投稿が遅れてすみません!
それに、文章もだらだらと長くなってしまいました。
時計の針が12時を回ろうとしている深夜。
普通なら就寝する人が多い時間帯だ。
日中での町の賑わいが嘘のように今は静寂に包まれ、街灯だけが淡い光を放ち続けている。
そんな暗闇が主役の時間だが、悪魔にとっては本領を発揮できる時間でもあるのだ。
旧校舎を根城にしているオカルト研究部員も悪魔故に同様だ。
その内の一人を見て、異世界から来た紫髪の少年は意外そうに声を漏らした。
「悪魔って、てっきり魔法陣か何かで転移するかと思いましたが、自転車で依頼者の元に行くんですね・・・・」
「違う、違うのよ、トランクス・・・。イッセーはごく稀なの。普通ならちゃんと魔法陣でジャンプするわ」
悪魔の基準が一誠に定められる前に、リアスは正しい認識に引っ張っていく。
新人悪魔の兵藤一誠。
彼は極端に魔力が少ない。少なすぎるのだ。
その為、悪魔の仕事の一つ・・・人間との契約を取りに行く時に使う転移魔法陣すら発動させることも儘ならない。
だから、仕方なく自転車で向かう。
━━━前代未聞の悪魔だ。
「兵藤くんは契約こそ取れていないけど、依頼者からの評判は凄くいいんだよ。何から何まで前代未聞だね」
ソファーに腰掛ける裕斗が苦笑を浮かべてそう言った。
まだ今一悪魔について知識が浅いトランクスには分からないが、恐らくそれが変わった事なのだろう。
そもそも、悪魔との契約といったら対価として命を差し出す、というのがイメージ出来るが・・・・・。
「お願いによっては命と同等の代償が必要だけど、今は対価に金品や芸術品などを頂戴しているわ。勿論、契約内容によってその量も増えるけどね」
「契約内容というのはどんなものが・・・?」
恐る恐る聞いてくるトランクスに、リアスはくすっと笑んで説明する。
「勉強を教えたり、料理を作ってあげたり、愚痴を聞いてあげたり、様々よ?難易度はピンからキリまであるけれど、大抵はお手伝いレベルなの」
「え?そ、そんなのでいいんですか・・・・?」
本当に想像を覆してくる。
全然悪魔らしく思えない・・・・これなら、人造人間の方がよっぽど凶悪で悪魔らしいじゃないか。
思い描いていた悪魔像と現実がまるで違う事に戸惑うトランクス。
その後、契約を取りに行っている一誠が帰ってくるまで、彼らはトランクスの世界とこの世界での相違点について話していた。
神器の存在や、科学技術の差など、話せば話すほど違いは浮き出てくる。
「━━━ッ」
しかし、その会話の途中でトランクスが突然ある方角にバッと顔を向けた。
「トランクス・・・?」
リアスたちは怪訝そうに顔色を窺うが、トランクスの表情は焦りに満ちて、冷や汗を流している。
「・・・・・一誠くんの気が・・・・・減っていってる」
トランクスの呟き。
それがどう言う意味か、リアス達は一瞬でこそ理解は出来なかったが、そう時間はとらせなかった。
一誠の魔力を探知して、その危機を察したリアスの行動は迅速だ。
「ッ!?イッセーが契約先で襲われている可能性が高いわ!朱乃、直ぐにジャンプの用意を!・・・・・・イッセーを死なせるわけにはいかないわッ!」
「分かりましたわ、直ちに準備を!」
「トランクス!貴方には悪いのだけど、ここで待っていて貰ってもいいかしら?」
女王の朱乃が転移魔法陣の展開をしている傍らで、リアスは立ち上がって剣を装備するトランクスを制止させる。
「で、でも・・・!?」
「貴方がいれば心強いけど、これは悪魔の問題・・・・巻き込む訳にはいかないの。その優しい気持ちだけで十分よ」
会ってからまだ数時間しか経っていないのに、この少年は一誠を助けようとしてくれる。
優しいからか、ただ甘い性格だからか・・・・。
どちらにせよ、リアス達を遥かに超越した力を持つのに威張らず、人のために力を使うその姿勢、その行為でリアスの欲は更に掻き立てられる。
(ますます欲しくなるじゃない・・・・)
そう思うが、直ぐに頭を振って思考を切り替えた。
非常事態に余計なことを考えるべきじゃない。今は下僕の命に関わる時なのだから・・・。
「リアスさん・・・!」
トランクスは納得がいかないと目で訴えるが、リアスはどうしても頷かず眷属を率いて魔法陣の上に乗った。
そして、朱乃に指示を出す。
「朱乃、お願い」
「分かりましたわ」
朱乃が手を翳すと、床に展開された魔法陣が光を放ち始め、リアス達を目映い光が包み込んでいった。
▽▼▽
「『悪魔の問題』・・・・か」
トランクスは無人になった部室の中でそう呟く。
確かに、彼は部外者だ。
彼女達には彼女達の、トランクスにはトランクスの問題がある。
それに、リアス達が行けば戦力的にも何ら気にする程ではない。
━━━でも
トランクスの脳裏に鮮明に映る恩師の死・・・・それがどうしてもこびり付いてくる。
力が無かったあの頃と今の自分は違う。
少なくとも、あの悪魔らしくない悪魔達を救えるくらいには強くなったつもりだ。
余計なお世話だと言われるかもしれないけど・・・・もうあんな思いはしたくない!
