過去ではなく異世界へGOしたトランクス   作:しろろ

6 / 6
久しぶりの投稿です。長い間投稿できずに申し訳ありませんでした!
感想にも返信が遅れてすみません!

それと、視点がころころ変わって見にくいかもしれません。もしそうだったら、是非教えて下さい!


5話 失敗

 

 鳥の囀ずりで、リアスは目覚めた。

 普段とは違うベッドを使ったせいか、快眠とまではいかず、寝惚け眼を擦りながら上体を起こす。

 

 ⋯⋯ああ、そう言えば部室に泊まったのだった。

 

 ハッキリと覚醒しない意識の中で、ぼんやりと昨日の出来事を思い出しながら周囲を見渡す。

 

 ソファの上に小さく丸まってすやすやと眠る金髪の少女。アーシア・アルジェント。

 同性であるリアスの目から見ても、その姿は小動物を連想させる程に可愛らしい。

 

 しかし、この少女と悪魔であるリアスたちは本来相容れないのだ。教会関係者であるが故に。

 一誠が必死になって擁護し、トランクスが彼女を救出しなければ、恐らく立ち入りは拒んだだろう。

 

 まあ、彼女と会話をしてみて、純粋で優しい子なのだとリアス自身も思ったのだけれど。

 

 私も甘いわね、と思いつつ視線をアーシアとは反対側のソファに向ける。

 

「⋯⋯あら?」

 

 寝ている筈のトランクスがいない。

 タオルケットだけが丁寧に畳まれてる。

 

 まさか出ていった⋯⋯?

 

 そんな考えが過ったが、ふと、外から掛け声のようなものが聞こえてきて、その声の主がトランクスであると気付き、安堵する。

 

「こんな時間に一体何をしてるのかしら?」

 

 丁度窓から見える位置なので、気になり覗いて見ると⋯⋯。

 

「⋯⋯え?」

 

 思わず間の抜けた声を漏らしてしまう。

 そして、自身の目を疑ってしまった。

 

 確かにトランクスは旧校舎の前にいて、恐らくはトレーニングをしているのだろう。

 あれほどの実力なのだから、何らおかしい事でもない。

 

 おかしいのは、周囲の風景だった。

 

 整地された地面に出来た幾つものクレーター。

 見事にへし折られた木々。

 

 リアスの寝惚けた頭をショートさせるには十分すぎる。

 

 それから数分後、魔力を迸らせて微笑むリアスに、トランクスは謝罪を繰り返すこととなった。

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 俺がこの異世界に来てから、1日(半日)が過ぎた。

 

 悪魔であるリアスさん達の拠点に滞在することになったのだが、早速迷惑を掛けてしまった⋯。

 悪い癖だ。

 修行にのめり込むと、いつもこうなってしまう。

 

 直ぐ様リアスさんに謝ったが、正直怖かった。

 ニコニコと微笑んでいるのに目がまるで笑ってないのだ。

 

 これからは気を付けよう⋯。そう肝に命じておいた。

 

 さて、リアスさん達が学校で授業を受けている間に全てのクレーターを埋め直さなきゃ。

 へし折った木は俺では修復出来ず、後でリアスさんが直してくれると言っていた。

 

 本当にすみませんでした!

 

 スコップを片手に再度、心の中で謝罪した。

 

「あ、あの⋯⋯私もお手伝いしましょうか?」

 

「ああ、いや大丈夫!俺がやったことだから、俺が何とかするよ」

 

 アーシアさんが俺を手伝おうとしてくれるが、流石に手伝わせるわけにはいかない。

 それに、これもある意味修行じゃないか。

 

 前向きにいこう、俺!

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 わ、私、ミッテルトは⋯とんでもないものを見てしまった。

 というのも、またあの男。紫髪の奴だ。

 

 レイナーレさまの命令で悪魔共の監視をすることになって、結界に反応しないように遠目で見張ってたんだけど。

 

 あいつ、本当に人間?

 いくら神器(セイクリッド・ギア)を宿してるからって、姿を消したり、地面陥没させたり、拳の風圧で木を折ったりなんて。

 

 あー、今すぐ逃げたい!

