インフィニット・ストラトス 『罪の王冠』(リメイク版)   作:超占時略決

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第2話 イレギュラーは青い雫の怒りを買う

Side 桜華

 

僕の自己紹介が終わり、千冬さんの有難いお言葉(自己紹介の駄目出し)と鉄槌(手に持つ黒い板、出席簿による叩き)が終わると、次の予鈴が鳴るまで自由時間となった。

与えられた席に座ると、もう既に一夏が机の横を陣取っていた。因みにだけど、僕の席は一夏の席の四つ後ろだよ。そして、一夏の存在に前の席の女の子が驚いている。

 

「桜華!助かったぜ!桜華が来てくれたお陰でだいぶ気が楽になったよぉー。ところで、その右腕どうしたんだ?」

 

一夏はあいかわらず変わらない。まあ、二週間では変わりたくても変わらないか。次々に言葉を繰り出してくるから全部に返答するのがちょっと億劫だ。今は特に、鬼に見せられた地獄のせいで神経をすり減らしているからね。

けど、やっぱり一夏は気づくよね。そりゃそうか。一夏は右腕のことすっごく気にしてたもんね。何回も気にしなくても良いよって言ってるのに一夏って奴は…

 

「その話は後でするよ。それよりさァ一夏ァ、君のせいで僕は大変な目に遭ったんだァ?一発だけ殴らせてくれないかなァ?」

 

相当神経をすり減らしているみたいだ。語尾が何だか片言になっている気がするし、疑問符がやたらと多い。

 

「ご、ご愁傷様…俺が何したか分からないけど許してくれよ?な?」

 

「だいたい一夏があの時ーー」

 

「少しいいか?」

 

僕の細やかな愚痴の発散を遮ったのは後ろ手に艶のある長い黒髪を一つに結ぶ、キツい印象を与えるつり目。そんな特徴の幼いながらも綺麗な女の子だった。

 

「おう、箒か。久しぶりだな!」

 

僕の知らない一夏の知り合いみたいだ。まあ、一夏の家に居候したのも二年前だし。知らないのも無理はないか…

 

「お、覚えてくれたのか!?一夏!」

 

「おう!箒は全然変わってないな。一目見て分かったぜ!」

 

「そ、そうなのか!い、一夏は格好よくなったな…それより少し外で話さないか?」

 

あっ、分かった。この子、一夏に惚の字だね。だって、さっき小声で格好よくなったって褒めたからね。

僕はまた、一夏の鈍感青春ラブコメに巻き込まれるんだろうなぁー。何時もは僕以外にも後二人巻き込まれたけど、これからはそれが僕一人だけ…死なないようにしよう。

 

「桜華がーー」

 

「行ってきなよ」

 

僕は一夏が言う台詞を予測して即座に否定する。

僕の事は放っておいて、二人でイチャイチャしてくると良いよ。そうして、お願いだから僕の知らない所でゴタゴタして、ね?少しでも知っちゃうと性分で助け船を出したくなるから、ほんっとにお願いします。

 

「良いのか?」

 

「うん、見た所昔の友達だったんでしょ?二人で積もる話もあるよね?」

 

「そうだな、ありがとう!桜華、じゃあな!」

 

「い、一夏!早く来い!」

 

「分かってるって!待てよ、箒!」

 

さっきの女の子を追って一夏は教室の外に出ていった。

ふーぅ…ぼ、僕を見る目が凄い怖かったよ…やっぱり、一夏に惚の字の女の子は怖い。だってさ、一部例外を除いてどの子も男の僕に対しても敵意が半端ないんだよ。

あっ、今思えばこの教室には僕が一夏を行かしたせいで、僕しか男が居ないんだよな…ちょっとミスったかな?

まぁ、あの子の敵意に耐えることを考えると今の方が…いや、全くもってそんなことないよぉ!皆僕をめっちゃ見てくるからすっごく気まずいっ!特に、前の席の子の視線がぁ!?