トランクスの青い双眸に決意が宿る。
そして彼は部室の窓を開け、一誠の元へと宙を飛び出した。
▽▼▽
トランクスが飛び出した頃、リアス達は転移先にいる一誠を保護し、敵意を剥き出しにして不気味に笑っている白髪の少年神父と向き合っていた。
「これはこれはクソ悪魔様ご一行!仲間のピンチに駆けつけたって感じですかぁ?」
「ええ、そうよ“はぐれ
「ぶ、部長・・・・・俺」
一誠は膝を震わせながら申し訳なさそうに表情を翳らせる。
彼の左足からは大量の出血。
その怪我が誰の手によって与えられたのか、言わずとも知れたことだ。
「仲間を傷つけた報いは受けてもらうよ」
「・・・・覚悟してください」
裕斗は剣を、小猫は拳を構えてはぐれ悪魔祓いの“フリード・セルゼン”と対峙する。
「はぁぁ!クソ悪魔からの濃厚な殺気はたまらんですなーっ!!ぼくちん、殺気を放つのも好きだけど受けるのも嫌いじゃないざんす・・・・よッ!!」
殺気が飛び交う中で、フリードはヘラヘラと笑いながら裕斗と小猫に光の剣で斬りかかる。
「ふっ!」
裕斗が前に出て、振り降ろされる光の剣を白銀に輝く剣で受け止めた。
態度とは裏腹に、攻撃は重く鋭い。
「えい」
「うおっと!?ロリっ子の癖にえげつないパンチ!ぼくちん怖い!!」
裕斗が抑えている隙に小猫がフリードに拳を放つが、軽々と避けられてしまう。
そして今度はにらみ合いが続き、この場に緊張感が走る。
「━━ッ!?リアス部長、ここに複数の堕天使の気配が近づいてきていますわ!」
朱乃が気配を察知してリアスに報告する。
恐らくこのはぐれ悪魔祓いの援軍・・・・・そう考えるのが妥当だろう。
現在一誠は負傷している。庇いながらとなると堕天使との正面衝突は些か不利だ。
「・・・わかったわ。直ぐに転移の準備をしてちょうだい」
「部長、それならアーシアも一緒に!」
一誠はそうお願いするも、リアスは首を横に振った。
「ダメよ、イッセー。この魔法陣は私の眷属じゃないと使えないの。悪いけれど・・・・・諦めなさい」
リアスは、シスター服を着た金髪の少女“アーシア・アルジェント”を一瞥してからそう言った。
「そ、そんな!?・・・・・なら俺も残ります!残ってアーシアを守ります!」
「イッセーさん、私は大丈夫ですから。皆さんと行って下さい・・・・」
イッセーの固く握り締めた拳を、アーシアは優しく両手で包み込み、聖母のような笑みを浮かべた。
だが、彼女の笑みからは悲しみが伝わってくる。
悪魔だけど親切な悪魔。
道に迷っていた自分を助けてくれた男の子。
━━━今度会ったときは、お友だちになってくれるでしょうか・・・?