 

 ってか、たまに目が合うのは気のせいだよね?

 気のせい⋯⋯だよね?

 え、バレてないよね?まさかね。

 

 流石に有り得ないだろう、と考えないようにしていると、紅髪の美女が魔力を滲み出しながら建物から出て来た。

 

 あれはグレモリー?だっけ。

 滅びの魔力を持つというとんでもない悪魔だ。

 そのグレモリーにあの男は必死に頭を下げていた。

 

 その光景に思わず目を丸くしてしまう。

 あれほどの力を持ってるのに、グレモリーに頭を下げるなんて驚きだ。

 

 それから、あの男はスコップを渡されてせっせとクレーターを埋め直した。

 その時にアーシアの姿も確認。特に怪我は無いっぽいし、無事ならレイナーレさまも喜ぶ筈。

 

 暫く穴埋め作業が続いて、漸く終わった頃に学校のチャイムが聞こえてきた。

 続々と悪魔が拠点である建物の中に入っていく。

 

 うーん、中で何をしてるのか全然分かんない。

 と、焦れったい気持ちになっていたが、直ぐに動きがあった。

 

「あ、出てきた!ええっと⋯⋯3人か。アーシアと、レイナーレさまが一度殺した兵藤一誠と⋯⋯げっ、あの男もいる」

 

 今言った3人が建物から出てきて、何処かへ移動を開始する。

 ど、どうしよう。このままグレモリー達に動きが無いか監視すべきか、3人を尾行すべきか。

 

 ⋯⋯⋯⋯。

 

 よし、3人を尾行しよう!

 

 レイナーレさまの目的はあくまでアーシアなのだ。ここはこの判断で間違いはない!⋯⋯はず。

 

 一度レイナーレさまに報告してから、私は3人の跡をつけることにした。

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 見慣れない様々な住宅が建ち並ぶ光景に目を奪われながら、俺は一誠くんとアーシアさんと一緒に外を歩いている。

 

 何故外に出ているのかというと、リアスさんからの提案で、一誠くんにこの町を案内してもらうことになったからだ。

 その為、一誠くんの悪魔の仕事はお休みになったらしい。

 

 邪魔をしてしまったのではないかと思っていたが、「気にすんな!」と、一誠くんは嫌な顔一つしなかった。

 

 正直な所、この町をじっくり見てみたかったところなんだ。

 技術の発展は俺がいた世界の方が進んでいるようだけど、だからと言ってこの世界が劣っている訳じゃない。

 活気に満ちている⋯⋯というのかな?

 

 俺がいた世界も、人造人間がいなければこんな感じだったのだろうか⋯⋯。

 あいつらがいなければ⋯⋯。

 

「どうした、トランクス?」

 

「あ、ああ。ごめん、少しぼーっとしてたよ」

 

「ど、どこか具合でも悪いんでしょうか?」

 

 一誠くんとアーシアさんが心配そうに顔を覗き込んでくる。どうやら顔に出てしまっていたようだ。

 

「ははは、本当にぼーっとしてただけだよ。そこまで心配しなくても大丈夫」

 

「そ、そうか?ならいいんだけど⋯」

 

 一誠くんはそう言うが、あまり納得していなさそうだ。でも、そこで深く聞いてこないのは彼なりの気遣いだろうか。

 

 少し微妙な空気になってしまう。

 

 そんな時、この空気を破るかのように“きゅるるる〜”と可愛らしい音が聞こえてきた。

 まず俺からではないし、隣で歩く一誠くんでもない。

 

 まあ、誰から鳴ったとは言わないけど。アーシアさんは顔を真っ赤に染め上げていた。

 

「ち、丁度小腹が空いたし、飯食べに行こーぜ!それでいいか、二人とも?」

 

「うん、俺も賛成だ」

 

「はぅ⋯⋯は、はい」

 

 そう言うわけで、俺達は一誠くんの先導のもと繁華街へと向かうことにした。

 

 

 少し歩いて、住宅街とはまた違った趣のある繁華街に着いた。

 娯楽施設や百貨店、スーパーなどなど。知識としては知っていても、実際に行ったことのない場所も結構あって興味がそそられる。

 

 色々なものに目移りしながら、俺達はハンバーガーショップへと入っていった。

 アーシアさんは初めて食べるらしく、一誠くんに教えてもらいながら食べていた。

 

 因みに、俺の世界のお金は使うことは出来なかったよ⋯⋯。

 少し期待してみたけど、やっぱり駄目だったか。

 

 今回は一誠くんが奢ってくれて、感謝の言葉しか出ない!