そろそろ疲労困憊でぶっ倒れそうだし、よし!そうと決まれば寝よーー

 

「少しよろしくって?」

 

何かいかにも貴族か偏った思想を持った人が話しそうな口調で今時間ある?的な事を聞かれた気がするけど…きっと僕じゃないはず、だよね!うん、そうだよ!僕みたいなのに話しかける酔狂な人なんて居ないよね。だから、このままスルーしても大丈夫なはーー

 

「少し、よろしくって!」

 

やや怒気を含ませた物言いに変わる。

絶対僕だよなぁ。はぁ、この手の輩は女尊男卑主義者って相場が決まってるから、出来たらスルーする方向で行きたいんだけど…無理そう。

だってさ、近くで高速でトントントントン…イライラしてる証拠だもんね。

この場を切り抜ける手立てがない僕はノロノロと顔を上げる。

すると、僕前の席の女の子を立ち退かしたのか金色の髪を細く長い手で払う、全てを飲み込むような澄んだ青の瞳。それに映える潤いのある白い肌に、チラリと覗かせる蒼のイヤーカフス。欧州のお姫様を彷彿とさせるような女の子が仁王立ちしていた。

 

「ぼ、僕ですか…?」

 

「まあ、何ですのそのお返事は?私に話しかけられるのだけでも光栄なことなのですから、それ相応の態度というものがあるのではなくって?」

 

「は、はい…ごめんなさい」

 

はぁ…この人、やっぱり予想通り女尊男卑主義者だよ。しかも、相手にするのが面倒なタイプのヤーツ。これはもうどうしようもない。

ていうかこの子、さっきまで隣の席に座ってなかったっけ…?ふ、不安だよぉ、これからの学園生活ぅぅ。

 

「貴方!さっきから何わたくしのことを無視していますの!」

 

「は、はい!ごめんなさい!」

 

無視されてるって自覚あるんなら、しつこく話しかけてこないでよ。まぁ、無視したのは悪いとはちょっとだけ思ってるから、形だけでも謝っとくけどさ…

 

「これだから男というのは…」

 

うん?待てよ。もしかしてだよ?この人がメディアに出てるような、(僕は知らないけど)有名人だったらどうしよう…?

 

「あの、すみません!」

 

「何ですの?」

 

「お名前をお伺いしてもいいですか…?」

 

おそるおそる名前を伺うとや、やばい。眉間には皺を寄せて顔を真っ赤にし始めたよぉ。さっきまでの垂れ目がウソのように釣りあがっているし、地雷踏んだかなぁ…?

 

「知らない!?イギリス代表候補生で入試主席のこのわたくし!セシリア・オルコットを知らないですって!!」

 

「はい!ごめんなさい!」

 

ほんとに有名人みたいだった。イギリスの、しかも代表候補生だったら殆どの人が雑誌のモデルとかやってるし…これは、ほんとに申し訳ないことをしたなぁ。

 

「さっきから貴方はごめんなさいごめんなさいって!だいたい貴方のような男がーー」

 

キーンコーンカーンコーン…

 

予鈴のチャイムが鳴ったみたいだ。時計を見ると授業が始まる五分前を切っている。

 

「くっ……覚えておくってよ!」

 

オルコットさんはズカズカと大股で自分の席へと戻る。まぁ、僕の隣なんだけどね。だからかな、すっごい気まずい!

まぁけど、予鈴に救われた…危ない所だったよ。もうちょっと時間があったら、僕が彼女に粗相をしてしまって怒り狂わすに決まってる。

もうさ、何て幸先の悪いスタートなんだろう?こんなことなら一夏を行かせなかった方が良かったかなぁー?

ほんと、この学校で僕はやっていけるのかなぁ…不安だ、不安で体が押しつぶされそうだよ…ぐすん。

どれもこれも一夏がISを動かしたせいだ。一夏、僕は絶対に許さない。例え君が泣いて謝ってもだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業開始のチャイムが鳴り響き、IS学園での初めての授業が開始される。副担任の山田麻耶(やまだまや)先生が教壇に立って教鞭を振るっている。

この人、容姿がすっごく幼い。セーラー服とか着たら学生にしか見えないレベルで。でも、そんな山田先生は教え方が凄く丁寧だった。そのおかげで、千冬さんに詰め込まれた知識が定着されていく。

分からないことがあったら、絶対山田先生の所に行こう!間違っても千冬さんの所にでも行かない。だって、あの人の教え方は鬼もビックリのスパルtーー

 

スパァンッ!