アーシアはそんな思いを胸にして微笑む。
彼が、一誠が不安にならないように。
「兵藤くん!」
裕斗は一誠の腕を引っ張り、魔法陣の上に移動させる。そろそろ転移の準備が完了するのだ。
「アーシア!アーシアッ!!」
「ばいちゃーするつもりですかクソ悪魔どもッ!」
フリードは退却するリアス達に向かって駆け出し、剣を振るう。
ギイィィィインッ!!
光の刃が一誠の顔に迫り一刀両断しようとするが、届く前に一本の剣に防がれた。
そのお陰もあって、無事にリアス達は転移することに成功する。
ただ、今防いだのは裕斗ではない。
リアス達には後ろ姿しか見えなかったが、その者の髪色、服装で理解できた。
「よかった・・・・一誠くんは無事だった」
そう、異世界未来戦士トランクスだ。
▽▼▽
転移の際に生じた光の残留も無くなり、この場にはトランクスとアーシア、フリードの3人だけ。
余談だが、トランクスはこの部屋に入るために壁を突き破るか玄関から入るかで悩み、結果として玄関から入ってきたのだ。
「・・・なんすか君?何防いじゃってんの君?新手?新キャラなんてお呼びじゃないんですけどぉぉ!?」
突然の乱入者に動揺するフリード。
しかし、トランクスは彼を無視してアーシアに近寄る。
「一誠くんの知り合い・・・・でいいのかな?敵ではないんだよね?」
「え?あ、は、はい!そうです!」
戸惑うアーシアにトランクスは出来るだけ笑顔で問いかけた。
アーシアも質問されたからには答えようと、慌てて返事をする。
「まさかのスルーっすか?ぼくちん、こう見えてもガラスのハートなので優しくして欲しいんですけどぉ!!」
フリードは駄々をこねるように光の剣を振り回し、そのせいで壁や家具が破壊されていく。
しかし、それでもトランクスの反応は無だ。
「よし、直ぐに逃げよう。どうやら敵の仲間も此処に向かってるようだ」
「え?あの・・・え?」
アーシアは混乱する。
一誠が悪魔であることにも驚いたが、突然出てきたトランクスにもビックリだ。
更に、彼はアーシアを逃がそうとする。
悪魔なのだろうか、と疑問に思う彼女だが次の瞬間にはさらに疑問が増える事になるだろう。
「あらら、ぼくちんに興味なし?あ、そう。ならいいや、どうせ首ちょんぱしちゃうし?」
フリードはトランクスの首に目掛けて光の剣で一閃した。
確実に刈り取ったと口角を大きく歪ませるが、それは次第に驚愕へと変わっていく。
「うそん・・・・刀身が消えたんですけど!?」
フリードの持つ光の剣。
光力を用いた悪魔祓い専用の武器の一つだ。
悪魔に害をなす光力だが、人間への殺傷能力が低い訳ではない。フリードの剣は、容易に人を殺すことが出来るのだ。
しかし、相手が悪かった。
光の剣はトランクスの首に触れる前に、彼の周囲に発生する“気”の壁で消滅させられた。
「さっきから近所迷惑だ」
そう呟いた瞬間、ドゴッ!と鈍い音が響き渡った。
見れば、トランクスの拳がフリードの腹部に深くめり込まれている。
「あぐ・・・・・がっ・・・・!?」
苦悶に満ちた表情になるも直ぐに意識を手放した。
たとえ(仮令etc……)、下級悪魔や中級悪魔を数多く消滅してきた悪魔祓いだろうと、所詮はその程度。
フリードが相手にしている男は、それらの比較にもならない。
その気になれば、地球そのものを破壊することだって不可能ではないのだから。
「あの・・・・・今首が!?」
「ん?ああ、無傷だから大丈夫。それよりも早く行かないと・・・・・ごめん、ちょっとだけ我慢してくれ」
「え?・・・はうっ!」
トランクスは先に謝るとアーシアをひょいと持ち上げた。
俗に言うお姫様抱っこなるものになっているが、本人にそんな自覚はない。
早くこの場から離脱することだけ考えている。
アーシアを抱えたトランクスは、ベランダに出て舞空術で上昇。
そのままリアス達の元に戻ろうとするが・・・・・どうやら一足遅かったようだ。
「貴様、その小娘を置いていけ」
行く手を阻む漆黒の翼を生やす者たち。
外見は人間に似ているが、決して人ではない。
