「はぁ…」
私、『ピカ・トーラル』は大きなため息をついた。
もって生まれた、この魔族階級第6位の鬼族の身体のせいで、私はずっと、色んな人から虐げられてきた。
友達は、幼馴染のメルちゃん1人。
メルちゃんは魔族階級第5位の妖精族の生まれ。家も近かったから、同じ低級組として小さい頃からずっと仲良くしてくれた。
けれど、ホントならメルちゃんの方が階級が1つ上なんだし、私なんかと仲良くするのは変なのかも…ってずっと思ってた。あるときそのことをメルちゃんに話すと、
『アンタ馬鹿ぁ?…私だって位が低いことに変わりわないもの。アンタの気持ちはそれなりに分かってるつもり。
…私たちの敵は上位のヤツらよ。低級同士でいがみ合う必要なんてない。』
って言ってくれたっけ。
15年ずっと一緒にいる、私のたった1人の友達です。身近にメルちゃんみたいな人がいて、本当によかったなぁ…。
だけど、世の中はメルちゃんみたいな優しい人ばかりじゃない。
ううん、むしろ低級魔族をコケにする人ばっかり。
私が道を歩けば、見知らぬ人に足をかけられて転ばされ、道に水を撒いている人には水をかけられる。相手は素知らぬふりだ。私が気にせずにまた歩き出すと、皆は私の背後で私を笑う。
時には大人の男の人に襲われたりもした。男子トイレの中に連れ込まれて、服を引き裂かれて…(あの時は、鬼族の怪力のおかげでなんとか逃げ切れたんだけど…。)
学校でも同じ。
ちょっとしたイタズラなんて日常茶飯事。いつだって私の机はゴミ箱同然。昔、大切にしてたピンクの香り付き消しゴムだって、いつの間にかなくなっていた。探してみたら、すぐに見つかった。私の隣の席の子がそれを平気な顔をしてつかっていた。
先生に相談したって、当然何にも変わらない。それどころか先生だって私のことを何かとこき使ったりしてきた。学級委員だって押し付けられて、何か失敗があったときは、全部私の責任にされて…。
このままじゃ私、ずっと辛い思いをし続けることになる。だから友達が欲しい、そう思った私は皆のために何でもやった。宿題を代わりにやってあげたり、お菓子をあげたり………
そうしたら私、いつの間にか皆のパシリになっていた。それでも私は友達になれたと勘違いしていたんだ。これで私は皆と一緒にいられる、もうツラい思いなんてしなくて済む、って。だから、あの子達がウラで私のことを笑っていた時、すっごくショックだった…。
高校に入って、メルちゃんとやっと同じクラスになれた。だけど、メルちゃんはどちらかというと1人でいるのが好きな子。幼馴染とは言えど、私が困った時とかちょっと特別な時にしか声をかけてはくれない。
やっぱりなんだか、孤独を感じていた。
変だよね。
…低級魔族がこんな生き方をするのは当たり前のこと。それをツラいとか苦しいとか思っちゃいけないのに。幸せになりたいなんて、私なんかが思っちゃいけないのに…………。
こんな私の前に現れた、1人のヴァンパイア。
私なんかが絶対に仲良くできるはずのない、階級第1位の女の子。
昨日、私はへんてこな怪物に襲われた。そんなとき私を守ってくれたのがカエンちゃんだった。不思議な鎧を着たカエンちゃんはあっという間に怪物を退治した。
そしてその後、学校で会った時、カエンちゃんは私に
『友達になろう!』
って、そう言ってくれた。
最下級の、こんなダメダメな私にそんなことを言ってくれる、優しい優しいカエンちゃん。
メルちゃんは、カエンちゃんのこと、信じられないって言ってたけど、何の面識もない私を助けてくれたんだもん。きっと、とってもいい人なんだよ…。
「私、カエンちゃんと、友達に、なれるかな…」
一緒にいっぱいおしゃべりができる友達が欲しいな…。
…ダメ。やっぱり幸せになりたいって思ってしまう。それはいけないことだと分かってるのに…。私…変なのかな…。
ドォォォン!
っ⁈何⁈うわっ!眩しいっ!
なんだか爆発音みたいな音が聞こえた。と思った直後、閃光が私の目を襲う。一瞬何も見えなくなった。何かが光り輝くといつもこうだ。遮光眼鏡をかける。
何かが…燃えてる…?
「と、とにかく行ってみよう…!」
うひゃぁ…危ない危ない!
私、カエン・シューマこと、仮面ライダーフォールンは現在インベスと絶賛交戦中!
それにしても、またクラックが開くなんて…結構頻度高いね…。侵食もかなり進んでるってことかな…。まぁまだ私の身の回りで開いてくれるだけ、ラッキーだけ、どっ!