 

 昼食を済ませてからは、ゲームセンターへ。

 これは俺も興奮した!

 初めてのゲームセンターは、ある意味俺の夢というか憧れだったんだ。

 

 夢中になって3人で遊んでいれば、気づけば夕日が出てくる時間帯。

 

「んじゃ、そろそろ時間だし帰るか」

 

「はい!」

 

 アーシアさんはネズミが元のマスコットキャラクターのぬいぐるいを抱き締めながら、満面の笑みを浮かべた。

 “ラッチューくん”と言うらしい。

 

 一誠くんがUFOキャッチャーで取ってあげていた。

 

「トランクス、お前本当にゲーセン初めてなのか?危うくレーシングゲームで負けるとこだったぜ」

 

「これでも機械弄りは得意なんだ。ゲームも似たようなものだよ」

 

「トランクスさんは凄いです!私なんか全然で⋯⋯」

 

「いやいや、アーシアも練習すれば上手くなるって!」

 

 3人で興奮が冷めないまま帰路につく。

 他愛ない会話。だからこそ、幸せだと俺は思う。

 

 いつかは俺の世界でも平和が訪れるだろうか⋯。

 いや、俺がやらなきゃいけないんだ。

 俺が⋯⋯最後の希望なんだから。

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 繁華街から少し離れ、人通りも少なくなってきた。だからこそ、俺は確信する。

 

 ⋯⋯誰かに見られているな。

 

 隣で歩いている二人は気付いていない。

 俺もまさかとは思ってたけど、どうやら勘違いじゃなかったらしい。

 

 多分、俺が旧校舎で修行してるときからだろう。害はないと思って放っておいたが、ここまで監視されてるとなると無視できなくなる。

 

 それにこの気⋯⋯人間の持つ気じゃない。

 

「ごめん二人とも!ゲームセンターに忘れ物をしたから先に行っててくれ!すぐ戻るから!」

 

「あ、おいトランクス!」

 

 一誠くんには悪いが、聞こえなかった事にさせてもらう。二人を危険な目に合わせる訳にはいかないから。

 

 俺は来た道を走って戻る。

 人はいないし、少し本気で走っても大丈夫か⋯。

 

「ふ⋯ッ!」

 

 風を切る音と共に、景色が一瞬で変わっていく。

 目標の気へと一直線。そこまで遠くない。

 あと少しだ⋯⋯!

 

「見つけた!」

 

「や、やばっ!?」

 

 物陰から焦りの声が聞こえてきた。

 声からして女か?まあ、性別なんて関係ないが。

 女は黒い翼を生やして空を飛び立とうとする。

 

「逃がすか!」

 

「ふぎゃっ!?」

 

 ギリギリのところで片翼を掴み、そのまま地面に叩きつけて動きを止める。

 生憎、人気のない場所で良かった。今の現場を見られてたら色々まずかったからな。

 

 仰向けに地面に倒れる女の顔を見てみると、どこか見覚えがある。

 この金髪にゴスロリ姿。

 

 ん?確かこいつ⋯⋯昨日の堕天使か?