 

「集中しろ」

 

「…はい」

 

これ以上は心の中でも悪態をついちゃいけないみたいだ。はぁー、こう思われるのが嫌ならもうちょっと優しくしてくれたら…いや、優しい千冬さんなんてき…おっと、これ以上は鉄槌が下るね。

今は千冬さんじゃなくて山田先生だよ。山田先生の授業はさっきも言ったけど分かりやすい。それは良いよ、素晴らしいよ。

だけどね…その、山田先生の声が、ね。心地よいのよ。これもさっきも言ったけど、疲労困憊で僕ちんぶっ倒れそうなの。それに耐えながら話を聞いているんだけど、山田先生の優しい声音は眠気を我慢する意識を破壊していくんだ。

今から言い訳タイムに入るけどね、はっきり言ってこの一週間、本当に生きた心地がしなかったんだ。僕がぼけーっとしてたり居眠りをしようとした時に、千冬さんは僕に愛の鞭を与えてくださった。

愛の鞭ってのは具体的に言うと、やり方は知らないけど、参考書を文字通り鞭のようにしならせて叩いてきたよ…あんな分厚いのをしならせるってよく分からないけど、千冬さんはやってのけた。すごく痛かったです、はい。

後ね、僕が勉強させられてた場所がもうすんごいの!すんごいの!

それはね、まず窓がない。そして、ベッドや布団がない。えっ?てなるよね?千冬さんに聞いたんだよ。「ぼ、僕はどこで寝るんですか?」って。

 

「お前に寝る時間があるのか?」

 

この時にはもう悟ったよ。ほんとに限界まで勉強をやらされるって。結果として、僕は五回ぶっ倒れて、六回目がきそうな所でここに運び込まれた。

因みにだけど、風呂にはぶっ倒れた後とここに来る前に入らせて貰いました。

そして、何よりも辛かったのはその時のご飯は全部レトルトだったんだ…理由、そりゃあ千冬さんが家事全般出来なーー

 

パシィンッ!

 

「それ以上は駄目だ」

 

「そ、そうですよね…」

 

頭にどれだけ激痛が襲おうとも、眠気が晴れる事はない。僕は今、そんな境地にいる。こ、これが悟りなの…?

 

『いやいや、そんな直ぐ悟り開けたら宗教は要らないからね?』

 

か、神様ァ!神様の力でどうにか僕を元気に…神様ァァァァァァァ!!

白い髭を長く伸ばすつるっ禿げの神様は、雲の上に胡座をかきながら『ふぉっふぉっふぉ』とか言っている。くそぅ、羨ましい…

ハッ!?やばい、本格的に意識がフライアウェイしちゃってたよ…危ない危ない。

そうだ、一夏はどうしてるのかな?一夏も僕と同じでISに全く興味がない系男子だから、この授業についていけてるのか不安だなぁ。

首を横に動かして前の子の肩より上の空間で一夏のほうを見てみると、一夏は汗を流しながらぶるぶる震えたり、キョロキョロしたりしている。

すごく目立っているし、気持ち悪い。絶対、何かやらかしてるね。お腹痛いとかそんな安直なやつとかじゃなくて、もっとええっ!?てなるやつ。

 

「織斑君、何かあったんですか?何かあれば何でも聞いてくださいね!何だって私、先生ですから!」

 

山田先生と何秒か見つめ合った後、一夏は勢いよく立ち上がってこう言った。

 

「せ、先生!授業が全く分かりません!!」

 

「ええぇ!!」

 

一夏はほんっとさいっこうだよー!やっぱり、一夏はやらかしていたんだね…皆の予想の遥か上をいくポカを。

 

「え、えーっと、今の段階で分からない人はいますか?」

 

しーん…僕を含め一夏以外誰も手を挙げる気配がない。まぁ、そうだよね。だって、今やってる所は参考書の最初の数ページだから、ここが分からない人なんて入試受からないからねー。

それで、一夏は何で僕をそんな意外そうに見ているのかな?理由は分からないでもないけど、流石に失礼じゃないかな?

