インフィニット・ストラトス 『罪の王冠』(リメイク版)   作:超占時略決

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第3話 生徒会長見参っ!

Side 桜華

 

決闘という名の強制イベントが入った事以外は滞りなく授業は進み、今は昼休み。

少しの間だけど眠れたから、僕のおメメはぱっちりだよ!いや、眠たいことには変わりないけどね。

そんな僕だけど、一夏に連れられて食堂に来ています…食堂のぼくぅー!

はいっ!こちら、食堂となっております!内装から漂う高級感、良いですねぇ。そして、何と言ってもこの部屋の広さが他の学校とは大違いですね!大学の食堂と同じ規模じゃないでしょうか。

それに、見てください!紙ナプキンが、各テーブル毎に、あるっ!これはもう…言葉が出てきません。現場からは以上です。

はい、食堂の僕ありがとう。なんちって、現実逃避はここまでにしとこうかな。現実ってのは逃避するためにあるんじゃなくて、受け止めるためにあるんだから。良し、一っ、二の!

 

ギロッ!!

 

うん、やっぱり無理!そんなガン見しなくても…僕達は逃げないよ?寧ろ見過ぎた方が逃げちゃうよ。はぁー、これからこんな生活が続くのかぁ。涙がちょちょぎれてきたよ。

 

「桜華、紹介するぜ。こちら篠ノ之箒。俺が昔通っていた剣道の道場の娘さんで、去年剣道の全国大会で優勝した凄い奴なんだよ」

 

一夏は数多くの視線が突き刺さるも、物怖じ一つせずに話を切り出す。一夏ってメンタル強いのなー。

 

「い、一夏!その話はいいだろ!ごほんっ、篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

 

「ゆ、杠桜華です。よろしくお願いします。篠ノ之さん」

 

篠ノ之さんから差し出された右手を握る。ただの握手なのに、篠ノ之さんの目は一点しか見ていない。その一点は…僕の右手だった。

 

「あー、右(・)手(・)ですか?」

 

「あ、ああ。その腕は義手なのか?」

 

「そうそう、俺も気になってたんだよ。その腕は何なんだ?なんか神経が何とかってやつで義手は付けれないって言ってなかったっけ?」

 

そうだったね。篠ノ之さんは疎か一夏にさえ右腕の事は説明を先送りにしてたっけ。タイミングも良いから、今話しちゃおうっと。

 

「確かに僕の右腕は神経が断絶しちゃったから義手をつけても動かせないって言われてたね。

けどね、実はこれ、ISなんだ」

 

「「えっ!?」」

 

だよねだよね?驚くよね?驚いちゃうよね?だって、僕も驚いたもん。これに気づいた時は「イヤァァァァァァ!!」って叫んじゃったからね。

 

「僕が初めてISに触った時にこうなったんだ。しかも、どうやっても取れないしさ。

まぁ、これはこれで結果オーライだよ。感覚が生身の腕とあんまり変わらないしね」

 

「そ、そうなんだ…」

 

僕達の間に微妙な空気が流れる。そりゃあこんな話をしたら気まずくなるよねぇ。サラッと言った割にはヘビーな話だし。

こういう時は、戦線離脱ぅー!

 

「てことで、ごちそうさまっと!僕は先に行くよ」

 

見られてるせいであんまり食欲がなかったから、今日は惣菜パン二つだけにしたんだよね。それが功を奏して、ちょっと急げば直ぐに食べ終わる。

 

「お、おう…またな、桜華」

 

「後は、二人で親睦を深め合ってよ、ね?」

 

一夏の暗い言葉に軽口で返す。

 

「し、親睦を、深め合うだと…!」

 

「え、何言ってんだ?桜華」

 

一夏よ…篠ノ之さんの気持ちを少しは察してあげて。僕の言葉一つであんなに慌てふためくんだよ?

だから、早く篠ノ之さんと告白するなり付き合うなり結婚するなりしてよ。そして、早く照れ隠しで僕を睨む篠ノ之さんをどうにかして下さい…怖いよぉ、ぐすん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪〜」

 

食堂を離れた僕は今、ぶらぶらと校内を口笛を吹きながら歩いている。この余った時間をどうしようかな…?