 この堕天使が監視していたということはつまり⋯⋯。

 

「おい」

 

「な、何すか!?やるんすか!?痛いのはやめて下さい!お願いします!」

 

 既に戦意喪失。そして涙目⋯⋯いや、もう泣いていた。

 

「またアーシアさんを狙っているのか?昨日は逃がしてやったが、2度目はないぞ」

 

「ちょ、ちょっと待って!私はただあんたらを見張ってただけで、狙ってないっすよ!今頃レイナーレさまが迎えに行った筈だから!」

 

「何?どういうことだ?」

 

 俺が聞くと、女堕天使は直ぐに全てを語ってくれた。

 口が軽すぎるとも思えるが、もし教えなかったら強行手段をとっていた為、手間が省けただけ。

 

 それよりも、不味いことになった⋯。

 こいつの話が本当なら、一誠くん達が危ない!!

 まさか俺の行動が裏目に出るなんて⋯⋯!!

 

 気を探ってみると、一誠くんとアーシアさんの他にもう一人堕天使の気が感じられる。

 向こうにいる堕天使がこいつのボスらしく、直々にアーシアさんを回収にきた、と。

 

 もはや一刻も争えない。

 俺は女堕天使の腕を掴み、舞空術で飛び上がった。

 

「くそっ、間に合ってくれッ!!」

 

「え、ちょっ!?何で私も!?」

 

 俺が向かってる隙に逃げられでもしたらいけないからな。一緒に来てもらうぞ!

 人目など気にせず、俺は全力で一誠くん達の元に向かった。

 

 走るよりも飛んだ方が断然速く、目的地までは直ぐだ。

 着いた場所は、一誠くん達と別れた場所から少し移動した先にある広場。

 

 そこにいたのは、一人の女堕天使⋯⋯恐らくこいつがレイナーレか。

 そして、レイナーレに捕まっているアーシアさんとボロボロの姿で倒れる一誠くんだった。

 

「⋯⋯っ、一誠くん!アーシアさん!」

 

「ト、トランクスさん!!イッセーさんが⋯⋯!!」

 

 アーシアさんは自身の身を案じるより、一誠くんの事を心配する。

 その瞳には、うっすらと涙が浮かんでおり、必死に堪えているのが伝わった。

 

「あなたがドーナシークとカラワーナを倒した男ね。初めまして、私は至高の種族である堕天使のレイナーレよ。よろしくね」

 

「貴様⋯ッ!よくも二人を⋯!!」

 

「あら、動かない方が良いわよ?もし私に危害をくわえようとしたらどうなるか⋯⋯分かるわね?」

 

 何もないところから光の槍を作り出し、アーシアさんに向けるレイナーレ。

 此方を見下すように笑みを浮かべる。

 

 くっ、これでは手が出せない。

 瞬時に助け出す事も出来るかもしれないが、それではリスクが高すぎる!!

 

「レイナーレさま!私を助けて欲しいっす!!」

 

 未だに俺に腕を掴まれていた堕天使は、懇願するように叫んだ。

 

 しかし、目の前のレイナーレは冷えた目をして言い捨てた。

 

「ミッテルト⋯⋯あなたはもう用済みよ。アーシアが手に入った今、利用価値も無くなったわ」

 

「え、⋯⋯え?」

 

「せいぜい、私が逃げる為に囮くらいにはなりなさい」

 

「レ、レイナーレさま?⋯⋯言ってる意味が」

 

 ミッテルトという堕天使は混乱しているが、レイナーレはもう答える気はないらしい。

 つまり、見捨てられたんだ。気の毒だとは思うが、それ以上思うことは何もない。

 

「まあ、アーシアのマーキングが解除されてたのは予想外だったけど、あなたの報告も役に立ったわ。ありがとうね」

 

 そう言い終えると共に、レイナーレの足元が光出した。これは確か⋯⋯転移するやつか!?

 こいつをここで逃がす訳にはいかない!

 

「させるか!!」

 

 こうなったら、一か八かで!!

 

 俺は一歩、強く踏み込んだ。

 それだけでレイナーレと俺の距離は一瞬で詰められ、遅れて地面が陥没する音が聞こえてくる。

 

「━━━!?」

 

「届けッ!!」

 

 レイナーレには俺が消えたように見えてるだろう。頼む⋯⋯届いてくれ!

 

しかし━━━そんな俺を嘲笑うかのように、伸ばした手が掴むものは⋯⋯何もなかった。

 

 





感想や評価をお待ちしています!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。