 

「織斑、入学前に配られた参考書は読んだのか?」

 

千冬さんが一夏に近づきながら言う。さて、一夏はどんな返答をするのかな?僕の予想だと「読んでみたけどとても日本語とは思いませんでした」とかかな?

 

「えーっと、◯ウンページと間違えて捨てました」

 

スパァン!

 

まさかの捨てちゃったパティーンね!ほんと、一夏はすごいよ。あんなにデカデカと必読って書いてあるのに捨てるって、一夏は人の予想を上回る天才だ。

 

「後で再発行してやるから一週間で覚えろ」

 

「ええっ!?あの分厚さのやつを一週間でなんてーー」

 

「やれと言っている」

 

「はい……」

 

千冬さんの言弾が一夏の言葉を撃ち抜いて論破ァ。一夏、あれを一週間で覚えるのはほんとに大変だよ。だからね、君も味わうと良いよ!そして、嘆くんだ!非情な現実になぁ!!

 

ゴツんっ!

 

「真面目に授業を聞け」

 

千冬さんや、流石にグーは駄目だと思いますよ?頭が陥没したらどないすんねん?

 

「陥没しない程度の威力で留めている」

 

アッハイ。うん?さっきからずっとだけどさ、千冬さんナチュラルに僕の心を読むの止めてくれません?それに、心が読めるなら関西弁の所をサラリと無視しないで下さい。ツッコンでください。

 

「山田先生、少し時間を貰えないか?さっきの時間に決めなければならない事を今思い出してな」

 

「はい、分かりました」

 

そう言うと今度は千冬さんが教壇に立つ。千冬さんが教壇に立つと、クラス内が妙な緊張感に包まれる。その空気に飲まれて、僕の心臓はドキがムネムネーしている。

 

バシィインッ!

 

「ごほん、再来週にクラス代表戦が行われるのは知ってるだろう。これから、そのクラス代表戦に出る者、つまりはクラス委員長だな。それを今から決める。尚、自薦・他薦は問わない。

誰か意見のある奴はいないか?」

 

「はい!織斑君を推薦します!!」

 

「千冬様の弟だからきっと立派にやってくれるわよ!」

 

「私も!!だって格好いいし!」

 

皆さん?さっき千冬さんが僕目掛けて出席簿をブーメランのように投げたのはスルーですかそうですか…今の、結構痛かったのにね。

それにしても、一夏はご愁傷様だねー。ほんとに可哀想ー。もうまじどんだけースッカラケッチー。

 

「私はゆずリン、杠君を推薦しま〜す」

 

教室の中で委員長は一夏で決定って流れに一石を投じる人が居た。その石はゆずリンってあだ名の杠君らしい…

って、それ僕じゃないかっ!?何で!?これが新手のイジメかぁ!?そして今、僕をゆずリン呼ばわりしたのは制服を改造して何故か異様に袖を長くしている女の子だった。

その子は目が合うとはにかんでくる。いや、可愛いとは思うよ?けど、君がやった行為は絶対に許さないからね。

 

「私も杠君がいい!だって謎だし!!」

 

「男なのにピンク色の髪の毛とかないよね〜」

 

「そう!ほんとそれだよねぇ!」

 

「前髪で目を隠してるし、ちょっときもい!」

 

ほら、軽い口調で僕を貶す発言が飛び交うー。まぁ、こんなレベルの悪口なら痛くも痒くもないんだけどね。

だから、そんなオロオロとするのは止めようね?おじさん、さっきの事は水に流すから、ね?だから、泣くのは我慢しよ。

えっ?もう許すのかって?そりゃあ、女の子に泣かれる事に比べたらねー。僕ってマジチョロい。

 

「候補者は織斑と杠か、他には居ないか?」

 

はぁー。取り敢えず、この場は静観するかな?ボーッとしてたら候補者が出揃って誰が候補者(クロ)かを決める投票ターイムになるでしょう。

あ、あれ…首がカックンカックンして来た。こ、れ…本格的に、駄目な、やーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……り……か…」

 

誰かが甲高い声でピーチクパーチク鳴いている気がする。まぁ、僕には関係のない話。どうせ、この微睡みから直ぐ熟睡に移行するんだから。

 

「ーーいていますの!杠桜華!!」

 

うん?僕が呼ばれている?いや、でもなぁー。どうせ、無視してたらその内諦めるだろう。おやすみー。

この時、僕は完全に忘れていた。さっきの休み時間に僕が無視してることを自覚しながらも、何度も声をかけてきた女の子のことを…

 

「聞いていますの!?杠桜華!!」

 

「は、はい!!」

 

「痛っ!?」

 

鼓膜が破れそうなレベルの怒声に思わず起立してしまった。何故か側頭部と耳が痛いんだけど何でかなぁ?