正直、教室で寝るって案が一番有力なんだけど、今から教室に行って寝ても十分そこらしか寝れないだろう。それに、オルコットさんみたいな人に絡まれる可能性も否めないしねー。

 

「ここに自販機があるんだね」

 

ちらりと見えた白い光を放つ大きな箱。自販機はIS学園の景観を崩さない色合い、白を基調に青くメーカーの文字が書かれている。

そして、商品欄には細長い缶に斜体でMiと刻まれたコーヒーがある。こ、これはまさか…Miコーヒー!?

Miコーヒー。それは、薄味で微妙に甘いコーヒー。「まぁ、美味しいとは思うけど…そんなにハマって飲むか?」と一夏に言われたレベルの味である。僕だってそう思う。

だけど、この計ったような物足りない感が好きなんだ。これこそまさに、大量生産で作られる商品だよ!Miコーヒー最高ッ!!

心の中で熱くMiコーヒーの魅力を語りながら自販機に近づいていると、腰の辺りに突然衝撃が襲う。多少フラつきながらも衝撃に耐えると、今度は腰に何かが巻き付けられる。

 

「ゆずリン、ゲッチュだぜ〜」

 

下を見るとどうやら人みたいだ。それにこの微妙なあだ名、絶対袖がだぼっとしてた子だよね。

しかもその台詞、色々混ざってるからね?ポケ○ンなのかサ○ゲッチュなのかハッキリしてよ…

 

「あ、あの…同じクラスの人、ですよね?」

 

「さっきはごめんね〜。あんなことになるとは思わなかったよ〜」

 

「良いですよ。僕はもう気にしてませんから」

 

決闘のことは気にしまくってるけど、それはこの子のせいじゃないしね。しかも、さっきのことは許すって決めたしね。

それにしても、何で僕に抱きついてきてるか未だに理解できないけど、悪いって思ったことはちゃんと謝る事が出来る…この子は良い子だね。

当たり前のことなのは分かってるけど、今の世の中女性の立場が男性より上だからね。こんな当たり前の行為が出来ない輩が増えてるんだよね。全く、困ったものだよ…

 

「ありがとう〜。私はね〜、布仏本音って言うんだ〜。よろしくね〜、ゆずリン」

 

やっと僕を解放してくれた布仏さんは、僕の前でくるんっと一回転して自己紹介する。

 

「よ、よろしくお願いします、布仏さん。で、そのあだ名はどうにかなりませんか?」

 

「ゆずリンはね〜、ゆずリンだよ〜。ダメかな〜?」

 

そ、そんなうるうるした目で僕を見ないでくれるかな?断りずらいでしょ…

 

「駄目、じゃないです…」

 

僕は結局断ることが出来なかった。だってさ、女の子の涙は男の子の弱点なんだよ?勝てるわけないよ。

 

「ところでさ〜、ゆずリン。ちょっと付いてきて欲しいんだ〜?」

 

さっきの涙は嘘泣きですか?正直、引くっていうか怖いです…女の子ってマジ怖い。

 

「ど、どこにですか?」

 

「生徒会室〜」

 

「は、はぁ…」

 

僕は曖昧な返事しか返すことが出来なかったんだけど、布仏さんは了承と受け取ったみたいでぬるぬると歩き始める。

どうやら、ついていく選択肢しかないみたいだね。まぁ、行くあてがないから良いけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんこんっ

 

「しつれ〜しま〜す。おじょ〜さま〜、連れてきたよ〜」

 

布仏さんがノックを2回して生徒会室に入る。僕も布仏さんに続いて生徒会室に入ると、机に置かれている大量の紙媒体の書類。各机には役職が書かれてある札がある、普通の生徒会室だ。

そして、部屋の奥には生徒会長の札がある机に陣取る、水色の外にハネている癖っ毛。色白の肌に映える深紅の瞳。その女の子は顎に手を置いて座っていた。

 

「ご苦労様、本音」

 

「ケ〜キケ〜キ!!」

 

布仏さんがさっきとは違って俊敏な動きでとある場所に止まる。そこにある白い箱、冷蔵庫から取り出されたのはショートケーキだった。

 

「冷蔵庫?何で生徒会室にあるの…?」

 

「君が杠桜華君だね?」

 

