「ここが、私の家や」
ボクは今、はやてさんの家に来ています。
「さ、今日は新しい家族が来たお祝いや。おいしい物いっぱい作るで」
こうなった経緯は三十分ほど遡り……
~約三十分前・病院内~
「それにしても、ホンマ驚いたで?」
「?」
「なんとな~く寄った公園で子供が倒れてるんやもん。周りには誰もおらんし、私じゃ運べないしなぁ」
石田先生がくれたお茶を飲みながら、はやてさんの話を聞く。
「そうや、倒れてたときに一緒に見つけた時計とブレスレットは私が預かってたんや。あなたのやろ?」
はやてさんが差し出したのは、先程まで探していたイルとあの時、男の人から渡された不思議な時計だった。
「ぁぅ……(イル、よかった。目が覚めたらいないからびっくりしたんだよ?)」
「(ソーリー、マスター。私だけの力ではどうすることもできませんので)」
「(分かってるよ。それより、あのときみたいに通訳することってできる?)」
「(できますが、彼女たちは一般人です。あまり魔法のことは知らない方が良いかと思いますが)」
そう言えば、今まで会った人はみんな魔法関係者だっけ?
いきなり、ブレスレットがしゃべったらびっくりするよね。
「(そうだね。でも、そうするとどうやって話したらいいのかな?)」
「(そうですね。……手話などはどうでしょうか? 一通りの知識は私の中に入っておりますが)」
「(じゃあ、簡単に教えてくれる?)」
「(イエス、お任せください)」
石田先生とはやてさんが話している間にイルとの会話を終わらせる。
なんとか、伝えるすべはできたけど、二人が手話の意味を知っているかが問題だ。
「そうや、名前まだ聞いてなかったなぁ。なんて言うん?」
{手話は、分かりますか?}
「へっ?」
イルに教わりながら、手話を使って会話を始める。
はやてさんはいきなりで驚いたのか、知らないのかは分からないが、いきなり手を動かし始めたのを見てびっくりしたようだ。
「手話が使えるのね。大丈夫、私が知っているわ」
{良かったです。生まれつき声が出ないので}
「そう。大変だったわね」
石田先生が頭を撫でてくれる。
人に撫でられるのは何年ぶりなんだろう。
「じゃあ、早速名前を教えてくれる?」
{はい。ボクは琴音と言います。綾咲琴音}
「琴音君ね。お母さんとお父さんはどうしたのかな?」
{二人ともいません。今はボク一人です}
「えっ、そうなの? ごめんなさい」
{いえ、大丈夫です}
本当はボクが作られた存在だからいないんだけど……
あれ? そうなると、あの研究者さんがボクのお父さんになるのかな?
「先生だけ話してずるいわ。私も話したいのに」
「あら、ごめんなさい。でも、はやてちゃん手話分からないでしょ?」
「うぅ……そうですけど。でも、ホンマずるいわ」
ずっと、横で黙っていたはやてさんもさすがにくたびれたようだ。
「そうや、琴音君。今一人暮しなん?」
{ええ、そうですね。一人です}
「一人暮らしだそうよ」
「じゃあ、何かの縁や」
はやてさんはボクの手を取って。
「私と一緒に住へん?」
「ぁぅ……?」
「私も一人やから寂しかったんよ。なっ? ええやろ?」
「それはいいわね。はやてちゃんも一人じゃ大変だったし、どうかな?」
「………(コク」
ボクとしては、願ってもないことなので、すぐに承諾してしまった。
でも、よく考えると、まだ小学生(たぶん)とはいえ年頃になったら後悔しないだろうか。
「ホンマ! やったー! 新しい家族や!」
「(でも、こんなに嬉しそうだし、いいか)」
そして、冒頭へ戻る。
~現在・八神家~
「部屋はここな。元々お父さんが使った部屋なんやけど、そこまで物は置いてないし、好きに使ってかまわへんで」
はやてさんの両親は事故で亡くなったらしい。
今は親戚のおじさんに援助してもらって生活してるとか。
「後はお風呂とトイレくらいかなぁ?」
家の中は一通り案内してもらった。
はやてさんのためにバリアフリーになっていて、一人だったせいか、部屋の中が広く感じた。
「お昼食べたら、服も買いにいかなあかんね。フフッ、今日はやることがいっぱいや」
「ぁぁ……」
「大丈夫、つらくないよ。逆に楽しいわ」
「ぅ……?」
「今まで一人やったからなぁ。新鮮や」
手話も覚えんとなぁ。と言いながら楽しそうに笑っている。
「(まあ、楽しいならいいか)」
こうして、ボクの八神家での生活がはじまった。
琴「手話って、作者はできるの?」
作「自分の名前ぐらいしかできないよ?」
琴「だと思った」
作「この先何回手話が出てくるかな?」
琴「あんまりないだろうね……」
作「まあ、先のことは書いてみないとどうとも言えないんだよね」
琴「あまり出ることに期待しないでいますよ。次回をお楽しみに」
作「あ、台詞とられた……」