(多分、この3人がリアスさんの言う堕天使か・・・・)
一人はロングコートを着た男。
残り二人は女で、青い長髪でボディコンスーツを着た者と金髪ツインテールでゴスロリ姿の少女。
「一つ聞かせて欲しい。何故この子を狙うんだ?」
「ふん、人間に教えてやる義理はない。見たところ空を飛ぶ神器を宿しているようだが・・・・・悪いことは言わない。死にたくなければ小娘を置いていけ」
男の堕天使が殺気を向けて警告する。
と言っても、この程度の殺気で狼狽えるトランクスではないが。
「そうか、なら断る。どうにもこの子が怖がってるんだ。引き渡すわけにはいかない」
「バカめ・・・・命を一つ無駄にしおって。カラワーナ!ミッテルト!この愚かな人間を始末するぞ!」
「了解だ、ドーナシーク」
「オッケー!」
青髪の女━━カラワーナと、金髪の少女━━ミッテルトはドーナシークの指示に従い戦闘体勢に入る。
トランクスは、アーシアを一度地面に降ろしてから再び飛び上がり、堕天使共と同じ目線に位置した。
3対2・・・・正確にはアーシアを抜かして3対1だ。
深夜だから出歩いている人は居ないものの、此処は住宅地のど真ん中だ。派手な気功波は控えるべきだろう。
加えて、トランクスが“気”を解放すれば周囲にどんな被害が及ぶか・・・・。
(一撃だ。一撃で倒せばいい)
トランクスはそう決めて相手を睨んだ。
堕天使3人は光の槍を生成し、それを構えるがどこか余裕が見られる。
「ねえねえ、たかが人間一人に3人で戦う必要なくない?」
「そうは言うがな、この男も神器所有者だ。我々に歯向かう愚者は確実に排除せねばならない」
「ふーん。じゃあパパっと終わらせちゃおうよ。うち、レイナーレ様に怒られるのはもう懲り懲りっすから」
「ふっ、それは同感だな」
ミッテルトの意見に頷くドーナシーク。
完全にトランクスを神器所有者の人間だと思い込み、舐めきっている。
それがどれだけ愚かなことか、彼らは身をもって体験することとなるだろう。
「私から先に行かせてもらおうか!」
先に飛び出してきたのはカラワーナだ。
黒い翼をはためかせて、光の槍をトランクスに向ける。
━━━しかし、その時には既にトランクスは彼女の背後に移動した後だった。
「・・・隙が多いな」
トン、と静かにうなじに手刀を放つ。
たったの一動作だが、洗練された動きで意識を刈り取る。
そして、間髪を容れずにドーナシークの背後にも高速移動して同様に手刀を繰り出した。
「ば・・・・・か、な・・・」
ドーナシークは途切れ途切れにそう言って、崩れ落ちるように落下する。
時間にして何秒かかっただろうか。
ミッテルトは自分の目を疑う。
瞬きをしたらカラワーナがやられ、もう一度瞬きをしたら今度はドーナシークがやられた。
わからない、わからない・・・・・いつの間に?
どうやって二人を倒した?
ただの人間じゃないのか・・・・?
トランクスは、気絶させた二人の堕天使が地面に墜落する前に拾い上げて、ミッテルトに投げつける。
「これで分かったか?お前たちは俺には勝てない。諦めてこの二人を連れて帰るんだな」
「・・・・・そ、そんなこと・・・」
出来る筈がない、と口にすることができなかった。
このままおめおめと帰れば、上司のレイナーレに激怒、罵倒されるのは間違いない。もしかしたら罰を受けるかもしれない。
けど、ここで撤退しなければ殺される。
堕天使の、生物としての本能がそう告げているんだ。
(まだ・・・・・死にたくない!)
顔に浮かび上がる恐怖の色。
トランクスは彼女の戦意が喪失したのを確認し、一息ついてからアーシアの元に降りる。
「じゃあ行こうか」
「は・・・はい!」
呆気にとられていたアーシアをもう一度持ち上げ、トランクスは闇夜に紛れるようにこの場を後にした。
「・・・な、何者っすか・・・・・あいつ」
気絶する同胞を両脇に抱えたミッテルトは、遠ざかる超戦士の背中をただ黙って見ていることしか出来なかった・・・・・。
因みに、アーシアちゃんはヒロインではないのです。
ミッテルトちゃんはぐらぐらと傾いていますが・・・・・。