「ハァッ!」
右ストレートでインベスを吹き飛ばす!
今回の敵はセイリュウインベス!初の上級インベスだから、やっぱりテンション上がっちゃうよね!キャハハハッ♪
さてと…今回は何の武器にしよっかな〜?ええい!目を瞑って適当にスマホの画面を押しちゃえ!ポチポチっと!
『バースバスター』
Siriさんボイスとともに、武器が召喚!おおっ、これは伊達さんと後藤ちゃんと里中くんが使ってたヤツだね。セルメダルを入れての課金プレイ、オトナの戦い(笑)って感じだよね〜!
「くらえっ!」
バースバスターを構えてトリガーを引く!そうするとセルメダルの形をしたエネルギー弾が………
「あれ?でない」
「グォォォッ!」
「きゃあっ!」
危ないっ!セイリュウインベスが火の玉を吐いてきた!何とか躱せたけど…。なんで攻撃できないの⁈まさかコレ、壊れてるの⁈
あっ…
「メダル入れてなかった!」テヘペロ♡
「グォォォッ」
「きゃぁぁっ!」
うぅ…火の玉をまともにくらっちゃった…。結構痛い…。とにかく、早くメダルを入れて反撃しなきゃ!
「ええーっと、メダルメダル…っと。」
このスマホからメダル出てこないかな〜。オーズの紋章をタップして………。
「あれ?」
『メダジャリバー』『バースバスター』「タジャスピナー』『メダガブリュー』の画像しか表示されないなぁ…
もしかして、メダル出ないの?
え?
じゃあもしかして、バースバスター使えない⁉︎むしろ、全く役に立たない⁉︎
「ウソダドンドコドーン!」
鎧武とドライブも使えないし…うう…私、呪われてるかも…。
…気を取り直して、次だよ!次!
また腰のスマホをタップ!
『ドラグセイバー』
相手が龍ならこっちも龍の力!
両手で構えて、いざ突撃ぃぃぃ!
「でやぁぁぁぁっ!」
ポキン
え
「おっ、折れたァァァァ⁈」
マジか⁈マジで!マジだ。
折れるのってライドセイバーだけだよね⁈なんでこれも折れちゃうの⁈
あ、セイリュウインベスって皮膚がすっごく硬いんだった…。なるほど、だから折れたのね。
って納得してる場合じゃない!何かいい武器は……。
うーん、私仮面ライダー好きだけど、昔のはあんまり詳しくないしなぁ…。もっと色々勉強しておけばよかった…確か鎧武ではマンゴーパニッシャーで戦ってたよね。ハンマー系の武器…あっ!これだ!
『ドッガハンマー』
仮面ライダーキバに出てきた、紫色のハンマー、その名も魔鉄槌ドッガハンマー!コレならマンゴーパニッシャーの代わりになりそうだよね!私ヴァンパイアだから、キバのイメージにもあってるし!
よし、この地面に突き刺さってるドッガハンマーを持ち上げて……
「うぐっ、重いっ!」
予想以上に重いよコレ!流石は腕力重視のドッガの武器だけあるね…。とにかく、攻撃しなきゃ…
「…ッ。ヤァッ!」
鉄槌を振り下ろすように、インベスの頭にぶつけるっ!よし!当たった!インベスがよろめいてる!
「グッ…グォォォッ!」
「きゃあっ!」
怒ったインベスがまた火の玉を吐いてきた。いたたた…まともにくらっちゃったよ…。
ドッガハンマーじゃダメだ。戒斗さんはともかく、女子高生の私にはハンマーで戦うのは難しすぎる…。重くて全然動けないよ…。
「何か別の方法が考えなきゃ…」
鎧武ではパインアイアンも効いてたけど、他のライダーにあんな感じの武器あったっけ…?
…ダメ!思いつかない!
「これってかなりヤバイ状況かも…」
「あっ、あの黒い鎧の人…」
私、ピカが爆炎の元へやってくると、そこには黒色の鎧を纏った人がいた。この前、私を助けてくれたのと同じ。
つまりは…
「カエン…ちゃん?」
私のクラスメート、カエンちゃんに違いない。もしかして、またあの怪物と戦ってるの…?
