだよ? タラスクと一緒にボコボコにされちゃうから」

 

 その光景を想像して背筋が震える。

 なんであの人、いや、よそう。

 

「で、結局セイバーにってなったんだ」

 

 まぁ、そういうことならと思わなくもない。

 しかしだ、先ほど先生さんと話したように俺も限界を感じつつある。

 

「でもマスター。もうマスターも分かってるだろうけど、そろそろ俺の霊基じゃ限界だぞ? 敵は強くなってるし、どんなサーヴァントが敵にいるかわからない。万全を期して、先生さんを始めとした高レベル組でパーティーを組むべきだ」

 

「そうなんだけど……でもスタートメンバーは一気に連れて行くと負担がすごいし、最悪の場合騒ぎになっちゃうし、やっぱりセイバーが安定だと思うんだ」

 

「ならやっぱり冬木のオルタだな。召喚ポイントを設置するまでなら、十分にセイバーオルタとマシュでマスターを守れる。オルタならすでに高レベル組だし、ステータスも整ってるだろ?」

 

 そういうと、マシュのところに言ってヒソヒソと何か会話をし始める。

 さてはて、納得してくれたのか。それとも何か企んでいるのか。

 ぶっちゃけ俺も一緒に行くのがそこまで嫌というわけじゃない。俺が嫌なのは、信用されているのにその期待を裏切ってしまうことだ。セイバーなら大丈夫と信頼されても、その実力が本当にその場に見合ったものか俺にも分からない。記憶もない俺が、これから先もやっていけるかの自信はない。

 だったら最初から、実力のハッキリしてる奴らを連れていくべきだ。

 

「やっぱり、それしかないのかな……」

 

「はい。ドクターもおっしゃっていたように、セイバーさんの危惧はもっともです。それでもセイバーさんを連れて行くのなら、やはり必要なことかと」

 

 どこかマスターの表情に影が見える。

 何かを迷っているようで振り切れない、そんな顔だ。

 いつか、どこかで、あんな表情を見たことがあった気がする。

 

「しょうがない、か。もしもなんて言ってられないもんね」

 

「……はい。おと――セイバーさんを信じましょう」

 

 マスターはよし、を頬を叩く。

 少し赤くなってるなと見ていると、マスターに手を差し出される。

 はて何かと様子を見るが動く気配はない。これは手を貸せという意味なのか。

 少し迷いながら手を差し出せば、マスターの手が俺の手をつかむ。

 

「大丈夫、まだ大丈夫。だってまだ霊基一段階目だもんね。二段階目くらいじゃ……まだ……」

 

 そんなことを呟きながら、その視線が俺に向けられる。

 純粋無垢、あまりにまっすぐなその瞳がしっかりと俺を捉えていた。

 

「約束しよう、セイバー」

 

「約束? 別に構わないけど、スタートメンバーとそれとになんの関係が?」

 

「はい指切りげんまん嘘ついたらハリセンボンのーます! 指切った!」

 

「え、今の発音は針千本? ハリセンボン? いやどっちにしろおかしくない? 俺ってば約束の内容聞いてない、聞いてないんだけど! そして重いな罰ゲーム!?」

 

「あはは、大丈夫だよ。セイバーが約束を守ってくれれば」

 

 そういって俺の目をのぞき込んできたマスターの目は、欠片も笑ってなどいなかった。同時に、どこかジトと含みのあるマシュの視線が頭から離れなかった。

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