えっ?冷蔵庫のこととか布仏さんのことは無視ですか?ケーキのフィルムをべろんべろんに舐めてるんだけど…

 

「は、はい。そうですけど…呼び出されるようなことをしましたか?」

 

「したじゃない。君はイギリス代表候補生に喧嘩を売った」

 

「売ってないですよ!僕はどちらかというと買った側ですし、しかも状況的に仕方なくーー」

 

僕の言葉が何かに止められた。下を見ると、僕の口には扇子が添えられていた。

そして、妖艶な笑みを浮かべている、扇子を持つ水色の髪の女の子。何この人…いつの間に近づいてきたの?ゾッとするよ。

 

「どちらにしろ、闘うことには変わりないじゃない。男の子が言い訳ばっかしてたらダ・メでしょ?」

 

僕は彼女の雰囲気に気圧されて首を縦に何度も振る。あ、焦った…目が怖くて声すら出なかったよ。

 

「よし、良かったわ。ところで君、何か対策とかあるの?」

 

「い、いえ。何もありません…」

 

「私が鍛えてあげよっか?」

 

「えっ?」

 

どういう事…まさか千冬さんが言ってたようなやつなのかな?

 

「私が一週間鍛えてあげたら勝てるとは言わないけど、惜しい所までいける事を約束するわ」

 

「えっ、でもーー」

 

「お姉さんの善意には従っておきなさいな」

 

益々怪しい…直接本人に聞いてみたほうが良いかな?

 

「あ、あの…ハニー・トラップか何かですか?」

 

「はぁ?」

 

水色の髪の女の子が僕の発言で顔を歪ませる。や、ヤバい…さっきより数倍怖い顔になってるよぉ。

 

「ち、違うんです!織斑先生がそういうのを気をつけろって!!」

 

「はぁ…まあ良いわ。で、どうするの?

特訓を受けて惜しいところまでいく?それとも、受けなくてアリーナの地面に這いつくばる?」

 

ハニー・トラップの線は消えてないけど、それは後で千冬さんにでも聞けばいい。問題は僕に特訓を受けるやる気、根気その他諸々がまるでないことだよね…

はぁ、憂鬱だなぁ。断ったら目の前の女の子に了承するまで何回も問いを投げかけられそうだし、何より目が怖い。時間が経てば経つほど目尻が上がっていく。要するに、選択肢は実質一択って訳で…

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「よろしい。おっと、言い忘れてたわ。

私の名前は更識楯無、この学園の生徒会長を務めているわ。よろしくね、桜華君」

 

僕の発言がお気に召したのか、更識さんは笑顔で手を伸ばす。僕はその手を掴みながら更識さんをまじまじと見る。

何と言うか…顔といいスタイルといい、非の打ち所がない人だね。まるで外面モードの千冬さんみたいな人だな。けど、何だろう?これからこの人に振り回される未来しか見えないのは。まさか、これは未来予知…?

この未来が直ぐそこまできていることは、この時の僕には分かる手立てがなかった…

 

キーンコーンカーンコーン…

 

背中から汗が噴き出している気がする。今のチャイム、まさか…

 

「予鈴ですよね、今の?」

 

「勿論♪」

 

こ、この人…!まさかこうなることを狙って!?布仏さんはっ!?

部屋の中を見渡すと、ここには僕と更識さんしかいないことが分かる。この二人はグルなのか!?更識さんは僕の心の問いに答えるように扇子をばっと開く。扇子には達筆な字で『油断大敵』と書かれていた。くそッ!!

 

「し、失礼しますッ!!」

 

急がないとっ!次の授業は千冬さんが受け持つ『ISとISに関わる法律』だ。遅刻でもしたら、結構慣れてきたけど鉄槌が僕の頭に下るぅ!

生徒会室から猛ダッシュで教室に向かっているけど時間ってものは残酷だ。鉄槌が下ることを決定づける鐘の音が鳴ってしまった。

身体中から吹き出る汗、目からちょちょぎれる涙を拭いながら教室の戸を開けると挨拶とばかりに一発喰らう。そして、更識さんに嵌められたことを伝えると、時間の管理を怠ったとして追加で二回鉄槌を頂戴しました。連発はもうね、メチャクチャ痛いよね…

 

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