「アアッ!」
「きゃぁっ!」
カエンちゃんが吹き飛ばされた。その先を見ると、この前私を襲ったのとは違う、緑色の怪物。なんだかあの時の怪物よりも、すごく怖い…。
「くっ…まだまだぁっ!」
カエンちゃんが腰のベルトに手を伸ばす。すると三つ葉のクローバーのような形をした杖が現れた。それを両手で持って、怪物に向かって走り出す。鎧のいろんな所が傷だらけだから、きっとすごく痛いんだろう。なのにどうして……。
「アアッ!」
怪物に殴られて、カエンちゃんがまた吹き飛ぶ。背中を塀に打ち付けて…もう見てられないよ!私は顔を抑えた。あんなに優しいカエンちゃんが、こんな風に傷ついて、そんなの、そんなの……。
「次!…でやぁぁぁぁっ!」
今度はφのような模様のついたメリケンサックに似た武器が現れる。カエンちゃんはそれを左手に装備、羽根を生やして飛び立った。怪物に全力で突撃して何度もパンチする。だけど怪物は身動き一つしないでその攻撃を全部受けきっている。そして突き出されたカエンちゃんの左手を掴んで、投げ飛ばした。
「きゃぁぁぁっ!」
カエンちゃんが地面に叩きつけられる。そして怪物はカエンちゃんを蹴り飛ばした。
すごく痛そうな悲鳴が、私の耳に届く。カエンちゃんを守っていた、黒色の鎧も消え去る。もう嫌…嫌だよ…。
「大丈夫⁈カエンちゃん!」
私は倒れているカエンちゃんに思わず駆け寄った。そうせずにはいられなかった。カエンちゃんが苦しそうに私の方に顔を向ける。傷だらけの顔は凄く痛々しくて、目を背けたくなるほどだった。
「ピカ…ちゃん?なんでこんなところに?ダメだよ、ここは危ないから、ピカちゃんは逃げて。」
カエンちゃんが顔を歪めながら立ち上がる。カエンちゃんの足は震えていた。そして怪物に一歩一歩近づいていく。
「カエンちゃん⁈何やってるの⁈そんな怪物放っておいて一緒に逃げようよ!」
叫んだ。わけがわからない。
怪我だらけなのに怪物に向かっていくなんて…。カエンちゃんは死にたがっているの?私にはそうとしか思えない。
どうして。どうして…
「これは、私が選んだ道なんだ。戦い続けるって、そう決めたんだ。みんなを守ってみせるって。」
わからないよ。私たち、ただの女子高生だよ。それなのに、戦わなきゃいけないなんて、そんなの意味わかんないよ。
「うっ…うわぁぁぁっ!」
「カエンちゃん!」
生身に直接怪物の拳を受けて、カエンちゃんが地面の上を転がる。このままじゃ、カエンちゃん、死ぬまで戦い続ける…。そんなの…そんなの嫌だよ…!
ダッ!
気づいたら私、カエンちゃんの前に飛び出してた。カエンちゃんを庇うように、怪物の前に両手を広げて立ちふさがってた。
「…⁈ピカちゃん…?何やってるの⁉︎はやく逃げて!」
カエンちゃん、顔中火傷と傷だらけで、やっぱりすごく痛々しい。優しいカエンちゃんは、私を危険な目に合わせたくないから、と私に逃げるように言う。だけど…
「やだ!だってカエンちゃん、すっごく優しいんだもん!私なんかよりずっと、ずっと、ずーっとすごい人なんだもん!カエンちゃんが傷つく必要なんてない!私が、私が身がわりになるから、カエンちゃんこそ逃げて!」
最低階級の、ダメダメな私のこんな命一つで稼げる時間なんてたかだか知れている。自分の命が、最高階級のカエンちゃんの命に釣り合うだなんて傲慢な考えかも知れない。
だけどそれでカエンちゃんが救えるなら、それでいいのかも知れない。こんなダメダメな私に手を差し述べてくれた、2人目の、私の友達が救えるなら。
「そんなの私だってやだよッ!初めてできた友達を見捨てるなんて、絶対できない!」
カエンちゃん…私のことを友達って…。
「グォォォォォォッ!」
怪物が…口から火の玉を…私たちに…。
真っ赤な炎が私たちに迫ってきて、視界が赤に染まる…。
キンキンキィン!
………?
ん…?何………?
ディスク…?
セイリュウインベスの火球から、私たちを守ったのは何枚もの銀色のディスク。
うん…私はこれが何かを知っている…。
「ディスク…アニマル…?」
私がスマホで呼び出した訳じゃないのに…どうして?
「ん…?わっ!スマホがっ…!」
腰のスマホが震えてる。何かピカピカ光ってるアイコンがあるけど、これをタップしろってこと?
私はもう一度立ち上がる。右手でスマホを持って、左手で光るアイコンをタップッ!
『装甲セイバー 』
装甲セイバー…響鬼に出てきた武器だね。だからディスクアニマルが出てきたのかな…?