それに、声が聞こえてきた方を見るけど誰も居ない…ふむ、成る程よく分からん。

 

「あ、貴方ねぇ!急に立ち上がったら危ないでしょう!!本当に痛いですわぁ!?」

 

視界を下に向けると、鼻を押さえて涙目のオルコットさんがしゃがみこんでいる。

もしかして、僕の耳を引っ張って大声で僕を呼んで、突然立ち上がった僕の側頭部と鼻がごっちんこしたと…

 

「ご愁傷様だね」

 

「あ、貴方ねぇ!」

 

オルコットさんはゆらゆらと立ち上がり、僕の頬に手を伸ばす。優しい手つきで頬を撫でたかと思うと、力一杯頬を引っ張った。

 

「い、痛い!痛いよ、オルコットさん!」

 

「貴方が私の話を聞かなかったのが全部悪いんですわ!貴方達二人にわたくしが決闘ですわ!っと言ったんですのよ!」

 

「け、決闘?」

 

一体どんな流れでこの話が決まったんだろう?理解がまるで追いついてないんだけど。

オルコットさんは「貴方達二人にわたくしが決闘ですわ!」と言っている。貴方達二人?僕と一括りにされるとしたら…同じ性別の一夏だよね?

 

「え、一夏は受けるの?」

 

「おう、勿論だ!男の意地を見せてやろうぜ、桜華!」

 

一夏がやる気に満ち溢れていてかなりウザい。そして、一夏の周りの席に座ってる女の子の目が、ハートの形になっているのはきっと気のせいだ。

一夏は駄目だ。こういう時に頼りになるのは千冬さんに決まっている。千冬さーん、ほんとに決闘なんて僕達にさせるんですかー?

千冬さんは首を縦に振る。Oh…マジですか。えー、決闘って絶対ISに乗ったバトルでしょ?百パーセント惨めに負けるに決まってるじゃないか…

だってさ、相手は代表候補生のオルコットさんだよ?代表候補生の名は伊達じゃないんだよ?

 

「お、織斑先生、拒否権ってありますか?」

 

「ない。お前のISは不明な点が多過ぎるから、データ取りのために断ることが出来ない」

 

「はい…分かりました」

 

僕の専用機のはずなのに拒否権がない件。

そして、この問答を聞いたクラスの女の子が一人、手を挙げて千冬さんに質問する。

 

「あ、あの!杠君は専用機持ちなんですか?」

 

「ああ、杠は専用機持ちだ」

 

この言葉の直後、クラス中がざわめき始めた。だ、だよねー。僕の存在は今の今まで隠されていたはずだし、そんな謎だらけの男がしかも専用機持ち…これはある事ない事言われるぞ!

 

「貴方も専用機持ちだったんですのね。これで条件は対等ですわね」

 

「は、はい…そうですよね」

 

思わずそう返答してしまったけど、まさかオルコットさんは専用機持ちってこと…終わった。もう絶対負ける。

ISは中枢を担う核の部分が四六七個しかないから、ISの数も四六七個以上には増えないんだよ?その内、イギリスに配布される数は十分の一にも満たない数の、更にその一個を預かるなんて、相当の実力がないとなれっこない。

 

「では、一週間後に場所は第一アリーナで織斑・オルコット・杠はクラス委員長を決めるために闘って貰う。各自準備しておくように」

 

新生活がスタートしてまだ半日も経っていないのに、僕は大嵐に飲み込まれたみたいだ。こうなった以上、僕にはどうする事は出来ない。

大嵐に飲み込まれたものはその流れに身をまかせるしかない。僕は重い口を開けて「はい」と返事をした。

 

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