『リンクチェンジチュートリアルです。変身後、装甲セイバーを起動させてください。』
分かった。とにかくやってみるよっ…!
「変身ッ!」
『fallen vampire link』
いつもの真っ黒な鎧が私の身体を覆っていく。
空中に現れた装甲セイバーを左手で掴んだ。これを起動させるには…こうだよね、多分。
柄の底を右手でグッと抑えるっ!
ん?太鼓の音…?
わっ!ディスクアニマルたちが、私の身体に向かってきた!フォールンの鎧に融けるように合体していく。
身体が焼けるように熱い…だけどこの熱さが逆に気持ちいい。って身体ホントに燃えてる⁈
『画面をタップしてください。』
ん⁉︎えっ⁉︎あっ⁉︎
わっ、分かった!タップ!
『fallen oni link』
「はぁぁぁっ……セイヤァッ!」
装甲セイバーを思いっきり振って、炎を消しとばす。
ふぅ…
この全体的に赤い鎧…見覚えある。アームド響鬼と一緒だ…。
私フォールンだからいわゆる装甲フォールン?鬼族のピカちゃんと仲良くなれたから、響鬼の鬼の力で強くなれた…ってことなのかな?
とにかく試してみよう!
「でやぁぁぁぁっ!」
炎を纏った装甲セイバーを思いっきり振る!炎の斬撃がインベスに向かって一直線に飛んで行って…直撃!インベスを吹き飛ばした!
「すごい…これ、もしかしたらいけるかも…!」
そうだ。思い出した。セイリュウインベスを倒すもう一つの方法。ゲネシスのような圧倒的なパワーでねじ伏せることだ…。この装甲セイバーなら、それができる…!
「一気に決めるよっ!」
『oni death drop 』
スマホをタップすると装甲セイバーの炎が一段と大きくなる。近くにある家よりも全然大きい!
「はぁぁぁっ、いっけぇぇぇぇっ!」
全力で装甲セイバーを振り切る!炎の刀身がセイリュウインベスにぶつかり、その強固な皮膚を燃やし尽くした。
「グォォォォォォ…」
そのまま肉体も一刀両断。インベスは大爆発を起こし、消し炭に変わった。
「すごいなぁ…これ。フォールン、オニリンク…だね。」
「ピカちゃん!大丈夫⁉︎」
カエンちゃんが鎧を消して、私のもとに駆け寄ってきた。私なんかを心配しなくたっていいのに…カエンちゃんの方がボロボロなんだから…。
「私は大丈夫。だけど、カエンちゃんだって…。」
「ん?私?あー…いやー、さっきも言ったけど、これ、私がやりたくてやってるから!このくらい平気へっちゃらだよ!」
やりたくてやってる…?
カエンちゃんは戦ったりケンカしたりするのが好きなのかな…?
もしかして不良…?
「ちょっ!そんな怖いものを見る目でみないでよっ!」
「だって…カエンちゃん…ケンカ好きの不良なんでしょ…?」
「いやいやいや⁉︎違うよ違うよ⁉︎」
カエンちゃんが両手をブンブン振って慌てて言った。ホントかなぁ…なんか怪しいなぁ…
「……私ね。ただ皆をインベスから守りたいだけなの。そのためにこの町に来た。」
「インベス…?あの怪物、インベスって言うの?」
カエンちゃんがあからさまに顔を引攣らせる。やってしまった、と言わんばかりに。
やっぱりカエンちゃんはあの怪物のことを何か知っているんだ。知りたい。私もカエンちゃんが戦う理由を知りたい。
「教えて、カエンちゃん。インベスって一体なんなの?カエンちゃんはどうしてインベスと戦うの?」
「っ………それは………。
ハァ………。分かったよ…。」
カエンちゃんは私に話してくれました。
インベスが侵略者であること。
インベスはこちらの星の生き物を無差別に襲うこと。
インベスに襲われた人間は………インベスに変わってしまうことを。
「なぁんだ……そんなことかぁ…」
「へっ?」
カエン:てなわけで!早速強化フォーム登場だよ!装甲響鬼の力!仮面ライダーの武器が使える私にはピッタリの強化フォームだよね!
南斗:フォールンの能力が決まった時点でこういう強化フォームにすることは決めてたからね。書けて良かった、って感じかな。
カエン:そして、ピカちゃんともやっと仲良くなれた、かな⁉︎他の子ともどんどん仲良くなりたい!そしたら、きっと別の強化フォームも使えるようになるんだよね?例えばブラスt…
南斗:うわぁぁあ!それ以上はダメ!ネタバレ厳禁!
カエン:特撮のネタバレなんて日常茶飯事なんだけどなぁ……
それじゃあまた次回!よろしくね!